VANDREAD連載「Eternal Advance」





Chapter 3 −Community life−





Action1 −現状−




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華々しい出立、苛烈なる来襲、冷酷なる対立、双流たる流れ、激烈な同意、柳留なる変化。

一日という時間の中で、驚くべき歴史の一ページが刻み込まれた。

タラーク全土をかけたイカヅチ出立から、事態がここまで激動に変化すると誰が予測できたであろうか?

男と女の母船がペークシスにより交わった融合戦艦。

生まれたばかりの新しき船は青白き輝きを発して、広大な宇宙の海を音もなく漂っていた。

カイによる活躍により未知なる敵を完全に撃破したその後、船の変化は完全に停止。

敵の襲撃も打破され危機を脱した事により、クルー達は復旧作業に専念する事ができた。

ペークシスの暴走は男にも、女にも、そして船自身にもさまざまな影響を残している様子である・・・・















「我々の母船は完全にペークシスに飲み込まれ、機能の大半が現在も停止しています」


 現状の確認と今後への打開策を検討するため、海賊達の主だった首脳陣が会議を行っている。

急速なる融合と得体の知れない敵により、落ち着いた話し合いもできなかったゆえであった。


「影響下が一番高い区域としてブリッジ、居住区、エンジンルームはほぼ全域となっています」

「やれやれ、船の生命線じゃないか・・・・」


 バイオパークを有する艦内ガーデンへせり出した形に変形したメインブリッジ。

中央の艦長席より伸びしスロープの先に位置する会議室に、一同は集まっている。

それぞれ海賊団の頭マグノ、全権を任されている副長のブザム。

そしてドレッドチームのリーダーを務める若き才能を見込まれたメイアであった。

事細かく説明するブザムの船の現状に、マグノは改めてため息をついた。


「幸いにもレジシステム、それにドレッドのプラットホームは無傷です。
現在ぺークシスによる発動した結晶体の清掃と、停止したシステムの再インストールにあたっています。
ほどなく、再起動は完了されるでしょう」


 ブザムの報告と同時に、三人の中央上にモニター画面が投影される。

映し出された映像はレジ全体をモップや箒を片手に清掃しているレジクルーの姿だった。

復旧作業に全力で取り掛かるクルー達それぞれを、マグノは頼もしく見つめる。


「一連の原因であるペークシスプラズマの増殖もピ−クに達しているようで、安定しています。
暴走によるシステムへの影響の調査、ペークシスの完全制御を行うべく、
機関部にてパルフェが作業に取り掛かっています」

