とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百六十五話
フィアッセの母親ティオレ・クリステラが主催のチャリティーコンサート。その開催がいよいよ迫っていた。
極秘で来日したティオレ御婦人は結局日本を離れることはなく、そのまま海鳴に滞在していた。
マフィア達が暗躍する中、日本に留めるのはリスクがあったが、それ以上に本人に危機的に迫っていたリスクが軽減されていた。
身体的リスク――重い病に冒されていた身体がユーリの生命操作能力により、劇的に改善されていたのである。
『本人の様子はどうだ』
『我々医療チームが日々検診を続けていますが、信じられないほどに病状が改善されています。
病そのものが根治された訳ではないのですが、本人の免疫力と自然治癒能力が目を瞠るほど高まっているんです。
食欲も戻っているどころか高まっているほどですし、薬も必要なくなってきています』
命を狙われているので自由気ままな行動こそ出来ないが、本人は病人とは思えないほど溌剌としているらしい。
心身共に弱っていた頃が嘘のようにメリハリが付いて、後ろ向きな事は一切言わなくなったらしい。
それどころか世界ツアーにも非常に乗り気で、必ず成功させると張り切っているようだ。
こう言っては身も蓋もないのだが、死にかけの老女だった面影はもう欠片もないようだ。
『容態は聞かされている。君には本当に何とお礼を言えばいいのか分からない。
娘も、そして妻も……私の掛け替えのない家族を救ってくれた君は、我が家の生命の恩人だ』
『いやいや、ティオレ御婦人を救ったのはうちの娘達です。俺が何かした訳ではないですよ。
フィアッセにいたってはむしろ過去に迷惑をかけたくらいです。あいつがどう思っているか分からないですが』
『何を言っているんだ。君が結んだ縁に助けられたのであれば、君によって救われたのと同じことだ。
本当にありがとう、リョウスケ君。私は決してこの恩を忘れない。
護衛として君とは契約を結んだが、約束していた報酬以上に報いることを約束しよう』
『まあその時は、うちの娘達を遊園地にでも連れて行ってやって下さい』
『ははは、その時はワールド・リゾートに君のご家族を招待しよう』
アルバート議員も先日、日本へと来日した。コンサート目的なのは言うまでもないが、外交の一環で来日している。
直接的ではないにしろ彼も狙われているのは確実だが、さすがに来賓だけあって警備も厳重だった。
俺のような素人が気に病む必要も全く無く、実に堂々と政治的振る舞いを行っている。
そして感動的な場面で、熱烈に俺にお礼を言ってくる。めちゃめちゃユーリ頼みだっただけなのに。
『ガッカリさせるようで申し訳ないですが、ユーリの"超能力"は御伽話の魔法ではありません。
ティオレ御婦人に健康を取り戻すのが精一杯で、病そのものを根絶することは出来ません』
『ああ、それも分かっている。君の娘さんだけではなく、医療チームも懸命に努力してくれているからね。
妻の元気な姿を見ることが出来る。それだけでも我が家にとっては救いだよ』
ユーリの魔法や力を、HGS患者のような超能力という表現で誤魔化している。この点については一切怪しまれておらず、受け入れられている。
フィアッセの存在もそうだが、HGSであるフィリスが医療チームの一員となっているのが大きい。身内がいれば誤魔化すことが難しくはない。
フィリスからも様子は伺っているし、状況を共有してくれているだけでもありがたかった。
愛らしい容姿のユーリは胃腸チームを含め皆から愛されており、ユーリ本人も随分可愛がられているらしい。
『ただ議員の奥さん、うちの娘にだだ甘なのはご勘弁願えないですかね。
治療目的で滞在先に向かう度に、高級菓子とかお高いドレスとか持って帰ってくるんですけど』
『はは、すまないが妻の趣味に付き合ってあげてくれ。感謝の意味もあるんだ。
よほど気に入ったのか、連絡でも折に触れては絶賛してくる。君の娘はとても優しくて良い子なのだね』
『ユーリがいい子なのは否定しませんけどね……』
ユーリとナハトヴァールのセットでよくティオレ御婦人の下へ行っては、キャーキャー言われているらしい。
フィアッセ同様に我が子のように可愛がっていて、最初は恐縮していたユーリも今ではすっかり懐いてしまっているようだ。
あの子には母親がいないし、本人も父の俺がいればいいと最初は言っていたのだが、やはり母性というのは尊い感情であるようだ。
最近では音楽も教わっているらしい。勿論ソングスクールではなく、あくまでご本人のプライベートな時間だが。
『どこまで本気か分からないが、コンサートにも誘っているようだよ』
『世界中が注目している舞台に、うちの娘を立たせるのはちょっと……』
勿論冗談だとは思うのだが、ティオレ御婦人の可愛がりを見るとちょっと不安だった。
ユーリはアイドル顔負けの美少女ではあるが、それとこれとは話が別である。
魔導師とバレることはなくたって、ユーリは華やかな世界はあまり望まないだろう。ささやかな生活に満足するタイプだ。
魔法のこともあるし、あまり注目されるのはよろしくない。
『本番も近づいている。すまないが今一度協力してほしい。
当日の警備について合同会議を開くので参加してほしいんだ』
『分かりました』
チャリティーコンサートは決戦の舞台、当然舞台に立つのはプロの役者である。
俺のような素人がノコノコ顔を出していいところではない。悪役だってプロ、世界を震撼させるテロリストたちなのだ。
どこまで力になれるか分からないが、少なくとも役者たちが集まる場所には顔を出せるようだ。
俺自身もマフィアには狙われている、隠れてばかりもいられない。
どこまで関われるかは分からないが、自分の意志でフィアッセの力にはなってやろうと思う。
あくまでも今まで世話になった恩返しが目的だけどな。
<続く>
|
小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。
[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ] |
Powered by FormMailer.