VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 9 -A beautiful female pirate-






Action10 −逸脱−




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現在、惑星外宙域に潜んでいる敵の数は少ない。

マグノ海賊団ドレッドチームの活躍で、キューブタイプの数はその大半を失った。

メイアが先導切ってフォーメーションを指揮し、ディータ達が敵を蹴散らしていく。

戦況は自然と変化を見せて、主力同士の対決へと移り変わっていく。

敵新兵器のユリ型と味方新兵器のヴァンドレッド・ジュラへと―――

カイ機とジュラ機の合体による変貌で一時停止していたユリ型も、現況を吟味してか再活動を行う。

禍々しい花弁を開き、深遠な闇を内包する穴がその姿を現した。


「俺達を引きずり込むつもりだな。悪食な奴だぜ」

「あら、そう?
このヴァンドレッド・ジュラに目をつけたんだから、趣味はいいと思うけど」


 顔を拭き取ってもらった事もあって、カイも余裕を取り戻していた。

怪我の痛みも消えて、機体は新しい力を有している。

その上敵の能力も判明して、反撃も充分可能だった。


「今回の敵さんは機体を飲み込む機能がある。
自分でくらって分かったが、あの渦に巻き込まれたら相当やばいぜ」


 抵抗はしたが、力で対抗するのは困難だとカイは見ている。

皮膚が圧迫され、筋肉が痙攣し、神経が千切れんばかりに吸い込む敵の力。

ヴァンドレッド・ジュラがどのような機能を持っているかは謎だが、渦に引き込まれれば危ない。

ジュラは一考し、長い髪をかき上げて言った。


「なら、話は簡単じゃない。やられる前にやるのよ!」

「同感。んじゃあいくか!」


 二人は互いに一瞥し合い、意思の統一に笑みを浮かべる。

そのまま手元の操縦桿に手を伸ばして―――


「・・・・あれ?操縦桿がねえ」

「・・・・こ、こっちにもないわ」


 半ば愕然と、二人は手元に視線を落として呟いた。

一旦危機を乗り越えて浮かれていた二人も、ここへ来て現状を認識する。

ヴァンドレッド・ディータとヴァンドレッド・メイアには、初めから既存の操作形式だった。

ヴァンドレッド・ディータは操作パネル、ヴァンドレッド・メイアは操作ポールである。

操縦法も至極簡単で、手を置いて命じれば操縦者の意のままに機体を動かさせたのだ。

度重なる危険を乗り越えられたは、ひとえに簡易な操縦さにあったとも言える。

二機を通してカイはヴァンドレッド・ジュラもそうだと踏んでいたが、どうやらとんだ予想違いだったようだ。


「ちょっと見て!?これ、タッチパネルよ」

「たっちぱねる?何だ、それ」

「何で知らないのよ!あんた、本当にタラークのパイロットなの!?」

「違げえよ!俺は元は―――あ、そっか。
話してなかったな、そういえば」


 考えてみれば、ジュラには何も話していない。

タラークでの自分の境遇も、イカヅチへと乗り込んだ経緯も―――

記憶喪失と三等民での不遇は話した気はするが、どれも全て曖昧だった。

ガスコーニュやディータにはもっと詳しく話したが、似たり寄ったりだ。

別に隠しておく事でもなかったのだが、何しろ今までが今までである。

話す機会もなければ、仲良く接する場もなかった。

この場で説明してもいいが、敵は思いっきり目の前に居る。


「い、いいから説明してくれ。タッチパネルってこのボタンの事か?」

「・・そうよ。ボタンの一つ一つに機能があるの。
シートの横脇にレバーが設置されてるでしょ?機体を動かすのはそれ。
攻撃やその他アクションを起こすのが、このボタンよ」

