とらいあんぐるハート3 To a you side 第十一楽章 亡き子をしのぶ歌 第六十四話




『魔法の進歩と進化、素晴らしいものではある。だがしかし、それが故に我々を襲う危機や災害も比べ物にならないほどに危険度を増している。
此度ミッドチルダを震撼させたテロ事件も然り、暴走とも呼べる進化の果てに起きた悲劇。魔導殺しと呼ばれる、愚かしいまでの犯罪が起きてしまった。

ゆえに我々は、特務機動課を立ち上げた。既存の枠に囚われぬ者達を集め、あらゆる組織の垣根を超えて結成された正義の集団である!』



「……何で俺達が聖地に帰投したこのタイミングで、全世界緊急演説やってるんです?」

「貴方が勝利すると、信頼していたのですよ」

「敗北した場合の言い訳パターンも絶対用意していたに違いない」


 補給基地の制圧を終えて聖地へ戻ると、あらゆるマスメディアを通じて地上本部の最高責任者がド派手に演説をかましていた。

同行していたオルティア捜査官が逐一報告を行っていたのだろう、抜群のタイミングで全世界に成果を喧伝していた。

事件世界のマスメディともなれば裏を取るのも難しくはないだろう、俺達がマリアージュ軍団を捕縛した事が裏付けされればレジアス中将は英雄となる。


時空管理局と聖王教会、レジアス・ゲイズと俺。どちらに主導権があるのか、演説を聞いていれば丸わかりだ。


『魔導を殺す者達に、魔法は通じない。よって今こそ、新たな力が求められる。我々が掲げる新たな兵器、運用による強化は進化したこの世界を守る為の力である!
力を振るうのは先の大戦で聖地に平和をもたらした聖王、我々の理想に共感してくれた仲間である。怯え苦しむ人々を救うべく今こそ立ち上がり、私の手を取ってくれた。

過去聖地を荒らした愚かな犯罪者達を捕らえ、テロ組織のアジトを制圧したのである。我らの正義と技術が勝利したのだ!』



「お約束通り、マリアージュは我々が連行させて頂きます。法の名の下に然るべき処罰を行いますので、関連手続き等はお任せください」

「犯人逮捕はそちらの手柄ということで話はついています。武功を騒ぎ立てたりしませんので、ご安心下さい」

「約束を守っていただけるのであれば、我々も契約を履行する準備がございます。人々の理解を得られれば、法整備もスムーズに進むでしょう。
地上本部が保有する資金、物資、コネクション、そういった貴重な資源を貴方と我々の未来の為に投資する――中将より確約は頂いています」

「カレイドウルフ大商会からも話は届いています、信用いたしましょう」


 人々に理解されてから法整備を行い、新兵器開発と運用を行う。表向きはその筋道で進めつつ、実際の兵器開発は既に多大な支援援助を受けて急ピッチで進めているのが現状だ。

聖王のゆりかごとイクスヴェリアが強奪されて、聖典の知識を持って戦力増強しているイリスを相手に、後詰めでは絶対に間に合わない。だからこそレジアスも表舞台に立って、英雄を演じている。

功績を丸ごと横取りするというのは、良い事ばかりでは決してない。多大な武功を積み重ねれば人々は声援を上げるが、信頼は積み重なると重くなっていくものだ。


彼は俺達が出来る限り自由に動けるように、一人で背負ってくれているのだ。正義感が過ぎる御仁ではあるのだが、責任の果たし方をよく分かってくれている。


「本作戦の功績を認められて、私はレジアス中将より直々に特務機動課の副隊長を命じられました。現場責任者である貴方の支援役となりますので、よろしくお願いいたします」

「俺はあくまで現場の責任者なんだから、指揮官として務めてくれてかまわないぞ」

「名目上の階級は貴方が上です。司令塔について下さればいいのですが、貴方は最前線に立たれるのでしょう。でしたら、副隊長として同行した方が効率的です」


 こうしてオルティア捜査官は今後、副隊長となって俺と行動を共にすることとなった。美人で頼もしい女性なんだけど、アリサやシュテルとはタイプの異なる才媛なので堅苦しそうだった。

