とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 七十ニ話



クロノ執務官との連携を取り付けた後、リンディ提督達とも話し合う機会を得られた。

左遷されてから月日が経過しているだけあって、彼らの拠点もマンションの一室から事務所へと移転していた。

宇宙戦艦の超科学には到底及ばないが、事務所のシステムは最新設備を揃えていた。エイミィがコンピューター類に詳しいのか、海鳴の片田舎には似つかわしくない機器類が揃えられている。


宇宙という空を管理する空局と、ミッドチルダの地上を管理する地上本部。本局務めのエリート達は管理外世界へ左遷されても元気だった。


「クロノやアリサさんから話は聞いたわ。すぐにでも相談してくれればよかったのに」

「そうよ。あなたは本当に立派な人間だけど、この国では未成年の子供ででしょう。大人を頼ってくれていいのよ」

「そもそもテロ事件なんて起きているなんて、一大事じゃない。役所に頼りづらいのであれば、私達にまず相談しなさい」


 宇宙戦艦アースラを指揮する艦長リンディに、地上本部所属の捜査官であるナカジマとアルピーノ。エリート女史達に揃って詰め寄られてしまった。

警察に相談できないのであれば管理局に相談するべきという意見そのものは至極もっともで、反論する余地は一切なかった。

爆弾の解除も技能からセインを呼び寄せたが、案外リンディ達に頼れば解除する術はあったかもしれない。


爆弾解除の技術はなくても補える魔導文化と、ミッドチルダの超科学がある。一刻の猶予もない状況ではあったが、相談するくらいは出来た可能性は否定できない。


「裏社会で震撼されているマフィアと、国際手配されているテロリスト達。
それほど物騒な人達に狙われているのであれば、法的対応が必要よ。要人を一民間人が護衛する状況は到底許容されないわ。

これは決して貴方が頼りないと言っているのではないのよ」

「言いたいことが分からないほど、俺も子供ではないつもりだよ」


チャイニーズマフィアに命を脅かされている状況で、民間人が要人の家族を護衛する状態は望ましくない。クイントの指摘は適切だった。

シルバーレイの襲撃に始まる一連の事件がこれまで事無きを得たのは、夜の一族からの支援があってこそだった。

ミッドチルダ側からの支援要請も可能ではあるが、地球側の影響を考えると適切とはいえない。セイン一人呼ぶのに大騒ぎとなったしな。


支援ありきで護衛を続けていると、支援がなくなった瞬間孤立無援になってしまう。カレン達の厚意に甘えてばかりの状態もまずい。


「私達が積極的に力となってあげたいけれど……いけませんか?」

「――彼には多大な恩があるし、捜査協力も行ってくれている。力になってやりたいとは思う。
だが管理外世界へ派遣されている現状況で、管理局員としてテロ事件に介入するのは問題だ。

少なくとも地上本部への申請のみならず、空局への根回しも必要だろう」

「本部はともかくとして、空局へ貸しを作るのは、レジアス中将が許さないでしょうね……」


 クイントは恐る恐るといった様子で支援を訴えるが、同席していたゼスト隊長とアルピーノ捜査官は難色を示した。

クロノやリンディ達は空局に所属しているので根回し自体は出来るようだが、地上本部と空局との関係はあまり良好とはいえないようだ。

見返りなどあれば別だが、少なくとも管理外世界の民間人への支援という理由では、到底納得されないだろう。


大人の世界だと昔の俺なら嫌な顔をしただろうが、この一年余裕で浸かりまくったので最早共感すら覚えてしまう。


「くっ……こうなれば愛する息子の為、辞表覚悟で戦うしかないか」

「俺が同席している横で、そんな悲壮な覚悟されても困る」

「そうよ、クイント。我が子のためであれば、バレないようにきちんと返送して」

「ルーテシアになろうとするのはやめろ、ややこしいから」


 捜査官としては優秀な二人だが、大人としては駄目な二人だった。二人共まだ若いキャリアウーマンなので、母となるのは早い気もするが。

世界会議の時には舞台まで派遣してくれたが、あの事件はスカリエッティやクローン技術が関わっていたので捜査の一環で成立していた。

今回の場合はHGS患者などの特殊な要件こそあるが、時空管理局が操作する領域か問われると怪しい。


国際的テロ事件ではあるが、管理局から見れば管理外世界で起きている事件でしかないからな。


「皆さん、落ち着いてください。管理局員としての立場で考えるのではなく、あくまで地球の友人の為と考えて行動すればいいのです。
良介さんもきっと立場をわきまえた上で、こうして私達に相談しに来てくれたのでしょう」

「先日おきた爆破テロと、要人の襲撃事件。どちらも収まって、政府や警察もテロ殲滅に動いている。
状況としては一旦落ち着いているが、マフィアがこのまま諦めるとは思えない。下手をすると俺個人ではなく、この町の住民を標的に拡大する可能性も考えられる。

そうなった場合に備えて、今のうちに連携できればと思ったんだ」


 今回俺やフィアッセだけではなく、さざなみ寮そのものを襲った。主目的はリスティだが、寮の住民も平気で巻き込んでいただろう。

ディアーチェが前線で防衛してくれたので被害は出なかったが、そもそもディアーチェ本人は言わば異世界の魔導師だ。

日本に住んでいる一民間人では対応できなかった襲撃事件。個人がテロ組織に対抗するには、枠組みを超えて協力を求めなければならない。


その上で地球と異世界とのボーダーラインを死守しなければならず、こうして話し合う必要があった。


「管理外世界であっても、民間人に被害が出るような事は許容できない。まして君の友人知人であれば尚更だ。
この町に派遣されている以上、我々も他人事ではない。パトロールの強化や対テロ対策も含め、積極的に行うことは約束しよう」

「高町さんにはスバルやギンガ達もお世話になっているもの。私も力になるわ」

「良介の人間関係はある程度把握できているし、私も目を光らせておくわね」

「では私やクロノ、エイミィは情報収集を行いましょうか」


 捜査ではなく拠点の防衛やパトロールであれば、所属部署からの苦情も出ない。実際警備しているだけなので文句の言いようがないからだ。

個人としての協力だけではなく、プロの局員として出来る限りの行動に出てくれるのはありがたかった。

ゼスト隊長は言うまでもなく、クイントやアルピーノも一流の実力者だ。マフィアが相手でも負けないだろう、頼もしかった。


こうして地盤を固めた上で、肝心の要人たちの出方を伺うこととなった。














<続く>








小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。


<*のみ必須項目です>

名前(HN)

メールアドレス

HomePage

*読んで頂いた作品

*総合評価

A(とてもよかった)B(よかった) C(ふつう)D(あまりよくなかった) E(よくなかった)F(わからない)

よろしければ感想をお願いします











[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ]





Powered by FormMailer.