とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百六十三話



「聞いた話だとキミが引き取って育てている孤児なんだよね、この子」

「うむ」

「キミにすごく似ているのはどうしてなのかな……」

「あははー」


 フランスの貴公子に激しく訝しげな眼差しで見つめられて、うちの子ナハトヴァールは愛想よく笑っている。

ナハトヴァールは夜天の魔導書の闇、自動防衛運用システムを法術により生まれ変わらせた存在であるらしい。

解説はシュテルから後で聞いたのだが、不安定なシステムの暴走を法術で結晶化されたことにより、安定したとの話だった。


女の子として新しい生命が産み出された形だが、何故か俺によく似ている。遺伝子情報まで継いだはずがないのだが。


「ほら、ナハトヴァール。おにーちゃんに挨拶するんだ」

「おー?」

「うん、どうしたナハト。挨拶の仕方は教えただろう。おにーさんに挨拶して」

「うー?」


「何でひたすら首を傾げているんだ」

「おにーさんなんてどこにいるんだという顔をしてますね」

「あ、あはは、何でだろうね!? 気にしないほうがいいんじゃないかな!」


 なぜか焦ってカミーユがナハトヴァールをたかいたかいしてあげると、キャッキャと無邪気に喜んでいる。

うーむ、こういう点は全然俺には似ていないな。人懐こさと人の好かれ方は天賦の才能だった。

赤ん坊そのものだが、元システムだけあって学習能力は抜群である。一目会えば、決して忘れない。


ナハトヴァールに寄り添う形で、金髪の女の子が頭を下げる。カミーユも手を振って応じた。


「君のことは事前に写真でも見たことがあるんだ。
ヴァイオラが可愛い子だって絶賛していてね、来日した際は会ってくれると本人も喜ぶと思う」

「あ、ありがとうございます。ユーリ・エーベルヴァインです。
初対面で失礼な質問かもしれませんが、ヴァイオラさんはお父さんの婚約者と聞いているのですが本当ですか」

「うーん、経緯はとても複雑なんだ……ボク達の一族全体が関係している政略結婚だから。
本人はとても乗り気なんだけど、リョウスケは話の流れに任せている感じかな」

「ステップアップがでかすぎて、実感がなさすぎる」


 ヴァイオラ・ルーズヴェルト。イギリスの夜の一族はこの場は不在である。

世界会議後、自分の夢を叶えるべくクリステラソングスクールに入学した。とても熱心に学び、励んでいる。

彼女とは世界会議の縁で知り合い、紆余曲折あって何故か婚姻関係になってしまった。


夜の一族としては俺との関係構築に乗り気で、俺は彼女達の血を貰って自分の腕を治したので無碍に出来なかった。


「ボクもこの際だから聞くけど、君のお父さんの女性関係は大丈夫かな」

「お父さんは女性に好かれていますが、お父さんは女性との関係には後ろ向きですね。
ナハトヴァールもお母さんは特に望んでいないので、お父さんの意思を尊重しています。

これは私の推測ですけど、お父さんを好きな女性の方はみんな同じ考えかと」

「なるほど、まあ良介って女の人を大事にするタイプでもないしね。
優しくはあるんだけど、性欲任せにグイグイ行く人でもないから」


 ユーリは人見知りなのでやや辿々しいが、父の女性観を語っている。そんな風に見ていたのか。

母親については少し考えたことがある。この子達に必要かどうかについて。

俺はあまり母性を求めるタイプではなかったが、男と女では考え方もぜんぜん違うだろう。


特にユーリ達は非常に良い子なので、普段ワガママを言わない点も含めて気にしていた。


「君達を無理に呼び出す形になって申し訳なかったけど、今日挨拶したのはあくまでリョウスケや君達の力になりたかったからなんだ。
ボク達も子供がいる年齢じゃないけど、力にはなれると思っている。

この日本の外で君達家族を応援している友がいることを知っておいてほしかった」

「ありがとうございます。お父さんのこと、よろしくお願いいたします」

「ありがとー!」


 なるほど、カレン達がユーリ達を呼び出す事を反対しなかったのはそういう理由か。

カミーユがユーリ達を引き取ることを反対していたとは思えなかったので、何故呼び出す真似を反対しなかったのか気になっていたのだ。

フランスの友人はあくまで俺や俺の子供達を心配して、力になると言ってくれたのだ。


真のハンサムは、心もカッコいいんだな。





「ボクのことも気軽にお母さんとか呼んでもいいからね」

「男としてそれでいいのか、お前……」














<続く>








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