VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 3 −Community life−





Action6 −初心−




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「艦の前方に巨大な星雲が見えてきました!」


 コンソールを巧みに駆使しながら、ブリッジクルーの一人アマローネは報告する。

バートのナビゲーション席搭乗後、急発進を行った融合戦艦はバートの困惑をよそにグングン加速を続け、

彼の操作やブリッジクルー達の懸命な作業にも耳を貸さず、一路前方の謎の星雲へと進んでいる。

まるで艦そのものに意思があるかのように、惑いのない航路をとりながら・・・・・


「やれやれ、今日は振り回されてばかりだね・・・」


 長年数ある経験を越えてきたマグノも、今回の事態にはお手上げの様子だった。

艦長席で空調が利かないための暑さ対策に団扇を扇ぎながら、手元に小型扇風機を回している。

やり場のない気持ちに疲れた様子で、頬杖をつきながらベルヴェデールに声をかける。


「艦の操縦はどうだい?何とかこちら側でコントロールがつけられると回避はできる」

「それが、こちらからの応答は一切できません・・・・」


 目元に疲労を滲ませて、ベルヴェデールは頬に汗を流しながら答えた。

彼女達の苦労を察したマグノは己も疲労していながらも、労いの笑みを浮かべる。


「焦る事はないよ。成り行きに任せれば、道が開ける時もある。
自分達でできる事をやっておくれ」

「了解しました!」


 優しく暖かい励ましを受けて、アマローネやベルヴェデールも微笑つつ元気よく答えた。

厳しい状況下の中でそれぞれが懸命に働いている中、新しい通信回線が開かれる。


「お頭、突然申し訳ありません」

「メイア。何かあったのかい?」 


 通信モニターの向こうで厳しい表情をしているメイアに、表情を引き締めてマグノは視線を向ける。


「ディータ達を救出すべくドレッドを発進させたいのですが、
システムの異常により全ての機能が麻痺して、まともな発進ができません」

「何だって!?一機もかい?」

「はい・・・・私のドレッドも稼動は不可能でした」


 二つの艦の融合後に敵襲に遭った時、殆どの機能が不能だった中で、
メイア、ジュラ、ディータの三機のドレッドがコントロールが可能だった。

その後ドレッドのメンテナンスを行って原因を調べた時の結論として、

ペークシスが暴走により行われた自己改良が原因ではないかとされていたのだ。

ところが現在は調査に向かったディータ機をのぞいて、メイア機が起動不能状態になっているというのだ。

マグノが驚嘆するのも無理はなかった。


「ドレッドが動かないとなると、ガスコーニュ達に援護に向かわせるのは難しいねえ・・・」

「はい。何とか動く機体があるといいのですが・・・・申し訳ありません」


 申し訳ないというように、メイアは小さく頭を下げる。

マグノは気を取り直して、きつく歪めた表情を和らげた。


「いいさね。現状は予想を越えた事態だ。
何とか別の手立てを・・・・」

「お頭〜〜〜〜」


 メイアの通信が開かれている傍らで新しいモニターが映像化されるにしたがい、情けない悲鳴が響く。

やがて回線が正常に開かれると、そこには通信画面内で窮屈そうに押し込まれている二人の姿があった。

先程仮設エレベーターに閉じ込められたバーネットとジュラである。


「なんだい、あんた達。そんなせまっくるしい所で何やっているんだい?」

「それがエレベーターに閉じ込められたんですよ〜〜〜」


 半分泣きそうな声で助けを懇願するバーネット。

緊急時とはいえコミカルな状態にされている二人の様子に、マグノは苦笑する。

だがクリスタルの洞穴に閉じ込められた側は余裕もなく、ジュラは必死で叫びを上げた。


「誰か助けてよ!このままじゃ動けないわ!」

「お頭〜〜、助けてください〜〜」

「ディータ達は如何いたしましょう?
許可をいただけるのなら、別機をどうにか・・・・」

「お頭!星雲へと船が向かっていっています!」


 ブリッジクル−、メイア、ジュラとバーネット。

それぞれ共に緊急時であるがゆえにおなざりにもできず、マグノは考えあぐねている様子だ。

無論、ナビゲーション席に半ば無理やり引きずり込まれたバートも大変であった。

何しろ彼の目の前で船の行く先が加速化されて映像として映し出されているのだ。

船の手足であり目でもあるバートには、全てのデータが送られてくる。

しかも一度目とは違って少しもコントロールがきかない今は、宇宙外界のデータは恐怖そのものである。

バーチャルよりずっとリアルな感覚で高速に進む船を自身とリンクさせているようなものだ。

そんな彼の目の前に青緑色の輝く星雲の氷塊群が見え始める。

一つ一つがゴツゴツ巨大な塊となっている氷の群れに船が突っ込むのだ。

ぶつかる衝撃や破損はバートへとリンクし、そのまま彼の身体の痛みに直結される。


「ちょっと待った!?あそこにつっこむつもりか!?
馬鹿!よせ!やめろ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」


