恋姫†無双 狼たちの三国志演舞 第二話


だだっ広い草原を、2人の男たちが歩いている。加納恭介と如月瞬だ。
とりあえずどこか街を見つけて住み込みで働かせてもらおうと考えている。
しかし、その肝心の町はおろか、村すら見えてこない。
2人とも草原をバイクを押しながら歩いていく。
リッターの加納にナナハンの如月だ。重くないはずがない。
すると、後方から声が。

「おや、旅のお方ですかな?」

2人に声をかけてきたのは、胸元が開いた白装束を着た、青い髪の毛の女性。

「まあな。アンタも?」
「まあ、そんなところです」

と、彼女は加納の隣に来る。

「おっと、自己紹介がまだでしたな。私の名は趙雲、字は子龍と申します」
「え?趙子龍ってあの?」

流石に慣れたか、如月も驚きが少ない。
しかしほっとくとまた何か叫びそうなので、加納が如月にゲンコ入れてから名乗る。

「俺は加納恭介だ。コイツは如月瞬。呼び方は好きにしてくれ」
「痛え・・・」
「だ・・・大丈夫なのですか?そんなことして?」
「コイツは転んでもただじゃ起きねえから大丈夫だ」
「い、意味をつかみかねるが・・・まあそなたがいいと言うならば・・・」

と、あまり気にしないことにしたんだろう。
そのまましばらくしゃべっていると、ふいに趙雲がたずねた。

「そういえば、お二方ともなぜこんなところにいるのです?」
「実は俺たち、この辺に来るの初めてなんだよ。ここから一番近い村か街に案内してくれないか?」
「ほう。私も向かおうとしていたところですし、ご一緒しましょう」


「その前に天国拝んで見たくねえかい?」
「その代わりこの世とはおさらばしてもらうけどな」


「ん?」
「あァ?」
「何だ?」

えらく威圧的な声が聞こえたので三人とも振り返ると、そこには刀を持った男たちが5人。
目元にほくろを持った中肉中背の男と長身の男が話しかけてきたようだ。
そのほかにも小柄な男や巨漢が2人。

「何の用だテメエラ?」

加納が返すとほくろの男が返す。

「大した用じゃねえ。とりあえずそこに有り金と身包み置いてさっさと置いてけ。そうすりゃ命までは取らねえぞ」
「うわ、出た」
「久しぶりのノリだよコレ」
「ほう・・この私を前にしてよく言えるな」

呆れる二人に対して趙雲が軽くキレるが、男は気にせずに続ける。

「お前のことなんぞ知るかよ。特にそこの兄ちゃんたちは珍しい服着てるしな。高値で売れるだろうよ」
「・・・ほう」
「ケッ、クズが」

3人の苛立ちはつのるが、表面上は怒りを見せずに対応する。
・・・趙雲の顔に筋が浮かんだ上に如月が悪態をついたが。

「とりあえずそのままおとなしくしておけば、女はすぐには殺さずにしておいてやるよ」
「だってさ。5:3だ。どうするお二人さん?」

加納がニヤリとして如月と趙雲に聞く。

「大人しく言うことを聞いてやる義理はないですな」
「とりあえずボコでいんじゃね?」

超雲が槍を構え、如月がメリケンを左手にはめる。

「というわけだ。運が悪かったなアンタら。ここで終わりだ」

とかいいながら加納もメリケンを右手にはめる。

「命ねえのはお前らだぜ?やっちまえお前ら!」
「かかってこいやテメエラ。まとめて昇天させてやんよ?」

加納とほくろ男が離れたところで啖呵をぶつける。
その後、ほぼ同時に仕掛ける両者。

「あのほくろ野郎は後ろで見物かよ」
「後でリンチだな。死ぬんじゃねえぞ?」
「当たり前だろうが」

などと軽口を叩き、如月と加納が離れて相手を殴る。
巨漢2人を相手にした加納。
小柄な男を狙った如月。
長身の男を狙った超雲。
数の上では加納達に不利に思われた・・・


