VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 3 −Community life−





Action10 −信頼−




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『ドゥエロ君!?それにカイも何で回線に・・・え、え!?』


 ナビゲーション席クリスタル空間に取り込まれているバートが、映像に映し出される二人に目を剥いた。

てっきり監房内に今だ押し込められているかと思いきや、悠々と通信を繋いで来たのだ。

バートが混乱するのも無理はなかった。


「事情はかなり複雑だから説明は後だ。バート、お前無事か?」

『無事って、まあ怪我とかちょっとしているけど・・・・・』

「怪我?どこかやられたのか」


 通信のモニター回線越しにドゥエロが、そっとバートを見下ろした。

そんなドゥエロの姿をはっきり確認したバートは感極まったように泣き声を上げた。


『それが聞いてくれよ!
船が何か動かせないからって、僕に女から何とかしてくれって頼み込まれたんだ。
まあこの船を動かせるのは艦内で僕だけだからね、僕を必要とするのは言わば当然なんだけどさ』


 見知った二人と話している事に安心感を覚えてか、徐々にバートも自分のペースを取り戻していく。

本来弁達である彼は堰を切ったように、これまで起きた不可解な出来事を話し続けた。


『で、操縦席に飛び込んだ途端、船が勝手に動き始めたんだよ!
僕が必死で止めようと頑張っていたんだけど、こいつ全然言う事聞かなくてね。
幸いその後の僕の機転と冷静な判断力で何とか事なきを得たって訳さ』