「あの娘に任せておけば問題はないだろうね」


 機関クルーリーダーのパルフェの技術の腕を全面的に信用しているのか、マグノは大きく頷いた。

マグノの反応を確認したブザムはデータ出力を行い、報告を続ける。


「ブリッジの変動ですが、ガーデンに差し掛かった所で完全に動きを止めています。
可能性は未知数ですが、今後ブリッジそのものへの影響はないと思われます」

「ブリッジまでどうにかなっちまってたら、今頃は危なかった所だよ」


 そもそもブリッジは船の外面的動作そのものを行う区域であり、全体的行動の要となる。

ナビゲーション席に搭載したバートが船そのものと一体化した場合においても、

影響度からくる負担への激減、あるいは人間でいう動けなくなった場合の松葉杖的操作も可能となる。

クルー達のお頭であるマグノが中央に位置するのも、その辺りに要因があるのだ。


「では、次に・・・メイア」

「はい。我々の変形した三体のドレッドについて報告があります」


 落ち着いた様子でメイアは会議室の座席に座ったまま、マグノに視線を向ける。

カイとの合体を果たした後ディータ達により医療室で寝かされていたメイアだが、ほどなく意識が戻り、

暫しの休息に身を落ち着ける事もなく、持ち場への復帰を果たしていた。


「ペークシスプラズマの増殖により変化したドレッド三体はプラットホームに収まらなくなり、
やむなく男側の格納庫を改造して、保管しています。

「あれほどの規格変化じゃ無理ないね・・・・
あの坊やの機体は今、どうしているんだい?」


 変形したのはドレッドばかりではない。カイの蕃型もまた同じく変型を遂げている。

飛躍的バージョンアップに高性能によるポテンシャル変化と、最早単なる陸上戦用ではなくなっていた。

メイアはそこで初めて口ごもり、戸惑った様子で答える。


「・・・あの男の機体も格納庫に収容されています。
ただし搭乗口を閉じて、我々とは区分化を行っています」

「あの坊やもそうそう無茶な行動はとらないだろう」


 搭乗口を閉めるという事は、完全にシャットアウトした状態になっているという事である。

メイアの突きつめたやり方に、マグノは苦笑してそう言った。

だが、メイアは断固として良しとはしなかった。


「失礼ですが、お頭はあの男を甘く見すぎています。
捕虜という立場に置いてはいますが、そのまま大人しくしているとは思えません。
もう少し徹底したやり方でいくべきではないでしょうか?」


 メイアは合体をした時の経緯やカイのその後の行動については聞かされてはいない。

だが自分が不覚にも意識を失っていた間に、カイが敵を撃破した事がメイアにしこりとなって残っていた。

結果的に他人に助けられた事に、憎むべき男に助けられた事に、彼女は自尊心を傷つけられたのだ。

厳しい瞳で進言するメイアに、マグノは頭としての威厳を漂わせて言った。


「男達に関してはこれからじっくり検討する事にするよ。報告の続きを聞かせておくれ」

「・・・出過ぎた意見でした、申し訳ありません。
ドレッドを収容するべく格納庫を改造したのですが、その際に分かった事があります」


 メイアはモニタリングを操作して、格納庫システムの一部を表示する。

マグノは映像を見つめ、ほうっと驚いた顔をする。


「我々がターゲットとして強襲をかけたこの船ですが、長い間システムを使用していなかったようです。
回路やケーブルが枯れ落ちており、活動させるには時間がかかりそうです」

