VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action30 −出迎え−




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振り返れば二日余り――

次々と事件が連鎖したミッションを、カイ達は離脱した。

大破した予備ドレッドは保管庫にそのまま安置され、永い眠りに就く。

メイア達はドレッドに、カイは愛機に乗ってニル・ヴァーナへと一路帰還する。


「・・・帰れるとは思わなかったけどな」


 ニルヴァーナ収容口へ入り、そのまま蛮型を操縦。

整備クルーの手引きで蛮型は主格納庫へと移され、再び保管される事となった。

カイはコックピットを出て、薄暗い滑走路を歩いていく。

一直線に繋がる通路は一枚の自動扉を挟んで、居住区出入り口に繋がっている。

カイは無言で歩き続け、扉の前に一人立った。


「・・・・・・」


 扉の向こうにはマグノ海賊団、女達がいる。

いや、誰も居ないかもしれない。

まさか自分の帰艦を歓迎する物好きがいるとは思えない。


「何で帰ってきたのかな、俺は・・・」


 嘆息する。

帰って来た所で、何かしら変わる訳ではない。

セキュリティの一件で、海賊入りは完全に拒否した。

仲間になるのを拒み、自立し、危機を一つ救って出て行った。

複雑な気分は拭えないが、懐かしさもまたこみ上げてこない。

思い出はなく、温かさもない場所なのだから――


「・・・今はおっさんとの事だけ考えよう」


 ニルヴァーナのブリッジに連絡が繋げて来たラバット。

言いたい事はそれこそ山ほどあった。

ミッションとの戦闘を邪魔し、あまつさえ命さえ狙われたのだ。

場合によっては敵対も辞さない。

向こうから対面を求めて来たのは、カイにとっては好都合だった。


「俺にかましてくれた以上覚悟しとけよ、おっさん」


 胡散臭い笑みを浮かべるラバットを思い浮かばせて、カイは黙々と歩く。

そのまま扉を開いて、急いでブリッジに――





「おかえりなさい、宇宙人さん!」





「ぶわぁっ!?」


 自動扉が左右に開き足を踏み入れる間もなく、飛び込んで来た影にカイは押し倒された。

覆い被さる影に慌てて顔を上げると、純真な瞳でディータが覗き込んでいた。


「良かった、無事に帰って来て・・・・・
お腹すいたでしょう?
ディータが美味しい物作ってあげるね!」


 にこにこご機嫌のディータ。

重いからどけと言おうとするが、邪気のない笑顔に毒気を抜かれてしまった。

カイはふうっと息を吐いて、彼女の髪を撫でる。


「・・・元気そうね。怪我はもう大丈夫なの、あんた」


 カイが顔を上げると、照明の光に負けない眩い金の髪を揺らして、ジュラが腕を組んで立っている。


「青髪に手当てしてもらったからな。
ちと痛えけど、全然大した事はねえよ」


 カイは何でもないとばかりに、元気に手を振る。

―――が、白い包帯の巻かれた腕に痛みが走り、カイは顔を歪める。


「無理に動かさない方がいい。傷口が開く」

「お、ドゥエロじゃねえか」


 まるで違和感なく、出入り口付近に白衣の男が寄り掛かっていた。

ドゥエロはそのまま歩み寄り、カイに手を差し伸べる。


「立てるか?身体中、ひどい傷だ」

「だ、大丈夫だこれくらい。
それより何でお前がここに・・・?」

「それは―――」

「だから言っただろう、ドゥエロ君。
心配なんかする事無いって」

「バート・・・・?」


 長身のドゥエロの背後より、ひょっこりとバートが姿を見せる。

カイに向かって不躾な視線を向けて、呆れ果てたように首を振る。


「また怪我しているじゃないか。
君ね・・・たまには暴れる以外の選択肢を選べないのかい」

「うっさいわ!お前もお前で何で来たんだよ、わざわざ」


 差し伸べるドゥエロの手を握りつつ、バートを半眼で睨むカイ。

何故と問われ、バートはことの外困惑を露にする。


「べ、別に、その・・・・あれだ。
暇だったから来たんだよ、暇だったから!」

「―――とこのように本人は述べているが、私を連れ出したのは彼だ。
怪我しているだろうから診てやってくれと頼まれた。
私としては要請なくとも診察するつもりだったが。
心と態度が反しているが、気にしないでやってくれ」


