恋姫†無双 狼たちの三国志演舞 第一話



とある誰も使わないような駐車場。
すでに打ち捨てられており、ここに車を止めに来るようなものはめったにいない。
そのような場所で、とある集会が開かれていた。

「ありがとうございました!」
「おう!」

暴走族の集会に集まった男たちが、3人の男を中心にして円になっていた。
中心にいる男の名は加納恭介。
この暴走族、「アイゼンヴォルフ」の初代アタマで、「城陽の黒い帝王」と呼ばれている男だ。
もう一人は、二代目リーダー、高杉幸一。
彼の二つ名は、「二代目魔王」。
そしてもう一人は、初代副リーダー、如月瞬。
彼の二つ名は、「城陽の狂犬」。
彼らアイゼンヴォルフは加納と如月を中心として結成され、喧嘩と走りを繰り返して、メンバー数も増え、現在は15名。
無事に二代目襲名式も終わり、打ち上げに行くかと思われた。しかし・・・

「ここで合ってるんスか?裏切り者の集会所とやらは」
「ああ、間違いねえ」
「ンだぁ!?テメエラ!ここをアイゼンヴォルフの集会所と知っててやってんかァ、コラァ!」

バイクが五台乱入してきた。
アイゼンのメンバーの一人が吼えるが、まったく気にも留めずその男たちはバイクを降りていく。

「・・・何しにきたんだ?もうテメエラとは縁を切ったはずだが?」
「もちろん、テメエラまとめて連れ戻しに来たんだよ」

といって、一人が前に出てきた。
グラサンに背中に蜘蛛がプリントされたジャケット、黒のジーンズを着て、茶髪を背中まで伸ばしたオールバックの男だ。
「ウチの特攻隊長張ってたテメエが勝手に独立しやがったんだろうが。ウチのアタマは認めてねえぞ?」

この男の名はあえて語らない。
加納たちがアイゼンヴォルフを結成する前に、もともと加納が所属していた暴走族「帝都狂走連合 NEO・SPIDER」の先代特攻隊長だった。
どうやら、加納たちがやめてからまたやっているらしい。

「ったく、テメエが勝手にやめてくれて、そのメンバーまでまとめて連れて行きやがるから、またかき集めんの大変だったぜ?」
「うるせえ。もともとテメエラのやり方には俺は反対だったんだよ。飴と鞭だけで人が本気でついてくると思ってんのか?」
「ケッ。相変わらず口の減らねぇ野郎だな、テメエは。人間なんて、それだけで大勢ついてくるもんなんだよ」
「それでテメエらの組織に愛着持ってる人間がどんだけいるかねぇ」

と、2人の舌戦が続くが、

「まぁいいじゃないっすか。これ以上こんなところにいてもしょうがねえっすよ」
「ま、ウチに戻る気はなさそうだしな」

と、アイゼンのメンバーに背を向けるNEO・SPIDER特攻隊。

「ったりめえだろうが。とっとと失せろ」
「へいへい。んじゃ、邪魔者は失せるとするか」

そういって、愛車に跨る先代。そして彼は、

「おっと、もう一つ・・・」

去り際に一言こう言った。

「加納に如月もいなくなっちまった今のアイゼンヴォルフに、果たして何ができるかな?」
「何だと・・・」

高杉が反発しようとするが、すでに彼らは走り去って行った後だった。
彼らが去ると加納が呆れたように言い放つ。

「ケッ、相変わらずだな、ヤローも」

彼はどうやらあまり今の「NEO・SPIDER」をよく思っていないらしい。

「喧嘩んなるかと思ったけどな」

といって、ため息をつく如月。

「しかし、木村のヤツが俺を、ねぇ・・・」
「受けんのか?その話」
「ハッ。今更誰が受けるか」

といって苦笑する加納。

「しかし救いようがねえな、ああいう連中は」
「同感だ。こないだもなんかヤクで誰かパクられたらしいじゃん?」
「ま、ほっといたらいいんじゃないっすか?」
「そうだな。んじゃ、打ち上げ行くか」
「うっす!」

