VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 7 -Confidential relation-






Action25 −自爆−




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依然、メインブリッジは硬直状態が続いていた。


「敵主力、今だ動きを見せません」

「キューブ三機、周囲に展開。攻撃する様子はありません」


 逐一外部状況を報告するアマローネとベルヴェデールだが、声には疲労があった。

休む間もなく状況確認をするのはいつもの事なのだが、敵が一向に攻勢する様子がないのだ。

間近に接近する様子もなければ、遠ざかる様子もない。

攻撃を仕掛けてくるのかと思えば、ただ延々と周囲を動き回っているだけ。

こちらの様子を観察でもしているのか、何か他に狙いでもあるのか。

怪しい動きを見せているのには変わりはないが、同じ動きを延々繰り返すだけでは見ている側が神経を磨り減らす。

せめて何か事態が変化すれば力も入るのだが、ただ周りを右往左往するのを見るだけではきりがない。

この状況が数十分も続ければ、二人が肉体的・精神的にも疲弊するのは無理もなかった。


「一体何を企んでいるんだ・・・・」


 中央モニターから敵の様子を目視しながら、ブザムは真意を図るべく考え込む。

出身・勢力・目的共に正体不明のこの敵は、タラーク・メジェールに対して『刈り取り』作戦を展開しようとしているのである。

その作戦が如何なるものかは立ち寄った砂の惑星で、これ以上にない光景として見せ付けられた。

星に住む人間全ての臓器を文字通り『刈り取る』。

作戦内容が同じであるとするならば、タラーク・メジェールもまた同じ運命を辿りかねない。

そんな敵が何の目的もなしに来襲する事はない。


「攻撃を仕掛けてくる様子はないみたいだね。
全く何を考えているのか・・・不気味な連中だよ」


 攻撃しないのならこちらから仕掛ければいいのだが、罠の可能性を考慮するとそうもいかない。

迂闊な判断が大局を見誤ってしまう。

前回の恐るべき敵の規模と徹底した戦力の拡大を考えれば、懸念してしかるべきなのだ。

先行きが見えない敵の動き。

いかにも自分達を攻撃してくれと言わんばかりの隙だらけな動きだが、意味があるようにも見える。

深読みしようとすればする程、敵の術中にはまっていきそうな感覚をマグノは感じていた。


『こちら、メイア。敵に主だった動きはありません。
攻撃を開始しますか?』


 音声のみの通信で、メインブリッジに涼やかなメイアの声が届く。

ブザムやマグノと同様に、メイアもまた同じような葛藤を強いられているのだろう。

攻撃をするか、様子を見続けるか。

敵に攻撃を仕掛けるのであれば、今は絶好の機会である。

何しろ敵は何の迎撃体制も取らずに、不用意に周辺を飛び回っているだけなのだから。

戦力もピロシキ一機にキューブ数機のみなのだから、ドレッドチーム総出で戦いを挑めば確実に勝利出来る。

が、それはあくまで敵が何も企んでいない場合である。

もしもメイア達から攻撃を仕掛けてくるのを目的とするならば、必ず罠が待ち構えているだろう。

その場合なら様子見が正解なのだが、もしも敵が時間稼ぎを目的としているならば話はまた違ってくる。

例えば尖兵として今の戦力をぶつけ、後に大規模艦隊が押し寄せてくるなど――

長期戦を考えての今の動きならば、予備戦力に不足するメイア達側は早期決着に望まなければいけない。

間違いが許されない二者択一。

メイアがマグノやブザムに最終確認を行うのも無理はない。


「・・・・・・・」


 問われたブザムもまた即答出来ない。

どっちの選択が正しいのか、ブザムにも判らない。

情報が少ない上に、敵襲撃が突然過ぎた。

突発的な奇襲は今に始まった事ではないが、頭脳明晰なブザムでも判断に困る選択肢だった。

マグノも同じである。

たった一手の選択ミスがクルーの危機を招きかねない以上、慎重に事を対処しなければいけない。

二人は答えられず、メイアやブリッジクルーの優秀なるクルー達も答えを待つしか出来ない。

一クルーに過ぎない自分達が選択するには、あまりにも重い選択肢なのだ。

下手に進言してお頭達が決断し、その結果が間違いであった時――

責任を取ると軽々しく言えない損失が待ち受けているかもしれない。

そう思うと何も言えなくなり、上からの判断を仰ぐしかなくなる。