「なーる、ボタンを押せばいいだけか。
簡単なんだな」

「気軽に言わないでよ!
・・・どのボタンが何か、あんた分かるの?」

「ぐ・・・・」


 コックピットには中央にテーブルがあり、カイとジュラは向かい合う形でシートに座っている。

テーブルの上にはモニターとなる大きな球形を模したモニター、その下にボタンがある。

ボタンは色分けされていて、区別がつくように判別されていた。

その設計そのものはありがたいと言えるが、出来るならその親切さに上乗せして説明書も付けておいて欲しかった。

カイは切実にそう願い、頭を抱える。


「どうするのよ!?それが何か全然分からないわ!」

「どうするって言われてもな・・・・うおっ!?」


 途端に機体が大幅に揺れる。

上下に揺さぶられる感覚にジュラはキャっと悲鳴を上げ、カイは険しい顔でクリスタル・ポールを見つめる。

球の形をしたモニターは外部状況を正確に把握しており、敵影確認とされている。

大きな口を開けて、オレンジ色の光を放つユリ型―――

丸ごと飲み込もうとする貪欲さが、如実に表れている。

最早一刻の猶予もなかった。


「お前、操縦。俺、攻撃」

「は・・・?いきなり何―――」


 きょとんとするジュラに、カイはいきり立って叫んだ。


「俺が攻撃引き受けるから、操縦は全部任せるって言ってるんだ。
急いで回避!仕掛けてくるぞ、あいつ!?」

「何よ、それ!
ああ、もう・・・・ちょっとはゆとりを持てないの!?」


 口では不平不満を言いながらも、ジュラは横脇のレバーを握る。

クルスタル・ポールは360度展開されるマルチスクリーンとなって、機体周辺を網羅する。

90度方向より見えるユリ型が、虚ろな暗闇に反するオレンジ色の光をこちらに向けているのが見える。

目を見開いてジュラがレバーを傾けるのと、ユリ型が光を放つのはほぼ同時だった。

ヴァンドレッド・ジュラは急速反転し、光の帯は機体のすぐ右隣を通り抜けていく。

ほぼ咄嗟だったが、お陰でヴァンドレッド・ジュラは直撃をぎりぎり逃れた。

ユリ型は放射した牽引ビームを停止させようとするが、どうしても一瞬では止められない。

引力は強力であるが、対象者に常に光を浴びせ続けなければいけない為である。


「もらった!くらえ!!」


 攻撃と防御の合い間―――

停止と動作の刹那を狙って、カイは手元の黄色のパネルを一つ押した。

命令は忠実に行われ、新型合体兵器は攻撃を開始する。


「―――って、おーい!?違う、違う!!」

「きゃっ!?ちょ、ちょっと―――しっかりしなさいよ!」


 突如起こった激しい機体の振動に、堪らず二人は仰け反った。

新しく装着された前面のアームが稼動したのである。

存分に蓄えられた力を縦横無尽に振りかざし、その鋭角なるハサミで敵を斬り飛ばそうとする。

ただここで問題なのは―――ユリ型が遥か遠距離にいる事だった。

敵は彼方なのにただ一心不乱にアームを振り続ける姿は、少なからずパイロット達に笑いを誘った。

知らないのは、肝心の本人達だけである。


「外で動いているみたいだけど・・・・翼かな?」

「それにしては何かでかいわよ。
ちょっと―――本当にかっこいいんでしょうね?」

「俺に聞くな、俺に。後で誰かに聞いてみろよ。
それより―――」


 ユリ型は向きを変えて、こちらへと向いている。

数秒しない内に再攻撃がかけられるだろう。

のんびり待ってくれる程、敵は甘くなどない。

異様なユリ型の外見に改めて戦慄を覚えつつ、カイは唇を舐めた。


「もし攻撃方法が近距離のみだったらやばいな・・・
みすみす近付いたら飲み込まれて終わりだ」


 もしヴァンドレッド・ジュラが近距離戦用だと、圧倒的に不利である。

敵は牽引ビームで標的を引き寄せて、吸引してしまう。

このまま無警戒に近付くのは、どうぞ飲み込んでくださいと宣言しているようなものだ。

そして―――ヴァンドレッド・ディータとメイアの攻撃パターンを考えればありえる話である。

最悪―――現状況では、だが―――の可能性に、ジュラは顔を引き攣らせる。


「ジュ、ジュラは操縦のみ専念するから。
