恋姫†無双 狼たちの三国志演舞 第三話
何はともあれ遼西に到着した加納たち三人組。
ただ、やはり加納と如月はこの世界の人間ではないため目立つ。
溶け込むのには少々無理があるようだ。
「気になさるな。我々はすでに道を同じくした同士同然。助け合うのは当たり前であろう?」
「そこまで思ってもらえてるとはありがたい話だ。それで、ここの領主様とは話は通じているのか?」
「もちろんだ。数日前に文書を送り、泊まっていた街の宿に返事が来たのでな」
「なら上等。案内してくれ。もっとも、俺たちのことはあちらさんは知らないだろうけどな」
俺たちということは加納と如月ということだろう。すでに趙雲のことは知っているのだから。
恋姫†無双 狼たちの三国志演舞 第三話
加納と趙雲が話し込んでいると、その横からなにやら甘ったるい匂いが・・・
「二人とも盛り上がってるところ悪いんだが、腹減ったんで失礼してるよ」
と、如月がカロリーメイト(フルーツ味)を食っていた。
「・・・お前いつの間に買ってたのか?」
「ほら、ここに来る前にコンビニ寄ったろ?あん時にな」
「・・・ああ、買ってたな」
あの鏡に近づく前に2人が寄ったコンビニだろう。
加納はミンティア・ドライハードと2Lのアクエリアスを買ったが、如月はどうやら200円のカロリーメイトを四つも買った。
如月が持つビニール袋の中身がそれを物語っている。
ちなみにゴミは袋の中に。いくらなんでもこの世界で捨てて帰るわけには行かないだろう。
「んで、俺の分は?」
「もち。チーズ味でよければ」
「あざーす」
といって箱を受け取る加納。2袋入りの大きなタイプ。
「・・・それは一体?」
趙雲も気になって聞く。
もともと好奇心旺盛な彼女のことだし、気にならないことはないのだろう。
「携帯用非常食だ」
といって超雲に1ブロック渡す如月。
「・・・食べ物ですか?」
「まあな」
「・・・見たこともないものだが香りはよさそうだ。では・・・」
とぼやいて、一口。
「・・・・ほう、なかなか・・・それにこれなら腹持ちもよさそうですな」
「ま、特定保健用食品だし」
「んなもん指定する制度がねえこの世界じゃ言うだけ無駄だと思うが」
と苦笑する加納。
「ほう、それは一体?」
「よくは知らねえんだが・・・」
とまあ、街の大通りの端のほうで雑談に興じる彼らだった。
大通りとは言いつつ、幅は4mほどしかない。
それゆえにぎわっている現状では、立ち止まっている加納たちは邪魔でしょうがない。
特に大型バイクを押して歩く加納と如月の二人はほぼ確実に邪魔だ。
それを考慮してとりあえず目的地である王城に向かうことにした。
数十分後、王城に到着した三人。
門番に止められたが、超雲の持っていた公孫賛直筆の手紙を見て納得したのか、すぐに道を明けた。
しかし、いくらなんでも加納と如月は止められたため、城の外の本屋で待つことにした。
して、王城の客間。
趙雲と公孫賛が会談していた。
「公孫賛殿、お目通りお許し頂きありがとうございます」
「ああ、楽にしてくれ」
「はっ」
公孫賛は、きれいな赤毛をもつ美少女で、その瞳には見た目に似合わず少年のような幼さと鋭さがある。
さらにスタイルも程よし。
「それで、手紙の件だが・・」
「はっ。この趙子竜、この槍の全てをあなたにささげましょう」
「分かった。では、我が軍の客将という扱いで仕えてもらう。下がってよし」
「はっ」
そして、そのまま玉座を後にした趙雲。
それから3人は合流した。
事の顛末を話した趙雲に、加納が返す。
「以外にあっさり許してくれたんだな」
「同感」
「ま、これだけの戦乱の世ですからな。少しでも戦力は多いほうがいいでしょうな」
「無理もねえか」
と本屋の前で喋っていると、虫の音が加納と如月の腹から聞こえた。
「あ・・」
「う・・・」
「フフフ・・・致し方ないですな。私が出すので食事に行きましょうか」
「すまねえ。金入るか、俺らの世界に帰れたら奢るわ」
「それでは何を奢ってもらうか、考えておかねばなりませんな」
と、如月の言葉に忍び笑いをする趙雲。
女のこういう表情はとても怖い。
「ハハハ・・・どうしよう」
「あきらめろ。言い出したのはお前だ」
と、少し固まる如月の肩を軽く叩く加納。
助けるつもりはないようだ。
そしてその日は趙雲のおごりで腹を膨らせた一行だった。
数日後、街一番の料亭で住み込みで働きだした加納・如月。
この料亭は「安い・早い・うまい」で有名なため、遼西に来た旅人はここで食事する人が多い。
そして、2人が働き出して数週間。
「いやー、二人ともお疲れさん。ほれ、飯だ」
と、料亭の親父が二人に水と食事を出す。
もはやすっかりこっちでの制服がなじんでいる2人だった。
「いただきます」
「いただきまーす」
仕事着のまま食べだす二人。
ちなみに、彼らのバイクは店の裏においてある。
とられないようにチェーンをかけ、そこから金槌で埋め込んだ釘とロープでつないである。
「やっぱおやっさんの飯はうまいな。俺らなんて始めたばかりだからまだまだだよ」
「気にすることはねえよ。2人とも筋はいいみてえだし、すぐに上達するさ。接客態度は文句ねえしな」
「そういってもらえるとありがてえ。おかわりお願い」
「あいよ」
ちなみに彼らは、元の世界ではフリーターとして生活していたとき、一番長く働いていたのがこういう外食チェーン店だったりする。
接客態度や仕事のスピードに関してはかなりしごかれたため、接客業は彼らにとっては慣れたものである。
