VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 3 −Community life−





Action7 −価値観−




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「うわ、なんかごちゃごちゃしてるな」


 旧艦区機関室。

ペークシスプラズマが保存されているこの場所へ入った際のカイの感想がこれだった。

通路内で発見された後パルフェに懇願されて、結局渋々六号を連れてここへ着いててきたのである。


「今作業中でとらぶってるからね。身の回り片す余裕がないのよ」


 パルフェが言う様に融合された際にパルフェ達が旧艦区に乗り込んで来てからというもの、

システムの復旧にてんやわんやの状態であり、とても整理するまでにはいかなかい状況だった。

機関室内では作業中の機関クルーがごった返し、そこらかしこにデータファイルや図面が乱雑に置いている。


「わっ!?お、男!?何で、どうして!?」


 クルーの一人が出入り口より堂々と入ってくるカイに、困惑気味の悲鳴を上げた。

徹底されたメジェールの男への差別観がそうさせるのだが、パルフェは至って簡単にこう告げる。


「大丈夫、大丈夫。この男は何もしないから。
それにメイアもいてくれているから心配ないよ」

「ああ、安心してくれてかまわない。
もし何かよからぬ動きを見せれば、直に仕留める」

「てめえ、簡単に言いやがって・・・・・
後ろからその変な光る指輪を突きつけるのは汚ねえんじゃねえか!」


 カイの後ろからリングガンを向けて冷徹に言い放つメイアに、カイは抗議を上げる。


「リングガンだ。それに脱走者に文句を言われる筋合いはない。
パルフェの取り成しがなかったら、お頭の元へ出頭させる所だったんだぞ」

「ああ、上等だね。真っ向からぶつかってやらあな。
人様の連れを勝手にさらっておいて平然としているような奴には負けねえよ」

「貴様・・・・やはり船から放り出したほうがいいようだな。
お前がいるだけで、我々の党則が乱れるばかりか害にしかならない」


 メイアは数年前に海賊団にとある事情で入団した若きクルーであるが、

その優秀さとリーダー的手腕を遺憾なく発揮して、いち早くドレッドチームリーダーを任された。

しかし自分にも他人にも厳しい彼女は他人とのコミュニケーションを望まない面があり、

周囲から一歩ひいている孤立的な位置にいた。

巌と厳しく告げるそんなメイアの言葉に、周りのクルーもおろおろしながら見つめるばかりだった。


「へっ、そんな害虫に助けられたのはどこのどちら様でしたっけ?」

「何だと・・・?」

「ほーら、もう喧嘩は止めてよ二人とも。皆が怖がっているじゃない」


 パンパンと手を叩いて、パルフェが間に入った。

はっと周りの自分を見る目を意識したメイアは、咳払いをして謝罪を申し出た。

「すまない。波風を立ててしまった」

「カイもちょっと言い過ぎぴょろ。
他の人間には普通に話すのに、どうして彼女には話せないんだぴょろ」


 床からふわりと浮いてカイの正面に姿を現す六号に、顔を背けてカイは吐き捨てた。


「何かむかつくんだよ、こいつ。言い方とか態度とか」


 確かにカイは六号の言う通り、メイアにはあまり穏やかに話せてはいない。

彼がこれまで話をした女性はわずかではあるが、突っかかる事はあれど喧嘩腰にはならなかった。

それはメイアも同じで、バートやドゥエロには好意はなけれど明確な害意はない。

だがカイが相手の場合だと、彼女は明確に敵意を示している。

初対面からの印象が悪かったのか、それとも別の要因は彼らをそうさせているのか。

今の所、本人達にも理解はできていなかった。


「はあ〜、あんたとメイアって相性がいいのか悪いのかよく分からないわね。
お頭が面白がるのも無理ないわ」

「面白がってるのか、あのばあさん!?くっそー、人を玩具にしやがって〜」

「まあまあ、せっかく来たんだし座ったら?六号君の事も話さないといけないしね。
メイアも背後に立ってないで、そこ空いてるからどうぞ」

「いや、私はこの男を・・・・・・」

「大丈夫。そいつは逃げないよ。ね?」


 眼鏡に隠れて見えない瞳を向けて、パルフェはカイをそっと見つめる。

てきぱきと物事を進め、自らも行動を開始する。

彼女のそうした行動力に周りもまた動く。

