とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第三十三話




 指揮官として現場に断っているが、実際はローゼが現場を仕切って大ガラス達を退治した。本人も久しぶりの見せ場で、珍しく能動的に働いている。

指揮官型のローゼは従来ガジェットドローンを運用するのだが、商隊が出揃っている状況で戦闘兵器を見せつける訳にはいかない。同様の意味で、もう一つの人格であるイレインもだ。

後で聞いた話だが、戦闘とだけあってイレインも良い所を見せようと張り切っていたようだ。結局出番がなかったので、ローゼの中で不貞腐れているらしい。アホのコンビは分かりやすい奴だった。


大ガラス達の掃討は完了。現場が安全となったところで、商船から重鎮が降りてくる。


「改めて、この度は窮地をお救い下さってありがとうございました。私はポルトフィーノ商会の代表を務める、リヴィエラ・ポルトフィーノと申します」

「これはご丁寧にどうも、私は宮本良介。この子は護衛役のすずか、彼女は私の執事であるローゼです」


 異国の地で日本名を名乗っても通じない可能性があるのだが、そもそも見た目が黄色人種の黒髪男という容姿なので今更である。実際、異星人としてさほど不思議がる様子はなかった。

護衛や執事を名乗る少女達を目の当たりにしても、同じく侮った視線を向ける様子はない。商会長として今目の前で起きた現実を受け止め、大ガラスを掃討した実力を評価してくれている。

彼女の様子を観察し、地球から遠く離れた異星においても実力主義が謳歌している事が判明する。年齢性別に限らず、才ある者が評価されて出世街道を歩んでいる。そうした世界観が見て取れた。


俺には非常に生きづらい世界と言えるが、元より異世界で立身出世する気はないので意気消沈はしないでおいた。


「ポルトフィーノ商会の事は、フローリアン夫妻より伺っております。惑星エルトリアへ便宜を図って頂き、感謝しております」

「我々は非常に重要な案件を抱えており、フローリアン様にはお仕事をお任せしております。成果を出して頂いている以上、報酬を支払うのは当然のことです。
日々進捗をお聞かせ頂いておりますが、成果を出して頂いて助かっています。お礼を申し上げるのは、こちらの方ですわ」


 物腰は非常に丁寧だが、依頼人としての態度の凛々しさを感じた。実力成果の権化こそが、若くして商会長へと上り詰めた彼女自身であるかも知れない。

衛星砲護衛機の開発、連邦を統括する主星の防衛と衛星への通信強化を目的とした人工衛星。ヴァリアントシステムを用いて製造する、独立個体の建造。

連邦政府の主星を守る人工衛星ともなれば、大規模な軍用案件なのは間違いない。それこそ政府をあげて取り組むべきであって、一商会に任される仕事ではないはずだ。


軍事的案件をどうやって受注できたのか――その答えの一員とも言うべき人間が、商船から降りてくる。


「おい、リヴィエラ。その男は一体何者だ」

「ボルボ様、お目覚めになられたのですね」


 先ほどローゼに背後から首を捻られた男に視線を向けて、リヴィエラと呼ばれる女性が心配げな表情を見せる。本心かどうか、その顔色からは計れない。

現場を強行に仕切っていた男の登場に、現場は寒々しい気配を見せる。この男の強行的な指揮のせいで現場が混乱し、犠牲者を出すところだったのだ。無理もない。

だが実際のところ、責任論だけを矢面に出して現場に割り込んだ俺もあまり人のことは言えない。解決したから良かっただけで、もし犠牲者が出たら割り込み容疑で吊るし上げられただろう。


軍事的作戦の展開に、本来は素人が口を出してはいけない。今回の場合、明らかにこの男が同じ素人だったから反感を買わずに済んだだけだ。


「この方は、リョウスケ様と申します。我々の窮地に駆けつけてくださり、救援して下さったのです」

「なんだと……貴様如きが、現場にしゃしゃり出てきたのか。何処ぞと知れぬ不審者が、身の程をわきまえよ。
不甲斐ない者達を前に苛立つ気持ちは分からんでもないが、知った顔で横やりされては現場が混乱するというものだ。