しかし、一番危ないはずの加納が余裕を見せている。
少し離れて挑発する。

「オラ。かかってこいや」
「なめんじゃねえ!俺一人で十分だ!」

メリケンをはめた右手で挑発する加納に対し、巨漢Aはタイマンで仕掛ける。

「うおおぉぉぉぉぉ!」

刀を上に振りかぶり、そのまま振り下ろす。
土煙が一気に舞い上がるほどの勢いだったが、人を切った手ごたえはない。
それもそのはず、そこにいたはずの加納がいないのだ。

「野郎、どこいった!?」

と、焦って探し出すが、時既に遅し。

「ここだ、阿呆」

と、あっという間に後ろに回り込んだ加納が後ろから殴りかかる。
しかし、相手の反応速度も早い。
声が聞こえた瞬間に刀を背面方向に水平に振った。

「おっと」
「クソッ、ちょこまかと!」

しかし、加納がしゃがんでまたもや外れた。
そのまま加納が後ろに3歩ほど下がって間合いを取った。そして相手が刀を構える前に懐に飛び込んで、メリケン付の右を鳩尾に思い切り叩き込む。

「オラァ!」
「うぐぉっ!?」

そのままのけぞったところで顔面に飛び膝蹴り。浮かせて離れて再び距離を取る。
相手はそのまま倒れこんだが、鳩尾と顎にモロに入ったため、しばらくは悶えて動けないだろう。

「てめえ!」
「チッ・・・まだいたな」

もう一人の巨漢が切りかかるが、身のこなしだけでかわしまくる加納。

「どうした?俺はまだ無傷だぜ?」

相手の動きが止まったところで加納が挑発をかける。

「う・・うるせぇ・・・この野郎ォォォォォォォォ!」

雄たけびとともに再び切りかかる。
加納は今度は前にかわして懐に入り込む。

「ボディが・・・」
「しまった!」

右手を引いて、思い切りレバーブローを叩き込む。
相手に反応させる暇も与えずに。

「ガラ空きだぜ!」
「うがはぁっ!?」

相手がのけぞったところで、そのまま頭を前蹴りで蹴り飛ばす。
砂煙がまたかなり舞い上がった。

「雑魚が・・・相手すんのも一苦労だぜ」

向かってくる砂煙に対し、顔は両腕でガードしながらぼやく。
1人は気絶、もう一人も結構吹っ飛んだため、痛みでしばらく起き上がることはないだろう。



加納たちとは少し離れたところでのチビと如月の勝負。


「兄ちゃん。悪いことは言わねえ。おとなしく言うこと聞いてくれよ」
「ハッ!誰が!?潰してやるよ!」

チビが勧告するが、それを鼻で笑い飛ばす如月。その左手にはすでにメリケンサックが。

「あんまり時間かけたくねェしな。さっさと終わらすか。かかってこい!」

と、如月が挑発する。

「後悔すんなよ!」

と、チビが取り出したのは弓。
乱戦用に改良したのか、小型・軽量化されている。

「ほう・・・もうそんな技術があるのか」
「怖気づいたか?最終勧告だ。おとなしく言うことを・・」
「誰が聞くか。同じこと二度言わせるな」

構えたメリケンのほかに懐からサバイバルナイフを取り出し、右手で構える。

「ケッ!そんなちんけな武器で何ができるってんだよ!」
「でかいだけが武器じゃねえ。それを教えてやるぜ!」

と、弓を連射しながら距離を置くチビ。
矢自体は単発なのでかわせるが、体が小さい上ににチョロチョロ動くので攻撃を仕掛けられない。

「弓の扱いと戦い方はサシにしてはそこそこか。だが・・・」

動き回りながらもサバイバルナイフとメリケンを仕舞いこむ。

「これで・・・どうだ!」

如月はいきなり砂を蹴り上げた。

「うぐっ!・な・・・何しやがる!」

チビは砂煙に巻かれて一瞬だけ視界を奪われた。
しかし、如月にはその一瞬だけで十分だったようだ。
どこから取り出したのか、輪ゴムでその辺の砂利をパチンコのように飛ばしながら近づいていく。

「痛ッ!痛テッ!何しやがるテメェ!」
「安心しろ。殺しはしない」

右から左からチョロチョロ動きながら砂を蹴って煙を巻き上げつつ、間合いを一気に狭めていく如月。
するとメリケンを左手にはめて近寄り、胸倉を右手で掴み上げると左ボディブローを叩き込む。