 真顔で解説するドゥエロ。

カイは口をあんぐりとさせて、当の医者を見つめる。

行動描写されたバートですら、驚きの余り声が出ない。


「・・・どうした、二人とも?」

「それはこっちの台詞だ! 何つうか・・・・お前、そんな奴だっけ?」

「?質問の内容が理解出来ない。
すまないが、もう少し明快に述べてくれ」

「え、えーと・・・・おい、バート!
お前、何かこいつに変なもの食わせただろう!」

「し、失礼な奴だな!僕がそんな事するもんか!」

「どうだか・・・・
特殊なペレットを、嫌がるドゥエロの口に無理やり押し込んで・・・」

「だから僕はそんな事はしない!」


 ぎゃあぎゃあと口喧嘩を始める二人に、傍観する一同。

ドゥエロは二人の様子をまじまじと見つめ、背後を振り返り口を開く。


「・・・彼らは何が言いたいのだろうか?」

「私に聞かれてもね・・・」


 関わりたくないのか、見ていたいのか。

始終傍観していたバーネットがそう言って肩を竦める。

引き続かれる二人の言い争い――


「・・・ドクター、ちょっと変わったんじゃない?」

「?私が、か」

「あいつはそう言いたかったんだと思うけど」


 カイを見つめ、バーネットは小さく呟いた。

ドゥエロ=マクファイル、タラーク第三世代でもトップクラスの知性を持つ男。

士官学校でも最エリートの道を歩み、将来を約束されていた。

そんな彼だが他人には関心を示さず、決して冗談を言うタイプではなかった。

それは今でも同じ。

真面目な口調もそのままで、先程の発言も本人からすれば心から正直に述べたのだろう。

でも、その言葉にはほんのささやかな温もりがあった――


「何を言い争っている。
カイ、お頭が先程からお待ちだ」


 艦内の通路奥よりメイアが歩み寄り、カイに用件を伝える。

何時の間にか頬の引っ張り合いに発展していた二人はぴたりと手を止める。


「あ、そうだった。あほにかまっててすっかり忘れてた」

「ドゥエロ君はともかく、君には言われたくはないぞ!」


 猛然と抗議するバートに、はいはいと放っておいて起き上がる。

ドゥエロの助力で起き上がったカイに、ジュラは真面目な顔で言った。


「あんたら二人・・・実は仲いいんじゃないの?」

『馬鹿言え!誰がこんな奴と!』


 お互いを指差して同じ発言を繰り返し、同じく睨み合う二人。

ジュラは呆れたように宙を仰ぎ見、ディータは心底面白そうに笑った。


「運転手さんと宇宙人さん、すごく仲良しさんだね」

「・・・色々言い返してやりたいが、最近お前に何言っても無駄な気がしてきた・・・」

「ふーん・・・ディータの事、随分理解しているみたいね」

「知りたくも無いわ!」


 何やら感心するバーネットに、怒鳴り散らすカイ。

バーネットは笑って、はいはい・・と身を引く。


「カイ、同じ事を何度も言わせるな!
それに―――」


 メイアは頭痛がするように額を抑え、疲れ果てたように口にする。


「・・・・何時までそこに隠れている気だ、お前達」

『あ・・・・』


 突然の声に慌てて、カイは反対側通路を振り向く。

メイアの声に弾かれた様に顔を見せる面々――

アマローネにベルヴェデール。

その背後よりひょっこりと、クマの耳らしきモノが浮き出ていた。

本人なりに隠れているつもりらしく、それが逆に可笑しい。

その向こうにはカイにはお馴染みの面子であるドレッドチームメンバー。

それに――


「お前ら・・・・」


 可愛いコスチュームが売りのレジスタッフに、キッチンスタッフ数人。

皆気まずい雰囲気で、困ったように顔を見合わせている。

何を言っていいのか分からないのだろう。

女性達の出迎え――

総員には程遠く、全体的に見ればほんの僅かな数。

カイは一言―――


「・・・ただいま」


 皆も答える。


『おかえりなさい、カイ・・・』


 と――
















「さーて、聞かせてもらおうか。
