とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百五十一話
フランスの夜の一族は温和路線で、今回反対派との抗争である意味一番貢献したと言える。
穏健派であるからこそ、反対派も真っ先に取り込もうと画策する。その判断を逆手に取って、和解へと導き出す。
特に当主であるカミーユ・オードランには反対派から次の長候補として祭り上げられてしまい、大変だったらしい。
来日した早々、俺の顔を見るなり安心した顔をする。
「久しぶりだね。君の顔を見れて安心したよ」
「逆にお前はなんか疲れた顔をしているな」
「うん、本当に色々大変でさ……」
フランスの夜の一族。柔和な微笑が似合う中性的な美貌から、"貴公子"とまで呼ばれている人間。
温和かつ温厚な性格で争いを好まないが、これでもフェンシングの名選手でもあるらしい。
次の長を決める夜の一族の世界会議では、英国側の女帝の戦略によりイギリスのヴァイオラとの政略結婚を持ちかけられていた。
夜の一族の反対派からも、似たような話があったらしい。
「日本でいう神輿というやつかな……
強行派のカーミラの対抗軸として、ボクを選出しようとするんだ。
一時期は世界会議のやり直しまで訴えようとしたんだから、あの人達も懲りないよね」
「流石に二度も三度もやり直したくはないな」
「あはは、キミが一番大変だったもんね」
俺は自分の利き腕を治すために夜の一族の強力を求めるべく、世界会議に参加して各国の支援や協力を仰ぐべく論戦した。
カレン達と敵対していた頃だから本当に大変だったが、やはり始祖の血を引く妹さんの存在は大きく、何とか制覇する事ができた。
俺も最後は祭り上げられそうになったが、主従関係を築いていたカーミラに任せて、俺は日本へ帰ったのである。
あんな大変な真似は二度としたくない。
「それでボクに縁談や婚姻話が大量に来たんだよ……
反対派って勢力こそ僕達には劣るけど、先代の権力者や長老格も揃っていたからね。
格こそ望めないけど、家柄の良い令嬢を揃えて持ちかけてきたんだよ」
「お前も嫌味なほどハンサムだし、キャーキャー言われたんじゃないのか」
「ご令嬢が容姿一つで黄色い声を上げたりしないよ。
教育を徹底されているんだろうね、格式の高い家柄に好かれるよう礼節をわきまえている。
ああいう女性たちは本当に怖いね」
うーむ、なんて生々しい上流社会模様なんだ……リアルな話は聞きたくなかった。
政略結婚なんて庶民にとってはお伽噺の話でしかないが、海外の上流社会ではまだまだ一般的に存在するようだ。
身分制度こそなくても、階級社会は実在しており、政略結婚は重要視される。
格式を上げるためであれば、自分の子供を差し出すのは当然であり、ご令嬢もそうした教育を受けるようだ。
「気に入った子とかはいなかったのか」
「いくらなんでも女の子はちょっと……」
「なんで女は嫌なんだよ?」
「えっ!? あ、いや、ほら――ボクにはキミという友だちがいるからさ」
「男友達がいるからなんだってんだ」
世界会議の最中、当時イギリスの夜の一族であるヴァイオラとの婚約話があった。
二人人が揃う婚約パーティで、武装テロ組織による誘拐事件が発生。危機的な状況下にたまたま居合わせた俺が、救出した。
その縁で親しくなり、世界会議中も他家の暗躍で中傷誹謗の的となっていたこいつを仕方なく庇ってやった事で、何故か親友のように扱われている。
何かと折を見て友達ツラするこいつは、まるで女のように頬を赤らめて微笑んでいる。
「ほ、ほら、急に結婚とか言われても困惑するでしょ。
女の子と結婚とかするより、友達を遊んでいたほうが楽しいし」
「なるほど、確かにそうだな」
まあ言われてみれば、十代で結婚とか言われても困惑はする。
恋人くらいならいいが、婚約者とか妻とか言われても受け入れがたいものだ。結婚は人生の墓場とまで言われているしな。
俺もカミーユの立場になったら、どんな美人の婚約者より、気心の知れた男友達と遊ぶようがよほどいい。
精神的にはガキだと言われるかも知れないが、急に家庭なんて持ちたくない。ユーリ達がいる俺はもう諦めてるけど。
「そんな訳で婚約を断りつつ、反対派を懐柔して上手く和解させることが出来そうなんだ。
ただやはり婚姻とか断るのも大変だからね、今回コンサートで日本へ来訪できたのはボクにとってもありがたいよ。
しばらく距離を置いて、疎遠にしていこうと思う」
「ああ、そういうのはいいね」
人間関係がややこしくなったら、海外とか異世界へ出て一旦距離を置く。
リセットすることは出来ないが、敢えて疎遠にすることで関係を落ち着かせる。
そういう方法もあるのだと、感心した。
「ということで日本でのエスコートはお願いするね、ボクの王子様」
「気持ち悪いことをいうのはやめろ」
「えー、冷たいね相変わらず。そこがいいんだけどさ」
<続く>
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