「そのまま寝てろ」
「ぼごぅっ!?」

と、うずくまって動けなくなるチビ。

「すまんな。こっちも、こんな所で殺されるわけには行かねェんでな」

と、そのまま弓の弦をナイフで切り、趙雲のほうへと向かう。


そして、唯一槍という巨大な獲物を持つ趙雲。
何か余裕が伺える。

「さて、どうするか・・・」

すでに抜刀し、下段に構えている男に対し、超雲も槍を構える。

「どうした?来ねえのか?」
「貴様のような下種など触れたくもない。できるだけ手短に済ませたいが故、逃げるかさっさとかかってくるがいい」
「だったらしばらく付き合ってもらうぜ!」

と、いい加減痺れを切らしたのか切りかかる男。しかし超雲は構えたまま動こうとしない。

「へっ!いまさら怖ええのか?ならば終わらせるぜ!」
「でやあああああぁぁぁぁぁぁ!」
「何だ!?うおぁっ!?」

いきなり横なぎに振るわれた槍に刀を弾かれた男がのけぞるが、そのまま超雲が男を蹴り飛ばす。
すっ飛んでいった先まで追いかけ、そのまま心臓を貫いた。


ちなみに、加納に啖呵をかけた男だけだが、どうやら戦いっぷりに脅えたせいか、逃げ出したらしい。


戦いが終わり、そのまま集まって歩きながら談笑していた。
こういう切り替えが早いのは、彼らがある意味割り切っているからだろう。



「それにしてもやるねえアンタ。そんなでかい武器持ってるからそこそこできるんじゃないかと思ってたけどたいしたもんだよ」
「いや、そなたもなかなかだと思う。それに加納殿にしてもたいした実力をお持ちだ。さぞ名のある武家の人間なんだろう?」

如月と趙雲がお互いをたたえている。
ただ、間違っても加納にしろ如月にしろ、武に秀でているわけではない。
彼らの場合は「戦い」ではなく「喧嘩」だからだ。

「そうでもねえぞ?俺たちの技術は実戦で鍛えた物ばかりだからな。本格的に武術やってるやつには負ける」
「謙遜なさるな。我流であそこまで到達できたのならすばらしい物だと思うぞ。そなたたちは一体どこから来たのか気になるな」
「信じられねえ話だろうし、あまり話したくない。はっきり言って黒歴史だしな」
「お前ら2人で何をだべっている?行くぞ」

疲れた様子をまったく見せずにバイクへと向かう加納。

「全く、腹減ってるくせにあそこまでよく暴れられるな」
「お前も人のこと言えんだろうが。ほら、そこのバイクお前のだろ?さっさと押して行け」
「少しは気を使ってくれよ・・」
「それでもお前はアイゼンヴォルフOBの一員か?気合でついて来い。苦しいのは俺も同じだ。つーかバイクは俺のが重い」
「へいへい」

と、如月は納得しつつバイクへと向かう。
趙雲は話しについていけず、ただ2人についていくだけだったが、こうこぼした。

「フッ、話はたまにわかりませぬが、こうまで面白い物に出会ったのですから、せいぜい楽しませていただきますよ、お二方?」

と、やけに艶やかな笑みを浮かべる超雲。
ただし、どこか凄みを感じさせるものでもあったが。

「やれやれ・・・で、一番近い村ってのはどこにあるんだ?」
「この先にある公孫賛というお方が治める遼西に向かいます。そこで身を寄せさせていただこうかと」
「そんなに都合よく行けばいいが」

とか考えながら、遼西郡に向かう三人だった。


続く

改訂版第二話です

とりあえず拳銃云々は抜きにして、近接用の武器のみにしました。
砂煙に関しては本当にあたりたくないものです。痛いし目を塞がないと入ってくるし(笑)
別に彼ら盗賊が、しかも無名の男たちなので大して強いはずもないでしょうし、まずはこんなもんで。
というか第五話・・・こんなにあからさまに間違えてるのに気づかない俺って・・・orz
何と言うか改訂版まで見逃してくださいm(__)m
推鼓しない俺が悪いのは分かってるんですが・・・・勘弁してください。色々





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