こやつらも手柄欲しさに戦っていたというのに、貴様が割り込んだせいで機会を失ったのだぞ。少しは空気を読んだらどうなんだ」

「……ボルボ様、恩人に対してそのような御言葉は――」

「リヴィエラ、お前ほどの女性が浮ついてどうする。この男はお前の危機を目の当たりにしたからこそ、手柄目当てで割り込んだのだ。
大方お前に覚えめでたくされたいと、英雄願望を振りかざしたのだろう。ふん、いい年をしてみっともない男だ」


 ……初対面でここまでディスられたことは、浮浪生活を送っていた頃だって無かった気がするぞ。すごいなこいつ、一呼吸もせずによくここまで他人を罵倒できるな。

堂々とした態度で俺に罵声を浴びせる姿に、リヴィエラは一瞬だが不愉快げに表情を歪ませた。商隊や護衛達なぞ、明らかに気分を害した空気を見せている。

俺一人を罵倒するだけならまだしも、こいつは命がけで戦った者達を手柄欲しさのハイエナだと誹謗中傷したのだ。確かに仕事の一環ではあるが、彼らだって懸命だった。


罵倒される謂れなんて一つもない。流石にどうかと思うので、俺は口を開いた。


「お言葉確かにごもっともですが、英雄願望が沸き立ってしまうのは無理もない話ですよ」

「何だと……?」

「何しろ貴方様が前線に立ち、凶悪なモンスター相手に毅然とした態度で望んでいたのです。同じ男として張り切らずにはおられません。
しかしながら、未熟であると言われれば確かにその通りでありましょう。

貴方様の勇姿に奮い立ち、思わず剣を取って立ち上がってしまった私の未熟をどうかお許し下さい」


 慇懃無礼に頭を下げる。まったくもって本心、嘘偽りない気持ちを口にする俺にローゼが笑いを堪えているのが見えた。ふふふ、日本語の妙を思い知ったか。


奮い立ったのは本当である。あまりにも状況が秘色、俺のような面倒くさがり屋でも戦わずにはいられなかったのだ。その点は事実でしかない。

未熟についても別に謙遜ではない。指揮官が剣を取って戦うな、と大人達からいつも口を酸っぱく言われている。クロノなんて実力者でありながら、部下を上手く指揮して成果を出しているのだ。

嘘ではない言葉をあたかも本心のように表現できるから、俺は日本語というものがとても好きなのだ。


「そしてそれは現場にいる方々も同じです。貴方様自ら取って下さった指揮に対し、彼らはついつい力を入れてしまった。彼らの気持ちは私と同じなのです」

「なるほど……俺の毅然とした態度に感化されてしまったということか」

「どうかお叱りを受けるのは、私一人にして下さい。彼らは貴方様の期待に答えるべく奮戦し、そして現場を見事に収拾した。
多少の行き違いはあったかも知れませんが、それは私本人が割り込んでしまった影響に他なりません。

護衛の方々は貴方様の期待に応え、商隊の女性達は商会長の商いに成立させた。どうか、その点を寛大な心でご評価頂ければと思います」

「ふむ、いいだろう。そこまで言うのであれば、貴様一人の責任で矛を収めてやる。寛大な心で事を収めた俺に感謝するように」


「ありがとうございます――皆様、改めて惑星エルトリアへようこそ。
この地をお守り下さり、お力添えして下さった事に感謝しております」


 これで護衛や商隊の方々の成果は約束され、奮戦を讃えられることになるだろう。他でもない男から得られた評価に、現場で戦った者達は目を丸くした。

叱責はおろか、解雇や無報酬を覚悟していたのだろう。いきなりの手のひら返しに驚きつつも、俺に向けて現場の方々は感謝の視線を向けてくれた。いやいや、正当な評価だから、別に俺に感謝することでもないんだぞ。

一応CW社の社長なんぞやっているんだから、労働者達の成果に報いるのなんて当然である。俺は単純に現場の責任者として、労働の対価を払えと丁寧な言葉で飾り立てて言っただけだ。


この程度の交渉が出来ないようなら、レジアス中将やカリーナお嬢様の相手なんて務められない。あいつらは鬼か悪魔のような守銭奴だからな……


(ご迷惑をおかけいたしました、リョウスケ様。
私の大切な部下達の名誉をお守り下さり、本当にありがとうございます)

(彼らは立派な仕事を果たしたのです、お礼を言われることではありません。どうぞ、貴方様からも労って差し上げて下さい」

(勿論です、彼らは私の自慢の商隊。成果を果たしたのであれば、報酬を支払う事こそがまさに私の――

いえ、私や貴方様のような職務につく義務でしょう)

(えっ、私の職務……?)

