とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 五十四話



 信頼を預けたディアーチェは意気揚々と飛び去っていった。魔導師が空を飛ぶのは珍しくないが、未確認飛行物体とかで騒がれたりしないだろうか。

ディアーチェに判断を預けた。自分の娘はとても喜んでいたが、俺が逆の立場であればどんな風に感じただろうか。

答えはすぐに出て、笑いがにじみ出る。たとえ他人であろうとも、判断を任されたら悪い気はしない。血は繋がっていないが、ディアーチェはそういう面でも俺に似ている。


妹さんが連絡を取ると、警護チーム長の御剣いずみが車を回してくれた。


「止められると思ったのですが」

「私は命令を受ける立場です。ご挨拶の時に貴方と話し、戦ってみて人となりは分かりました。
短慮だとは思いますが、軽率な行動には出ないでしょう」

「助かります」

「雇い主からの配慮でもありますので、礼は不要です」

「配慮……?」

「貴方に関する動向を事前にお聞きしています。こういった事態が起きた場合貴方がどういった行動に出るか、事前に説明を受けています。
この行動も想定内ですので、お気になさらずに」


 ――ロシアンマフィアの女と、アメリカ大富豪の娘の笑顔が脳裏に浮かぶ。貴方のことは全てお見通しです、と悪魔のように笑っていた。怖い。

ホテルとさざなみ寮が同時に襲われてることまで想定していた、という現敵的な見込みではなく、彼女達であればあらゆるパターンを想定して今後の未来を組み立てていたのだろう。

その枠組みの中で俺がどういった行動を取るのか、どういう考えに基づいて実行に移すのか、見透かしている。あえて良く言えば、理解してくれている。


なんだか自分が将棋の駒にでもなったような気分だが、強制されている訳ではないので考えるのはやめておこう。ハゲる。


「良介さん、テレビを見たんですね」

「シルバーレイか。留守は任せたぞ」

「一応協力すると言ったんですし、私を戦力に入れなくてもいいんですか」


「だってお前、人助けとか嫌だろう」

「当然じゃないですか、面倒くさい」


 試すように聞いてくるシルバーレイに当然のように返答すると、少し嬉しそうにフフンと笑う。憎たらしい奴である。

見透かしたように言ってやったのに、何故かシルバーレイは機嫌が良さそうだった。自分のことを理解してもらえてるとか思っているのだろうか。

まあ一応組織を裏切らせた手前、少しくらい配慮はしてやっている。ホテルに間違いなくマフィアの手先がいる以上、シルバーレイを同行させるのはまずい。


シルバーレイの裏切りはほぼ確定事項であるが、組織側からすればあくまで疑惑である。襲撃が起きるまで一応シルバーレイは体裁は守っていたのだ、場合によっては言い逃れが出来なくはない。