 クリスタル空間の中手足をばたつかせて抵抗を試みるものの、全くの無駄であった。

彼の意思をくみ取らず加速を続ける船は、真っ直ぐに星雲の中へ突入する・・・・・・
















 騒がしいブリッジとは対象的に、医療室は静かな雰囲気を醸し出していた。

ブザムはおろか保安クルーも一切口を開かず、目の前の様子に瞳をのぞかせている。

ピッピッと軽い単身音のみが鳴り響き、治療中の真剣な空間を形作っていた。

呼吸を荒げるエズラの元で診療器具を使いこなして、ドゥエロが診察にあたっているのだ。

幸い電力の供給は組み入れらえる状態にあり、心電図や聴診器上のセンサーは有効に使用可能であった。

本来タラークでは女の体に触れるのは禁忌に値する行動であるのだが、

ドゥエロは何ら怯える事もなしに、淡々とエズラの身体の心神系にセンサーを走らせていた。

喉元から胸元、神経上部、腹部へと箇所を移動させていくと、ある一点でドゥエロの瞳が光る。

腹部に当てた際にセンサーが異常を発見したのだ。

レッドランプが輝くセンサーに、ドゥエロはマルチモニターを開き体内レントゲンを確認しようとする。

すると突然モニターにノイズが走り、同時にセンサーが緊急停止してしまう。

ドゥエロが眉をひそめると医療室の電気も消えて、室内は真っ暗へと変わり果ててしまった。

明らかに停電である。

保安クルーが突如の異常発生に驚いている間に、ドゥエロはさっと保安クルーの腰元に手を伸ばした。

彼の行動にはっと視線を向けるがすでに遅く、ドゥエロの手元には通信機が握られていた。


「貴様!?いきなり何をする!!」

「医療優先だ」


 保安クルーの苦情を一括して、ドゥエロは電力を供給している総元である機関部へ繋いだ。


「機関室。こっちには患者がいるんだ。
すぐに電力の供給をこちらへ優先してくれ」

『誰よ、いきなり!ってもしかして男!?』


 通信機の向こうから驚愕に満ちた女性の声が聞こえてくる。


「早くしてくれ。診療途中に何かあれば誤診の可能性が生まれる」

『誰だが知らないけど、無理言わないでよ!
こっちだっていっぱいいっぱいなのよ!パルフェも今いないし・・・・』

「パルフェ?」


 聞き慣れぬ名前にドゥエロが怪訝な声をあげると、傍らにいたブザムが通信機をやんわりと取る。


「こちらブザム。パルフェがいないとはどういう事だ?
ペークシスプラズマと艦のシステム復旧を任せているはずだぞ」


 厳格なブザムの言葉に、機関部側も恐縮したようにしどろもどろに答え始める。

どうやら彼女はクルーの間では一目置かれている人物であるようだ。


『は、はい!
艦との波長を調べる際に敵側のロボットを応用しようとしたのですが、その・・・・』

「どうした?はっきり言ってくれてかまわない」

『その・・・逃げてしまいまして・・・・
仕事を一段落させたパルフェが心配だって、捕まえに行くって・・・』 

「逃げた?あのナビロボットが・・・?」


 状況が釈然とせず、厳しい表情のままブザムは黙り込む。















「か〜〜、だだっ広い艦だな。あちこちに部屋があるぞ」

「元々長期遠征用の移民船だったぴょろよ。
古い戦艦に移住エリアを継ぎ足して完成させたのがこのイカヅチだぴょろ」


 監房から脱獄したカイは、暇なのをいい事にあちこちをうろつき回っていた。

元々船の全てをナビゲート可能である比式六号も心得たもので、すっかり案内役になっている。


「ふーん、なんかせこい気もするが浮世の切ない事情って奴だな。
確かあのばあさんの話だと、地球って星から出発した船だったんだよな」

「そうだぴょろ。
人類の新しい可能性をかけて、宇宙へと旅立ったんだぴょろ。
タラークやメジェールが誕生したのは旅立った人達の努力があってこそだぴょろ」

