とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 百十三話



シュテルにレヴィ、ユーリにナハトヴァール、そしてイリス。

家族全員は厳しいかと思っていたが、それぞれスケジュールや作業の調整をしてくれて、地球へと帰還する事が出来た。

ユーリ達が地球へと帰ることになった分、ユニゾンデバイスのアギトやイクスヴェリア達が惑星エルトリアで代役を果たしてくれる事になった。


海鳴へ来て一年、いつの間にか多くの人達を頼りにできるようになっていた。ありがたい話である。


「わーい、おとーさん!」


 ユーリの背中に乗っていたナハトヴァールは、俺の顔を見るなり飛びついてくる。全力でしがみついてくるのはいつもの事だったので、落ち着いていた。

海鳴にある入国管理局で手続きを終えたユーリ達は、エルトリアから聖地を経由して地球へ帰参した。聖王教会が管理する地を経由しないと、国際的な手続きがややこしくなるからな。

聖王教会は聖女カリムの予言と"聖王"誕生で、かつてないほどの隆盛を誇っている。時空管理局との同盟も力関係が逆転しつつあり、権威も最たるものへと遂げていた。


だからこそ異世界間のやり取りも可能となっており、俺達のこうした動きも白旗と"聖王"の実績が認められて許されている。聖女カリム様も何故か顔パスで許してくれているからな。


「ナハトヴァール、元気にしていたか」

「おー!」


 ナハトヴァールは闇の書から誕生したばかりの赤子同然の子供ではあるが、惑星エルトリアがえらく気に入ったらしく日々冒険に走り回っているらしい。

だからこそ独り立ちする程ではないにしろ、親寂しさに夜泣きすることもない。それがなければ、この子も地球へ連れてきたかもしれないからな。

普通は常に親と子は一緒にいるべきなんだろうけど、すっかりベビーシッターになってしまったリーゼアリアが面倒見てくれているし、姉妹同然のユーリ達もいたからな。


まだ十代の若造である俺でも面倒見れるくらいに、ナハトヴァールたちが良い子で助かっている。


「父上、連邦政府との交渉も順調です。
主権も得ることが出来ましたし、エルトリアの文明開化も疑問視こそされていますが前向きに捉えられています。

議会での立場を確立できれば、後は主要各国との貿易や国交も行われて、一惑星として存続できるでしょう」

「さすがシュテルだな、随分事がスムーズに進んでいるじゃないか」

「そうでしょうとも。父上の留守をきちんと担う愛娘に、熱烈なハグをしてくれてもよいのですよ」


「おりゃあああああ!」

「むぎゅー!?」


 怪しく微笑んで両腕を広げる我が子を力いっぱい抱きしめてやると、プロレスで言うベアハッグだと悟ったシュテルは悲鳴を上げた。ふん、思い知ったか。

身内にはからかい上手なシュテルだが、我が家でもピカ一の秀才ぶりを発揮して、エルトリアと連邦政府との仲立ちや交渉を行ってくれている。

主権を得ることが出来て立場も確立させつつあるエルトリアは、環境改善さえ成功すれば、地球のように住み良い世界として生まれ変われるだろう。


SFめいた世界観には目眩がするが、惑星間の交流さえ行っている世界の中でエルトリアは生まれ変わろうとしている。


「リヴィエラさんが父上のことを気にかけておられましたよ。
連邦政府では父上とリヴィエラさんとの関係はゴシップの一つですし、リヴィエラさんも否定されておられませんので一押しすればいけるかも」

