とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 四十八話



結局その後食事にまで誘われて、高級ホテルのルームサービスでご馳走となった。ルームサービスとはいえ、目ん玉飛び出る金額と食事内容だった。

食事の場でも英国議員である親父さんに、丁寧なお礼をされてしまった。謝礼と護衛による報酬を支払うとの申し出もあったが、丁重にお断りした。

学歴・学歴なしの俺では何年かかっても稼げない金額を提示されるのは目に見えているし、お金は大好きだけど恩返しという名目を失ってしまうので残念だが辞退した。


セキュリティサービスのエリスは俺が無報酬である事に良い顔はしなかった。それがプロとしての責任感なのだろう、俺は彼女の流儀を否定するつもりはなかった。


「迎えの車が来るので、私はそろそろお暇いたします。私が言うのも変な話ですが、お嬢さんの事をよろしくお願いいたします」

「これまで本当にありがとう、宮本君。いずれ事態が落ち着いたら。またゆっくり話をさせてくれ」

「うんうん、将来の事とか話さないとね」

「親父の前で何いってんだ、こいつ」

「ははは、エリス君彼を送ってあげてくれ。私はしばらく娘と話をする」

「承知いたしました」


 フィアッセも色々浮かれたことを行っているが、実際のところマフィアから脅迫を受けて不安だったと思う。ましてフィリスとシェリー、家族とも言える二人まで攫われたのだ。
v 成人した大人でもこれほどの苦境に立たされたら神経が参るだろう。だからこそ俺を頼ったのだし、ディアーチェ達の存在は救いとなった。

そして父親が迎えに来てくれたのだ。口では帰郷することを反対していたが、親父さんが来てくれた事自体は本当に嬉しかったに違いない。


だからこそ口ではあれこれ言いながらも、素直にホテルに残った。当初はどうなることかと思ったが、結果を見ればこれで良かった筈だ。


「――職務中で恐縮ですが」

「うん?」

「フィアッセの事、ありがとうございました」


 エレベーターのボタンを押しながら、俺を見ずにエリスは礼を述べる。俺は失礼だとは思わなかった。

プロである以上、護衛対象の娘の話題はするべきではない。けれどどうしても一言伝えたかったのだろう、その生真面目さが態度に出ている。

一瞬悩んだが、返答はしなかった。彼女自身望んでいないだろうし、気持ちは口にしなくてもお互いに伝わる。


やがてエレベーターが来て、俺達は乗り込んだ。立ち位置も自然と、俺が危害を加えられないようにしてくれている。


「フィアッセはアルバード議員と共に我々でお護りしますのでご安心下さい」

「お願いします」

「私はこのまま議員と共に行動するべきだと考えています」

「そうでしょうね」

「あくまで護衛としての立場からの意見ですが、議員にも進言するつもりです。
フィアッセも――きっと分かってくれるはずです。貴方との関係が途切れる訳でもないのですから」

