VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action18 −型破り−




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 ディータ=リーベライ、彼女の良い面を特筆すると二つある。

一つは明るさ。

悩みや苦しみさえも後には引かず、前向きに物事を考えられる事が出来る。

時には考え無しだと思われがちだが、美点にも繋がる長所だった。

そしてもう一つは―――行動が早い事。


「ごめんね・・・急に呼びつけたりして」


 フロアの片隅にて――

ディータは申し訳なさそうな顔をして、手を合わせた。


「別にいいけどさ・・・・私達は今の所あんたの部下なんだから」


 恐縮しているディータを目の前にして、ミシェールは皮肉げに返した。

ディータと話をして数十分。

別行動を取っていたミシェールだったが、突然ディータに召集を受けたのである。

話とは名ばかりにキツイ言い方をしたミシェールだったが、ディータに言った言葉は全て本音だった。

元々初めから不満だったのである。

敵対する男・カイを助けに向かう事―――ではない。

カイを救助する事自体はミシェールも賛成だった。

メイアを初めとするトップクラスのパイロット達を何度も助けた事実は、ミシェール達下級パイロットの間でも噂になっている。

捕虜にされたと言うのに、自らの命を賭けてまで仲間を救った男――

今ではカイの名前も姿も知らない者はいない。

交流はないが、パイロット全員が何よりカイがどういう人間なのかは理解していた。


『俺に命を預けてくれねえか?』


 決戦前の言葉――

メイアを失い途方にくれた皆を引っ張って、カイは自分達に信頼を寄せてくれた。

全員を助けたいのだと、誰一人死なせたくないのだと言って。

あの時、カイは真剣だった。

男が女を助けるなどという前代未聞の行為を、カイは平然とやってのけた。

カイが本気だったから、自分達も信じてみる気になった。

表面上こそ一度だけとか、しょうがないとか口にしていたが、あの時感じた一体感は忘れられない。

新人パイロットで戦歴の浅い自分が、出来るかもと自信を持てたのだ。

怖かった―――

あの時メイアが怪我をして、ジュラが迷走して・・・・誰も頼れる人はいなかった。

皆が不安そうにしていた。

自分もまた、怖かった。

パイロットとしての人生を送ると決めた以上、戦いへの気概はある。

でも―――死ぬのは怖い。

メイアのように苦しんで死ぬかもしれないと考えただけで、全身から震えが止まらなかった。

その恐怖を、命を救ってくれたのがカイだ。

今でも男は最低の生き物だという認識は捨ててはいないが、カイに関しては別。

他のパイロットの皆もそうではないのだろうか?

カイ救助に志願したメンバーが、ほぼ全員パイロット出が圧倒的なのがその何よりの証拠だ。

だからこそカイを助けたいと思うし、ディータの気持ちも分かる。

これはミシェール本人に限らず、救助隊全員の総意だった。

能力がないのは仕方がない。

急にメイアのようにしてくれと言われてもどうにもならないだろう。

ただ、ディータがリーダーとしての立場を望むなら話は別だ。

自分達の先頭に立つ立場に居るのなら、もっとしっかりして欲しい。

いつもの様にへらへら笑ってばかりでは困る。

せめてリーダーとしての自覚を持って欲しいと思っての忠告だったのだが、今のディータを見て失望した。

態度が何も変わっていない。

表情は変わらず緩んでいるし、毅然とした様子は微塵も見受けられない。

目元は腫れており、目も真っ赤な所を見ると泣き伏したのだろう。

泣いて反省してくれたのならいいが、それで変わらないのなら意味はない。

ミシェールは内心の苛々を止められるか自信がなかった。

男のカイがあんなに堂々としているのに、どうして女のディータがこんなに頼りないのだろう?

