とらいあんぐるハート3 To a you side 第十一楽章 亡き子をしのぶ歌 第八十七話




 ――CW-AEC02X、ストライクカノン。


必殺の射撃魔法を殺されたシュテルがジェイル博士に協力、プライドをかけて開発した陸/空両対応型の中距離砲戦端末である。

カートリッジと呼ばれるシステムの搭載型で、シュテルの主武装であるフォートレスとの連結機能を備えている。大型の機体で、腕に装着した手甲とジョイントして装備している。

機体の大半を占める長大な砲身を展開して砲弾の加速レールとし、超遠距離砲撃も可能とするCWXシリーズの主力兵器。魔導殺し対策として注目されている。


元々個人用の汎用航空武装であるフォートレスとの連携は設計時から企画されていて、シュテルが直々に統括コントロールを行う。


「やはりこちらの想定通り、リインフォースとの決戦は一筋縄ではいきませんでしたね」

「決闘に持ち込みたかったのに、情勢が不利と見るや集中攻撃を仕掛けてきやがったからな」

「戦争を想定しているのはどちらも同じでしょうから、無理もありません」


 決着をつけるべく決闘を行いたかったが、イリスはあくまで決戦に拘っていた。ユーリの復讐を第一としながら、俺の殺害を主目的にしているアンバランス。

違和感に気づいて突っついてみると、案の定あいつの記憶に綻びが生じていた。何者かに細工されている可能性は大いにあるのだが、今一つ詰めきれない。

惑星再生委員会への調査結果を考慮すれば見えてくる像があるのだが、決め手がない。オルティア達が導き出した解は、ある一点において致命的な矛盾があったのだ。


何にしてもリインフォースを倒し、イリスを捕まえれば分かる話である。どうあれ、俺のやることは変わらない。


「いずれにしても想定の範囲内です。参りましょう父上、露払いはお任せ下さい」

「いよいよ敵も主戦力を投入してくるだろう、頼りにしているぞ」

「お任せ下さい、父上。飛行いたしますので、ギュッと私を強く抱きしめて下さい」

「お前の背中に乗るから、早く飛べ」

「自分の娘をスーパーマンゴッコするとはやりますね、父上。日本男児は言うことが違います」

「馬鹿にしているだろう、おい!?」


 愛娘が自分の世代で流行っていたスーパーマンゴッコを知っている事に戦慄を隠せないが、指摘するのも怖いのでさっさと出撃する。

エネルギーシールドを発生させる3機の多目的盾と、身体に装着するアーマー状のメインユニットで構成されているフォートレス。フル装備で飛行するシュテルの背中に飛び乗った。

要塞と呼ばれるに相応しい堅牢な航空防衛能力を持つので、細い物腰のシュテルであれど背中に乗るのに負担はない。この新しい肉体であれば、飛行中の加速による負担や重圧も耐えられる。


戦場の舞台が大空へと移ると、敵も意識を切り替えて迎撃を仕掛けてくる。


「――なるほど、敵もさるものですね」

「一応、これもリサイクルとでも言うのかな。主だった八神はやてより学びやがったな、あいつめ」


 黒翼を靡かせた巨大な怪鳥、黒影のアメティスタ。シュテルのストライクカノンで半壊した機動外殻が、リインフォースによって再構築されている。

中心部を貫通したので原型こそ留めていないが、リインフォースの戦闘機としてコンパクトかつ鋭利なデザインでリサイクルされた兵器。イリスの戦闘機に乗って、リインフォースが向かってくる。

アメティスタより発射された弾丸は魔導ではなく重火器として機能しており、殺傷兵器として襲いかかってくる。シュテルは即座にフォートレスを起動して、エネルギーシールドを展開した。


両者が肉薄した瞬間俺は剣を振るい、リインフォースは魔力槍を振るう。剣と槍が激突して火花を散らし、遙か上空で攻防戦を繰り広げる。


恐るべき近接戦闘能力だが、飛空能力においてCWシリーズを装備したシュテルの敵ではない。シュテルの加速に合わせて縦横無尽に剣を振るい、リインフォースに切迫する。

重火器の攻撃は剣士において苦手とされる分野だが、地上戦ではなく空中戦である以上勝機は十分にある。剣を振るい続けて弾丸を撃ち落とし、刺突による攻撃で魔力槍を牽制。


槍が跳ね上がったその瞬間を狙って、剣を一閃。脇腹を斬ったが、浅い。斬られた途端に魔力弾を駆使して、リインフォースは距離を取った。


「決闘ではなく戦争に切り替えたのはお前のミスだったな、リインフォース」

「私と父上のコンビは無敵です――ストライクカノン、発射」


 一対一の決闘を勝手に無視したツケを払ってもらおうか。近距離戦をアッサリと放棄した俺を目の当たりにして、リインフォースは目を剥いた。

確かに剣の戦いに過去拘っていたのは事実だ――ディアーチェを守るべく、剣を捨てたあの時までは。聖地での戦争で、俺は自分の娘を守るために自分の剣を手放した。

あの週間、ハッキリと分かった。剣を第一としていた、子供の頃の自分は死んだのだと。剣よりも優先すべき存在が出来たことで、俺はチャンバラごっこを止めてしまったのだろう。