そうして、15人の狼たちは夜の闇へと消えていく・・・


打ち上げを終えた帰り道、アルコールが入ったため、バイクを押して帰る加納と如月。
その帰り道・・・・

「ん?なんじゃこりゃ?」

なぜか国道の隅に鏡が落ちていた。
それもありふれた市販された物ではなく、歴史的価値がありそうなもの。

「こんなもん、こんなところに置いといたらやばいな。リサイクルショップにでも預けに行くか」
「ああ・・・ん?おい、恭介」
「アァ?」

と、拾おうとした加納を如月が止める。

「これ、この辺に新しくできた歴史資料館のものなんじゃねぇ?」
「あ、そうか。そういやできてたな」
「だとすると、俺らがこれもってると逆にやばくねぇ?」

確かに、これだけ価値のありそうなものをもってウロウロしていれば、あからさまに怪しいだろう。

「そう・・・だな。でも、だからってこんなとこに置いとくわけにも行かねえだろ?」

いくらこの時間帯は誰も通らないからって、危ないものは危ない。加納のいうことに如月も納得し、

「そうだな。せめて歩道の隅にでも置いとくか。おい、恭介。反対側担いでくれ」
「おう」

と、その鏡を拾おうとしたところ、急にその鏡が光りだした。

「な、なんだぁ!?急に!」
「クッ、眩しい!」

一瞬視界が光に包まれ、そのまま鏡に吸い込まれる加納と如月。
その後、そこには鏡のみが残されていた。



「いってぇ〜〜、どこだここは?」

広大な草原に落ちてきた恭介。完全に酔いは覚めたようだ。
彼らがいたのはどこかの街のはずれのほうだったらしく、草原ばかりで舗装されている道が無い。

「どうなってんだこりゃ?」
「さあな」

状況の変化についていけない二人。

「おいおい、少なくとも舗装されてる道がねえってことは、もしかして・・・」
「タイムスリップ・・か?考えらんねえけど」
「さあな。しかしま、漫画とかアニメとか、架空の世界の話かと思ったけど、まさかマジに起こるとは夢にも思わなかったぜ」
「そりゃ誰がこんな展開予想できたよ・・・・」

などと二人で考えていた。もはやあきれ半分だろうが。


そしてしばらくすると、妙な男たちが加納と如月を取り囲む。
見たところ、3人のようだ。目つきの悪いのと無駄にデブいのとチビと。

「おいてめえら、何モンだ?妙な格好をしていやがるし、この辺のものではなさそうだが?」

目つきの悪いヒョロ高いやつが聞く。
ちなみに今の加納は上半身は黒のタンクトップに白の長袖カッターシャツに剣のネックレス。
下半身はひざとすそ口が破れかけたデザインのダメージジーンズに銀の玉のチェーンつきの財布、黒地に白のライン入りのスニーカーだ。
如月は黒のジャケットに、黒地で真ん中に白でドクロが描かれたTシャツに赤い玉のネックレス。
某魔法少女アニメの第三期で、もはや少女とは呼べなくなった主人公が首からぶら下げているアレのレプリカである。
下半身は森林迷彩柄の長ズボンに、白地に黒やら赤やら青やらのラインが入ったスニーカー。
これで如月の趣味は理解できるだろう。もちろん加納も同じである。
さらに乗っていたバイクは近くで倒れているし、加納と如月が担いできたギターケースは二つとも少し離れたところにある。
如月が担いでいたショルダーバッグと、加納が持っていたボストンバッグは近くにあった。
ていうか、大荷物だな二人とも・・・
ただ、妙な格好といえば二人からした彼ら三人も同じだろう。
もはや山賊としか思えないような服装にぶら下げた安っぽそうな剣。そして黄色いバンダナ。
しかも三人体格が違うだけでまったく同じ服装なのだ。

「そりゃ、よそモンであることは否定しねえわな。つかできねえ」
「つーか、お前らのほうが何それ?今流行ってんの?てかここどこ?」

置かれている状況が理解できていないのか、のんきに聞き返す二人。

「教えてやるぜ。ただし・・・」

といって、全員刀を抜き、

「身包み剥いでからな!野郎共、やっちまえ!」
「おうっ!」

と、構えて少しずつにじり寄ってくる。

「やれやれ、いきなり問答無用でバトル開始かよ・・・」
「突っ立ってる暇があったら構えろ恭介!」

とはいいつつ、懐に忍ばせておいたメリケンサックを取り出し、右拳に構えた加納。
如月も、担いできたショルダーバッグから刃渡り20cmぐらいのサバイバルナイフを取り出した。そのまま如月が挑発した。