ただ射撃が得意な魔導師なので、剣を主流とする俺と相性が良いのも事実だった。支援役というポジションも頼もしく、彼女であれば適材適所で見事に活動してくれるだろう。

結局のところ難儀しているのは、人間関係としての距離感だった。お見合いと婚約の件は本人が言うほど引き摺ってなさそうだが、まだ何となく壁がある気がする。


普通ならこういう場合、上司としてこう言うべきなんだろう。どうせ拒否されるだろうけど、適当に言っておく。


「では就任祝いに、二人で飲みに行きましょうか。奢りますよ」

「本日は報告書を仕上げる必要がありますので、明日の夜でお願いいたします」

「分かった、明日の夜に――えっ!?」

「何か?」

「い、いえ、明日の夜でもかまいませんよ」


 氷の乙女と呼ばれる才媛が、夜のお酒の席を約束してくれた。男の影なんて微塵もない美人が、何故オッケーを出してくれたのだろうか。距離感が、全く分からなかった。

――いや違う、それは相手だって同じだ。考えてみれば、向こうの方が困っているかも知れない。お見合いと婚約を一方的に断った男が上官なのだ、距離感なんぞ掴みようがないだろう。

オルティア捜査官もとい副隊長は、俺の性格をそろそろ熟知している頃だ。夜のお酒で女を口説くような男ではないことくらい、分かっているだろう。そもそも俺、ヴァイオラという婚約者がいるしな。


気負った様子もなく、オルティア副隊長は一人の男性を連れてくる。制服を見事に着こなした、なかなかの美男子だった。


「彼も此度の功績を受けて、正式に隊長として特務機動課所属となりました。紹介します、ティーダ・ランスター隊長です」

「ご挨拶が遅くなりまして申し訳ありません、聖王陛下。ティーダ・ランスター、本日より正式に入隊となります」

「現場での采配、見事な働きでした。今後も困難な作戦が続き、臨機応援な対応が求められるでしょう。貴方の才能を思う存分発揮して下さい」


 上司と部下の立場だが特務機動課は特殊な部隊なので、握手という形での挨拶を行う。本来であれば階級も含めて名乗りを上げるべきなのだが、この場にいるどの人間も立場は特殊だ。

ティーダ・ランスター隊長は嫌味のない好青年で、話をしてみると教養のある落ち着いた男性だった。野心はないが情熱があり、野望はないが執務官になるという夢は持っている。

自分よりハンサムな男だと気後れしがちなのだが、自分の優秀な部下となるのであれば垣根はない。自分自身の劣等感は、ユーリ達が全て払ってくれている。俺は気兼ねなく話すことが出来た。


聖地へ戻って諸々の事後処理を行い、三人で話しながら隊舎へ戻ると――


「にいさん!」

「"ティアナ"!? どうしたんだ、こんな夜遅くに」

「ニュースでにいさんの活躍を聞いて、わたし応援したくて!」


「だからってわざわざ……申し訳ありません陛下、副隊長。この子は"ティアナ・ランスター"、私の妹です」


 ――自分の兄の活躍を聞いて、夜遅くにわざわざ応援にやってくる。ティーダは申し訳無さそうにするが、生憎と俺はそういう非常識なガキ共をうんざりするほど知っている。子供はバケモノだ。

ティアナ・ランスターはなのはやはやてより明らかに年下の女の子で、ツインテールの可愛らしい少女である。世間的にティーダの名前まで公表されていない筈だが、兄の所属先は知っているのだろう。

恐縮する兄を見て迷惑を感じたのか、やや申し訳無さそうな顔で俺やオルティアに頭を下げてくる。とても素直で聡明な少女に、俺達は顔を見合わせて苦笑した。


将来必ずいい女になりそうな素養を持っている。兄と同じく、好感の持てる人間だった。子供だからと侮れないのは、なのは達で思い知っている。


「君のお兄さんには私達も大いに助けられていたんだ、正にヒーローだったよ」

「ほんとうですか! 兄さんは、やっぱりすごいんですね!」

「うむ、ビルを担いで持ち上げる人だぞ!」

「おお、パワフル兄さん!!」


「私を怪力マンにしないで下さい、陛下!?」

「……子供で同レベルで盛り上がらないで下さい、隊長」


 イエーイとハイタッチする俺とティアナに、周知に顔を赤くして反論する兄と呆れた顔で物言いする副隊長殿。スバルのようなノリの良さと言うより、空気の読めるいい子なのだろう。