(はい、お見受けしたところ貴方様がこのエルトリアの新しい代表でありましょう。フローリアン様が休養に入られたと伺って案じていたのですが、貴方様を拝見して得心いたしました。
私としても取引相手が有用な御方で、大変頼もしくありがたい限りです。どうぞこれからも、有益な関係が築けますことを切に願っておりますわ)


 小声で耳打ちしつつも、女性から嬉しげに微笑まれて引っくり返りそうになった。いやあの、俺こそまさにその一労働者なんですけど……


現場を我がもの顔で仕切った顔をしているが、単にユーリ達に全部任せて責任者顔をしているだけである。時代劇の悪代官顔負けの無責任ぶりなんですぜ。

エルトリアの開拓が終わり、フローリアン夫妻が元気になったら帰るつもりなんだけど、後で納得してくれるだろうか。まああくまで店長と客の関係でしかないので、気にしないでもいいか。

連邦政府より発注を受ける大商人の女性と、仲良くなれる道理なんぞないのだ。ある程度友好的であれば、それでいい。


「リヴィエラより話を聞いて興が乗って来てみたが、本当にアルトリアの環境が変わっているのだな。雄大な自然が広がっているではないか。
連邦政府より立ち退き勧告が出ている惑星だと聞いていたが、枯れ果てた様子が何処にもないぞ」

「部下よりエルトリア最新の観測データを確認し、私も自分の目を疑いました。
実際に足を運ぶ必要性が生じた次第ですが、結果としてポルポ様を危険な目にあわせてしまい、申し訳ございません」

「ははは、かまわんぞ。他でもないリヴィエラとのプライベートだ、多少の刺激があった方が思い出に残るというものだ。
私の勇姿もしかと見せつけることが出来たからな、お前を守るのに相応しい男であっただろう」

「左様でございますね、素敵な戦いぶりでございました」


 ……何で彼女、こっちを見つめていっているんだろう。俺はローゼや妹さんに任せて、後ろから声援なげていただけだぞ。


それにしても今回商船ではなく、遊覧船でおえらいさんが乗船してきた理由が図らずとも分かった。エルトリアの激変が政府よりも先に、商会にバレてしまったのだ。

連邦政府のおえらいさんまで乗り込んできたのは、少々まずい。例の連邦政府代理人ならともかく、何の説明もなく重鎮に知れてしまうのは非常にまずい。

まだ全ての準備が整っていない内に、事が公になってしまうのは問題だ。


「リョウスケ様。よろしければ、エルトリアを案内してくださいませんか。大事な仕事を依頼している手前、環境の変化を確認しておきたいのです。
――勿論助けていただいた御恩を含め、後ほど必ずお礼はさせて頂きますわ」

「おお、それはいいな。おい貴様、俺とリヴィエラの旅を案内する役目を任せてやる。名誉に思えよ」

「ええ、勿論。乗り物をご用意させていただきますので、少々お待ち下さい」


 やべええええええええええええ、妖怪達が人生を謳歌している有様を見せるのはやべえええええええええええええええ!?


どんな怪物ランドですかとか言われたら、俺は一言も反論できない。モンスターに襲われたばかりの連中に、百鬼夜行を見せたら卒倒するわ。

くそっ、いずれ発覚することを想定して色んな準備をしている最中なのに台無しだ。何としてもごまかさなければならない。

こうなったらエテルナやノアに――現場にいつの間にか誰もいない!? とっとと撤収しやがったな、アイツラ!


大商会の女性と連邦政府の男を相手に、頭と胃が痛くなる珍道中が始まった。















<続く>








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