もしかしたら現実と非現実の違いなんて無かったのかもしれない。
ただ現実という名のカーテンに包み隠されていただけで。
皆それに気付かなかった・・・・
いや誰もが気付きたくなかったのかも。
しかし俺は知ってしまった。



Unreal・World 第2話「非現実的な世界の始まり」



教室に入ってまず目に付いたのが床の色
赤い液体が足元を流れている。
淳哉「インテリアデザイナーもびっくりだな・・・・・」
とりあえず驚いた、教室一面に血を大量にぶちまけたような色になっている。
ミリィ「淳哉、何かあったノ?」
とりあえずミリィは廊下で待たせてる。
淳哉「たいした事は無い、もうちょっとそこで待っててくれ」
ミリィ「わかったヨ」
そして教室の奥の方を見渡すと、何かが転がってる、気になって近づいてみた。
淳哉「掃除当番は何やってんだか・・・・・・・ッ!?」
転がっていたものは、人間の首だった、さっきまで活動していたであろう人間の首。
淳哉「うっ・・・なんで・・こんなものが、じゃあこの床の・・・液体は」
今までテレビとかでしか見た事が無いような光景を目にしている。
このあたり一面に広がる色、赤、人間の首、何が教室を紅く染めたのかを考えると、人の血としか考えられない。
淳哉「・・・・・それにしても、何で落ち着いていられるんだろうな」
自分が意外と冷静なのが不思議だった。
むしろこういう光景を望んでいたのかもしれない、そんな考えが頭を浮かぶ。
淳哉「・・・・・まさかな」
即座にその考えを振り払う、そんなことを考えるよりも帰る事だけを考える事にした。
誰があの死体を造ったのかは、この際どうでもいい、今は生きて帰るだけだ。
教室のドアを開けるまでしていた変な音もしなくなったし。
淳哉「結局何の音だったんだろう」
音の正体が気になったが、とりあえず教室のドアに向かって行こうとした時。
ミリィ「キャァァァッ」
廊下からミリィの悲鳴が聞こえる。
淳哉「チィッ、こんな事ならさっさと帰ってりゃよかった」
手近にあった椅子を掴み廊下に飛び出す。
淳哉「何だよこれは!」
廊下で見たのは大型犬くらいのサイズがある巨大蜘蛛と、そいつの吐く糸に足を縛られて動けなくなっているミリィがいた。
淳哉「大丈夫か、ミリィ?」
最悪の状態になってない事を祈りつつ聞く。
ミリィ「ハハッ・・・動けないけど、大丈夫だヨ」
ミリィが無事な事に安心したが、それよりこの蜘蛛を何とかしないと。
淳哉「ミリィ悪いけど、ちょっとそのまま待っててくれ」
ミリィ「淳哉?」
淳哉「ちょっと害虫駆除をしてくる」
その言葉を聞き、ミリィが驚いた表情をする。
ミリィ「淳哉!私はいいから、早く逃げテ!」
俺は首を横に振った。
淳哉「悪いけどそれはできない、独りだったら迷わず逃げたんだが」
ミリィ「いいから逃げテ!」
淳哉「嫌だ!お前を置いて逃げて、そして俺独り生き延びて後悔しろってか、そんなのお断りだ」
強く言い放つ、ここで逃げたら絶対後悔する事になるのはわかっているので、逃げるわけにはいかない。
ミリィ「淳哉、怖くないノ?」
淳哉「・・・・・・・」
正直とても怖かった、だけど言葉にしなかった。
ミリィ「・・・・・淳哉」
淳哉「安心しろ、こんな所で死ねないからな」
嘘だった、ミリィを落ち着かせるために言った嘘。
淳哉「さぁ・・・・・・いくぞっ!」
俺は蜘蛛に向かって走り出した、蜘蛛は何故か今までの会話中には襲ってこなかった。
淳哉「うおぉぉぉっ!」
蜘蛛目掛けて椅子を振り下ろす。
ガンッ
淳哉「えっ?」
しかし壊れたのは椅子の方だった、蜘蛛の足によって破壊された。
そのまま俺を狙って足を伸ばしてきた、とっさに後ろに飛ぶ。
シュッ
淳哉「くぅっ」
間一髪回避できたが、右足が痛む、目をやると軽く切れている。
ミリィ「淳哉!」
後ろからミリィの声がするが、それに反応する余裕は無かった。
淳哉「はぁ・・はぁ・・どうすればいいのやら」
唯一の武器だった椅子も壊され、手に持ってるのはただの鉄の棒。
このままだと恐れていた最悪の状況になってしまう。
淳哉「そうだ!」
最悪の状況から脱出する手段を思いつく、ただ条件があるのが難点だ。
淳哉「ミリィ、その足の糸は床にくっついてないよな」
条件を確認するため、後ろを向かずに聞く。
ミリィ「大丈夫、くっついてないヨ」
それを聞き、早速作戦を実行する。
蜘蛛から目を離さないようにしながら、ゆっくり後ろに下がる。
蜘蛛は同じくらいのスピードで前進してくる、そのままスピード上げるなよと祈りながらさらに下がる。
ミリィの所に辿り着くと、ミリィをお姫様抱っこの要領で持ち上げる。
ミリィ「淳哉?」
淳哉「害虫駆除は失敗だ、てな訳で逃げる」
俺はミリィを抱っこしながら、階段の方へ逃げ出した。