言っておくが、言い訳なんざ聞く気はねえからな」


 ささやかながらに互いの無事を喜び合い――

舞台はここ、ブリッジへと移り変わっていた。

勝手に持ち場を離れたブリッジクルー三人に、ブザムよりの咎めがあった。

―――が、カイが顔を見せると鬼の副長も表情を和らげる。


『・・・ご苦労だった、カイ。お前の機転で皆助かった』


 この時のブザムの表情を、後にエズラがこう語る。


『あんな優しい顔をした副長は初めて見た』と――


 他にもカイの帰りに、一同は明るい雰囲気で言葉を交し合う。

エズラなど、カイの姿を見た途端涙ぐんでしまった。

その場を見ていたマグノは何も言わず、皆を温かく見守っていた。

のだが―――カイがここに来た理由は他にある。

中央モニターに映るラバットの姿――

騒動を起こした張本人であり、カイを殺そうとした男である。

カイの一喝に、周りの一同も敵意を乗せて睨む。

元々男はメジェールでは敵とされているので当然だが、カイを殺そうとした事実は敵意に拍車をかけた。

全員が毛嫌いするように視線をぶつけるが、当の本人は――


『おいおい、そんな睨まないでくれよ。
人間、皆兄弟だろう』


 などと、飄々とした態度で気にもしていない。

カイは一歩前に乗り出して、険悪な態度で接する。


「てめえは兄弟をミサイルで撃つのか?
レーザーで貫くのかよ、あ?」


 曖昧に出れば、はぐらかされるのは実践済み。

カイは臆する事無く、追求を続ける。

ラバットはそんなカイを見下ろし、にっと笑った。


「俺はそんなこたぁしねえが、こいつにとってはあれが友好の印なんでな」


 ラバットはがしっと何かを掴み、そのまま画面に持ち上げる。


「ウキキ、キキキキッ!」


 満面の笑顔で映し出されるウータン。


「・・・・お前、俺を嘗めてんのか?」

「おやぁ?心外だな・・・・
俺はお前に嘘ついた事はねえぜ」

「うすらやかましいわ!
ウータンがあんな機体操作出来る訳ねえだろう!
とぼけやがって・・・・」 

「・・・・というより、何?あの生き物・・・」 


 一同の疑問を代表するかのように、アマローネは呟く。

しかし互いに集中する二人は気付いてはおらず、声はかき消されてしまう。

「とぼけてなんかねえよ。
ウータンは賢いんだぜ?
機体の操縦なんて朝飯前よ。なあ、ウータン?」

「ウキキキ、キキ」


 ラバットの言葉を肯定するかのように、ウータンは元気に頷く。

仲のいいコンビを見る限り、嘘をついているようには見えない。

だからといって、ウータンがあのような操縦をするとも考えにくいのだが・・・

疑念を持ったまま、カイは言った。


「・・・つまり、俺を狙ったのは単に遊びたかったからだと?」

「こいつにとっての一番の遊びは戦いだからな。
お前の勇ましい戦い振りに野生の本能に火をつけられたのさ。
お前だって、戦いには燃える性質だろう?」

「それはまあ・・・・」


 説得力はある。

確かにあの時、ラバットがわざわざカイを狙う意味は無い。

恨みがあるならともかく、二人は協力関係を結んでいたのだ。

突然の攻撃に驚かされたのはむしろカイだ。


「・・・分かった。一応は納得してやる。
ウータンに怒っても仕方ねえし」


 渋々矛を収め、カイは腕を組む。


「ほんで、俺に何か用事か?」


 カイが尋ねると、ラバットは肩を竦めた。


「おいおい、冷てえ奴だな・・・
仕事が終わってバイバイじゃ寂しいだろうが。
互い仕事の成功を祝って、祝杯といこうじゃねえか」

「祝杯だあ?」


 カイは露骨に不信を顔に出した。


「って事はまさか・・・・」

「おう。ちょっくらそっちに遊びに行かせてくれ」


 ラバットはにんまりととんでもない事を口にした。






















<to be continues>

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