VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 10 -Christmas that becomes it faintly-






Action22 −激務−










 冷凍庫事件はクルー達の噂程度で留まり、内々に処理される。

釈放されたカイは真犯人探しに乗り――出さず、クリスマスの準備に取り掛かる。

まず釈放された日の夜、賛成派の主要陣が集まる。

議題は言わずもがな、反対派への対策。

集まった一同に心配の目を向けられたが、カイは快活に笑って気にしてないと発言。

穏和な対応に望んだが、他の皆はあまりいい顔はしない。

特にジュラは額に巻かれた包帯を見て激怒し、全面戦争を持ちかけた。

何でお前が怒るんだ、と軽く尋ねるカイは頬に桜色の手形をつける羽目になる。

結局その日は場の空気を読む大切さをキッチンのセレナに諭されて終わり、連日連夜討論となる。

反対派は潰すべきだ、過激派。

反対派は様子を見よう、中立派。

反対派は放っておこう、穏健派。

意見は三つに分かれ、それぞれの長所と短所を真剣に話し合う。

結論が出ないまま数日が過ぎたが、カイはこう締めくくった。


「クリスマスを成功させる事だけ考えよう」


   カイは反対派を嘗めてはいない。

味方だと思っていた優秀な面々の半分が、あっちの陣営にいる。

こうして意見が縺れて足踏みするのも、敵の計算内だ。

意識すればするほど、クリスマスに向ける気持ちが霞んでいく。

敵の思う壺だと話すカイに、ジュラは渋々矛先を収めた。

そして、いよいよ本格的に取り掛かる事となった。

期限は約一ヶ月。

これまでの歴史を一新する男女のクリスマス。

通常通り行える筈も無く、準備期間と会場の設営に乗り出さなければいけない。

まず、参加者の確認。

カイの目標は全員参加。

反対派結成でますます道は遠のいたが、宇宙一の英雄を目指す男に諦めは無い。

当日病欠等の理由で休む者は除いて、全員参加を促すには手立てを考える必要がある。

今年のクリスマスには男三名が参加するのだ。

反対派もそうだが、他のクルー達も参加が怪しい者は沢山いる。

女性だけ――マグノ海賊団だけのパーティだから、皆仲間内で楽しむ事が出来たのだ。

余所者に入ってきて欲しくない、集団生活を営む者達からすれば当然の心理だった。



「ドクターやあの考え無しはともかく、カイって好き嫌いが真っ二つなのよ。
今のままじゃ、半分も参加は見込めないと思う」



 イベントのミカ・オーセンティックも、その辺は悩みの種だった。

他の皆も歯痒い思いを胸に抱えている。

カイを好きな者からすれば嫌いな人間の心が理解出来ず、嫌いな者からすれば好きな理由が分からない。



どうしてカイの良さが分からないの?
どうして男なんて好きになったの?



両者の気持ちは、全く別のベクトルを向いている。

思えば男女の諍いを少しでも無くす為のイベントなのに、その諍いが足を引っ張っている。

皮肉な現実。

打破すべき問題。

パーティを成功させるには、女性達の参加が大切だ。

ベルヴェデールは少し考え込んだ様子で話す。


「カイって口悪いし、態度でかいし、単細胞なとこあるから」

「言いたい放題だな、お前」


 不貞腐れるが、内心カイも自覚はしている。

戦いに一度や二度勝っただけでいい気になり、不遜な態度を疎まれて頬を叩かれた事もある。

整ったブロンドとジュラに匹敵する抜群のスタイルが眩しい、この目の前の女性との経験がそうだ。

ベルヴェデールとは、あの時からの付き合いなのである。


「もうちょっと心掛けて見るべきじゃない?
ただでさえ、男は汚らしい生き物ってイメージあるんだから」

「俺に媚び売れってのか?」

「そういう突っ張った態度が、嫌われる原因なのよ。
ドクターを見なさいよ。
医療に取り組んで、誰であろうと丁寧に治療するから、人望が出るのよ。
私、ドクターの悪い評判なんて聞いたこと無いわよ」