未練は正直あるが、大切なものは別にある。お前との個人的な決着よりも、プライドを捨ててまで俺を連れて帰ろうとしたシャマルの思いに応えてみせる。


「フレースヴェルグ!」

「制圧魔法を使用――くっ!?」


 シュテルの放った、必殺のストライクカノン。圧倒的な破壊力を秘めた射撃に対して、リインフォースはあろうことか超長距離砲撃魔法を使用した。暴挙の極みである。

この魔法はリインフォースの強大な魔力を複数の弾に練り上げて一気に発射、着弾地点から周囲を巻き込んで炸裂させる魔導。一定範囲を制圧する大魔法なのだ。

その効果範囲の広さと威力の高さは殲滅兵器の域に達しており、出力を絞れば遠距離精密射撃も可能とする荒業である。主力兵器に対する迎撃に使用していい技ではない。


ストライクカノンとフレースヴェルグは激しくぶつかり合って、大爆発。空が真っ赤に燃え上がって、華麗な青空が炎熱の嵐で崩れ落ちた。


黒影のアメティスタは完全にバラバラになって大破、シュテルが最大展開したフォートレスのエネルギーシールドは粉々に砕け散って空の藻屑となった。

破壊はそれだけでは収まらず、リインフォースの腹部に命中。シュテルは頭部から血を流して吹き飛ばされ、俺は背中から振り落とされて激しい衝撃に襲われた。

相打ち狙い――ではない。向こうは一人に対して、こちらは二人。制圧魔法を使用されたら、損害はこちらのほうが大きい。戦争の利を、逆に奪い取られてしまう。


――とでも思ったか、こいつめ。


「少し痛かったですが、これも想定の範囲内。私には強力な『炎熱変換スキル』があるのですよ、リインフォース」

「御神流、枝葉落とし」


 ストライクカノンとフレースヴェルグの激突で生じた炎熱をシュテルがエネルギーに変換、生命の剣に取り込んで爆発力と変えて俺は空中を加速する。

御神流は剣の技だけに限った流派ではない。剣へのプライドを捨てた俺に対しても、御神美紗都師匠の教えは決して見捨てなかった。

枝葉落としは、組技の一つ。リインフォースの肘を極めつつ、あいつの肘で自分の刀を挟んで引ききりつつ、思いっきり投げる。切り裂くのと同時に投げ、肘を破壊する技だ。


まさか反撃に出るとは思っていなかったのか、リインフォースはダメージを受けて空中を投げ飛ばされる。


「来よ、白銀の風。天よりそそぐ矢羽となれ」

「変換スキル」


「フレースヴェルグ!」

「御神流、猿(ましら)火炎落とし!」


 北欧神話の羽搏きで風を巻き起こす鷲の姿の巨人、死者を飲み込む制圧魔法。フレースヴェルグの猛威が発揮されたタイミングで、シュテルが炎熱変換スキルを最大開放。

全ての破壊がシュテルに集中するが意に介さず、シュテルはフォートレスとストライクカノンを併用連結して迎撃。破壊が起きた混沌を狙って、俺はリインフォース本人に攻撃。

炎に燃える足で断空剣を使用、リインフォースの腹部を蹴り捌き、御神流の組技で自分の脚を相手に突き立てたまま反転して相手を地面に叩き落そうとする。


三者三様。少なくないダメージを受けたが、シュテルはフォートレスの堅牢な航空防衛能力で何とか無事、俺は新しい肉体と剣で攻防、リインフォースに多大なダメージを与えたが――


「――この瞬間を待っていたぞ、宮本良介」

「負け惜しみか、リインフォース。俺は絶対に離さないぞ。このまま地面に激突して死ね」


「"吸収"」


 自分の脚をリインフォース相手に突き立てたまま地面へ急降下していたその時――眼前に、魔法陣が展開。

即座に捕縛されてしまい、身体の自由が封じられる。捕縛魔法であるバインドだと俺の知識が訴えたので、ヴァリアントシステムを発動して魔導殺しを行おうとする。


しかし、それはあくまで――『俺の知識で補える』効果しか発動しない。


「これはバインド、じゃない!?」

「父上、リインフォースから離れて! "闇の書の夢"に取り込まれてしまう!?」


 魔法陣に接触した俺を捕獲空間に転送して閉じ込める、"複合魔法"――俄仕込みの魔導殺しは、通用しない。

俺を捕獲した捕獲空間は急速に閉じられていき、俺を封じ込めていく。慌てて生命の剣を発動しようとするが、複合魔法による効果は絶大であった。


視界があっという間に闇に閉ざされていき――リインフォースの声が、優しく耳を打った。



「優しい夢に溺れながら、共に地獄に落ちよう」















 ――1年前。















 ――2年前。















 ――10年前。















 ――100年前。















 ――10000年前。















 ――10000000000000000000000000000000000000000000000年前。















 ――XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX年前。















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「――ここは何処だ」

「ここは私達の家だ。私とお前、二人で過ごす安息の家」

「俺とお前で?」

「ああ、これからはずっと私がお前の傍にいる。二人で永遠を生きよう」

「そうか……じゃあもう一つ」

「ああ」



「俺は、誰だっけ?」















<続く>








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