VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 10 -Christmas that becomes it faintly-






Action27 −共和−





 クリスマスパーティ開演による主催者の挨拶。

良くも悪くも艦内を激変させたその内容は、主催者の思惑を超えて変化を見せつける。

男女共同生活も三ヶ月以上の月日を隔てて、男と女の関係は今微妙な時期を迎えていた。

戦場における共同戦線のみならず、艦内の業務にまで影響を及ぼし始めている。

特にそれが騒動の根本とも言うべきカイから発した挨拶である限り、賛否は当然起こりうる。

内々で勃発した反対派の活動や、クルー内で噂されるカイの敵視が顕著になってきていた。

ここで悩みとなるのは、実際の規模である。

つまりカイがどれだけ受け入れられているか、どれだけ否定されているか。

誰が賛成派で、誰が反対派か。

具体的な名前や所属名を突き止めるのは困難にしても、クリスマス活動を行う上で是が非とも知っておきたい事柄だった。


「――なので、アンケートを実施したルカさんです」

「行動早いな!?」


 カイの自室の隣にあるシークレット・ルーム。

賛成派の主要人が集まって、恒例になりつつある会議を開いていた。

クリスマス開催挨拶から二日目の事である。


「偉い?」

「偉いって言えば偉いけど――お前だと、何故か誉める気がしないのは何故だろうな」

「わーい、誉められちゃった」

「誉めてねえ! 断じて誉めてない!」

「どれだけの数を相手にやったの?」


 相変わらずのやり取りを黙殺して、ミカが肝心の質問をする。

アンケート集計は当たり前だが、数が大きければ大きいほどリアリティが増す。

何処から持ってきたのか、お菓子を摘んでルカは事も無げに言った。


「全員」

「全員!? 男も女?」

「うん、全員」

「よ、よく副長が了承したわね・・・・・・」


 クリスマス挨拶の承認でも、イベントチーフの権限を用いてもかなりてこずったのだ。

無用な混乱を招く、艦内の秩序を乱す危険性がある――

様々な可能性を一つ一つ論議して、やっと納得して貰った経緯を持つミカである。

その上アンケートを行って、艦内の動向を探る真似をすれば干渉されてしまう可能性もあった。

ミカとしては、出来る限りカイに主催を取ってもらいたいのだ。

強大な発言権を持つ副長が介入すると、自主性が無くなってしまう。

ミカの心配を、ルカが淡々とした顔で無駄にした。


「大丈夫」

「へえ、自信あるんだ」

「カイちゃんに聞いて下さいって言った」

「駄目じゃない!? 絶対カイに苦情が――」


ピーピーピー


 ――カイの懐から不吉な着信音。

カイは引き攣った顔で、ルカを見やる。


「・・・ここって、あらゆる通信回線が遮断されるんじゃなかったっか?」

「カイちゃん、愛されてるね」

「質問に答えろ!」

「出ないと、怒られるよ」

「お前はぁぁぁぁっ!」


 反対派に監視されている手前、クリスマス活動の詳細は極秘で話し合う必要がある。

その為に作られた部屋なのに、一部の通信ラインは平気らしい。

通信が途絶えると連絡の取り合いが困難になるのでありがたいと言えばそうだが、どういうシステムなのか気になって仕方がない。

渋々、カイはメイアに渡された通信機をオンにする。


「もしもし」

『カイか。至急、お前に聞きたい事がある』


 ――予想通りの人物だが、嬉しくも何ともない。

通信画面に移る愛想も何もない厳しい表情に、カイは愛想笑いで応える。


「な、何だよ?」

『ルカ・エネルベーラより、お頭と私にアンケートが配られた。
全艦に伝わっていると聞いたが、本当か?』

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 カイは通信機から顔を離し、ルカに目で訴える。


"お前、ばあさんと副長にまで渡したのか!?"

"公平がモットーなのです"

"答えられる訳ねえだろ!"


 ブザムやマグノもさぞ困ったに違いない。

無記名なのはアンケートの常だが、それでも男女のクリスマスに賛同するのは憚れる。

かといって反対も出来ず、渡された本人達は反応に苦慮しただろう。

頭痛がする思いで、通信機を取る。


「男と女のクリスマスを行う上で、皆の反応を聞いておきたかったからさ。
ほら、ちゃんと把握していれば無用な混乱も起きないだろう?」

『・・・言いたい事は分かるが、このアンケートが混乱の元になる可能性もある。
お前も知っての通り、例の放送で艦内は動揺に揺れている。
公然の調査は、傲慢と見る人間も出るぞ』


 主催者が自分達を数分けしようとしている――

穿った見解だが、決して0ではない。

カイは必死で考えて意見する。


「俺の評価が悪いのは今更だろ。
賛成・反対は男女クリスマスを開催すると言った時点で、明確に出ている筈だ。
名前さえ書かせなければ、多分平気で投票してくれると思うぜ」