幸いな事に階段は俺達が向かっている方にある。
淳哉「ミリィ!害虫はついて来てるか?」
ミリィ「急いで!アイツ速いネ!」
その言葉から、かなりヤバイ事になってると思いながら、階段まで辿り着く。
階段を一段飛ばしで降りながら、どうすればいいのか考える。
ちょうど階段の踊り場にワックスの缶が置いてある、それを見てミリィに指示を出す。
淳哉「ミリィ!制服のポケットにライターが入ってるから、取ってくれ」
ミリィ「こんな時にタバコでも吸うつもりナノ?」
俺の制服のポケットからライターを取り出す。
淳哉「俺は煙草は吸わないからな、こうするんだよっ!」
ガシャンッ
ワックスの缶を蜘蛛の方に蹴り倒す。
俺の行動を見て、察したらしく。
ミリィ「OK!火遊びの時間ネ!」
シュボッ
火の点いたライターがワックスの上に落ちる。
淳哉「正解だ、この間に距離を稼ぐぞ」
すぐに階段を折り始める、そして後ろから熱気が伝わってくる。
ミリィ「私たち下手したら、犯罪者デス」
ミリィがふざけた顔で聞いてくる
淳哉「そんな事あとで気にすればいい、今は逃げることだけを考える」
走ってる間に1階に着き、昇降口に向かって走る。
淳哉「もう少しで外に出れるぞ・・・・・・・・そんな」
ミリィ「嘘・・・・」
昇降口で俺達が見たのは、びっしりと張られた蜘蛛の巣だった。
淳哉「敵も馬鹿じゃなかったって事かよ、はぁ・・・」
ミリィ「そんな・・・ここで終わりナノ」
前方には蜘蛛の巣、後方にはさっきの蜘蛛。
淳哉「すまんなミリィ、逃げるの失敗しちまった」
最悪の結果を迎えてしまった、周りを見渡しても打つ手無し。
ミリィ「気にしないでイイヨ、ここまでありがとう・・・」
悲しく微笑むミリィ。
淳哉「・・・ごめんな・・・・
ここまでかと思い両目を閉じる。
「あきらめるのは、まだ早いわよ」
外から声が聞こえる。
淳哉「その声は伊藤さんか!」
ミリィ「唯!?」
唯「ちょっと待ってなさい、今そっち行くから」
そう言うと昇降口に張っていた蜘蛛の巣が燃え始める。
そして、伊藤さんが中に入ってきた。
唯「とりあえず2人とも無事?」
淳哉「ああ、なんとかな・・・・その手に持ってる物は?」
伊藤さんは右手にリュック、左手にはごつい槍を持っていた。
唯「ああ、これはね私の武器なんだ、あなた達が見た、その化け物と戦うための」
左手の槍を見ながら言う。
唯「竹内君、あなたにプレゼントがあるんだけど、その様子じゃ持てなそうね」
俺の方を見て笑う、それで俺はずっとミリィを抱えたままだった事に気付く。
唯「竹内君、古坂さんをちょっと下ろしてくれるかしら」
淳哉「ん、ああ」
言われてミリィを床にそっと下ろす。
ミリィ「・・・・もう少しこのままがいいのに、残念デス
ミリィが残念そうに何かつぶやく。
唯「竹内君、これ使いなさい!」
伊藤さんがリュックを手渡す、それを開けてみてびっくりした。
淳哉「拳銃!?これ本物か?」
中身はグロック2丁とマガジンが大量に入っていた。
唯「おもちゃを持ってきてもしょうがないでしょう、もちろん本物よ」
ミリィ「何でそんなもの持ってるノ?」
もっともな疑問をぶつける、しかし。
唯「秘密よ、まぁそんな事は気にしないで、使ってちょうだい」
淳哉「気にはなるが、ありがたく使わせてもらおう」
リュックからグロックを取り出し、ベルトに突っ込む。
淳哉「蜘蛛はどうするんだ?」
そろそろ近づいているであろう蜘蛛の方を見ると。
唯「蜘蛛は私に任せてちょうだい」
蜘蛛に向かって、走り出している伊藤さんがいた。
圧倒的だった、凄いスピードで蜘蛛に近づいたかと思うと、素早い攻撃で蜘蛛をぼろ雑巾に変えていた。
そしていきなり蜘蛛の体が燃え上がり、灰になった。
ミリィ「凄イ・・・・」
淳哉「凄すぎだろ、あれは・・・」
その光景を見て、俺は生きて帰れるんだなと実感した。






2話  終了

NEXT Unreal・World 第3話「能力者」




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後書き
夢幻「どうも、作者の夢幻です」
唯「今回のアシスタントの伊藤唯です」
夢幻「何かコメントはあるかね」
唯「なんか中途半端よね・・・・」
夢幻「・・・・・(汗)」
唯「・・・・・・・(にやそ)」
夢幻「・・・・・・・・(滝汗)」
唯「作者さん、次はこんなことにならないようにね(槍構えてにっこり)」
夢幻「わかりましたボス、誠心誠意頑張らせて頂きます」
唯「次回視点変更するらしいじゃない?」
夢幻「斎藤視点で書こうと思っている、まぁわからないがな」
唯「今回の後書きはここら辺で終わらせましょう」
夢幻「うんそうだな、それでは皆さん」
唯「次のお話でお会いしましょう」
夢幻・唯「さようならー」