 本当はただ成り行きに任せていたら船が止まったと言うだけであったが、

いかにも自分の手柄と堂々と言える辺りが、バートの強みであるのかもしれない。


「それでか、さっきから船が揺れたりしていたのは・・・・
じゃあ女達からは特に何もされてはいないんだな?」

『まあね。大体僕が必要とされているのに、女が危害を加えられる筈がないじゃないか』


 半ば自分に言い聞かせるように、バートはそう言って話を締めくくった。

カイはバートの言葉に安心したようにほっと一息吐いた。


「そっか、そっか。無事ならそれでいい。安心したよ」

『え?お前・・・僕を心配してくれたのか?』


 不思議そうに目を見開いて尋ねるバートに、カイはぎょっとなって視線を逸らした。

確かに純粋に心配はしていたが、当の本人にそれを告げるのは照れくさかった。


「ば、馬鹿野郎!ただ俺はだな・・・」

「心配してたよ、すごく。バートに会わせろ〜って、ずっと叫んでたもん」

「パルフェ、てめえ!」


 何とか言い訳しようと思っていた矢先に本音を言われて、カイはパルフェを怒鳴りつけた。

パルフェはカイから若干距離をとりながら、にこやかにカイに答えた。


「だって本当に心配してたじゃない。
カイが監房を抜け出てまで行動してたのも、心配してたからでしょう。ね?」

「う・・・・・・・」


 すっかり主導権を握られてしまい、パルフェの笑顔に封殺されるカイ。

そんな男と女、敵同士である筈の友人関係の模様に、ドゥエロは興味深そうに眺めていた。


『カイ、お前って奴は・・・うう、誤解してたよ』

「お前は俺をどんな目で見てたんだよ、こら!」

『まあまあ怒らない、怒らない。僕はこの通り無事だったから問題ないじゃないか』


 宥める様に普段通りの呼吸でカイに接するバートであった。

ふふと面白そうに二人を見つめるパルフェは、隣にいるドゥエロを見上げた。


「そうそうあいつ、あんたの事も心配してたよ。無事かどうか確認したいって」

「カイがか?」

「うん。
・・・・何かいいよね、そういうの。仲間を心配する気持ちって」


 感慨深げに頷くパルフェに、ドゥエロは訝しげに眉をひそめる。


「彼と私は今日初めて会ったばかりだ。付き合いは半日程度にすぎない」

「え、そうなの!?私てっきり、三人とも仲のいい友達だって思ってたのに」

「バートと会ったのも今日が初めてだ。
私が通っていた士官学校では友人と呼べる人間はいなかった」


 頭脳、運動能力共に完璧なドゥエロであるが、完璧がために他人と身近に接する事ができなかった。

それはバートも同じであり、ドゥエロは人の底辺まで見抜けるがゆえに、

バートは人の本質を理解しようとしなかったがために浅い付き合いまでにしか行き届かなかったのだ。


「ふーん、そう言うのってなんか寂しいよね・・・・・・・」

「寂しい?」


 理解できないと言わんばかりのドゥエロに、パルフェは神妙な顔つきで答えた。 


「一人でいるって楽だけど、安心できるかもしれないけど、周りが何も見えなくなるもん。
それより周りと接して傷ついたり悲しんだりする方が、私は有意義だと思うな」


 人間と機械、両方と真剣に向き合ってきたパルフェらしい意見だった。

子供時代遊び相手が機械関係だったために、寂しさや辛さは人一倍感受できるのかもしれない。


「・・・カイも君と似たような事を言っていた」

「あ、あの時の言葉ね。面白いよね、あいつって。
私達は海賊でメジェール人なのに理解したいだなんて」


 言葉ではそう言いながらも、パルフェは好ましい微笑を浮かべている。

バートやブザムと話しこんでいるカイの横顔を見つめ、ドゥエロもまた小さく口元を緩めた。


「彼は我々タラーク人の中でも変わり者の分類に位置している。
少なくともタラークでは疎んじられる存在だな」

「そうなんだ・・・でも少ししか話してないけどいい奴だよ、あいつ。
付き合いが浅い人間の心配をできる奴って滅多にいないわよ」

「・・・・・かもしれんな・・・・」


 今までのドゥエロが関わって来た人間にないものを持っているカイに興味があるのは事実であるった。

今後どうなるか分からない身の上であるが、カイを今後観察するのも悪くはないとドゥエロは感じていた。

話題の中心であるカイ本人はそんな二人をよそに、ブザムから救助に関する詳しい事柄を聞いていた。


「置き去りになったっていう二人を助けに行くのはいいけどよ、
俺、全然場所知らねえぞ。聞いたとしても、無事に行けるかどうか・・・・」


 初心ながらに蛮型での見事な戦い振りを見せたカイであったが、新型の性能による所が大きい。

ましてや宇宙の宙航学等を全く学んでいないカイには、座標を教えられても理解できそうになかった。

ブザムもその辺は心得ているのか、端的に説明する。


『彼女達への行き先はマーカーを各所に設置してある。それを辿ればいい』

「まーかー?何それ」

『お前流に簡単に訳すと、宇宙の「道標」だ。
百聞は一見にしかず。実際に見えば分かってもらえるだろう』

「何か気になる言い方だが、了解した。
めんどくさいけど、人命がかかってるならほってもおけないからな。
バート、船はまだちゃんと動かせないのか?」

『こっちは今の所全然。ちっとも言う事聞かないよ〜』


 頼りない言葉に、カイは肩を落とす。


「船をUターンさせるってのは不可能みたいだな・・・・・」

『根本的な原因を突き止めない限り、不可能だろうな。
このままでは我々は手の平で踊り続けさせるだけに過ぎない』


 ブザムの言葉は言い当て妙であった。

長距離ワ−プから始まった不可解な現象は常識を飛び越えて、人間の意思を無視して行われている。

まるで現象を引き越すペークシスに意思があるような一連の事象に、翻弄され続けているに過ぎない。

だがブザムの言葉を、カイは一蹴した。


「そうならない為に俺達が頑張っているんだろうが。
それにパルフェとドゥエロがこれから調査にあたるんだ。きっと何とかしてくれる筈だ」

「その事についてだが・・・・・・」


 カイの期待のこもった声に、ドゥエロは静かに意見を述べる。


「私は機関部員ではない。専門的な知識を有していない以上、力にはなれない」

「おいおい、そんな・・・・」