敵が動かなければ、味方側もまた動けない。

正に硬直状態だった。

時はただ流れていく・・・・・・















騒音が駆け巡る。

反響する機械音に合わせるように、ボール型のマニピュレ−ターがフル稼動する。

上下二本設置されたレールが流れるように動き続け、運搬の役目を無機質ながらに黙々と果たしていく。

レジシステム裏・搭乗ゲート。

パイロットの注文により装備品を機体に武装し、出撃までの行程を行う場所。

既にドレッドチームが出撃した後は静かなこのフロアも、現在急ピッチで別作業が行われていた。


「とにかく、出撃さえ出来ればそれでいい!
時間がないんだ、武器とかは最低限で頼む!」


『ご一緒にホーミングミサイルはいかがですか?』

「・・・俺が笑っている内にやめとけよ、そういうジョークは」

『あはははは。一応念のためにつけておくね』


 ウインク一つ残して消える茶髪のレジクル−の映像を睨みつつも、カイは焦燥に駆られていた。

予備ドレッドに乗り込んだカイはすぐさま出撃しようとしたのだが、思っていたよりも時間がかかっていた。

保管庫に長期間格納されていた予備ドレッドは一通りの整備はされてはいたのだが、実際に出撃するとなるとそのままではいかない。

武装もさることながら、戦闘に耐えうるエネルギーを供給しなければならないのだ。

ガスコーニュとレジクルー一同の協力で作業は急スピッチで行われてはいるが、それでも数分間は待たなければいけない。

コックピットに待機したままただ待つしか出来ないカイは、苛々しながら腕を組んでシートに座っていた。


「時間かかるな・・・・早くしねえとやばいってのに」

『何をそんなに慌ててるんだい?』

「うおうっ!?って何だ、お前か・・・」


 目の前で突然リアルタイムでの通信モニターが展開されて、カイが思わず仰け反ってしまう。

意表がつけたのが嬉しいのか、モニターに映るガスコーニュはにやにや笑って言う。


『お前か、はないだろう。あんたの無茶な注文にこっちはてんてこ舞いだってのに』

「まだ出撃できねえのかよ」

『一人前のパイロットならともかく、今日初めての初心者が乗るんだ。
きちんとしておかないと、おっ死ぬのはあんただよ』

「くっそう、時間がねえってのに・・・・」


 両手の指を合わせて硬く握り締めながら、カイは波立つ自らの気持ちを懸命に押さえつける。

傍目から見ても、カイが何かに焦っている様子が見受けられた。

ドレッドに初めて乗るのが怖いとか、敵来襲に怯えているという様子でもない。

ガスコーニュはじっとカイの様子を見ながら、真面目な顔で話をきり出した。


『あんた、さっき連中が何か企んでいるらしい事を言っていたけど・・・
敵さんが何をやろうとしているのか知っているのかい?』


 真剣な声色に、カイも真剣に答えた。


「・・・知っている。いや、予想は出来ているっていうべきかな。
さっき話を聞いて閃いたんだ」

『だったら、話してくれないかい?
アタシも協力出来るかもしれない。
何だったらお頭やBCに・・・・・・』

「駄目だ」


 ガスコーニュの願いの声を遮る様に、カイは正面を睨みながら言う。


「ちんたら相談している時間がない。
一刻も早く行動に移さないと手遅れになる」


 言葉が重い。

手遅れというからには、敵襲に苦戦すると言った軽い意味ではないのだろう。

普段から大言壮語するカイだが、今回は只ならぬ響きがガスコーニュにも伝わってきた。

相談しないというのも、一人手柄を独り占めしようという浅ましさではないのだろう。

ガスコーニュはしばしカイを見つめ、穏やかな顔をして頷いた。


『どうやらあんたに任せるしかないみたいだね。
しっかり頼んだよ、ヒーロー』


 ガスコーニュらしい激励に、カイもにっと笑って親指を立てた。


「おうよ!お前らこそ、作業のほう頼んだぜ!」

『了解、すぐに仕上げるよ!』


 景気のいい声を最後に、ガスコーニュからの通信映像は途絶えた。

少しの間だが話して気が紛れたのか、カイも静かにシートにもたれかかってじっと時を待った。

ドレッドでの出撃。

まさかこんな日が来るとは夢にも思わなかったが、不思議と不快感はなかった。

初めてこの船に乗り、メイア達と対立したあの時なら反発心もあっただろう。

自分が相棒と決めたあの蛮型以外に身を任せられる機体なんてない。

そう思っていたから――

やはりこれも、メイア達と出会っての心境の変化なのだろうか?