 イカヅチ旧艦区と名づけられたタラークの母船の半核は、

地球からの移民船の名残を改造した形でドッキングされていたものである。

どうやら機関部のみだけにあらず、ほぼ大半のコンピューターはほったらかしにされていたようだ。

映し出されている映像からもクリスタルと絡み合い、白く剥がれ落ちているケーブル類が見て取れた。

これはもう故障レベルではなく、寿命レベルに達している。

ペークシスの暴走による影響と重ね合わせても、復旧にはままならない時間と労力がかかるであろう。

幸先の悪さに手元に持つ小さな団扇を扇ぎながら、マグノは疲労した表情を浮かべる。


「まだまだ立て直すには時間がかかりそうだね・・・」

「はい。それに深刻な問題が残されています」


 沈痛な顔をするブザムが珍しく一瞬躊躇った後、手元のシステムスイッチをオンにする。

すると室内が暗くなり、中央のモニターが急速に立体化されていく。

艦内の様子をモニタリングする通信映像から、データを図式化するホログラムに変換されたのだ。


「我々の位置の観測を行い、驚くべき事が明らかになりました。これをご覧ください」


 マグノとメイアの目の前でホログラムは色づき形作られ、黄緑色の天球儀に変わる。


「現在我々はメジェール宙域を離れ、まったく別の星系に位置しています。
その距離は・・・・時間にしておよそ二百七十日の距離です」


 宇宙への科学の進歩はタラーク、メジェール共に確実に進み続けている。

光年距離を凌駕し、光の到達点までの速度を求めて、テクノロジーの開発は止まる事を知らない。

ブザムの言葉はそのような科学技術を駆使した船の最高速度を持ってしても、

メジェールまで一年足らずの時間がかかる距離にまで転移させられてしまった事を意味していた。

さしものメイアもこれには言葉が出なかった・・・・・・・


「二百七十日とはまた遥か遠くまで運ばれたんだね、アタシらは。
まったくどうしてこんな事になったのやら・・・・・」


 断続的に起こるこれまでにない超常的現象の連続に、頭を痛めるマグノだった。

クルー全てに責任がかかっている彼女である。無理もなかった。

何とか前向きな手がかりを求め、マグノはメイアに視線を向ける。


「で、坊やが倒した敵さんの情報は?」


 数時間前、苛烈な攻撃を仕掛けてきた敵の数々。

タラークでもメジェールでもないまったく未知なる謎の来訪者に、船の人間全てが度肝をぬかれたのだ。

もっとも怖いもの知らずで立ち向かった人間も約一名いたが。

報告を促されたメイアは、どこかいい難そうに答える。


「は、はい・・・人手不足でして、志願者を調査に向かわせました・・・」

「志願者?」


 カイが破壊した敵の宇宙の虚空に残る残存物質の調査。

それははっきりと言うのであれば、危険度が高い仕事であった。

何しろどのような事が起きるか不明であり、まったく安全が保障されないからである。

そんな仕事に志願者である事に不思議を感じて、マグノは眉をひそめた。
















「すごい、すごーい!!全然見た事がないお星様ばっかり!!」


 青緑色に輝くボディラインを艶やかに彩らせて、一体のドレッドがスピード速く宇宙を駆け巡っていた。

ペークシスにより改良されたSPドレッド、ディータ機である。

コックピット内では可憐とも言える容貌を喜びでいっぱいにして、ディータがうきうき気分で操縦していた。

言うまでもなく、彼女こそ今回の調査の志願者であった。


「〜♪宇宙人ってどんな中身をしているだろうな〜♪
宇宙人さんと同じなのかな〜?」


 色々な想像が脳裏を巡っているのか、どこかうっとりした様子で独り言を呟く。

UFОマニアである彼女がジュラやバーネットから敬遠される理由の一つに、彼女のこうした態度にあった。

危険調査や重大な仕事でも、自分の趣味や好奇心を優先してしまう悪い癖があるのだ。

実際、自分のドレッドにも多数の宇宙人グッズが飾られている。

若い時分には往々としてありがちな傾向だが、ディータの場合行動力もあるので問題となっている。

今回の任務も渋るメイアにほぼ無理やり頼み込んだのだ。

だが今回の仕事においての彼女のはりきりには、それ相応の理由があった。


「宇宙人さん、すごくかっこよかったもんね・・・・・
やっぱり宇宙人ってすごいんだ〜
ヒーローをめざしているんだもんね・・・・」


 彼女の瞳の奥に映りし姿はキューブ達を蹴散らしていくカイの雄姿だった。

長き間の好奇心と願望により作り出された彼女なりの宇宙人の偶像とカイは完全に一致していた。

告白している時の力強い言葉の響き、戦う時の恐れを知らぬ真っ向からの突撃。

ディータの中で、カイは本当の英雄となりつつあった。

ゆえに悪と認識していた敵であれ、宇宙人である限り彼女が興味を持つのも仕方なき事かもしれない。


「でも宇宙人さん、ちょっとずるいよね。リーダーとあんなに仲良くするなんて・・・・
ディータも一緒にお船に乗りたいな・・・・」


 カイとメイアが合体した瞬間を思い出して、ディータは途端にシュンとした顔になる。

乙女心とは複雑なもので再三カイが否定したのにも関わらず、当人達は仲がいいと思い違いをしていた。


「まったく・・・・喜んだり、悲しんだり、忙しい娘だね」

「あ、ガスコさん!?」


 コックピット内の操縦席の後ろの補助席に座りながら、ガスコーニュは面白そうな笑みを浮かべていた。

今回ディータのみ仕事を任せるのに不安を感じたメイアが、

手の離せない自分に代わって、ガスコーニュにディータのサポートを依頼したのだ。