気分転換がてら話を聞くと、ティアナは元々武装隊の空士であるティーダに育てられた二人家族らしい。両親は既に他界し、ティーダが空士として働いてティアナを育てていた。

今回の特務機動課設立を受けて、才能のあった彼が抜擢されて聖地へと派遣。妹を一人にするわけにはいかないので、この聖地へ一緒に引っ越してきたらしい。


話を終えて、ティーダは腰を落としてティアナの視線に合わせる


「ごめんな、ティアナ。まだ仕事が残っているんだ、寂しいだろうけど家で待っててくれるか」

「うん、ごめんなさい兄さん。大丈夫、お家でちゃんと待てるから!」


 ……なるほど、兄の応援として来たのはあくまで理由の一つで、本当は引っ越してきたばかりで家で一人寂しかったというのもあるのか。

どれほど聡明で利発的な少女であっても、まだ子供だ。気丈に振る舞っても、寂しさというのは消えないものだ。大人でも、孤独に生きるのは大変なのだから。

何だかんだ言っても、俺はガリやデブがいたから一人というわけではなかった。孤児院を出ても、仲間や家族には恵まれたものだ。


……ふむ。


「ティアナ、お兄さんは好きか」

「はい、あこがれています!」

「いい返事だ。よし、今日からお前も俺達の仲間だ!」

「ほんとうですか!?」

「陛下、突然何を仰るのですか!?」

「大丈夫ですよ、ティーダさん。隊長の考えなんてすぐに分かりますから――ヴィヴィオさん達を呼べばいいんですね」


「……何故分かったんです」

「副隊長ですから」


 ようするにジークリンデ・エレミアやヴィクトーリア・ダールグリュンを引き入れた時と同じだ。ガキンチョ部隊にスカウトして、友達の輪を広げる。

程なくしてヴィヴィオやエレミア達が集まってきて、ティアナに呼びかける。突然の子供部隊に目を白黒させていたが、やがてティアナも恥ずかしそうにしつつも輪に加わった。

すぐに俺の意図を察して、ティーダは嬉しそうに俺に頭を下げる。感謝してくれているところを悪いが、うちの子達はあまり教育に良いとは言い難いぞ。


そもそも夜遅くに呼びつけているのに、全員集まれるのがおかしいからな。門限という概念がないのか、こいつらは。


「この子達の未来を守るために、我々が頑張らなければなりませんね」

「その為の特務機動課です。何としても犯人を捕まえて、事件を解決しましょう」

「大人の物々しい部隊より、ガキンチョ達のヒーローチームの方がカッコいいだろうからな。悪者なんてこの世にはいない方がいい」


 ヴィヴィオ達と友達になれて嬉しそうにしているティアナを見ていて、柄にもないことを言ってしまう。実際、オルティア副隊長もやや驚いた顔をして俺を隣から見ていた。

ユーリとイリス、二人の間に何があったのかわからない。ユーリは何も知らないと言っているが、少なくともイリスの憎悪は本物に思える。あいつだって大人とは言えないだろうに。

復讐のためにあらゆる青春を捨てる人生というのは、どんなものなのだろうか。ふと思ったが、すぐにバカバカしくなって首を振る。剣を振り回す人生だって、健全ではない。


子供とは違って、大人は話し合いでは済まない。


「次の作戦は考えているのですか、隊長」

「マリアージュを使って、黒幕を誘い出す」

「協力者であるヴェロッサ査察官見習いの能力を使用してマリアージュの頭の中を探って洗脳、然るべく行動させて黒幕を焦らせるのですね」


「だからなんで分かるんだ!?」

「副隊長ですから」















<続く>








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