 確かにドゥエロが敬遠されている光景を見た事が無い。

艦内を毎日走り回っているがてら女達の話を耳にするが、ドゥエロの悪口なんて誰も言っていない。

保有するセキュリティレベルの高さは伊達ではない。

口では男と女について色々と語るが、差別的な意識は彼は持ってはいない。

人体の構造の違いとして割り切り、その性別の存在の理由と定義に興味を抱いている。

相手の気持ちがどうだの、ドゥエロには関係無いのだろう。

好き嫌いに拘らず、職務に徹する。

ドゥエロはまぎれもないプロであった。

メジェール・タラークの差別意識や選民思想が根幹にあったとしても、丁寧な姿勢を向け続ける相手を嫌い続けるのは難しい。

カイのように感情的になったり、積極的に関与しようとするから、問題が発生してしまうのだ。

毎日毅然とした態度を取っていれば嫌われずにすむ、ベルヴェデールの主張は一理あった。

しかしながら、


「でもよ、例えば今日から俺が改善したとして――クリスマスまでに間に合うのか?」

「う・・・・・・うーん、ど、どうかな」


 残り一ヶ月。

今日今からカイが女性への態度を改めたとしても、突然好き嫌いは反転はしないだろう。

その程度で男女関係が変化するのなら、歴史から差別が生まれたりはしない。

タラーク・メジェールの激しい国家間の対立も無くなるだろう。

今まで持っているカイへのイメージは、そう簡単に彼女達の頭から消えない。

まして幼少からの男への劣悪な存在感は、泥のようにこびり付いて離さない。

時間があまりにも足りなさ過ぎる。


「あのー」

「ん? 何か意見ある、セレナさん」


 控えめ手を挙げる仕草が可愛らしい。

注目されるのに慣れていないのか、少し頬が上気していた。


「カイさんは今のままでいいと思いますよ」

「え・・・・・・?」

「勿論、自分を見つめ直してより良い人間になろうとする意識は大切だと思います。
ですが女の人に好かれようと、態度まで変えてしまうのはどうでしょう?
カイさんじゃないみたいで、困ります」

「セレナさん・・・・・・」

「思わず食べたくなるくらい、今の可愛いカイさんがわたしは好きですから」


 優しげに微笑むセレナ。

年上を感じさせるその笑みに、ベルヴェデールは恐縮し、カイは少し引き攣っている。

素直な好意に戸惑いながらも、食べるという表現がかなり気になっているのだ。


「勘違いしないで下さいね。ベルさんのご意見も尊重はしています。
ベルさんはカイさんが好きだから、あえて厳しく言ったんですよね?」

「ええっ!? わ、わたしは別にカイなんか――!」

「お嫌いなんですか?」

「あ、う、その・・・・・・」

「お好きなんですね、やっぱり」

「す・・・・・・好きでも嫌いでもないです! と、友達なだけです!」

「まあ、真っ赤になって・・・・・・可愛い」

「ち、チーフ!」


 にこにこ笑顔のセレナに、ベルヴェデールは桜色に染まった顔でわあわあ言っている。

話題の中心のカイはどういう反応を取ればいいのか分からず、右往左往していた。

女へのタラークの教えは既に無く、別の意味で意識しつつある女にカイは胸の動悸を抑えられない。

特にベルヴェデールは同年代の美人で、普段カイにはどこか冷たい態度を取っている。

性格も強いそんな彼女が顔を赤らめてもじもじする姿は、女としてのもう一つの一面を感じて意識してしまう。


「――何時までも見つめ合ってないで、話し進めてくれない?」

「わ、分かってるよ!」


 極寒温度のジュラの指摘に、カイは態度を改める。

セレナの暖かい視線を必死で逸らして、議題を進めた。


「俺の改善提案はとりあえず保留するとして、もう少し男女関係について話し合おう。
俺も常日頃気になっていたんだ。

そもそもさ――俺一人が改善して何とかなるのか、これ?」

「・・・・・・」

「女達は口を揃えて俺が悪いって言う。
あいつ等には見直すべき点の一つや二つ存在しないのかな?
そりゃ、お互いの気持ちの違いはある。
俺はあいつらと仲良くしたい、あいつらは俺と仲良くしたくない。
この根本をどうにかしない限り、一生分かり合う事は無いだろうけど」


 認識の相違、それが問題である。

彼女達としては、カイと歩み寄る気は一切無いのだ。

したがって反省もしないし、改善もしない。

今のまま、マグノ海賊団として機能していくことを望んでいる。

仲良くしたいと思うのは、率直に言ってカイの願望でしかない。

クリスマスに男を参加させるこの企画も、イベントのミカが独断で決めた事でしかない。

関係の改善は、お互いが見つめあう事が第一だ。

カイの一方通行では、この先一生変化はあり得ない。


「・・・・・・」


 黙りこむ一同。

カイに協力的な人達ばかりだが、この意識のすれ違いは誰もが感じている。

出会って数ヶ月。

カイの人格について疑念や嫌悪は微塵も無いが、きちんと理解出来たのはカイを知ろうとしたからだ。

一方的に見せられるのではなく、見ようとした彼女達の目。

最初は例え嫌っていても、目を逸らす事はしなかった彼女達の人格が偉大だった。

結局、偏見を改善出来るのは己自身がどう意識を向けるかが肝心となる。

カイの良さを高らかに叫んでも、心に届かなければ何の意味も無い。

そしてその心に鍵がつけられている限り――その鍵を開けてくれない限り、進展は望めない。

反対派はその最たる面々だ。

悩める一同。

初っ端からハードになりそうな任務にに、クリーニングのルカ・エネルベーラが手を挙げる。


「男女の垣根を取除くべき」

「俺が聞きたいのは、どうやってそうするかなんだよ」

「どうやって、かな?」

「意見が無いなら手を挙げるな!」

「ほんとだよ、会話の流れ読んでよ」

「俺がお前の魂にその言葉を問いかけたいわ!」

「ふふふ、カイちゃんの真っ黒な魂にルカの真っ白な魂は見えないよ」

「嘘くせー魂だな、おい!」


 怒鳴り散らして――室内の空気が変化するのが分かった。

カイとルカのやり取りに、一同の重い雰囲気が消失している。

はっとしてルカを見ると・・・・・・ピースサインを出していた。

脇役を望む彼女だが、その支えはとても頼もしい。


「皆に見せたいものがあるの」


 場を取り持った後、ルカは得意げにそう言った。





















































<to be continued>







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