VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action35 −陰謀−




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 結論から言えば、申し出は受け入れられた。

半ば懸念していたカイをあっさり裏切る形で、ラバットは快諾する。


「俺は俺の利益を求める。
お前はお前でやりたい事をやる。
互いに邪魔しないって事でうまくやっていこうぜ」


 ラバットがニル・ヴァーナにて行うと言う商売――

どのような商売なのかは見当もつかないが、そこにカイは付け入る隙を見つけた。

本当は何もないのだと信じたい。

一時ではあるが一緒に行動し、助力や忠告もしてくれた。

何より自分の命を助けてくれた恩人である。

疑う事も本当はしたくなかったが、カイの中で何かが引っ掛かっていた。

この二ヶ月余りの戦いの日々で磨かれつつある危険への察知とでも言うべきか――

ラバットには何かがある。

そしてその何かは自分に、もしくはこの船に居る女達に何か影響を及ぼしてしまう。

突然砲撃された事から芽生えた疑念の種は、再び対面してその草木を伸ばしていく。

カイは過ぎった疑念を振り払い、ラバットに向き直った。


「よし、じゃあ商談成立。
敵だらけのこの船で生きていくには色々大変なんでね・・・・・
その点、あんたは経験もあって勉強になりそうだ。
しっかり学ばせてもらうよ」


 嘘を上手に付くには真実を交えるのが効果的。

カイは拙いながらにラバットに取り入り、前もって用意した台詞を吐いた。

実際、カイはこの船の中では浮いている。

自立したのも本当なら、一人で生きていかなければいけないのも事実。

敵だらけなのも嘘ではない。

いざという時味方をしてくれる者は恐らく誰も居ないのだから――


「ふーん・・・ま、お前さんの境遇は俺には関係ない。
ただ、ちょいと気になるな・・・・」

「な、何が?」


 内心ギクっとしつつも、何とか喉元で堪える。

動揺を顔に少しでも出せば、ラバットは一発で見破るだろう。

ラバットは気付いていないでか、そのままカイの首に手を回して、


「ん・・・・?おうわっ!?」


 そのまま首元を強靭な腕に掴まれて、引きずられていく。

突然の成り行きに驚いたのは、本人よりむしろ周り。

特に共に行動しているメイアが、いち早く行動に移せた。


「いきなり何をする――――んですか、カイさんに!」


 強烈な一喝が口から飛び出そうになり、強引に口調を変える。

強烈な自制心が、メイアの演技を崩さずに済んだ。

ただ目元がきつくなるのは仕方が無く、むしろ警戒するのは無理も無い。

このまま駆けつけて来そうなメイアに、ラバットは気軽に笑って手を振る。


「違う、違う。こいつに何かするつもりはねえ。
ちょいと男同士の内緒話って奴だ。
あんたの相棒を傷つけるつもりはねえからさ」

「・・・・・・」


 納得は出来ないが、揉め事を起こすのはまずい。

下手に関係を悪くすると、カイの作戦が台無しになる。

作戦が失敗すれば、不本意な格好と演技の意味まで無くなる。

メイアは黙って一歩下がった。

大人しく引き下がってくれた事にラバットはウインクし、カイをそのままフロアの片隅に連れて行く。


(・・・何だよ、いきなり!?)

(説明してもらおうか)

(な、何を・・・・?)


 内心冷や冷やで、カイは聞き返す。

ラバットの声色には茶化す様子は無く、真剣そのもの。

どんな言い訳も許さない、そんな雰囲気があった。

やはり何か勘付かれたかと、カイは小さく舌打ちする。

こちらの要求をあっさり受け入れた事にもおかしいとは思っていた。

何か不手際があったかと考えていると、ラバットが真面目な顔を向けてくる。


(この野郎・・・
仲間でも何でもないとか言いながら、ちゃっかり彼女がいるんじゃねえか)

(・・・・・は?)


 予想外の言葉――

むしろ、カイにはラバットが何を言っているのかも分からない。

混乱しまくるカイに、ラバットが追い撃ちをかける。


(とぼけんなよ、この女たらし。
あんな上玉捕まえといて、何が不満なんだ)

(ちょ、ちょっと待ておい!?
何言ってんだ、あんた)

(おいおい、白を切るのはその辺にしておこうぜ。
本音を言えば、ここでお前を抹殺したい気分なんだからな。
畜生・・・あんな美人、滅多にお目にかかれないぞ)

(はあ・・・?
さっきから何を訳の分からん事を言ってんだ、あんた)


 本気で不思議がっているカイに、ラバットは業を煮やした。


(お前の相棒だよ、お・ま・え・の)

(いたたたたたっ!?)


 こめかみを強い力でぐりぐりされて、カイは悲鳴を上げる。

後ろでメイアが眉をぴくりと動かすが、下手に動かない。

甘んじて状況を見守るしかなかった。

一方、カイはカイでようやく状況が分かり掛けてきていた。


(ひょっとしてメイアの事言ってるのか?)

(今更何言ってやがる!お前の彼女だろうが)

(・・かの、じょ?俺のなんだって?)

(おいおい、彼女くらい・・・・っち、そうか。
タラークの出だったな、お前)


 話が噛み合わない理由が分かり、苛立ちを覚えるラバット。

カイは何が苛立っているのかも理解出来ない。

互いの理解の差を、ラバットが説明で埋める。


(あの美人は、お前の恋人かって聞いてるんだ。
もっと分かり易く言えば、お前はあいつが好きなのかってこと)

(好き?好きって・・・・・ええええっ!?)