ほとほと情けなかった。


「それで、話したい事っていうのは何なの?
こっちも今必死なんだけど」


 語彙がきついのは自覚している。

ディータ本人が自覚してくれないのなら、もう遠慮する気はない。

ミシェールははっきりと言い切った。

ここまで強く言ったら、気弱な態度のディータはもう何も話せなくなるだろう。

このままメイアにでも相談して、ディータとはもう別行動を――


「うん、ディータも一生懸命考えたの。
ミシェールに言われて、ディータ駄目だなって思ったから」

「え・・・?
あ、そ、そう・・・・ふ〜ん・・・・」


 ミシェールはやや驚いた顔をする。

てっきり泣きベソでもかくかと思えば、ちゃんとした物言いで対応している。

思わず反言葉に詰まり、論出来ずに曖昧に答えてしまった。


「皆もごめんね。
ディータが宇宙人さんの事ばっかり考えてて、皆の事ちゃんと考えてなかったよね。
リーダー失格だよね、本当・・・」

「う・・・ま、まあね・・・その・・・・」


 ミシェールはおろか、他に集められた部下達も困惑していた。

毅然としていると言えば嘘になる。

今でも頼りない態度なのは変わらず、弱音を吐いている。

仕草や口調も変化はない。

でも何かこう・・・・・さっきのディータとは違う気がした。

どこと聞かれたら、返事に困るのだが。


「でもねでもね、もうちょっとしっかりしなくちゃって思うの。
今のままじゃ宇宙人さんのお荷物だし、皆にも迷惑になるから・・・・」


 何とか必死で口にしようとするディータに、皆が気を飲まれる。

たどたどしい言葉には弱さはある。

それでいて――――今までにない強さがある。


「ディータ、もっと頑張るね!
頑張って頑張って、皆を助けられる位になるの。
今のディータはリーダーさんだもん。ね!ミシェール」


 そのままにっこりと笑いかけるディータ。

ミシェールはその笑顔を目にして、自身の苛ただしさが消えるのを感じた。

まだまだ変わっていないのは確かだ。

リーダーとしては一人前どころか、半人前にも程遠い。

不安を感じられるのも前と同じ。

でも――――ディータなりに考えたのだろう。

自分の忠告をないがしろにせず、しっかり受け止めて考え続けたのだ。

そして、分かった。

自分の内面を否定せず、いけないと思う面を改善しようと努力している。

ディータは変わったのではない。

成長したのだ、自分をそのまま――


「・・・・まあ、ね・・・・
まだまだ全然頼りにならないリーダーだけど」
「う〜、こ、これからいっぱい頑張るよ」


 照れくさそうにしているディータに、ミシェールは初めて笑顔らしき顔を浮かべる。

実際は苦笑に近かったが、それだけでもディータは少し救われた気がした。

否定されたままでは、やはり心情的に辛い。

ミシェールの先程の怒鳴り声は、思い出すだけでも胸が痛かった。


(・・・やっぱりディータ、まだまだだよね・・・・
宇宙人さん、いつも平気な顔してるもん)


 罵詈雑言だってこんなものではない。

周りには相手にされず、いつも一人孤独に戦っているカイ。

女性達に冷たい対応をされているのに、カイはそれでも明るかった。

へこたれずに、自分の夢を追っていつも頑張っている。

ミシェールに痛烈に文句を言われ、泣いていた自分が恥ずかしかった。


(・・・宇宙人さん、ディータ頑張るからね・・・・ )


