とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第九十一話




 俺が必死こいて戦った間に、アミティエ・フローリアンの救助は完了。結論から言うと重軽傷だが、命に別条はない怪我であったらしい。間近で自爆されたのに頑丈すぎる。

むしろマジックハンド相手に殴られまくったおかげで俺の痛手が酷く、妹さんに心配されてクアットロには笑われた。こういう時って性格がよく出るよね、ゲンコツかましておいた。

船尾に開いた穴は何とか修繕されて、救助活動は事なきを得た。無理に救助活動を同行させた形ではあったが、結果的にマジックハンドによる救助妨害を排除できたので、こちらも何とか理解を得られることは出来た。


商船に戻ったら、アミティエ・フローリアンは担架に乗せられる。


「ごめんなさい……また剣士さんに頼ってしまって」

「俺は後始末をしただけだ。あの星を守ったのはお前だよ」

「うう、そう言って頂けると救われます……キリエやエルトリアの事、お願いします」


 殊勝なことを言っているが、悲痛な表情は浮かべていなかった。俺なら何とか出来ると高を括っているのだろう、下手に信頼されても後が怖いのだが。

衛星兵器が排除されて、磁気嵐も収まっていた。固有型によるヴァリアントシステムへの干渉が失われた為だろう、悪影響が排除されたのだ。

少しばかり時間はかかってしまったが、救助活動は完了。エルトリアの環境暴走も徐々に収まり出し、通信関連も何とか復旧された。


その直後、クアットロが仰向けにひっくり返った――この女にしては珍しく、醜態を見せている。


「ゼイゼイ……も、もう働けませんわ……これはもう労基に訴えても勝てる案件ではないでしょうか」

「現代社会の労働システムに熟知している戦闘機人ってどうなのよ」

「わたくしは主に陛下に対して訴えているんですけど……ハァハァ」

「セッテにはよく働いてくれていたとは言っておいてやる」

「絶対休暇をぶんどってやりますわ……土下座してでも」


 妹相手に土下座するな!? それほどまでに団長のセッテに怯えているということか。今回は本当に大活躍だったので、セッテも無体な真似はしないはずだが。

折角なのでもう一つ担架を用意してもらい、クアットロも緊急搬送させる事にした。ちなみに言うまでもなく、ドクターの診断は過労であった。ちょっと悪いことをしたかも。

月村すずかは今回サポートに徹してもらったので、無傷。彼女も"声"を聞き続けてくれたのだが、特に疲れた様子は見せない。万物の"声"を聞くことは、彼女にとってさほど疲労ではないようだ。


通信が回復したら、早速商船にイリスとユーリが遺跡からアクセスしてきた。


『終わったみたいね。磁気嵐の影響も無くなったから、遺跡のシステムも復元できたわよ』

『環境整備も終わりました、お父さん。突然のことだったので本当にビックリでした』


 状況を聞いたところ、イリスとユーリは迂闊な真似をせず遺跡に籠もってエルトリアの環境改善に集中していたらしい。

ウイルスコードによる干渉は彼女達にとっても過去の悲劇であり、やはり無視はできなかったようだ。過去を忘れるかのごとく、徹底的な排除を行った。

ユーリも生命操作能力を駆使して、環境暴走を収めるべく全力を費やした。惑星規模の暴走だったはずだが、ユーリにかかればこれほどの短時間で収められるらしい。恐るべきおなごであった。


詳細は後で聞くとして、二人の状態を確認してみる。


『ウイルスコードが悪あがきしたけど、二人とも問題ないわ。ユーリなんて完全無欠に通じなかったし、本当どうなっているのよ』

『き、きっとお父さんの愛に守られているんですよ……!』

『そんなに照れながら馬鹿なこと言わないで』


 顔を真っ赤にしながら、ユーリが珍しく恥ずかしいことを主張してくる。多分というか間違いなく、シュテルの悪影響だろう。あいつ、平然とした顔で馬鹿なことを言いやがるからな。

フィル・マクスェルも事件当時困惑していたが、ユーリには本当にウイリスコードが通じないらしい。直接打ち込んでも、精神が揺るぎもしないのだと犯人が焦っていた。

ユーリが闇の書より法術の効果によって、実体化している。アリサの霊体が結晶化して形になったように、精神が結晶化した事で頑強になっているのかもしれない。その代わり、過去の記憶は完全に失っているからな。