「地球との距離感がエグすぎる」


 リヴィエラ・ポルトフィーノは、連邦政府の高名な貴族の御令嬢。ポルトフィーノ商会の看板を立ち上げ才女である。

その美貌と才能から政略結婚の話が殺到してしまい、実家の承認を得て独立した彼女。エルトリアとの交流を経て、CW社との新たな関係も構築している。

通信関連分野で新しい技術提案を行ったので、今後彼女や商会との関係が発展すれば、CW社も莫大な利益が見込めるだろう。


聖地のカリーナお嬢様が喜びそうな話だが、商売は大変なので忍達に任せておきたい。


「にしし、音楽会が開催されるんでしょう。ボク、どんな楽器を使おうかな」

「お前もそんな勘違いをしているのか……音楽を聞く方だからな、あくまでも」

「えー、ボクだって演奏とかしたいのに。音楽会をメチャクチャ盛り上げるよ!」

「絶対にメチャクチャにするだろう、文字通りに」


 レヴィは純粋にチャリティーコンサートが楽しみで、地球へ帰ってきたようだ。洋服まで気合を入れていて、遊ぶ気満々である。

正直この子の適正的に音楽なんて興味がないと思っていたのだが、子供心として楽器や演奏には強い関心があるらしい。

考えてみれば音楽会なんて退屈だと思う精神性は、むしろ成長してから生まれる怠惰なのかもしれない。


色んな事に関心を持っていき、行動力も備われば、自分の好きなことに関心が移るからな。


「ただいま帰りました、お父さん。
エルトリアの環境はイリスやイクスヴェリアの協力もあって、順調に改善されています」

「お前の生命操作能力がなければ成し遂げられなかったテラフォーミングだな。ありがとうよ」

「そ、それがですね、動植物は予想以上に育ってしまいまして……ちょっとした暴走が起きてしまいました。
あ、えーと、ナハトヴァール達が対処してくれましたので!」

「環境爆発ってやつか、うーむ。難しい話だな……まあ気にするな」


 荒廃していた環境が劇的に改善されれば、歪だって生じてくる。環境爆発は文字通りの現象だった。

連邦政府まで見放してしまう程の荒廃で、フローリアン一家や惑星環境委員会も懸命な努力をしてくれていたが、成す術がなかったのが実情である。

闇の太陽とまで言われるユーリの莫大な魔力と生命操作能力があってこそ成り立つ、力技な奇跡である。


イリスやイクスヴェリアがエルトリアの遺跡を活用して制御や調整をしてくれなければ、環境爆発は問題になっていたかもしれない。


「イリスからは色々聞いているけど、仲良くやれているのか」

「エルトリアの環境とか文化などを示唆して、何か思い出せないかよく聞かれますね」

「実際の所どうなんだ、その辺は」

「イリスには悪いのですが、全くもって全然思い出せません。頭が痛くなったりとか、情景が浮かぶとかの予兆もありません。
片隅にも浮かばないので正直に話したら、いつも複雑そうな表情で睨まれてます」

「あいつも大概不安定だな……
本人からしても思い出したくない過去なんだろうけど、お前に忘れられるのはそれはそれで嫌なんだろうさ」


 噂のイリスは俺やユーリが話しているのを遠目から見て、軽く睨んでいる。何なんだ、あいつは。

イリスの話では惑星エルトリアでユーリとイリスが過ごしていた期間があったそうだが、ユーリは全く覚えておらずエルトリア滞在時も懐かしむ素振りもなかった。

あいつも洗脳されて事件を起こした経緯もあって昔のことは思い出したくはないだろうが、多分ユーリとの思い出は今に持っていて共有したいのだろう。


怨恨はもう無いと思うので、新しい思い出で上書きするしかない。


「せっかく家族で招待してもらったんだ。次は覚えていられるような良い思い出にすればいいさ」

「そうですね、お父さんと一緒なら絶対良い思い出になります。
なんか今事件とか起きていると聞いてますけど、私でよければいつでも力になりますね!」

「お、おう……」


 人見知りする性格には珍しくやる気になってくれているが、殲滅兵器に等しいユーリの力を発揮されたら本当に壊滅しそうな気がする。

戦争レベルの戦いに発展しそうなので、ユーリには悪いがそこそこで頑張ってほしい。まあ護衛はあくまで俺の仕事なので、家族を巻き込むつもりは基本的にない。

とはいえ日本初で行われるチャリティーコンサートは敵も主戦力を向けてくるだろうし、いざとなれば防衛の意味で力になってもらうかもしれないが。


そして家族といえば勿論――



「こ、ここはパパの国……」

「久しぶりに帰ってきましたー!」


 ユニゾンデバイスの少女ミヤと、俺の遺伝子より製造されたクローンであるヴィヴィオ。

聖王教会に打診して許可を得られた二人は、聖地から地球へとやってきた最後の家族である。ミヤは若干違うけど何度も一緒に戦ったからな。

ミヤにとっては帰郷になるが、ヴィヴィオにとっては異世界旅行である。月村忍が俺と一緒に聖地へ言った時、異世界転移とか訳の分からんことを言ってはしゃいでいたっけな。


  いずれにしてもこれで全員揃った。














<続く>








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