 カイは目を見開く。

質問にそんな意味があったとは知らなかった。

カイは口篭もって、


(あいつが好きかどうか聞かれてもな・・・・・)


 仲間はおろか、正直受け入れられているかどうかも怪しい。

嫌いか好きかと聞かれれば、好きの部類には入る。

嫌いな人間を計画に巻き込もうとは思わない。

ただ、言葉でメイアへの好意を表現するのは非常に難しい。


(あいつは・・・・っとっと!?)


 カイははっとして口を押える。

肝心な事を忘れていた。

今メイアを否定する発言を取れば、今までの嘘が見破られる。
何で嫌いな人間が相棒なんだと聞かれたら、どう答えればいいか分からない。

戦略を実らせるには、ラバットに怪しまれる発言は禁句だ。


(ま、まあ、あいつは俺にとってそうだな・・・・・
く、口では言えない関係だと言っておこう)


 嘘ではない。

メイアとの関係は曖昧で、結局どうなのかはカイ本人にも分からない。

それはメイア自身も同じだろう。

ラバットはどう取ったのか、しきりににやにやして肩を叩く。


(なんだ、なんだ。この幸せ者が!
色々言ってたが、うまくやってるんじゃねえか)


 そのままラバットは続ける。


(馬鹿馬鹿しさの極みだぜ。
男が女を知らねえなんぞ・・・・)

(・・・こいつ・・・・)



 意味深な発言に、カイは眉を潜める。

が、ラバットは何も答えずにカイを掴んでいた手を離す。

そのまま物陰から離れて、見守っていた女性達に目を向ける。


「すまねえ、つい話し込んじまった。
で、お前らも俺に何か用があるんだろう?」


 その声に我に返ったのか、団体から一人の女性が前に出てくる。

船全体の警備を務める保安クルーのチーフだった。


「お頭に会わせる。ついて来い」


 警護を務めるだけあって、佇まいに油断は無い。

距離を取って攻防備える間合いを守り、ラバットに充分な警戒を見せた。

熟練された動きにラバットは口笛を吹いて、そのまま同行する。


「キー、キキキ」

「早く来い、ウータン。お前もここではお客さんだからな。
商売の話はまた後でな、兄弟。
物資もちゃんと積んで来てるから、きっちり受け渡ししてやるよ」


 武装した保安クルーに囲まれながらも、平然とした態度を崩さない。

ラバットは軽い足取りで、大人しくブリッジへと向かって行った。

その後ろから声がかかる―――


「おい、待てよ。さっき何か気になる事言わなかったか!」


 追い縋るカイだが、ラバットは黙って手を振るだけだった。

そのまま通路の奥へと消えていくラバットを、カイは黙って見据える。

メイアはそんなカイの背に歩み寄る。


「・・・何を言われた」


 ラバットがいない以上、演技を続ける意味も無い。


ただ、カイの様子が変なのは気になる。

カイはじっと消えたラバットの残像を追うように、そのままの姿勢でぽつりと言った。


「・・・・あいつ、やっぱり何か知ってる・・・」

「何か・・・?」


 カイはそのまま頷く。


「俺やお前の知らない何か――
俺達に関わる重大な秘密を握っている。そんな感じがする・・・」


 思案げにするカイの横顔を、メイアはそっと見上げる。


「それはまさか・・・・刈り取りに関してか?」


 今最大の謎である敵の正体。

それをラバットが握っているなら、彼は―――

カイは腕を組んで、眉を顰める。


「いや、どうかな・・・・
ミッションで刈り取りの名を出した時、奴は無反応だった。
何か知っていたようには見えない。
ただ・・・」

「ただ?」


 カイは振り返り、メイアを見つめる。


「お前や周りの女見た時、あいつ喜んでいたみたいだった。
少なくとも、嫌がる感じは全然ねえ。
・・・・あいつ、女を知っている」


 それはカイがこの二ヶ月以上の旅で掴んだ、女だけが持つ特性とも言える。

タラークで植付けられた常識ではない、生々しいリアリティ。

触れ合って話して、理解しようとしなければ見えない女の魅力。

それを、ラバットは知っているとしか思えない。


「・・・・どうやら思っていた以上に・・・」


「ああ・・・この作戦、責任は重大だ。
成功させる為にも、よろしく頼む。
お前がいると俺も心強い」


 そのまますっと手を差し出すカイ。

メイアは驚いた顔をし、そのままじっと手を見つめる。

ふざけるなと撥ね退ける事は出来る。

今までの自分なら簡単にそうした。

でも―――


「ここまで来て辞めるつもりは無い。
尽力は尽くす――
お前に付き合えるのは私くらいだろう」


 触れ合う手の平――

握り締める手はお互い温かく、見つめ合う顔は穏やかだった。

今日一日だけの協力関係。

だけど、裏切らない―――





「盛り上がっている所を悪いけど――」





 ふんわりと――





「仲間外れなんてひどいよ、宇宙人さん!」





 一つ――





「なかなか面白そうじゃない。
話によっては、ジュラも付き合うわよ」





 一つ――





「・・・・不躾で申し訳ないが、私にも協力できる事はないか?」





 手の平が――





「しょ、しょうがないな・・・・・
ドゥエロ君が協力するなら、僕も付き合ってやろうかな」





 重なり合っていく――





「お前ら・・・・・」





 呆然とするカイに、皆笑って頷いた。

















 二ヶ月以上を経て、男と女はようやく一歩を踏み出した。

カイを中心にして―― 




















<to be continues>

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