とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百四十五話



 戦闘機人ディードの能力は、「双剣」ツインブレイズ。

固有武装を使用して近接空戦を行う技能で、瞬間加速により敵の死角から急襲をかけ叩き落す一撃必殺スタイルが基本。

能力の特性として、暗殺も視野に入れた剣技は着実にディードの知識と経験に積み重ねられていった。


小太刀二刀御神流とは相性が良く、稽古を一旦終えて休憩に入ったディードに、恭也は熱心に指導を行っている。


「来てたんだ、良介。私に話があるって聞いたけど」

「う、うむ、休憩がてら聞いてくれ」


 稽古後に流れる汗をタオルで拭きながら、道場内で美由希は俺の隣に座った。

場を改めても良かったのだが、恋人の恭也がいる前でコソコソ連れ出すのは怪しまれる気がしたのでやめておいた。

恭也を見ると、同じく汗を流すディードを相手に指導している為、こちらの様子に注意を払う様子はない。


信頼されているのだろうけど、それはそれで恋人としてどうなんだと思わなくはない。


「良介に改まれるとちょっと怖いね。なにか心配事?」

「うーん、どう話せばいいのやら」


 考える。直接的ではないが俺は桃子からそれとなく頼まれて、御神美沙斗と高町美由希の関係改善を求められている。

師匠は自分の娘が可愛いが、復讐第一で我が子を置き去りにした罪悪感もあって、関係改善が望んでいない。

高町美由希は高町桃子こそ自分の母親だと思っており、自分を置き去りにした師匠の事はこれまで一切口にしていない。


どんな状況でどう改善しろってんだ、桃子。


「もしかしてフィアッセになにかあったの? 変な遠慮なんかしなくていいよ。
私で良ければ力になるから、何でも言って。迷惑とか考えてなくていいから」

「……なんかお前、最近俺への態度が違わないか?」

「そりゃそうでしょ。もう一年も経っているし、色々あったけど……私、良介のことは家族のように思ってる。
ううん、友達、かな。恭ちゃんにはちょっと悪いけど、私にとって初めてのボーイフレンド」


 稽古後の高揚とは別種で頬を染めて、照れた様子で美由希ははにかんだ。

こうして見ると剣術娘というより、大正ロマンな女の子そのものだった。恋は女を変えるものだな。

フィアッセには少し悪いが、恭也と結ばれて女性らしさが育ったのだろう。


男友達として収まったのだから、俺との関係も健全と言えるだろう。


「なんで英語なんだ、そこ」

「学校とかに男友達っぽいのはいるんだけど、良介といっしょにするのは違う気がするからさ、あはは。
それで、今日はどうしたの?」


 どうしようかな、ストレートに聞いても怪しまれるだけだ。

だからといって本当のことを話しても、大いに荒れるだけだろう。正直、受け入れるとは思えないしな。

桃子がいるからもう自分の親には無関心かもしれないが、それはそれで関係改善はしないだろう。


その辺りの温度感を探ってみるか。


「実はディードのことなんだけど」

「ふんふん、私の妹弟子ね」

「もう完全にお前の妹なんだな……」

「当然だよ、あんな素直で可愛くて、剣が強いんだよ。
君さえ良ければ正式にうちの道場に入門してほしいと思ってる」

「そこなんだけどさ、実を言うと――」

「ゴクリ」


「あの子と俺は、血の繋がりがあるんだ」


「そりゃそうでしょう。
良介の年齢でディードのような女の子なんて出来るはずがないだから、血の繋がりなんてあるわけ――

……えっ、あるの!?」

「うむ」

「いやいやいや、妹じゃなくて子供なんだよね!?
君が小学生の年齢で作らないとありえないんですけど!」


 そこで考えてみた。

さり気なく親子関係の事を話し合うのであれば、我が子とのように相談すればいいのだと。

幸いにもディードの事は妹のようにかわいがっていると明言しているのだから、親身に相談に乗ってくれるだろう。


実はお前のことを相談するつもりなのにな。


「ディードの事は良介から聞いてはいたけど、よければ詳しく聞かせてもらってもいい?」

「うーん」

「君とディードのことなら尚の事、力になりたいよ。
親子のことをなかなか事情を誰かに話すのは難しいのはすごく分かるけど、悩みごとなら力になりたいから」

「その口ぶりからすると、お前も親子のことでいいづらい事情とかあるのか」

「あ、えーと……」


 どうだ、この話の流れから自分の口から告白するしかないだろう。

ディードの素性を明かす形になってしまうかもしれないが、そもそもディード本人が気にしていない。

戦闘機人であること、俺の遺伝子から製造されたクローン体である事。そのどれも、ディードは誇りに思っている。


美由希がディードを妹弟子として大切にしてくれているなら、素性を明かすことも躊躇いはない。


「……良介には言ってなかったけど、私ってお母さん以外に生まれの親がいるんだ」

「ほうほう」


 こうして、俺は美由希の口から自主的に話を聞き出すことが出来た。

なんか詐欺師みたいな感じで気が引けるが、美由希の口から聞かないと解決はしない。


せめて改善できる余地はあることを祈るしかない。














<続く>








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