 盛り上がっている雰囲気を冷ますドゥエロの正論にカイが口添えしようとした矢先、意外な声がかかる。


  「何言っているのよ、あんた!」


 むっと眉を寄せて、ツカツカとパルフェはドゥエロの前に立った。


「動く物は皆生き物よ!私はそう思ってる。
生き物を治すのが、助けるのが医者の勤めでしょう!違うの!」


 厳しい視線を瞳に称えて見つめるパルフェには、不思議な迫力があった。

珍しく驚いたようにドゥエロは目を見開き、そして好奇心溢れる怪しい笑みを浮かべて彼は言った。


「君は面白い事を言うな・・・・・
分かった。私も手伝わせてもらおう」


 着ていた白衣を脱いで、手の関節を鳴らしつつドゥエロは六号へと近づいていく。

ドゥエロの頼もしい言葉を聞いたパルフェも喜々として、後に続いた。

二人の様子を一部始終見ていたカイは面白そうに笑って、ブザムに言う。

「ありゃドゥエロの一本負けだな。さすがパルフェ」

『フ・・・理屈や正論では勝てない時もある』

『ド、ドゥエロ君が言い負かされているなんて・・・・』


 バートは信じられないというように首を振っている。


暖かい気持ちで二人の様子を見ていたカイはやがて頬をバシッと叩き、気合を入れ直した。


「あいつ等に負けてられねえな。俺もそろそろ行くぜ!」

『ヴァンガードは既に起動状態になっている、いつでも発進可能だ』

「ありがてえ!バート、ドゥエロ!
御互いに頑張って行こうぜ!」


 拳を振り上げてカイがエールをかけると、二人はそれぞれに苦笑する。


『能天気というかなんというか・・・・どこからそんな元気が沸いてくるんだ、お前って』

「ふ、死なない程度に頑張る事だ」


 二人のコメントに親指を立てて答えると、カイはそのまま機関室を飛び出していった。

と同時にブザムとバートの通信モニターも消えて、機関室に再び静寂が戻った。















 その後、いよいよ二人は本格的に作業に取り掛かった。

ペークシスプラズマとリンクしている六号が表示するデータを参考に、一つ一つ対策を講じていく。

さすがに頭脳明晰な二人が揃ってか、作業効率も手際がよかった。


「艦の数値が変動をしているようだ」

「こっちもよ。どうも船が止まった事と関係がありそうね・・・・」


 六号の手元にあるコンソールを稼動させようとするパルフェだったが、その時異変が起こった。


「ピョロっ!?ぴょろ〜〜〜〜〜〜」

「えっ!?ちょ、ちょっと六号君!」


 それまで大人しく作業台に鎮座していた六号が突然暴れだし、小刻みに機体をぶらせる。

唖然として二人が見つめる中六号は鼓動を繰り返し、やがて頭上で繋がっていたケーブルを弾き飛ばした。


「ぴょろ〜〜、生き返るぴょろ〜」


 まるで温泉に入っているように、青緑色の蒸気を噴出して気持ち良さそうにしている六号に、

二人は思わず顔を見合わせた。


「な、何なのこいつ?」


 いきなりの六号の変化に、パルフェは目をぱちぱちさせる。

ドゥエロは六号の豹変を冷静に見つめ、算出したデータを見つめて答える。


「どうやらこの星雲の成分に関係があるようだな・・・
船が星雲に突入してからのデータ変動が顕著に見られる」


 ドゥエロの意見にしばし悩みこんだかと思うと、パルフェははっと顔を上げる。


「そっか、分かった!
艦に溜まった不純物をこの星雲内で吐き出して、中和を図っているのよ!
全ての説明はそれでつくわ」


 パルフェの意見に、ドゥエロはふむと顎に手を当てて考え込む。

もしパルフェの意見が本当であるとすると、ペークシス本体が自らで作用しているという事になる。


「面白い意見だ。
君の考えが正しければ、この船はまるで生き物だと例える事ができる」

「でしょう!もう少し調べてみましょう。
もしかしたら、突破口が開けるかも!」


 ようやく見えてきた明るい展望に、二人は空調の利かない暑さの中作業を懸命に行った。

六号の様子を見ながらデータを調べ、コンソールで計算を行い、互いに推論を立てて話し合う。

そんな作業が数十分集中して行われた時、二人は大きな問題にぶつかった。


「いかん!吸排出の流れにばらつきが生じている」


 艦内全体を滞りなく流れるエネルギー経路図を見つめ、ドゥエロは険しい表情でそう述べる。

不純物の排出と中和された純正物の供給、この二つの流れに明確な差が生じているのだ。

このままだと排出が進まず船が内部から壊れるか、供給の負荷により外部から崩壊する可能性が出てくる。


「リンクルートが極端に少ないからよ。どうにかしてルートを増やさないと」

「しかし、これ以上の負荷は危険が大きすぎる」

「諦めないで!二つの流れを一定値にすればいいのよ。
リンクを増やすか、内部の循環率を上昇させるとか方法が何かある筈よ!」


「ふむ・・・・・」


 独自で行われてきた艦の一連の現象も、既に限界に達していた。

これからは人の手で対策を講じなければいけない所まで来ているのだ。

二人はしばし静まり返って、頭の中でさまざまな可能性を展開させる。

もはや両者にはタラーク・メジェールの国境の差はなく、人間同士としての関係を築きつつあった。


「カイは言ってたわ。
あいつは俺と違って頭がいいから何とかしてくれるって。
あんたの事、信頼しているのよ」


 パルフェの言葉を聞いたドゥエロは、顔をあげて口元を緩める。


「ふ、そこまで言われたからには応えねばならないな・・・・
そうか!」

「何か分かった!?」


 期待を寄せるパルフェに、ドゥエロはしっかりと頷いた。


「迂回路だ。渋滞していると言うのなら、他の道へ誘導してやればいい」

「!?バイパスね!何でそんな事に気がつかなかったんだろう・・・・・・ 
あんた、いいエンジニアになれるわよ」


 上機嫌でドゥエロの肩をぽんぽん叩くと、パルフェは機関部クルー全員に元気な声を張り上げる。


「皆、頑張って!何とかなりそうよ!」


 にわかに活気づく機関室内で、ドゥエロは毒気を抜かれた顔で叩かれた肩をしきりに抑えていた・・・





















<Chapter 3 −Community life− Action11に続く>

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