とらいあんぐるハート3 To a you side 第二楽章 白衣の天使 第十七話






「まさか帰り道で君に会えるとは思わなかったよ」

「俺だって分かっているなら、普通に止まればいいじゃねえか」


 俺は不満げな声を上げるが、リスティは悪びれる様子は無い。


「君だからやったんじゃないか。ジョークだって分かってくれると思ったからね」

「怪我人は労われ、不良警官」


 今、俺はリスティの車に乗っている。

久遠の飼い主の家を探す途中で、車に乗ったこいつに遭遇しそのまま同乗している。

人をびびらせたのだから、当然の権利だ。

このままちんたら歩いてたら、後何時間かかるか見当がつかないしな。

拒否したら強行に訴えるつもりだったが、逆にリスティが誘ってくれた。


「怪我人の割にピンピンしているみたいだけど
「この程度の怪我でへばる程やわじゃねえよ」


 ふんっと鼻で笑うと、リスティはすました顔で言う。


「うんうん、ならあれくらいの冗談でも平気だよね」

「ぐぬ・・・」


 車で轢かれて無事な奴いねえよ!とか言いたいが、根に持つのもかっこ悪いのでやめる。

暖房の利いた車内でくつろぎ、俺は気になってた事を口にする。


「ところでお前、どこ行くつもりだったんだ?」


 偶然にしても、普通にばったり出会える場所じゃない。

住宅街よりかけ離れた山の手辺りの坂を、俺は登っていた。

夜分遅くにこんな所をドライブ気分で走るとは思えない。

自宅があるにしては町から離れすぎているし・・・

俺の疑問に、フィリスはハンドルを動かしながら答える。


「私の家がこの近くなんだ」

「家だあ!?」


 おいおいおい、この辺思いっきり山だぞ。

山の上に民家一軒は寂しいとか言うより、ホラーに近い不気味さがあるぞ。

疑いが顔に出ていたのか、リスティは面白そうに表情を緩める。


「寮があるんだよ。私はそこに住んでいるんだ」

「山の上かよ。不便な場所に建ててるんだな・・・」

「交通の便は確かに少々難だけど、バスもあるしね。
住み心地も良いし、私は気に入っているよ」


 自分の家について話すリスティは楽しそうだった。

余程気に入っているのだろうな、こいつ・・・・

茶々を入れがたい感じなので黙っていると、今度はリスティが聞いてくる。


「で、君はこんな所で何をしてるの?
退院はまだ先だと聞いてたけど」

「乗せる前に聞けよ、そういう事は・・・」


 車は坂道をまっしぐらに登っている。

自分の家に俺を連れて行く気満々のようだ。

目的地を聞かずに乗せていってあげると言ったのは、つまりはそういう訳なのだろう。

俺は言ってやった。


「散歩だ」

「こんな山の中で?」

「俺の故郷は山なんだ」

「・・・説得力があるね」


 あるのかよ!?

遠まわしに原始的な生活を肯定されたみたいで、腹が立ってきた。

リスティは胸元のポケットから煙草を取り出す。


「私の車なんだから、自由にさせてもらうよ」


 ・・・見舞いの時の禁煙発言を根に持っていたらしい。

顔を顰める俺をくすっと笑って、リスティは慣れた仕草で咥えた。

性格の悪さは大問題だが、リスティは見た目は抜群だ。

ただ煙草を咥える仕草にもドキっとさせる。

俺は何となく目を逸らした。


「フィリスに黙って出てきたみたいだね。
あの娘医療事にはうるさいから、後が大変だよ」

「・・・う、うっさいな。
べ、別にフィリスなんか怖くねえよ」

「どもってるよ」

「ええい、うるさい!」


 フィリスの迫力のない怒り顔を想像し、俺は不覚にもちょっと声が震えた。

あ、明日の朝までに帰ればいいだろう。

あいつに発覚する前に帰れば問題なしだ、うん。

・・・って、何か卑屈だぞ俺!?

動揺している俺を尻目に、リスティの興味は俺から俺の膝元に移ったようだ。


「・・zzz・・・」


 ぐっすり寝ている子狐。

後ろの席に何度も追いやったのだが、その度にいちいち戻ってきては俺の膝元に座る。  

鬱陶しいのだが、ついに根負けしてそのままにさせていた。

たく、べったりして何が楽しいのやら・・・・

リスティは黙ってじっと久遠を見ている。

犬猫とは違うのだ、興味を持って当たり前だろう。

問題はこいつの事をどう説明するか、だ。

一から説明するのは面倒くさいが、飼い主探しをしないといけない。

協力を求めたいが、どこから説明したものやら・・・


「・・・まさか久遠があんたの所にいるとはね・・・」

「お前、知っているのか!?」


 名前まではっきり言われて、俺は目を見開いてリスティに向く。

説明する必要はないようだが、何で・・・・・?

リスティは咥えた煙草を揺らし、静かな声を出す。


「・・・お礼、ちゃんと言ってなかったね。
那美を助けてくれてありがとう。
久遠も世話になったみたいだし、あんたには感謝してる」

「・・・お前・・・・」


 リスティは照れくさそうに、窓を向いて顔を隠す。


「二人とも私の大切な友達だからさ・・・・
同じ屋根の下で生活してる」

「じゃ、じゃあ・・・!?」


 リスティは頷いた。


「さざなみ寮――
その子の飼い主はそこに住んでいる。
君は那美の恩人で久遠の大切な友人だからね・・・・
歓迎するよ、宮本良介君」 


 唖然とする俺に、リスティはにっこり笑って車を走らせた。























<第十八話へ続く>







小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。

お名前をお願いします  

e-mail

HomePage






読んだ作品の総合評価
A(とてもよかった)
B(よかった)
C(ふつう)
D(あまりよくなかった)
E(よくなかった)
F(わからない)


よろしければ感想をお願いします



その他、メッセージがあればぜひ!


     












戻る