「ほんでうちのじいさん・・だったか。
そいつが船を持ち逃げして、タラークへと降り立ったって訳か。
男と女が分かれた理由はそこにあるのかな?」

「人と人との経緯は些細な事から始まるぴょろ。
確執は確執を呼び、嫌悪や憎しみが生まれるぴょろよ・・・」

「へ、何生意気言ってるんだよこいつは」


 納得顔でふよふよ横を飛んでいる六号に、カイはバシッと軽く叩いた。

旧艦区内は現在結晶体は殆ど枯れ落ちており、以前の状態が一掃されてよりシンプルな構成となっている。

居住区や機関部、医療質等と言った区域が変わらぬままであるが、

艦内の廊下等目立たぬ箇所は細部に渡って素材の改良がされており、光沢に輝いていた。

そんな艦内の通路を歩きながら、カイは考え込んでいた。


(男と女。互いが嫌いあう理由はそんな些細な理由なのか・・・?)


 マグノが言っていた男というのは、恐らく第一世代にあたる人物であろう。

第一世代とは、カイのような三等民には見た事も声すら聞いたこともない程の地位に位置する人物である。

タラーク最高指導者であるグラン・パを初めとする『八聖翁』。

地球から移民船団を繰り出して新しき大地へ渡り、

タラークを積み上げたとされるタラーク国民全てが忠誠を誓っている八人の老人達である。

そんな彼らが女の船を奪って逃げたというのだ。

過去の記憶のないカイにはそんな老人達は正直どうでもいい存在ではあるが、

それでも男側が悪いといわれると釈然としないものがあった。

ましてやそれで男と女の間に確執が生まれたとするならば、スケールの小ささを感じずにはいられなかった。


「何か情けねえよな・・・・」

「突然何を言い出すんだぴょろ?」


 モニターの瞳をジト目にする六号に、カイは得意げな笑みを浮かべる。

「まあ、聞けよ。
元々タラークとメジェールが分かれた理由がばあさんの言っていた事が原因するならよ、
タラークの上の奴らが言っている事には嘘があるかも知れないって事だろう?」

「元々タラークの言う事はおかしいぴょろ。女は悪い存在じゃないぴょろよ」


 タラークの女性蔑視の環境に毒されていない六号がコメントすると、カイも慎重に頷いた。


「だからよ、ここはいっそ俺達で調べてみねえか?
女が悪い奴等じゃないって事をよ」

「どういう事だぴょろ?」


 興味をそそられたのか、六号はひょっこり近づいてカイに尋ねる。


「いいか。今俺達の現状を説明すると、だ」


 おもむろに座り込み、腰元に下げていた十手を引き抜いてカイは床に削りを入れる。

ガリガリと小気味のいい音を立てて線が引かれ、やがて一つの船の絵に変わる。


「俺達が乗っている船がこれで、中に・・・男が三人。女がいっぱい、と」


 船の中に斜線が引かれ、男・女とそれぞれ区別化される。


「簡単に図にするとこうだ。
つまり妙な場所に飛ばされてはいるが、何の因果か男と女が一緒にいる場所となっている」

「ふんふん、それで?」

「で、俺とお前はここだ」


 カイがこつこつと十手を指し示しているのは、男と女の領域を分割している部分。

つまり区切りの線上を示していた。


「カイは女が嫌いじゃないのかぴょろ?」

「うーん・・・・・」


 六号の根幹の疑問に、カイは眉をひそめて黙り込む。

嫌いじゃないといえば嘘になる。

女への不信はいまだ心の奥には残っているし、警戒もしてはいる。

監房に押し込められていた現状に不満は高まっていた。文句だって山ほどあった。

でも、それでもカイは女を蔑ずむのにある種の抵抗があった。

じっくり考え、やがて口を開いた。


「嫌いじゃない訳じゃない。
今はあいつらは何もしてこねえが、いつ本性を剥き出しにするかわからねえ。
監房に押し込められていた時もそうだし、事実バートとドゥエロの様子もどうか知れたもんじゃねえしな。
だけどよ・・・」