まだまだ新人のディータは信頼度は薄いようだ。


「ほらほら、しっかり前を見て運転する。何が起こるか分からないよ」

「あ、はい!一直線に宇宙人の所へ行きますから、しっかり掴まってて下さいね!」

「いつもながら元気だね、あんたは・・・・」


 苦笑するガスコーニュに天真爛漫な笑顔を見せて、ディータはさらなる加速を開始する。

一目散に本体であったピロシキの残骸を目指して。















 それぞれに奮戦しているその頃、メインブリッジ内も混沌としていた。

大まかなシステムの復旧は完了したものの、海賊船からのデータ移送する作業がまだ残っているのだ。

二つの船が融合された際にブリッジ内部のデータはごちゃごちゃした上に、

男側のシステムは完全に手づかずのままにされていたために、使いこなせる様にするのに時間がかかる。


「どう?そっちのシステムは・・・」

 何時間も席に座ったまま画面をのぞきつつ、アマローネはオペレーター席のエズラに声をかける。

エズラは彼女なりに作業をこなし、一刻も早い復旧を目指していた。


「こっちは大丈夫。もう少しでバックアップデータは完全にインストールできるわ」

「よかった、これで何とか目処が立ちそうね」


 エズラの頼もしい返事に、額に汗をうかべたままアマローネはほっとしたように息をつく。

一方隣でコンソールを操作していたベルヴェデールは耐えきれなくなった様に叫んだ。


「もう!どうしてこんなに暑いのよ!!
頭がボーとして、作業に身が入らないじゃない!」


 ブリッジ内は、現在空気に不純物が混じったような重苦しい熱気が渦巻いていた。

暑苦しいブリッジクルーの制服の襟元に広げ、ベルヴェデールは豊満な肢体を覗かせる胸元に、

手元のデータープレートを扇いで風を送り込む。

とはいえ焼け石に水に過ぎず、ベルヴェデールは通信回線を開いた。


『ちょっと何とかならないの、この暑さ!』


 通信回線先にリンクされているのは機関部であった。















『二十八度もあるのよ!これじゃあ作業にならないわ。
エアコンとかつけられないの?』


 通信モニターに映し出されるベルヴェデールの不満顔に、不精顔で機関部クルーの一人が答えた。


『無理を言わないでよ!こっちは三十度超えているのよ!』


 ブリッジとは違って、機関室には大勢が作業に取り掛かっているのだから無理もないかもしれない。

現在機関部内ではパルフェの指示の元、船全体の要となる機関システムの復旧を行っていた。

先程のベルヴェデールの抗議にもあるように、船内部は空調すらままならない状態なのだ。

すべてのシステムをリンクさせ制御可能とするには、女側の船を復旧させても意味がない。

むしろペークシスが存在する男側のシステムを完全制御しなければならないのだ。

だがパルフェが点検している機関部の状態は目を覆わんばかりであった。


「あちゃ〜、古いシステム・・・・これ、プロトタイプじゃないの!?』


 フローターリフトに乗り込んで防護服に身を包んでいるパルフェが、

旧艦区の機関部に置き去りにされていたペークシスを見るなり、困ったように額を抑える。

暴走によりむき出しとなっていながらも、まるで何事もなかったように静かに青白く輝くペークシス。

それは彼女の濃密な知識の源泉を探ってみても、明らかにされていない程の古いシステムだった。

パルフェは眼鏡の奥の瞳を力なく揺らし、しょげた声を上げる。


『これじゃあラジエーターが吹き飛ぶのも無理ないわ・・・・組替えるのに時間がかかりそう・・・・
そっちは何とかなりそう?』


 口元のインカムを起動させながら、パルフェは機関部の作業室へ応答を開始する。

するとインカムの向こう側より、激しい抵抗の叫びが上がった。


「何するぴょろぉぉーーー!!!離すぴょろ、苦しいぴょろ!!」


 控え室の作業台の上で、六号が作業員に抑えられようとしているのを必死で抵抗していた。

合体後搭乗を降ろされた六号はカイが監房へ連れて行かれるのを見送って、

そのままぶらぶらと艦内をうろつき回っていた。

そこへ機関部クルー総勢が彼(?)を取り囲み、機関部作業室まで連行させられたのだ。

六号にしてみればたまったものではなかった。


「どうするつまりだぴょろ!さては分解して、バラバラにするつもりだぴょろね!!
人殺し、誘拐魔〜〜〜!!」

「人聞きの悪いことを言わないでしょ!!ちょっとデータがほしいだけよ!」


 言いたい放題言って暴れる六号を押さえつけながら、機関部クルーの一人が叫んだ。

彼女の言っている事が事実で、男の船のシステムを完全に復旧させる上で、

ナギゲーションロボである六号のデータが必要なのだ。

だがペークシスの影響か自意識を持ってしまった彼に、理屈は通用しない。


「嘘だぴょろ!!そういってスクラップにするつもりだぴょろ!!
そんな事はさせないぴょろ〜〜〜!!」


 手足をばたばた動かして機関部クルーの戒めを解くと、一目散に作業室から逃げ出していく六号。

慌てたのが機関部クル−だ。


「あっ!?ちょっと待ちなさいよ!!」

「嫌だぴょろ〜〜〜〜〜〜〜!!!」


 クル−の静止を聞き入れず、六号はそのまま空中を加速し通路の奥へと消えていった・・・・・・
























<Chapter 3 −Community life− Action2に続く>

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