とらいあんぐるハート3 To a you side 第十楽章 田園のコンセール 第八十五話






 自分の問題が解決した事でようやく、あいつに関する問題の解決策が思いつけた。


「フェイトが魔法を使えなくなったのはもしかして、俺と同じ理由じゃないか?」

「……なるほど、魔法への情熱が失われたという事ね」


 ちょっとした俺の思い付きに対して、頭の良いアリサはすぐに察した。魔法少女フェイト・テスタロッサは今も、魔法が使用出来なくなったままである。

起因となったのはドイツの爆破テロ事件で俺の訃報を聞いた衝撃によるものだが、俺の無事を知った今も改善されていない。もしかしてあれは、ただの引き金だったのではないのか。

精神的な衝撃は最後の一押しだっただけであり、もともとフェイトの中で魔法に関する情熱は失われていたのかもしれない。


その理由も、ハッキリしている。


「そもそもあの子、母親のプレシアさんに求められて魔導師になったのよね」

「姉のアリシアと母親のプレシア、師のリニス。求めていた人達が全て取り戻せて、あいつは魔法を必要としなくなったんじゃないのかな」

「十分に有り得る話ね。相談を受けてから常に状況は聞いているけど、魔法が使えなくなってもあの子は特に問題なく平和に生活しているそうよ」


 俺が世界会議に参戦したり、聖地で奮戦している間に、プレシア・テスタロッサの裁判が終わった。本人の自首と捜査協力、何より次元犯罪が未遂に終わった事で大罪にはならなかった。

判決は魔力を大幅封印した上で、第34無人世界「マークラン」での保護観察となった。本人が大病を患っているのもあり、情状酌量が認められた形だ。プレシアは罰を受け入れた。

自然豊かな生活で落ち着いたからこそアリシアも俺の元へ馳せ参じ、フェイトも静かな環境を過ごせている。魔法は必要なくなってしまったのだ。


特にプレシアの病気は魔力による弊害もあり、魔力の大幅封印はむしろ改善に役立っている。フェイトからすれば、魔力は母を苦しめる病魔でしかないのだ。


「魔法が使えなくなるというのは極端に聞こえるが、剣士が剣を振れなくなるのと同じだからな」

「似た者同士だからこそ、根本的な理由に気付けたのね」


 アリサは呆れているが俺の見解には賛同して、関係者各位にメールで詳細を送っている。俺と同じ理由であれば、改善は俺と同じく厄介である。

結局のところ魔法を不要だと心の何処かで思っている限り、情熱は戻ってこない。そしてフェイトは俺のように、必ずしも魔法を求めていないように思える。

今の平和な世の中に、剣は不要なのだ。魔法文化のミッドチルダでは必ずしもそうではないにしろ、フェイトが魔法を使う理由としては乏しい。


そもそもフェイトはジュエルシード事件で管理局から保護を受けている状態、魔導師として動くのは本人の望むところではないだろう。


「アルフが気を揉むのは理解できるけど、本人が望んでいないのであれば余計なお世話じゃないのか」

「あんたの言いたい事は十分よく分かるけど――」

「何だよ、問題があるのならちゃんと言ってくれ」


「このままだとあの子、まだ子供なのに人生から隠居しそうよ」

「――うっ」


 余裕でありえる。


家族を取り戻せた喜びで満足して、そのまま人生から退場しそうな予感がある。微笑ましく表舞台から去りそうな雰囲気がプンプンしている。

高町なのはも将来には悩んでいたが、それは前向きな悩みである。あいつの場合母親の愛を求めて頑張っていただけで、家族が取り戻せたのであればもういいと喜んで人生を去りそうである。

流石に自殺なんぞするとは思えないが、このまま平凡に生きて死んでしまいそうだ。平凡に生きるのはいい事なんだけど、情熱のない人生というのも考えものである。


もともとの受動的な性格に拍車がかかっていきそうな怖さがあった。


「あんたが嫁さんにでもしてあげればいいじゃない、好かれているんだから」

「リョウスケを信じてついていくね、とか言いそうだぞあいつ」

「……冗談だったんだけど、本気で言いそうだから怖いわ」


 元々抜群に可愛い子なので、将来はさぞ美人さんになるだろう。悪い男に目をつけられたら、余裕で騙されそうだった。本人の意志はあるけれど、押しに弱いからな。

それに自分の人生に情熱がないというのも、考えものである。大志を抱けとまで言わないが、無計画に生きていくのは堕落でしかない。

自分自身の大望が大事件を通じて叶ってしまっただけに、あいつの中で成し遂げた感が強い。これ以上望むのは出来すぎであると、自分の中で線引しているかもしれない。


新しい問題に気付いてしまって、アリサと二人で頭を抱える。どえらい事になってしまった。


「そうなると、魔導師として再起を図るのがいいのかな」

「どうやって情熱を取り戻すのよ。あんたとは違って、あの子には明確な目標がないのよ」

「ライバルだったなのはも、争いを望まないタイプだからな……砲撃が得意なのに、人に撃つのは嫌がっているしな」


 高町なのはが魔法を好きであればともかく、あの子は今桃子のいない喫茶店の再建に苦心している――ちっ、そういえばあいつの問題もなんとかしなければならない。

どうしたものか。別に魔導師になる事だけが全てではないが、魔法自体は嫌いではないと思う。一人の子供として、出来ることから始めた方がいい。


出来ること――おっ、それだ。


「バイトというのはどうだ」

「何よ、急に」

「仕事だよ、仕事。のんびり平和に生きているから、何も考えずにだらけてしまうんだ。
急に魔法を使わせるのではなく、魔導に関する仕事を手伝わせて労働の喜びを知ってもらうんだ。そこから何か、将来の希望が見えてくるんじゃないかな」


「……あんたには珍しく、随分と健全な解決方法ね」

「どういう意味だ、コラ」

「一応褒めているのよ」


 子供なら本来学校に通うべきなんだけど、あいつは裁判が終わった後であり、そもそも今まで学校にも通った事がない。社会復帰支援が必要だ。

だからこその仕事、ミッドチルダであれば子供でもこなせる仕事が多くある。日本とは違って、魔導の世界においては子供でも活躍できる社会なのだ。

急に魔導師に戻すのではなく、魔導に関する仕事を一つ一つこなして将来への足がかりとすればいい。


仲間と決闘した俺とは違って、あいつには荒療治は必要ない。


「だったら、ちょうどよかったわ。今のフェイトにふさわしい、いい仕事があるの」

「流石はアリサ、ヤクザだな」

「あたしは裏社会の元締めか!? あんたの企業でしょう!」

「俺の……?」


 アリサは一冊のパンフレットを持ってきて、突きつける。

この会社のロゴマークはもしかして――


「世界最大級の大商会「カレイドウルフ」出資によるカレドヴルフ・テクニクス、CW社。
AMF(アンチマギリングフィールド)対策を前提としたあんたの構想により実現した、魔力とバッテリー駆動のハイブリッド、"CWX"。

先日開発に成功したとセレナさんから連絡があったので、新武装実験にファイトを推薦するわ」


 ――大勢に詰め寄られてその場で適当に言っただけの馬鹿な構想が、実現されてしまった!?

金持ちの道楽、怖すぎる。魔導全盛期のミッドチルダで、バッテリー駆動の兵器なんぞ売れると本気で思っているのだろうか。


高校にも行っていないアホな剣士の思い付きが実現されて、頭を抱えてしまった。倒産したら俺の責任になってしまう――フェイトの人生がやばい。













<エピローグへ続く>








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