すると後ろから足音が。
「今は休憩中ですかな?真面目に働いておられたようで。関心ですな」
趙雲だった。
「らっしゃあせ!ご注文は?」
「いや、そこのお2人に話があって来ただけですが・・ふむ。チャーシュー麺をお願いします。メンマ増量で」
「へい」
と、厨房へ走る店主。
「あれ?あんたいたの?」
「ふむ、私の姿も見えぬほどに熱心に働いておられたとは、ますます関心。これだと私に何か奢る日が近いうちに来るのは確実でしょうな」
「ハハハ・・・近いうちにな」
実はちゃっかり昼に食事しに来ていたのだが、彼らは忙しすぎてそこまで目が回らなかったのだろう。
接客も他の店員に任せていたようだし。
「それはそうと、2人に合わせたいお方がいる」
「誰だよ?」
加納が聞き返す。すると超雲が「どうぞ」と一言。するとそこに現れたのは・・・
「よ、よう」
「こ・・こんちわ」
「あのー、どちらさまで・・?」
「失礼、お二方。この方が公孫賛殿だ」
「へ?」
「は?」
面識のない2人はいきなりの趙雲の主君登場に驚いているようだ。
「どうも。加納恭介です。改めてよろしくお願いします」
「如月瞬です。加納と一緒に、俺もよろしくお願いします」
「いや、あまり硬くならなくていいよ。趙雲にある程度のことは聞いてる。こちらこそよろしくな。公孫賛伯珪だ」
と、公孫賛も加納たちの席に座る。
「しかし、このようなところに来れるほど暇ができたのですかな?」
「ん。まあそんなところだ。それにオレもここに飯食いにくることもある」
「ほう、それは少し驚きましたな」
すでに加納たちは食い終わったが、おろされるまで待つ。
すると、店主が来た。
「へいお待ち。チャーシュー麺で。領主様はいかがいたします?」
「そうだな・・・オレはラーメンと餃子もらおうか」
「へい。少々お待ちください。おいお前ら、手伝え」
「「うぃっす!」」
と、空いた皿を持った2人を連れて店主が厨房へと向かう。
「あの2人はここで働いてるのか?」
「はい。最近はあまり黄巾党の動きもないようですし、戦場に向かうこともないですからな。ただだらだらと暮らすのは身にあわないとか」
「なるほど。感心だな」
とうなずく公孫賛。超雲も気遣ったのか、二人の給料が少ないためとは言わない。
その夜。
店を出た加納と如月と趙雲は街のはずれにある河原に向かった。
「突然こんなところにつれてくるとは、一体何を考えておられるのか・・・しかもこんな時間に」
「突然悪いな」
「いえお気になさらず。して、何の御用でしょう?」
「簡単な話さ」
加納が、コンバットナイフを取り出した。
「俺かお前か、どちらが上か。確かめてみないか?」
「・・・どうやらそういうことですか。ならば言葉はいらぬでしょう」
趙雲もそのまま槍を構え、間合いをとる。
「じゃあ、始めようか?」
「いつでもどうぞ?」
不敵に笑う二人。
そのまま固まるかに思われた。
「・・・ぶぇっくしッ!」
如月が盛大にくしゃみをした。
それを機に、2人同時に駆け出した。
「でえりゃあああああぁぁぁぁぁぁ!」
「ゴフゥッ!?」
しかし、武器の差か一気に駆け寄った趙雲の槍の一薙ぎで吹き飛ばされたのだ。
加納のナイフは宙を舞い、趙雲が槍で弾く。
「………いくらなんでもそんな小さい武器で私と張り合おうというのは無茶ですぞ?投擲や弓矢ならまだしも、一対一の決闘でそんな刃物では長物に勝てるはずがないことはすぐに分かりそうなものですが?」
「うるせぇ………御託並べてる暇があったらかかってこい!」
すでに京介の目は戦うもののそれだ。
しかし、いくらなんでも相手が悪い。
「京介、これ以上は無茶だろ?やめとけよ」
「うるせぇっつってんだろうが!」
そういうと京介は上着を脱ぎ捨てた。
完全に丸腰の状態だ。
「あんなもん…鉄パイプと同じだろうがァァァァァァァァァァァァァ!」
完全にキれた加納。
趙雲に向かって一気にダッシュしていく。
「アイツ…しょうがねえな、趙雲」
「任された」
何を…とは今更だろう。
趙雲は向かってくる加納に対し、槍を低く構えた。
「せええええぇぇぇぇぇぇぇい!」
「ぐふおァッ!?」
趙雲の槍がうなりをあげて振るわれた。
峰打ちではあったが、加納のわき腹に直撃した。
気絶しているのかうめき声すらないところを見ると、しばらくは起き上がる気配がない。
「やれやれ・・・」
呆れた如月が加納を背負い、月明かりの元、3人は街へと戻っていった。
如月の心には、「今より絶対強くなる」という向上心が燃え上がっていた・・・
続く
感想返し行きます
西の迅帝さん
>キャラの強さとしてはやはり、武闘派としてこの世界に飛ばされたんだから、身体能力は英雄たちと同じくらいにしておきたいな、というのが俺の考えだったんですが、流石に無茶でしたね
>このほうが作品としてよくなったとは思います
>俺がやると主人公最強に突っ走りがちになるので、☆カノンさんに任せて正解でしたね
>これからもお願いしますm(__)m
いやいや、西の迅帝さんが下地を作ったからこそですよ
ただ、戦闘力に関しては現実的にしたほうが受けはいいかな、と。
厨に読んでもらう作品ならあれでもいいかもしれませんけど、さすがにああいう大きなところであのままあげるのはまずかったですよね…
がんばっていきます。何かもう…いろいろすいません
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