「来いよ。ズタズタにしてやんぜ?」
「言ったなコラァ!おいデブ!」

と、長身の男が巨漢に命じた。

「わ、わかったんだな・・・」

と、デブが動き出した。少しずつにじり寄ってくる。
しかし・・・

「ハァ!」

デブは加納がメリケンをはめた右拳で顔面に一撃。

「ぐっ!」

そのままよろけたところに胸倉をつかみ上げ、背負い投げで地面に叩きつける。

「うがぁっ!痛いんだな・・・」
「黙りやがれこのブタ!ボコボコにしてやんよ!」
「野郎!」

すると、後ろにいたチビが刀で切りかかるが、

「させるかボケがァ!」

如月がナイフで止める。

「何ッ!?」
「ボディが・・・お留守だぜ!」

そしてそのまま鳩尾を前蹴りで蹴り飛ばす。

「うぐぉっ!」

そしてそのまま動かなくなる。

「ば、馬鹿な・・・」
「てめえで仕舞いだ」

といって、最後まで残っていた一人に加納がダッシュし、思い切り体重の乗ったとび蹴りで相手の鳩尾に飛び込む。
男はたまらず吹っ飛んでそのまま気絶した。

「ったく、とりあえずどうする?」
「知らねえよ。とにかくいくぞ」

加納と如月はバイクを押して去っていく。
彼らは一体どうするのか・・・

続く


あとがき

とりあえず導入部分だけにしました。
まあこの先の展開は、このまますんなり蜀ルートに行くとあんまり面白くないなぁ・・・ということで、愛紗たちの登場はもっと後にします。
ちなみに文章構成の見直しと、所々の編集を加えました。
しばらくは改訂に集中させていただきます。


あと、感想板の感想のまとめレスをさせていただきます。
一番多かったのが「武器に関していくらなんでも無茶苦茶すぎる」と、
「主人公たちの強さが武将と同じなのは常識的におかしい」というのがありました。
武器に関しては改訂版で修正を加えますが、主人公たちの強さが武将たちと同じで書いたつもりは一切ありません。
あくまで「彼らの時代の一般人よりは身体能力が比較的高い」程度です。
武将たちにはさすがにボコにされますが、ネタバレになるので詳細は割愛します。


メールでのレス返しをさせていただきます。


双月さん

>初めまして、双月と申します。
>小説読ませて頂きましたー、公孫賛Sideの話のようでどのような展開が繰り広げられるのか楽しみです。
>それと、誤字を見つけたので報告致します。
>『超雲』(×)→『趙雲』(○)だと思います。
>それでは、これからの更新も楽しみに待ってますー!

ウッ!?
ご指摘ありがとうございます。改訂版では直しておきます^^;
こちらこそよろしくお願いしますm(__)m

たむら 和浩さん

>お話では「超雲」となっていますが、正確には「趙雲」ですよ〜。
>ちょうの字が違っているようなので一応ご報告しておきます。

重ね重ね申し訳ない・・・^^;
修正しておきます

西の迅帝さん

>いやいやいや、これはいくらなんでもやばいでしょ^^;
>許可出した俺も俺ですけど、原文そのままはどこでも叩かれますって^^;
>☆カノンさんには☆カノンさんの書き方があるんだから、俺の書き方を無理に真似したらあの時の俺の二の舞踏みますよ?
>まあ、☆カノンさんがどんな風に改定していってくれるのか楽しみですけどね
>じゃあ、自分なりに落ち着いて、がんばって下さい(^-^)b
>P.S 感想板に京介たちの批判来てるけどあれは俺もそのまま言われました^^;
>ただ、やっぱり一刀より性格は厳しいものがありますし、仮にも元族だからある程度は喧嘩ができないと話にならないんですがね。
しかもヘッドならばなおさらです。でもやっぱり拳銃やら手榴弾やらはやりすぎたなぁとw

ですよね〜(笑)
俺も考えたんですけど、最初はあんまり大していじるところがないかな〜、と思ってほぼそのまま挙げてもらったら批判の嵐ですよ(笑)
あの事件に関しては俺は見てないので知りませんが、えらいことになったらしいですねw
まあ、話の原作を借りた人間として、話を変えすぎないように修正しつつ、まともに話をつなげていくしかないですね。
がんばります(^ー^)b


感想を下さった皆さん、本当にありがとうございました。

ちなみにこの話は、本来ならベースを作った西の迅帝さんにお任せするのが筋なんでしょうが、
彼本人が「もう厨すぎて続きを書く気になれないから誰かやってくれ」ということで、
俺が彼に連絡して引き受けさせていただいたものです。
そしてこうして引き受けた以上、責任を持って完結させようと思います。
どうか皆さん、これからもこの作品をよろしくお願いしますm(__)m
感想、批判、誤字報告お待ちしています。







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