海賊達、女達をまだ本心から受け入れられない。

仲間入りを拒否したのが、その顕著な表れだ。

でも――

たった二ヶ月余りの生活が、劇的に人生観そのものを変えてしまったのは間違いない。

それだけは――――カイは認める事にした。

コックピットから上を見上げて、考え込む事少し。

これまでを振り返る静かな時間が、いよいよ破られる時がやってくる。


『大変だぴょろ!大変だぴょろぉぉ〜〜〜!』

「だあああああ!落ち着け、うるせえ!!」


 狭いコックピット内を反響する声に耐えかねて、カイはシートから起き上がった。

中空に浮かぶ通信モニターにはピョロが映し出されており、起用に焦り顔を浮かべている。


『落ち着いてなんてられないぴょろ!大変だぴょろよ!』

「へっ・・・どうだった。
想像を越える物凄い反応があっただろう?」


 カイやガスコーニュが出撃準備を行っている間、ピョロに探らせていた敵エネルギー容量。

ピョロの驚愕を予想通りとばかりに冷静に受け止めるカイに、ピョロは目を剥いた。


『さては知っていたぴょろね!どうして早く言わなかったぴょろ!』

「俺だって気づいたのはさっきだよ!
で、結果はどうだった?」


『敵内部からエネルギー容量が膨大に上昇しているぴょろ!
このまま加速すれば臨界点を超えて・・・・』

「うし、それだけ判れば十分。
・・・・・くそ、嫌な予感が的中しやがった。
ガスコーニュ、まだか!?」


 ピョロを横目に叫ぶカイを待っていたかのように、ガスコーニュが別回線で姿を見せる。


『作業、終わったよ。換装も済んだ。存分に暴れておいで!』

「おうよ!
ピョロ、算出したデータをばあさん達とガスコーニュに見せておいてくれ。
見れば一発で分かるからな」

『カイ、気をつけるぴょろ!下手に刺激したら・・・・』

「分かっているよ。ちゃんと対策は練ってある。
んじゃあ行ってくる!」


 そのままカイはシートに座り直し、ボール型の操縦桿を握る。

兵装完了した予備ドレッドにエネルギーが駆け巡り、機体が光にコーティングされる。

レジスタッフ一同が見守る中、カイが出撃しようとしていた。





――そのまま待つ事一分後――





「・・・・どうやって飛ばすんだ、これ?」


 カイの問いかけに、ガスコーニュとピョロが今度こそ床に倒れた。

蛮型とドレッドの操縦の仕方はまるで違う。

仕組みからして異なる機体を動かすには、最低限の操縦方法を身に付けなければいけない。

当然だが、カイはそんな方法を学んですらいなかった。

気まずい雰囲気が周囲に満ちる中、カイは必死になって操縦桿を握る。


「飛べ、飛べ!飛べよ!!
うきぃぃぃーーーー!もう、怒ったぞ!!
飛べって・・・・・・・・」


 カイは握っていたボール型の操縦桿を離し拳を振り上げると、


「言ってんだろうがーーーーー!!!!」


 そのまま振り下ろして、思いっきり操縦桿をぶん殴った。

すると――


「・・・え?・・・え?・・・・・・・
あ・・・・ひゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ―――っ!!!!!」


 衝撃を加えられた操縦桿が光り輝いたと同時に、予備ドレッドが急加速で発進する。

カタパルトから勢いに乗ってと、そのまま射出口から外へと目にも止まらない加速で飛び出していった。

その場にいた全員が呆然とする中、


「・・・進歩のない奴だぴょろ」


 カイの蛮型初乗りの経緯を知るピョロだけが、一言こうコメントした。















「・・・・・ぁぁぁぁぁあああああああああああああーーーーー!!!!」


 急激な圧力と突き抜ける加速に身体を締め付けられながら、カイは悲鳴を上げながら操縦桿を握る。

急発進を余儀なくされた予備ドレッドは勢いを止める事無く、加速を続けていく。

ニル・ヴァーナ本船から飛び出した予備ドレッドは真っ直ぐに走り続け、あろうことか・・・・


「って、・・・・・・・待て待て待て!!
やばいやばいやばい!!!」


 コックピット内の機能全てが正常に起動し、外部モニターがクリアーに映し出される。

カイはそのモニターより、グングン画面一杯に接近して来る一機のキューブ型に顔色を青ざめた。

このまま衝突すればどうなるか?

誰よりも一番よく知っているカイは、慌てて操縦桿を必死に握り締めて叫んだ。


「回避、回避!避けろ、避けろ!!」


 懸命に叫んで呼びかけると、手元の操縦桿が輝き船は右に傾く。

間一髪で針路変更を完了した予備ドレッドは、何とかすれすれでキューブ型の横をすり抜ける。

何とか危機を回避したカイはほっと一息つくが、そのままふと気づく。


「・・・・どうやって止めるんだ、これ?」


 ドレッドに自動停止機能はない。

カイがその事実に気づいたのは、ニル・ヴァーナが後方の彼方まで遠ざかった時だった―――

















「やべえ・・・・どうしよう・・・・・
・・・・・っと考えている暇もない、か。
ま、船から離すっていう点では予定通りではあるけどな」


 カイは後方から追ってくる機影を確認し、表情を引き締めた。
































<LastAction −漂流−に続く>

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