――と、そこまで考えて肝心なことを思い出した。


「何にしてもお前たちが無事で良かった。法術のデータはどうなった」

『……普通そっちを後回しにする? まず最初に聞いておくべきことでしょう』

『お、お父さんはそれだけ私達のことが大切なんだよ!』


 呆れた様子のイリスに、ユーリが何故か力説する。指摘されて後回しにしていたことに気付くくらいで、あまり意識してはいなかった。

自分の事情より他人の体を優先するなんて我ながらどうかとも思うけど、さほど恥ずかしくはなかった。それだけ今の生活に馴染んでいるということだ。

ユーリに続いて、イリスも養子として受け入れて、今ではすっかり大家族となっている。これからは敵よりも、身内に悩む事が多くなるかもしれない。


少し話題がそれたが、イリスが自らの見解を語った。


『とりあえずデータは無事よ。さすがに何度も壊される訳にはいかないからね』

「おお、では復旧作業も再開できるか」

『まあね、ただ少し時間は欲しいわ。ウイルスなんて仕込まれていたんだけど、今度は復旧前に徹底的に分析しておきたいの。
あの野郎のせいで環境暴走なんて起きてしまったんだし、二の舞いにならないようにちゃんとしておきたいわ』

「そりゃ当然だろうな。エルトリアが落ち着くまでまだ時間もかかるし、安全を確保して作業を再開してくれ」


 少し申し訳無さそうなイリスの弁解に、俺は文句を言わずに了承する。一度ウイルスに感染したシステムを軽はずみに使えないという意見は、至極最もだった。

コンピューターには詳しくないが、ウイルス関連の怖さについてはこの手の分野に詳しい月村忍も目を光らせていた。話を聞く限り、社会問題にまで発展するらしい。

エルトリアは今、微妙な時期にある。惑星に問題なんぞ起きてしまったら、主権を勝ち取るのが困難となる。時間がほしいという申し出は、もっともだった。


ただイリスは一度復旧し掛けたこともあり、独自の意見を述べる。


『詳細は復旧してからになるけれど、法術については詳しい記録がありそうよ』

「本当か!? 法術に関する制御法や効果時間を知りたい」

『ユーリ達にとっても死活問題だもんね。あたしとしてもユーリの記憶が無い事とか気になることもあるし……きちんと復旧してあげるわ。
見た感じ法術のルーツとか書かれていたっぽいから、期待できるんじゃないかな』


 法術に関するルーツか、確かにその点は気になっていた。クロノ達も能力そのものは教えてくれたが、内容までは把握できていなかった。

ジュエルシード事件後も彼らなりに協力して色々手を尽くしてくれたのだが、法術については記録や記述が乏しいという結論で終わってしまっている。


願いを叶える力――神様のような万能さを伺えるが、意外と不自由も多いこの能力。一体、どういったものなのだろう。


『結局あたし、まだ詳しく聞けてないんだけど……家族になったんだから、隠し事はしないでよね』

「はいはい、まあお前はドジな部分あるけど律儀ではあるからな。口を滑らさないくらいには信用しているよ」

『誰がドジっ子よ!?』


 結局いつも通り憎まれ口をたたき始めたので、イリスの通信を切る。エルトリアの状況については聞けたのでよしとする。

法術関連もようやく進展がありそうだった。少し時間はかかるようだが、ジュエルシード事件より続く法術の謎にいよいよ迫れそうだった。

アリサの復活を始めとした多くの奇跡を起こしてくれた、この能力。蒼天の書に刻まれた名前が、これまでの歴史を物語っている。


現在までの記録は以下の通りとなる――



八神はやて
アリサ・ローウェル
ミヤ
アリシア・テスタロッサ
リニス
綺堂さくら
月村すずか
月村忍
ノエル
ファリン
カーミラ・マンシュタイン
カミーユ
トーレ
チンク
ドゥーエ
シュテル・ザ・デストラクター
レヴィ・ザ・スラッシャー
ロード・ディアーチェ
ユーリ・エーベルヴァイン
ナハトヴァール
リスティ・C(シンクレア)・クロフォード
リスティ・槇原
フィリス・矢沢
セルフィ・アルバレット
オリヴィエ・ゼーゲブレヒト



 ――こうしてみると、奇跡を起こしたメンツにまとまりがない。

法術の恩恵を受けたものもいれば、助力する形で力をくれたものたちもいる。俺の関係者という繋がり以外には、共通点は特に無い。

いや、普通の人間ではないという点もあるか。フィリス達が一般人かと思いきや、特殊な遺伝子を持った超能力者と教えられたからな。


そういやフィリス達が超能力者であれば、あいつも――


『あ、そうだ。忘れてた』

「うわ、びっくりした。何だよ、まだなにかあるのか」


『地球から緊急コール入ってたわよ。アンタのいたところ、海鳴だっけ?
あそこに何かあれば連絡があるように、仕込んでたんでしょう。

通信が回復したら、いきなりコールが飛び込んできたから随分前から入ってたかもしれないわ』



 ――海鳴からの緊急コール!?



海外に出向中海鳴に事件が起きてしまい、駆けつけるのが遅くなってしまって不幸が起きてしまった。

当時の反省を活かすべくなにか起きた場合は、海鳴→入国管理局→聖地→白旗→エルトリア経由で緊急コールできるように施設と人員を配置した。


その連絡が入ったということは……なのは達に何かあったことを意味する。














<続く>








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