 悲観的な見方に、楽観的な物言いで対処する。

あり得ると言うのなら、どちらでもあり得るのだ。

ブザムの危惧が現実になるかもしれなければ、杞憂で終わるかもしれない。

両者の考え方は、所詮先行きを見なければ答えは出ない。

だが、何かあってからでは遅い。

ブザムは表情を変えないまま、言った。


『お前の考えは分かった。追求はしない。
ただ、私やお頭はこのアンケートに答える事は出来ない。
アンケートは速やかに回収し、集計結果は機密に取り扱え。
以上だ』

「分かった、助かる」


 秘密裏にだが、黙認はしてくれた。

その事実のみに感謝をし、カイは礼を言う。

通信を切る前に、ブザムは最後に尋ねる。


『――大丈夫か?』


 たった、一言。

温かさも冷たさもない、質問。

それはクルーとしてではなく――ブザム個人が、一人の個人を思うがゆえに。

カイは小さく頷いた。


「一人じゃねえからな」


 簡単にして、明快。

たった一言でも、その中身は清々しくて自信に満ちている。

ブザムは何も言わず、そのまま通信を切った。

カイは黙って通信機をしまい、ルカに目をやる。


「アンケート、終わったら全部廃却しろって。
集計結果も他にばれないように処分だとよ」

「任せて。ルカの日記に書いとく」

「お前の日記も処分してやろうか!」

「・・・それで。アンケートの結果を聞かせて欲しいんだけど?」


 恒例のやり取りを華麗に無視して、ジュラは問いただす。

問題は片付いたので、カイも着席して審議の結果を待った。

心臓の鼓動が高鳴る。

現状マグノ海賊団で、カイがどれほど受け入れられているか?

しいては――男が女に、どれだけ認められているかが分かる。

今まで散々矢面に立たされていた者として、今回の結果は是非聞いておきたかった。


(ま、最悪に近いだろうけど)


 今までの冷遇を思い出して、カイはぼんやりとそう思う。

表立った非難された事は少ないが、陰口は叩かれたりもしてきた。

セキュリティ0が明確にそれを示している。

艦内の評価が高ければドゥエロまでとは言わないが、バートくらいには権限は貰えているだろう。

マグノにはマグノの考えもあったのだと思うが、事実は揺るがない。

反対派に冷凍庫で閉じ込められるという事件にも遭ったのだ。

期待は出来ない。

皆が注目する中、ルカは話す。


「クリスマスに男が参加するのは賛成か、反対か?


賛成:63名
反対:52名
無回答:有


男が主催に賛成か、反対か?


賛成:67名
反対:58名
無回答:有


賛成に投票した人へ――何故そう思いますか?


・面白そう
・仲間外れにしなくてもいい
・カイはよくやってると思う
・害はない
・しっかり監視すればいい
・お頭が参加させるので、反対は無意味


反対に投票した人へ――何故そう思いますか?


・男が参加なんて嫌
・無茶苦茶にされそう
・邪魔して欲しくない
・カイはいいけど、他が問題
・クリスマスを知らないって言ってる時点で難あり
・カイがちゃんとしてくれるならいいけど、不安なので投票


――こんな感じ」


「・・・・・・」


 無記名は非協力か、アンケートに警戒を見せている。

もしくは男女に囚われていない中立派。

それ以外の女性達が提示した結果が、これだった。

一同、無言。

このアンケートに何の作為も水増しもないとすれば――

約五割が――カイを認めている。

内分けすると、理由は様々だろう。

受け入れたいけど不安、もしくは反対しているが功績を考えての黙認。

クリスマスが失敗すれば、この賛成票も傾くだろう。

反対寄りの賛成、賛成寄りの反対。

数だけ注視するのは危険である。

艦内の雰囲気に流されている者もいれば、明確な意思を持っていない者もいる。

しかし理由はどうあれ――変化は目の前に起こりつつある。

今までの努力は、確実に実っている。

カイは愕然としながらも、沸き立つ感情に身を奮わせた。

自分を見てくれる人はいる。

目に見えていないが、応援してくれる人はいる。

これまでの努力、そしてこれからの努力でまだまだ変えられる。

現状は五分五分。

艦内に居る人達に、協力と理解を求めなければいけない。

期間も短く、準備を行うには今から必死にならなければいけない。

反対派の動向に気を配り、反対票を提示した人達の信頼を勝ち得る必要もある。

苦しい戦いになる。

でも、決して無駄にはならないだろう。

あの挨拶は――マグノ海賊団への決意表明でもあった。


『同じ世界には、住めないわ』


 分かり合えなかった女性。

きっと、あの放送も聞いていただろう。

バーネットの心中を考えると、苦い気持ちになる。

否定された変化。

変化を望む者も居る。

変化を望まない者も、また居る。

意思を押し通すことの反発と、押し通す事で分かり合える可能性。

出来ないかもしれない、でも出来るかも知れない。


(・・・俺は)


 生きている限り、心がある限り好き嫌いは出てくる。

博愛の精神を持てる人間なんて、この世に殆ど居ない。

未来永劫、分かり合えない人間も出てくる。

だが――諦めない。

この船の半分の女性が今、見てくれている。

その気持ちを無駄に出来ない。


(俺は・・・・・・諦めないぜ、黒髪。お前とも、きっと――)


 これは自分の我侭。

身勝手な気持ちだ。

本人が嫌がっているのだから。


それでも俺は――お前と・・・・・・


 交え合った唇。

あの冷たさに暖かな気持ちを乗せて、戦う事への決意をカイは今新たにした。




























































<to be continued>







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