 今日一日で自分の至らなさを知った。

どれだけ今まで守られているのかも分かった。

今度は自分からも前に出なければ。

頑張れって応援してくれたあの子に応える為にも―――


「ああっ!?そ、そうだ!?」

「わっ!?な、何を急に!?」


 目を見開いたミシェールを尻目に、ディータは慌てて回れ右をする。

そのまま走り抜けて、先程座り込んでいた場所へと戻る。

そこには、


「だ、大丈夫!?ロボットさん、しっかり!?」


 落ち込みからの反動で元気に飛び出していったまま、すっかり忘れていたディータ。

置き去りにされたピョロは画面を真っ黒にしたまま、床に転がっていた。

何度も呼びかけても反応のないピョロにおろおろするディータだったが、その心配もやがて安堵に変わった。


「・・・・ピー・・・・ピピピー・・・・ピョロ!?」


 何度も何度も機体を揺すっていると、画面に光が戻り手足が動く。

真っ黒なモニターに真ん丸な瞳が映って、ちょこんとピョロが床に立つ。

そのまま右に左にと視線を動かしながら、ピョロは首を傾げるらしき仕草をする。


「ここはどこぴょろ・・・?
ピョロは何をしてたぴょろか・・・?」

「あ〜、動いた!よかった〜〜〜〜
大丈夫?何処か調子が悪くない?」


 間近で覗き込むディータに初めて気づいたのか、ピョロはふんわりと浮かぶ。


「大丈夫ぴょろ!システムその他何の問題もないぴょろ!
ただ・・・」

「ただ?」


 思わずちょこんと座って視線を合わせるディータに、ピョロは不思議そうな顔をして周りを見る。


「今まで何をしていたのか、全く覚えてないぴょろ。
ここはどこぴょろ?皆何をしているぴょろ?
カイは見つかったぴょろか?」


 矢継ぎ早に質問を浴びせるピョロに、ディータは不思議そうな顔をして黙り込む。

そのままじっとピョロを見つめるが――


『・・・・だから・・・・ディ−タも・・・がんばって・・・』


 今のピョロに面影すらない。

落ち込んでいたディータを励ましてくれた女の子。

無感情での拙い言葉だったが、ディータの心に染み入るようにして今も広がっている。

ピョロの声は前と同じ明るい声で、仕草や表情も同じままだった。

さっき話していたピョロはまるで夢か何かのように、その雰囲気も何もかも消えてしまっている。

ピョロに聞きたい気もしたが、何となく聞いても無駄のような気がした。

ディータは訝しげには思うものの、敢えて問いただそうという気もなかった。

自分を優しく励ましてくれた子がいた――

それだけで、ディータには十分だった。

ディータはそれ以上何も言わず、あの子の事は胸に秘めておく事にした。


「今ね・・・・皆、閉じ込められてるの」

「閉じ込められている・・・ぴょろか?」

「うん。実はね―――」


 ピョロに今までの事情を説明するディータ。

たどたどしい状況説明だったが、その都度ピョロが質問をする事で理解に至った。


「なるほどぴょろ・・・・
それで今閉じ込められているぴょろか?」

「うん、前も後ろも扉を閉められちゃったから・・・」


 入ってきた扉も、奥へと続く通路も封鎖されている。

窓も何もない以上、完全に密閉された事になる。

手も足も出ない状況下にある事を聞かされて、ピョロも困った顔をする。


「隔壁が降りているならどうしようもないぴょろね・・・・
壊す道具とかないぴょろか?」

「そんなの持って来てないよ・・・・
ここには悪い宇宙人さんもいないっていう事だったから」

「困ったぴょろね・・・・」


 そもそも敵がいないと観測されたからこその突入だった。

データ算出にも不自然な部分はなく、警戒網にも引っ掛からなかった。

だからこその突発的事態であり、皆が困っている状態に陥っているのである。


「ねえ、ロボットさん。
ロボットさんなら壁をどけるとか出来ないの?」


 懇願の眼差しで尋ねるディータに、ピョロは無情に首を振る。


「外部から操作されているのを解除するのは無理ぴょろ。
データパターンが同じなら可能ぴょろけど・・・」

「でーた・・・ぱたーん?」


 機械的な分野には縁のないディータである。

全然理解出来ない彼女に、ピョロは解説を入れる。


「すごく簡単に言えば、ピョロの知っているデータだと解除が出来るんだぴょろ」


 ピョロは以前、ニル・ヴァーナの監房に閉じ込められていたカイを救出した事がある。

その時も外部から監房のロックを解除したのだ。

植民船時代のナビゲーションロボットだったピョロには一般的な機能である。


「え〜と・・・・じゃあ、ここのデータは分からないの?」
「分からないぴょろよ。
調べてみれば分かるかもしれないぴょろけど」

「じゃあ調べてみようよ!」


 解決策とばかりに乗り出すディータに、ピョロが容赦なくつっこむ。


「無理ぴょろ。
話を聞いた限りじゃ、外部から操作されているぴょろ。
内部からの干渉を受け付けないと見ていいぴょろ」

「じゃあ外に出るしかないって事?」

「そういう事ぴょろ」


 完全に八方ふさがりだった。

効果的な策が見つからない。

糸口は見えてきているのだが、具体的な対策には至らないのだ。

これでは何の意味もない。


「う〜ん・・・外に出ないと駄目・・・・
でも外には出れない・・・・・う〜ん、う〜ん・・・・・」


 何とかしたいという気持ちばかり先走り、肝心の解決が思い浮かばないディータ。


(宇宙人さんならどうするかな・・・?)


 ディータはふと思う。

危機的状況をいつも乗り越えてきたカイなら、こんな時どうするだろうか?

カイなら―――


「そうだっ!宇宙人さんだ!」

「ど、どうしたぴょろ・・・?」


 突然声を上げるディータに、ピョロが目を丸くして見る。

そんなピョロの腕を掴んで、ディータは元気良くぶんぶん腕を振った。


「宇宙人さんだよ!
ここに宇宙人さんがいるんなら、宇宙人さんに助けを呼んだらいいんだよ!」

「ど、どうやって助けを呼ぶぴょろ?!」


 カイが何処にいるのかは分からないが、少なくとも閉じ込められている空間の外にいるだろう。

外にいる者にどうやって助けを呼ぶのだろうか?

ピョロの疑問に、ディータが答える。


「簡単だよ!
宇宙人さんみたいにすればいいの」

「カイ?
あ・・・・・なるほどぴょろ!」


 ディータの含みのある言葉に、ピョロは納得顔で賛同した。


























<to be continues>

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