「そもそもあいつの言っていることがおかしい」


 真面目な会話だったのにフィアッセのことになると一瞬口籠るエリスがちょっと可愛かった。あんなのが友達だなんて気の毒に。

フィアッセも恋愛ボケするほど頭の悪い奴ではないのだが、多分フィリスとシェリーが救出された事でテンションの浮き沈みが起きているのだろう。

あいつの中では何故か俺が救出したことになっているので、余計に美化されているに違いない。俺自身全く戦っていないのに。


対して物事を客観的に見れるエリスは、この救出劇が俺のヒーロー劇であるとは考えていない。


「誘拐事件の件は後日正式に聴取がされる筈です。その際ご協力をお願いする事になりますがご容赦を」

「ええ、事件解決に繋がるのであれば」

「ありがとうございます。貴方も身辺にはご注意を」


 エリスは最後少しだけ微笑んで、俺を車へと送ってくれた。迎えを段取りしてくれていた妹さんと一緒に車へと乗り込む。

エリス・マクガーレンか、女のボディガード。政治の世界に関わったことがあるので、プロの護衛は何人も見てきたが、俺と同世代っぽい彼女は決して見劣りしなかった。

生真面目な感じは苦労人を思わせず、若さによる意欲で満たされている。有名な英国議員である親父さんから信頼を受けているのも実力の証だろう。


彼女に任せればフィアッセ達は安全だというのは、俺も同感である。案外このまま任せれば、フィアッセの事は解決するかもしれない。


「剣士さん」

「どうした、妹さん」

「この車が尾けられています」


 ――後部座席から後ろを振り返る。車が確かにあるが一台ではなく、何台も後から続いている。

今走っているのは国道であり、平日の今は車だって混雑している。俺が乗る車の後ろに何台も続いているのは別に変な話ではない。

視認するのは無理だと判断した俺は、隣に座る妹さんを見やった。


「どの車だ」

「申し訳ありません、一台の車としか分かりません。距離を取り、感覚も一定ではありませんが追尾しています。
ホテルから追いかけてきているので間違いありません」


 なるほど、万物の声を聞ける妹さんの能力は見知らぬ人間を特定できない。

運転手の”声”は聞けても、完全な赤の他人であれば誰かまでは分からない。

少なくとも分かるのはホテルから俺達の車の後ろをついてきている点だ。ホテルからここまで直線ではない以上、偶然はありえない。


アジトを壊滅させたばかりなのに、もうマフィアたちは動き出しているようだ。


「このタイミングからすると、親父さんの方を探っていたのか」

「滞在先を把握していたのでしょう」


 探るような俺の台詞に、妹さんは一つ頷いた。舌打ちする、俺が迂闊にもフィアッセをホテルへ連れて行ってしまった。

隔離施設からホテルへ向かうに当たって尾行には気をつけていたが、肝心のホテルで張り込みされていたら打つ手はなかった。

こうなるくらいであればパソコンとか電話で話をすればよかったのだが、後の祭りである。とりあえずこのまま追われるのはまずい。


相手が車だと、返り討ちにしようがない。下手をすると交通事故になるので、騒ぎになってしまう。


「尾行を巻くのは難しいか」

「可能ですが、時間はかかります」


 カーレースによる持久戦になると妹さんは予測する。俺も同意見だった。

尾行されているのであればこのまま隔離施設へ帰るのはまずい。フィリスやシェリーをまた危険な目に合わせてしまう。

シルバーレイもあの施設にいるのだから、裏切りが確定になってしまう。組織が今シルバーレイの存在をどう見ているのか分からないが、俺達と一緒のところを見られるのはまずい。


カーレースは嫌いじゃないけど、車に乗ったままたらい回しになるのは嫌だな――うーん、駄目元でいってみるか。


「妹さんは車の位置を特定出来ているんだよね、捕まえられればいいんだが」

「分かりました」

「えっ」


 分かりましたって言ったのか、今!?

アクション映画じゃあるまいし、尾行する車を逆尾行して捕まえるなんて芸当は無理だと高を括っていた。

だから適当に聞いてみただけだったのに、妹さんは大真面目に頷いている。


俺が唖然としている間に妹さんは運転手へ取り次ぎ、そのままどこぞへ連絡する――


「剣士さん」

「あ、ああ」

「車を確保したそうです。運転手も捕縛いたしました」

「えっ、今電話していたよね!?」

「はい、見事な判断でした剣士さん。即時即決で警備チームも動きやすかったと言っていました」

「俺の判断で捕まえたことになってる!?」


 俺は尾行を巻きたかっただけで、マフィアの手先まで捕まえろとまでは言っていないはずだ。そうだよね!?

むしろ俺の警備チームって尾行してくる車を確保することまでできるのか。警備チームの長である御剣って忍者だったよね、確か。


夜の一族は一体どんなスキルを持った奴らを雇ってくれたのだろうか、恐ろしくなった。














<続く>








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