「ここはバレていないとは思うが、フィリスとシェリーを守ってやってくれ。お前がいるだけでも安心してくれるだろうしな」

「あの二人からすれば、良介さんも危ない真似はしないほうがいいと思うんですけど」

「ひとまずホテルの様子を見に行くだけだ。俺だってわざわざ好き好んで危険な真似はしないさ」


「この前の囮作戦って、私がいないと超危険だったんですけどね」

「うっ……」


 ニヤニヤしながら指摘してくる、むかつく。こいつに助けられたことは一生恩に着せられそうだ、でかい貸しを作ってしまった。

フィリス似の綺麗な銀髪を短く切ってからというもの、オリジナルの雰囲気は木っ端微塵に消えてしまっている。

すっかりシルバーレイとしての個性な女の出来上がりだった。自動人形のローゼといい、名前を与えたくらいで覚醒しないでほしい。


自動人形のオプションであるファリンもライダー映画を見せたら正義に目覚めたし、女という生き物は自我が強いのだろうか。


「そもそもなんでわざわざ行くんですか、警察とかわんさか来ているっぽいですよ」

「フィアッセと電話していたんだが、トラブルがあったようだ。様子を見に行ってくる」

「その様子を見に行くという行動の範囲がすごく気になるんですけどね」


 チクチク言ってくるが、言葉の端々に俺の安否を気遣う口調は見える。こいつなりに心配してくれてはいるのだろう。

同時にこいつの言葉は、フィリスやシェリーからの俺への心配や不安でもある。本人達が出ないのは、自分も迷惑をかけたという負い目があるからだろう。

個性的ではあるが、何だかんだ海鳴にいる女達はどいつもこいつも根は優しくていい女ではある。


だからこそ俺も、こうして危険を承知で駆けつけてやりたくもなるのだ。


「ま、アタシは良介さん以外はどうでもいいんで気をつけて。というか、電話かけ直せばいいんじゃないですか」

「掛け直しても繋がらないんだよ。だから心配になってる」

「ふーん……」


 適当に手をひらひらさせて見送ろうとしていたシルバーレイだが、俺の話を聞いて何故か考え込む。

その間車を出してきた警護の御剣いずみは口出しせず、待ってくれている。

彼女からすれば俺がホテルへ行くのは望ましくないので、時間がかかっても問題はないのだ。


少し考えていたシルバーレイがその警護の女性を見やりつつ、口出ししてくる。


「気が変わりました、一緒に行ってあげます」

「は……? 人助けに興味ないんだろ」

「ありませんよ、そんなの。組織を裏切ったのだって良介さんとアタシの保身が理由ですし」

「俺も理由かよ。それで、なんで急に心変わりしたんだ」

「それは移動しながら話します。深入りする気はないんで、ちょっと留守にするくらいならいいですよね。
その間、ここを守ってくれる人を配置してもらえませんか」

「何なんだ、こいつ……どうしたものかな」


 シルバーレイの急な心変わりに戸惑いつつ御剣を見やると、彼女は静かに首肯してくれた。人員の再配置は問題ないらしい。

この隔離施設は俺を安全に護るための拠点であり、元々警備は万全に敷かれているとのことだった。

物理的な防衛だけではなく、電子的なセキュリティ体制も徹底しているようだ。


国防レベルとか言っていたが、流石に嘘だとは思いたい。いや、本当に。


「お前がマフィアに見つかったら見捨てるからな」

「その時は良介さんを余裕で売りますので仲良く地獄行きですよ、うふふ」

「くそっ、急所握ってやがるこの超能力女」


 銀髪美人の憎たらしい笑顔を向けられつつ、ホテルへ向かった。













 昼間とは打って変わって、ホテル周辺は騒然としていた。

地下駐車場で起きたとはいえ、爆破騒ぎとあれば人の目も引いてしまい、ニュースにもなって現場は騒がしくなっている。

御剣いずみ達警護チームがすぐ情報収集してくれたところ、警察関連は現場一帯を封鎖して、爆発が起きた経緯などを調べているらしい。


当たり前だが、一般人の俺が立ち入らせてくれるはずもなかった。流石に正面から頼みに行ったりはしなかったが。


「雇い主の権限であれば現場立会いも可能かもしれませんよ」

「国家権力がネジ曲がりそうなので、そういうのはちょっと」


 カレンやディアーナ達でも日本という島国の中でそこまで出来ない――とは思うのだが、頼んだらどういう結果になるのか怖い。

シルバーレイが起こした救急車の暴走だって大いに人の目を呼んだのに、クロノやレンが現場で仕切った瞬間撤収してしまったからな。

そこまで考えてクロノという時空管理局執務官の存在が浮かんだが、あいつも夜の一族とは違った権力を持っているので扱いが難しい。


さて、どうしたものか。


「良介さん、今も電話繋がらないですよね」

「ああ、一応掛けてみたが駄目だった」

「やっぱりそうですよね。ちょっと待ってくださいね――」


 同行してきたシルバーレイは俺と同じくマフィアの目があるので、周囲に悟られない位置取りでホテル周辺に潜んでいる。

呑気に堂々と野次馬する必要もないので、あくまで現場に来ているだけだ。この点は素人頼みではなく、警護のプロに徹底してもらっている。

判断も全て御剣いずみに頼んでおり、周辺の警戒も妹さんに任せている。迂闊な真似は自分一人ではなく、周囲を巻き込んでしまう。


俺が身の危険に立たされれば、匿っているフィリスやシェリーも危うくなる。素人の自己判断は絶対にしてはいけない。


「――やっぱり」

「やっぱり?」


「えーとですね、フィアッセ・クリステラとその御家族は今、脅迫を受けています。
ホテルの何処かに爆弾が設置されていて、脅迫に応じなければ爆破すると脅されているようですね。

連絡が取れないのも、そのせいかと」


「なんでそんなのが分かるんだ!?」

「広範囲じゃないですけど、テレパシー使えるんで聞き出しました。そんな事じゃないかと思いましたよ。
それじゃ、良介さんに恩を売って満足したんで帰りますね」

「待て待て待て!?」


 それだけ言って本当に帰ろうとしている女を、ヘッドロックしてとめる。

人間アンテナを黙って返す訳にはいかない。何としても受信してもらわなければ困る。


というかこいつの能力、便利すぎる。もしかしてマジで、裏切らせたのは大当たりだったのではないだろうか。













<続く>








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