とらいあんぐるハート3 To a you side 第四楽章 月影の華桜 第二話







 話を要約するとこうだ。

花見に出かけるので行くので一緒に行こう――

春真っ盛りの四月、桜が咲く季節。

海鳴町は山と海に囲まれた自然豊かな町だが、この辺でも綺麗な桜が咲くらしい。

美由希の話によると桃子とフィアッセが何よりこの手の宴が好きで、今年も絶対に行くのだと聞かないらしい。

根本的に反抗期とか親不孝とかに無縁なガキ共は反対すらせず、計画を立てているとの事。

花見ね・・・・・・


「そんなに楽しいのか、花なんぞ見て。綺麗の一言で終わりじゃねえか」


 しかも、大の大人二人がウキウキしていてどうする。

見ろ、可愛げのないゲーム好きのガキが苦笑いを浮かべているじゃないか。

俺の至極もっともな意見に、花見賛成派の歌姫が主張する。


「リョウスケは夢がないよ!
舞い散る桜の花びらを見つめて、お酒を飲む。
春にしか味わえない風流を楽しむの」


 ・・・外人のくせに、日本の風情を語るな。


「毎年家族一緒にお休みの日にお花見へ行くのよ。
今年は良介君も居て、楽しい一日を過ごせそうだわ」


 ・・・俺の都合は無視か、喫茶店の店長。

食後のお茶をすすりながら、俺は当たり前の主張をする。


「俺は行かないから」

「えーーーーっ!?」


 そんなに衝撃をうけることか!?

唇を震わせて、美人のお姉さんは真っ青な顔で身を乗り出す。


「どうして、どうして!?」

「興味ないし」

「私も一緒に行くんだよ!?」

「だから何だっつうの! 嫌なものは嫌」


 家族水入らずで行くんだろう。

飯の世話になっているだけの俺が行っても、邪魔なだけだ。

第一、俺は桜を楽しむ趣味はない。

風流な心は持ち合わせていないし、見に行きたいなら一人で勝手に行く。

あんなの、別に時間を割いて見に行くほど珍しい植物ではない。

きっちり反論してやると、フィアッセは瞳を潤ませる。

うっ・・・・・・


「どうしても嫌?」

「い、嫌だ」

「・・・本当に?」

「しつこいぞ、お前」


 明るい顔に陰りがさして、しょぼーんと俯く。

心の底から残念に思っているのが分かる。

心なしか、涙の粒が見えるような――


「・・・そんなに行きたくないならしょうがないね。
ごめんね、リョウスケ」

「う、あ、まあ・・・・・・」

「・・・・・・ハァ・・・・・・」


 ・・・・・・何だ、その重いため息は。

おいおい、お前ら全員揃ってその顔は何だ!?

まるで俺が極悪人みたいじゃないか!

ただ、行きたくないといっただけだろうが。

高町家の連中は性質が悪い。

表情を見れば分かるが、全員俺を責めている訳ではない。

無理強いさせようとしているのでもない。

ただ、じっと見つめるだけ。

怒りに任せて睨んでいるのではなく、拒絶されて悲しんでいる訳でもない。

心の底から残念そうに、落ち込んだ瞳で俺を突き刺すのだ。

怒鳴られたり、責め立てられるよりも遥かに辛い。

お人好し軍団のくせに、嫌な精神攻撃を仕掛けて来やがる・・・・・・

全員、無言。

桃子やフィアッセは俺の目を見るだけ。

逃げようかと思ったが、解決にはならない。

自己主張してもいいけど、レンや高町兄妹に戦いを拒否られても困る。

殴り飛ばしても、この空気は悪化するだけだな。

予定があるからと理由をつけると、違う日にすると嬉々として受け入れるだけだ。

――もしかすると、この世で最強な敵はこいつらかもしれない。


「・・・・・・。分かったよ、行けばいいんだろ、行けば」

「来てくれるの、リョウスケ!?」


 先ほどの暗さが嘘のように消えうせる。

フィアッセが喜びのオーラを発散させて、俺に最終確認をする。


「別に俺一人居ても居なくてもかわらんと思うんだが・・・」

「ううん、全然違うよ。
リョウスケが来てくれるだけで嬉しい」


 当たり前のように、他の皆の気持ちを代弁するフィアッセ。

当然のように、フィアッセの気持ちに同意する皆。

誰もが皆俺の参加を快く受け入れて、反対の声一つあげない。

レンが俺の前で溜息はついているが、不満な顔は見れない。

言葉一つ交えなくても、心を一つに出来る人達。

家族。

――俺には生涯縁のない世界が其処にあった。 

目を伏せて、俺は苦いお茶を飲み込む。


「やったね、桃子!」

「うん! お弁当沢山作って、カラオケ用意して・・・・・・
うーん、夢が広がるわねー」


 安っぽい夢だな、おい。

ほんの少し揺れ動いた心の迷いを切り裂いて、俺は苦笑いする。

家族なんて、俺にはどうでもいい。


「花を見るだけで大袈裟な。
あ、でも外で美味い飯が食えるのはちょっといいかも」

「やっぱり、あんたはそこか」

「うるせえ」


 面白そうに呟くレンに、俺は舌を出す。

桃子は喫茶店の店長、レンは料理の達人。

これはなかなか期待出来る弁当になりそうだ。

綺麗な花を見て、美味い飯を食う。

ふむ・・・・・そう考えると悪くはない。

そういう日もあってもいいだろう。

花見という行事に少し思いを馳せて――


「――花見っていつ頃行くんだ?」

「そうね・・・・・・具体的には決めていないけど、どうして?」

「今が一番桜が綺麗な頃なんだろ。
他に騒いでいる連中もいるのかなって思ってよ」


 道中テレビやラジオを聞くと、桜の名所は沢山の客が詰め掛けるらしい。

当然だが、皆出来るだけ絶好の場所で見たがっている。

その為場所取りとかは大変で、商売にする人間もいるらしい。

この辺は田舎なので、そんな心配は無用なのだろうか?

俺としても、酒飲んでるおっさんの横とかで花見なんぞしたくない。

ナイスな俺の指摘に、皆一様にがっかりとした顔をする。


「そうなんですよー、俺達も今必死で探しているんですけど・・・・・・」


 マジ泣きしているぞ、晶!?


「何処もいっぱいみたいで、はは」


 お前もお前で空笑いするな、美由希!?

うわー、やっぱりどこでも場所取りは大変なのか。


「家族サービスとかで、休みの日にお花見って考えるからな。
どいつもこいつも」


 普段仕事で汗水流し、休みの日は家族の為に体を削る。

ご苦労な事である。


「うちや晶も必死で探してるんやけど、やっぱ限界があってな。
せめて普段の日に場所取り出来ればいいんやけど、皆忙しいし。
うちらは学校あるし、桃子さんも仕事が・・・・・・あ」


 頭を抱えるレンが顔を上げて、俺を見る。


「学校も仕事もなく、毎日暇している奴――」


・・・・・・・は?
























































<続く>

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