Unreal・World InterMission1   「映画館に行こう」

 

 

 

ピピピピピッ

目覚まし時計の音が私を眠りから起こす。

時間を確認する、時計は7時を指していた。

セイナ「やっと今日がきた・・・・・」

私は今日を楽しみにしていた、先輩と映画を見るこの日を・・・・

昨日はなかなか眠れなかった、今日の事を考えていたから。

ベッドから体を起こし、1階に下りていく。

1階では母が朝食の準備をしていた、そしてこっちを見て一言。

母「おはようセイナ、何だか嬉しそうね、そんなに今日が楽しみだったのかしら」

セイナ「・・・・・・・・」

顔に出ているのだろうか。

母「いいから顔を洗ってらっしゃい、ご飯もすぐ出来るから」

言われたままに顔を洗いに行く、洗面所で自分の顔を見てみる。

変わらなかった、顔を洗いリビングに戻る。

母「はいセイナ、朝ご飯よ」

朝食のメニューは赤飯だった、何かあったのだろうか。

セイナ「お母さん・・・・これは?」

その質問に母は、とんでもない事を言い出した。

母「セイナのお祝いよ、だって彼氏とデートでしょう」

セイナ「お母さん!?」

自分でも顔が赤くなってしまうのを実感できた。

父「2人ともおはよう・・・・・このメニューは?」

ちょうど父が起きてきた、赤飯を見て疑問に思ったようだ。

母「あらあなた、これはセイナのお祝いですよ」

父「何かあったのか?」

母「セイナったら、彼氏とデートなんですって」

母は言ってしまった。

セイナ「ちょっとお母さん」

父「そうかデートか・・・・・・・デートだと!!」

ああ、父が怒ってしまった、ゴゴゴゴゴゴとか効果音が出そうな感じだ。

父「私は許さないぞ、そんな事・・・・・」

シュッ  トスッ

壁に包丁が突き刺さる。

母「あなた・・・・・ゆっくり向こうで話しましょう」

ニッコリと笑う母、凄く怖い。

父「わ・・わたしが悪かった、勘弁してくれ」

やっぱり母には勝てないか。

母「駄目です、私はお父さんとお話してるから、先にご飯食べちゃいなさい」

そう言って父を連れて行く母。

セイナ「・・・・・・・・・いただきます」

いつもなら味わって食べるのだが・・・・・・ギャーとか悲鳴が聞こえたけど聞かなかったことにしよう。

食事も終了し、部屋に戻ってこの前買った服を着る。

この日の為に用意したものだ、先輩・・・何か言ってくれるだろうか。

今の時間を確認する、9時近くになっていた。

机の上から財布を取り、1階に下りて再び洗面所に向かう。

鏡で自分の顔を見る、前に比べると笑えるようになったかな。

これも先輩のおかげだろう、そんな事を考える。

母「そろそろ時間よー」

リビングの方から母の声が聞こえる、慌ててリビングに向かう。

母「セイナ、頑張ってらっしゃい」

リビングについた途端、変なことを言い出す。

セイナ「お母さん、何を頑張るのよ」

母「いろいろよ、お母さんは応援してますからね」

意味ありげな視線を送る母。

母「ささっ、もう時間よ」

玄関の方に私を押し出す、疑問はあるが遅刻する訳にはいかないので靴を履く。

ドアを開け外に出ようとすると。

母「セイナ、あなたは前より優しくなったわね、その人に感謝しなくては」

セイナ「お母さん・・・・」

母「その人の事・・大事にしなさいよ、いってらっしゃい」

優しく微笑んで送り出してくれた、私もそれに答えるように。

セイナ「いってきます」

笑顔で答えた、そして外に出る。

待ち合わせ場所の公園に向かう。

公園は家から20分位の所にある、その道は景色がよく、私も気に入っている。

景色を見ながら歩いていると、公園なんてすぐに着いてしまった。

時間は9時35分、約束は10時だから時間が余る。

ベンチに座り目を閉じる、すると昔の光景が見えてきた。

私はいつものようにここのベンチに独りで座っていた。

家族がいたけどいつも独りだと思っていた、昔からそうであったし、そしてこれからも続くと思っていた。

だけどそんな日々は突然終わった。

私独りの世界を壊した人、それが先輩だった。

「起きてるかー」

何かが私の頬を引っ張る、目を開けると先輩の顔があった。

淳哉「やっと起きたか、昨日寝てないのか?」

頬を引っ張る手を離し、時計を見る先輩。

セイナ「人の頬を引っ張らないでください!」

淳哉「いや起きないから・・・・それにしても幸せそうな顔してたな」

セイナ「寝顔見てたんですか?」