「何だぴょろ?」


 一呼吸おいて、カイはそっと六号を見あげる。


「だからって他人の言う事に疑いもなく頷いたり、常識に左右されてばかりじゃ、
見えてこない部分だってあるだろう。
この宇宙へ出て、戦い、死にかけて、それでも俺は出てきてよかったと思ってる。
自分がまだまだだって知ったし、宇宙の広さにびっくりしてる。
ばあさんにも言ったが、俺はこれからは自分で見て判断する。
女がいいか悪いかはそれから決めるさ。海賊の事も含めてな」


 最もここまでカイが断言できるようになったのは、一人の女性のおかげでもあった。

初めての合体時傍にいて感じた女の感触、優しい匂い・・・・・・

「魔物」というタラークの不確かな創造を打ち砕くに十分なリアリティがあったからだ。


「でも忘れてないかぴょろ」

「?何がだよ」


 六号はそのまま床へと降りて、カイが書いた図の女の領域を示す。


「海賊とはいえメジェール生まれの女性ばかり。皆、男を嫌悪しているぴょろ。
ここにいる皆、カイの敵だぴょろ」

「・・・・・まあな。
あの青髪や金髪は露骨に俺を嫌がってるし、他の連中も男を毛嫌いしてやがる」

「常識を変えるにしても、女を知るにしても、カイはもう少し立場を自覚するぴょろ。
現実に置かれている立場は厳しいぴょろよ」


 特にカイの考えはあくまで一個人のものである。

集団生活の中で生まれ育った者にしてみれば、個人の考え云々はあまりにも小さい。

個がいくら主張しても、全体が変わらなければ意味がない。

カイは自分達が境界線上の中間だと言ったが、言い換えれば両者からの敵という見方にも取れる。

バートやドゥエロは味方ではあるが、タラーク本国では処罰の対象になりかねない程の思想である。

だが、カイはにっと笑ってこう言った。


「バーカ。俺を誰だと思ってるんだ?」

「無謀な脱走者だぴょろ」

「あっさり断言するな!だ・れ・が匿ってやってるんだ、おい」


 通路内で大声をあげて、カイはギュウギュウと六号を締め付ける。


「ぴょろ〜〜!?やめるぴょろ!痛いぴょろ!」

「たく・・・いいか、俺は宇宙一のヒーローになる男だぞ。
このままあいつらに男を馬鹿にされて黙っているままだと思ったか?」

「な、何か考えがあるぴょろ?」


 カイの自信に、六号はちらりと横に視線を向ける。


「当然よ」

「何を考えているのか、ぜひ聞いてみたいな」

「それはな・・・・って!?」


 床に座ったまま自信満々にカイが答えようとした矢先、冷たい一言が通路内の雰囲気を凍えさせる。


「あーー!!いたいた!!」


 そしてもう一人の素っ頓狂な叫び声が後ろから続いて響いた。


「ロボットを探しに来たら、まさかお前まで見つかるとはな」

「もう。逃げ足が速いから探しちゃったんだよ〜、
ごめんね、メイア。手伝わせちゃって」

「私もディータ達の対応策に手づかずだった。気にしなくていい、パルフェ。
それに脱走者も捕らえる事ができたからな」


 カイが後ろを振り向くと、パイロットスーツ姿のメイアとタンクトップ姿のパルフェが歩いて来る。

二人の姿を確認したカイは露骨にため息をついた。


「くそ、何で青髪がこんな所に・・・・・お前のせいだぞ!」

「何いってるぴょろ!お前がこんな所で長々と話すのが悪いんだぴょろ!!」

「何だと!!主人のせいにするのか、こら!!」

「僕は何も悪くないぴょろ!!」


 見苦しく責任のなすりつけ合いが始まった所で、パルフェが苦笑してこうコメントした。


「二人の声が大きくてここだって分かったんだけど?」

『う・・・・・・・・』


 ぐうの音も出ないカイと六号は、冷や汗をたらして沈黙した。






















<Chapter 3 −Community life− Action7に続く>

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