エンジニアのリーダーであるパルフェだが、決して技術力の高さのみで勤めている訳ではない。

カイはそうした彼女の仕草に戸惑いを感じつつも、毒気を抜かれたように頷いた。


「意味もなく騒いだりする程ガキじゃねーよ」

「・・・・・・・・」


 あまり納得はしていない様だが、メイアはリングガンを降ろしてカイの隣に続く。

パルフェの勧めで作業室へとやってきた四人は、そのまま置かれている小さな椅子に各々座った。


「これでゆっくり話ができるわね。
あ、そうそう自己紹介がまだだったね。私はパルフェ。パルフェ・バルブレアよ」


 気さくに話し掛けてくるパルフェの態度に、カイはいつもの調子が狂っているのか素直に答えた。


「・・俺はカイ。カイ=ピュアウインド。こっちは家来の六号」

「ちょっと待つぴょろ!紹介がおなざりだぴょろ!」

「紹介してもらえるだけでもありがたいと思え!
大体てめえ、ちゃっかり連行される俺の横で呑気にふよふよ飛びやがって!」

「とっ捕まって、こうして無事でいられるだけでもラッキーだぴょろ」

「そういう問題か!?」

「あはは、あんた達って本当に仲が良いのね」


 カイと六号の言い合いを聞いていたパルフェは、頬杖を突いて楽しそうに見つめている。

カイは手をぶんぶん振って、あからさまに否定した。


「ないない。全然仲良くなんかない。こいつは所詮俺の家来」

「誰が家来だぴょろ!ずっと助けてやっているんだから、僕のほうが立場が上ぴょろ!」

「お前は俺のサポート役だろうが!いつも肝心な所で役に立たないくせに!

「あー、傷ついたぴょろ!僕は一生懸命やっているのに報われないぴょろ」


 取っ組み合いに発展しそうな二人を見つめていたパルフェだったが、やがて口を開いた。


「ねえ、カイ君だっけ。ちょっと質問いいかな?」

「ん、何だ?今ちょっと小生意気な家来を教育している所なんだが」


 六号の小さな腕を捻りながらカイが尋ねると、パルフェは真面目な顔つきで尋ねる。


「その子、ロボットだよね。どうしてそんなに仲良くできるの?」

「え?だから、こいつはただの家来だっ・・・・・・」

「でも、人間として扱っているよね。見てたら分かるもん。
どうして?人間みたいに話すから?」


 パルフェの表情から真剣に質問している事はカイには分かった。

質問の意図は言葉からは把握できず、曖昧としている。

しかし相手が真剣に尋ねているのなら、真剣に返すのが男の流儀であるとカイは信じていた。


「うーん、じゃあさ俺からもいい?」

「何?」

「あんたの質問に答えるから、あんたも俺の質問に答えてくれ。
聞きたい事が色々とあってな」


 身を乗り出してそう述べるカイに、口元を緩ませてパルフェは頷いた。


「分かった。私が答えられる質問なら答えるわ」

「オッケー。それじゃあ俺から。
こいつはさ・・・・・・・・」


 カイは語った。

自分が宇宙に憧れて艦に乗った際に六号と対面した事。

こっそり仕事を抜け出して蕃型を見に行った事、海賊達の襲撃にようやく立ち上がれた事。

慣れない操縦のサポートを任せた事、自分なりのやり方で最後の賭けを行う際に力を借りた事。

そして現状での事。


「で、俺はこいつと一緒に戦い抜いたんだ。
最もミサイル着弾まではこいつはこんな話し方はしてなかったし、人間臭くもなかった。
ただ俺の言う事を聞いてくれるロボットに過ぎなかったんだが・・・・・・」


 カイはふっと男の笑みを浮かべ、六号の機体の頭部分をポンポン叩いた。


「最後までこいつは俺の味方をしてくれた。だから、かな」

「カイ・・・・」


 モニター部分に表示される瞳をうるうる潤ませて、六号はカイに飛びついた。


「ごめんぴょろ〜〜〜!ずっとカイを誤解してたぴょろ〜〜〜!!
カイは僕をそんなに、そんなに〜〜〜〜!!」

「だああ、ひっつくんじゃねえ!言っておくが、家来である事には変わりはないんだからな!」


 小さな機体にそぐわない物凄い力をこめて抱きついてくる六号を悪戦苦闘しながら引っ張るカイ。

そんなカイ達を隣で座るメイアは、複雑な表情で見つめていた。


「ふーん、そっか・・・・なんか・・・いいよね。うん」

「?何がだ?」

「カイ君は機械でも平等に扱ってくれる人なんだなって、感心してたところ」

「うーん、そんなに難しく考える事もないだろう。
好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。人間ってなそういうもんだ」