淳哉「見てしまったものはしょうがない、まぁ可愛かったしな」

一瞬何言ってるのか理解できなかった。

セイナ「・・・・・!?」

言葉の意味が理解できるようになった瞬間、恥ずかしくなった。

淳哉「顔真っ赤だぞ大丈夫か?」

先輩が私の顔を覗き込んでくる、そして私の額に手を当てる。

淳哉「熱は無いようだ、大事を取って今度にするか?」

セイナ「いえ全然問題ありません、行きましょう」

楽しみにしてたんだからここで中止にする訳には行かない。

淳哉「わかった、じゃあ行こうか」

そうして2人並んで歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画館から出る、映画は評判通りの素晴らしいものだった。

セイナ「映画良かったですね」

淳哉「ああ・・・・」

上の空で返事をする先輩、調子でも悪いんだろうか。

セイナ「先輩どうしたんです、調子悪いんですか?」

淳哉「いや・・・そんな事は無い、ちょっと考え事してただけだ」

セイナ「そろそろお昼にしませんか、時間もいい具合ですし」

淳哉「そうだなそうしよう、どの店にする?」

この周辺にはかなりのお店があってどこにしようか迷ってしまう。

ちょうど目に付いた激辛料理専門店にしよう。

セイナ「先輩あそこにしましょう!」

先輩の腕をとって走り出す、そして店に入りテーブル席に座る。

淳哉「ここ何の店なんだ?」

セイナ「激辛料理専門店ですよ」

淳哉「な・・・なんですと!?」

理解して無いようだからもう一度言う。

セイナ「激辛料理専門店です!」

淳哉「・・・・・・・・・・」

それっきり黙ってしまう先輩、何かあったのだろうか。

メニューを見て料理を頼む、私はお勧めの激辛ピザを頼むことにした、先輩は大して辛くなさそうなものを頼んでいた。

しばらくして注文の品が来る、さっそく食べる事にする。

セイナ「おいしいですねこのピザ、先輩も食べてみませんか?」

淳哉「・・・・・・・・」

ブンブンと音がしそうなほど首を横に振る先輩、よく見ると恐る恐る自分の品を口に運んでいる。

セイナ「先輩もしかして辛いのだめなんですか」

淳哉「カレーとかは大丈夫なんだがこういうのはちょっと」

苦手な物は無いと思っていた先輩の意外な一面を発見して嬉しくなる。

淳哉「駄目だな大して辛くないのを選んだのだが、それでも辛い」

セイナ「先輩、このピザ辛くないですから食べてみませんか?」

ちょっと悪戯心を出して勧めてみる、私にとっては辛くないが普通の人にとっては辛いだろう。

淳哉「そうか大丈夫そうだから、一枚もらうよ」

そう言って一枚手に取り口に運ぶ。

淳哉「ッ!?・・・・・・・・・!!!!?????!!!?」

先輩はガタガタ震えだす、このままでは危険な気がした。

セイナ「ちょっと先輩大丈夫ですか!」

慌てて手元にあった水を渡す、そしてそれを一気飲みした。

淳哉「はぁ・・はぁ・・死ぬかと思った・・」

先輩は遠い目をしている、ちょっとやり過ぎたかな。

セイナ「ご免なさい、まさかこんな事になるなんて」

素直に謝る、そうしたら。

淳哉「わかってくれればいい、もうこんな事は止めてくれ」

その後会計を済ませ、外に出る。

セイナ「先輩、これからどうします?」

淳哉「とりあえずはブラブラしながら考えよう」

また2人で歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道で足を挫いてしまった。

淳哉「大丈夫か?」

セイナ「何とか・・・大丈夫です」

そう言って立ち上がろうとするが・・・

セイナ「痛っ」

無理だった、右足が凄く痛む。

淳哉「しょうがない」

そう言ってしゃがみこみ背中を向ける。

セイナ「先輩・・何を?」

淳哉「家まで背負って行くよ、その足じゃ歩くの辛いだろ」

素晴らしいチャンスを得たと心の中で喜ぶ。

セイナ「じゃあお願いします」

その背中に体を預ける、先輩の背中は温かかった。

淳哉「じゃあしっかり掴まって」

そうしてゆっくり歩き出す。

セイナ「先輩は優しいんですね・・・」

淳哉「そんな事は無いよ、親しい人にしか優しくないんだ」

セイナ「それでいいと思いますよ」

私はそんな先輩が好きなんです、と心の中で付け足す。

そして楽しい一日は終わった。

 

 

 

 

 

 

InterMission1  終了

 

 

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