万が一の事があったらあんたの責任よ!」

「あー、汚ねえ!?今更お前だけ逃がすか!
こうなったら、地獄の底まで付き合ってもらうぜ!!」

「嫌よ、嫌々!ジュラはまだまだ人生を楽しみたいの!」

「俺だって死にたくはないわ!だからもっと真剣に――――――わ!
馬鹿馬鹿!?早く避けろ!!」

「―――っ!?」


 放射する死神の手を、ジュラはまた間一髪かわす。 

再びすり抜けていくかと思えば―――


「しつこいわね、こいつ!!」


 反射的に回避するパターンを組み込んだのか、ユリ型は追尾を続けた。

連続放射したまま機体を傾けて、ヴァンドレッド・ジュラを狙いに来たのだ。

放射する光の帯はさながら光の剣で、横薙ぎ・縦薙ぎと連続攻撃を行う。

もしも光に少しでも当たれば動きは束縛され、吸引の一途を辿る。

ジュラとてメイアには及ばないが、サブチームリーダーの座に居る女性である。

慣れない艦でも器用に操縦捌きを見せて、何とか敵攻撃を掻い潜っていた。

しかし敵は無人で、こちらは有人である。

このまま集中攻撃を続けられれば体力が持たない。


(だからこそ・・・俺が居るんだ)


 一人でやれないから二人でやる。

懸命なる相棒に応えるべく、カイはタッチパネルに手を伸ばす。


「こうなったら・・・見つかるまで攻撃を続けてやる。
これならどうだ!!」


 カイは右から順々に次々とボタンを押していく。

赤・青―――黄色を飛ばして・・・・・

やけくそに近いやり方だが、機体は忠実に命令を一つ一つインプットしていく。

全部のボタンを押し終えて、カイはモニターに視線を飛ばした―――





 




 




 周辺を浮遊する八つのピットが輝く。

磨かれたレンズにエネルギーが宿り、ピットはそれぞれ稼動した。

四つのピットは機体の上下左右に展開し、閃光を放つ。

閃光は青緑色を帯びて機体そのものを覆って、あらゆる外敵から身を守る鎧となった。


「シールド機能が搭載されてるのかよ!?」

『ペークシスフィールド・コーティング完了』


命令受理の表示を見て、カイは顔を明るくする。

シールド強度は次々と羅列される数字列からでも、強固である事が理解出来る。

興奮を上乗せして、ジュラも裏返った声を上げる。


「見てみて、カイ!ほらほら!!」

「おいおい、まだこれ以上あるのか!?どれどれ・・・」


 パイロットの期待以上の働きぶりを見せて、ピットは更なる行動を開始する。

四つのピットは主を守り、残り四つのピットが敵影に向かう。

ユリ型とヴァンドレッド・ジュラの丁度真ん中に位置する区域で、動きは停止する。

その瞬間を狙ってか、ユリ型はピットに牽引ビームを放つ―――が。

まるで鏡のように、ビームは表面のレンズに当たって反射。

そのまま方向性を失って、力なく消えていった。

輝き続けるピットは東西南北の四点に停止し、四つの閃光は中心に収束する。

濃縮された光は臨界点を迎え、一気に爆炎した。

真っ直ぐに放たれた光芒はユリ型に突き刺さる。

攻撃を防がれて無防備だったユリ型は、花弁の口内を貫通されてぐらりと傾く。

閃炎を飲み込む事は不可能だったのか、内部から暴発したユリ型は小爆発を繰り返す。

ダメージは致命的であり、勝敗はこれにて決まった。

そのまま力を失って、落下を―――


「げげ、まずいっ!?」


 マグマのように煮え滾り、降下し続けるユリ型の先は―――惑星。

カイは慌てて自身の脇にあるレバーを握って―――


「ちょっと待ちなさい!無茶よ!?」

「見過ごせるか!!」


 反発する意思に・・・機体はどこまでも忠実だった。

瞬時に分離した二つの機体。

他者を守る心と自己を守る心。

ジュラ機はそのまま止まり―――


「カイっ!!」


 カイ機はユリ型と共に――――惑星の大気圏内に落下した。





 















 
















































<to be continues>

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