「あはは、うまい事言うね」


 簡単でざっくばらんな考え方だったが、パルフェはそれでもカイに好印象を持った。

彼女は幼い頃より機械に接し、遊び相手がコンピュータだった幼少期を過ごしている。

ゆえに機械を自分達と同じ生命の一つであると信じ、仲間でいたいと思っている人物であった。


「質問には答えたぞ。今度は俺からだ」

「うん、いいよ。聞きたい事って何?」
「まずはこいつの事。
あんたら、こいつをどうする気だったんだ?」


 六号を指差しながら、カイはじっとパルフェに視線を向ける。

六号の話が本当であるならば、カイは全力を持ってしても守り抜くつもりだった。

それが互いに交えた約束であるからだ。

だがそんなカイの心配は杞憂とばかりに、パルフェは両手を合わせて謝った。


「ごめんね!ちゃんと言っておけば怖がらせずにすんだのに!
実は六号君に協力してもらいたい事があるのよ」

「協力、ぴょろか?」


 少し不安がりながらも、六号は恐る恐るパルフェを見上げた。


「うん。ちょっと見てくれる。これなんだけど・・・・・・」


 椅子からゆっくりと立ち上がったパルフェはそのまま部屋の隅に設置されている作業台へ向かった。

通常は機器類を修理したり、データ演算を行うために使用される台であるが、

今回は特別な目的があるのか、数本の長いコードが用意されていた。


「このロボットと何か関係があるのか?」


 旧艦区のナビゲーションを果たす比式六号と機関部との関連が分からず、メイアは質問する。

パルフェは胸を抱きかかえる様に腕を組み、難しい顔をして答えた。


「うーん・・・・実は理由はよく分からないのだけど・・・・
六号君とペークシスプラズマの波形がリンクしているのよ。
だから一連のペークシスの暴走を調査する上で一番の手がかりになりそうなの」


 波形がリンクするという事は、イコール人間でいう脳波を計れるのと同様の意味である。

今回のミサイル衝突から始まった突如のワープ、融合した二つの艦、そしてカイ達の機体の改良。

その原因であるペークシスの暴走が詳しく調査できるという事になる。

カイはパルフェから詳しい説明を聞かされ、六号の頭をはたいた。


「全然お前と言っている事が違うじゃねーか」

「うう、だっていきなり連れ出されて押し込まれたから・・・・・」

「ううん、私だって責任があるわ。詳しい説明もしないまま六号君を無理に働かせようとしたもん。
ごめんね」


 しょげている六号に膝を折って視線を合わせるパルフェ。

慈愛に満ちた彼女の態度に、カイは頬を掻いて口元を緩める。

しばし穏やかな時が流れたかと思うと、パルフェは再び真剣な顔に戻った。


「それでね、六号君に協力してもらいたいの。まだ船は制御不能の状態にあるわ。
このままじゃろくに対策も行えないまま、最悪の事態を迎える可能性もあるの。
お願い!協力して!」


 六号に、そしてカイに頭を下げて必死にパルフェは頼んだ。

メイアは驚いて身を乗り出すが、カイはばっと右手を広げて彼女を押し留めた。


「・・・質問その二。どうして俺達に命令しない?」

「どういう事?」

「あんた、俺が男なのに全然気にしていない素振りを見せている。
男は女にとって敵だろう?なぜ警戒しない」


 出会った時からパルフェはそうだった。

カイに対して嫌悪を表す事もなければ、嫌がる素振りも傲慢さも見せない。

まるで自分達と同じとばかりに、彼女は対等な立場でカイに接している。

ディータを除いて敵意ばかりを突き付けられてきたカイにとって、彼女の態度は戸惑ってばかりであった。

カイの質問に心底不思議そうに答える。


「男と女なんて構造の違いでしょう?普通に接するのが当たり前じゃない。
それに・・・・・・・」

「それに?」

「ディータからあんたの事は聞いてるから。宇宙一のヒーローを目指しているいい人なんだってさ。
あの娘がそう言うんなら間違いないでしょう」


 パルフェは幼少期より育まれて来た価値観と個性的な考え方は独特であった。

それゆえにメジェール創生より生まれし男への蔑視にも染まる事無く、彼女なりの考えを持っている。

きわめて珍しい女性ではあるが、パルフェ自身はそんな自分が気に入っていた。

そして、彼女の目の前の男もまた彼女を気に入った。


「・・・・分かった。こいつに害はないんだろう?だったら協力させよう。
この船に何かあったら俺達だってもろともだからな。
文句はねえな、お前も」

「事情を聞いたからには仕方ないぴょろ」

「本当に!?ありがとう!」

「ただし!一つ条件がある」


 人差し指をピシッと立てて、パルフェの喜びを遮るカイ。

パルフェは眉をひそませて、カイを正面から見据えた。


「何、条件って?」

「バートとドゥエロに連絡をとらせてくれ。
安否が確認できたら、こいつを好きにしてくれていい。
だがもしあいつらに何かあったら・・・・・・協力するつもりはない」


 見え始めた光明に希望をかけて、それぞれは活動を開始した。





















<Chapter 3 −Community life− Action8に続く>

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