とらいあんぐるハート3 To a you side 第三楽章 御神の兄妹 第八話




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 その日―――ふと目を覚ました。


「・・・ん・・・?」


 曖昧な意識とかすかに残った眠気が、強烈に視界を揺さぶる。

酩酊した頭と温かい布団の感触が心地良く、そのまま目を閉じる。

気ままに生活を送る俺様に、予定なんぞナッシング。

そのままゆっくり身を横たえて、眠りに就いた・・・・





「・・・さんはまだ寝てるの?」

「らしい。母さんが―――」





 男女の声。

聞き覚えのある気がするが、眠いので思い出すのは放棄。

どうでもいい。

今の俺は快眠が第一。





「・・・さんに挨拶しなくていいかな?」

「無理に起こすのは悪い。ゆっくりしてもらおう」

「・・・そうだね」





 声が徐々に離れていく。

階段を下る音が聞こえてきて、そのまま声の主達は遠ざかっていった。

あー、やっと静かになった。

じゃあ改めて・・・・・zzz・・・・・





「おししょー、おししょー!これ、お弁当です!」

「お弁当箱は使い捨てですんで!
こいつのはそのまま食べずに捨ててもいいですよ」

「なんやと、このおさる――――!!」





・・・たく、うるせえな。

安眠妨害で訴えるぞ、この野郎。

何やらコンビニっぽい奴と小僧っぽい奴が言い争っているのが聞こえる。

耳障りなので布団をかぶって遮断。

我、ただ睡眠をむさぼる者也―――





「こら!喧嘩しちゃ駄目!
おにーちゃんとおねーちゃんが安心して――――に行けないでしょ!」





 今度は乳臭いガキの声。

二人が謝っているのが聞こえる。

うーむ、なかなかやるなあのガキも。

―――などと、これっぽちも思わずに俺は布団をかぶった。





―――もう声は聞こえてこなかった。















「なにぃっ!?出て行っただとぉ!?」


 食卓で響く大声。

まるで天使のように清らかで、男らしく清々しい声が一軒家より飛び出した。

勿論、俺様の声だ。

―――と、感心している場合じゃない。


「二人が出て言ったってどう言う事だ!?
折角、俺がわざわざ勝負してやろうとやって来たってのに」

「あんた、宿無しやから泊まってただけやん。
しかも酔っ払ってたし。フィリスさんがあんなに止めたのに」

「ふふん、フィリスも酔わせてしまえばイチコロだ」


 昨日は俺の退院パーティが盛大に行われた。

予想外の珍客とかもいたが、別に問題もなく受け入れられて皆楽しんだ。

初対面揃いばっかりだったが、周りの面子はそれぞれに仲良くなったらしい。

月村もそうだが、あのノエルも話題に入って結構楽しそうにしていた。

面子も外人が多かったから、受け入れやすかったのかもしれない。

で、昼から夜まで騒いで盛り上がり―――そこから先はよく覚えていない。

リスティと飲み比べして、フィリスをからかって、久遠をいじめて・・・・

遅くなったからそろそろ終わりにしよう、と桃子が〆た気がする。

それで俺が帰る家なんぞないと言ったら、月村とかフィリスが自分の家にとか言って、別にいいって断って・・・・

気が付いたら、この高町家で朝を迎えていた。

フィアッセにおはようと起こされた時は心底・・・いやいや、ちょこっとびっくりした。

荷物も運んでくれた(話によると恭也が)らしく、着替えまで洗濯してくれたらしい。

お水が真っ黒になった、と桃子に笑われたが。


「にしても、俺との勝負を放棄した卑怯者どもは朝からどこへ行ったんだ?」


 学校とも考えたが、レンが昨日春休みだと言っていた。

時期的に考えて、あいつらだってそうだろう。

ちゃんと前もって予定を聞いておけばよかったな・・・・

昨日は昨日でここで泊まる羽目になるとは思ってなかったので、勝負事に関して後回しにした。

・・・・酒飲んで騒いでいて忘れてたのもあるが。

その間晶が持って来てくれたお茶をすする。


「おにーちゃんとおねーちゃんは山に行きました」

「山・・・?」


 台所のテーブル席からちらりと横目で見ると、俺に見上げる小娘が約一名。


「山って・・・・登山でもするつもりか、あいつら」


 暇な奴等だ。

そんなに暇なら、俺との勝負を優先しろと言いたい。

恭也の実力は侮れないものがある。

事件ではその実力を見れなかったが、仮にも俺をちょびっと苦戦させた爺さんに勝てないと言わしめる男だ。

こうして都合良く家に来れた以上、リハビリをかねて戦いたかった。


「いつもお休みになると行くんですよー。
おにーちゃんもおねーちゃんも強くなる為に頑張ってるんです」

「なんだ、山に篭って修行かよ。
・・・・って、修行だと!?」

「そ、そうですけど・・・・?」


 大声上げて勢いよく立ち上がったせいで、なのははちょっとびびっていた。

ガキの事なんざどうでもいい。

問題はあの二人―――

まさか日帰りで山へわざわざ鍛えに行くとは思えないので、何日も篭って修行するのだろう。

美由希も恭也も、性格は真面目だ。

必死で、懸命に修行に励む姿がリアルに想像出来る。

あ、あいつら、俺を差し置いて・・・・・・


「場所は何処だ!」

「え・・・?」

「場所だ、場所!あいつ等が向かった場所!!」


 ふふん、俺に内緒で修行するとは馬鹿な奴らめ。

どうやら、俺という最強のライバル出現でびびったと見える。

俺も負けてられるか。

爺さんとの戦いで苦戦しちまった自分の不甲斐なさ。

そして、病院でなまった身体を鍛え直すチャンス!

早速身支度を整えて――――


「何でもええけど・・・御飯いらんの?」

「・・・いただきます」


 盛り上がる俺に、努めて平静に問うレン。

・・・ちょっと遅い朝御飯をありがたくいただいた。

























<第九話へ続く>

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