至らぬ介入者

プロローグ




 浮かんでいるという感覚と共に、その青年−琴川雄也は目を覚ました。

「ここは?」

 ポツリと漏らした言葉には漠然とした不安に彩られていた。

 彼が眠っていた空間は何も存在せず、それ故に何もかもが存在すると言う矛盾を秘めた場所。

 何処かの魔術師風に言えば根元の渦であり、何処かの宗教者風に言えば神の座と呼ばれる場所だった。

 普通の人間にはたどり着けない場所であるそこに、彼が呼ばれたのには理由があった。

「やっと目が覚めたみたいだね」

 唐突にその空間に声が響き渡る。脳内に直接響き渡る、澄んだ清らかな声。
この声を聞けばそれだけで快楽に溺れてしまいかねないようなそれは、確かに雄也のみに向けられていた。

「………………なんだ? 幻聴? と言うか俺は?」

「聞こえているなら話は早いね。私の名は■■■■■■■■。
君が発音できるように言うとエディクリサイニシスかな。
まあ、君たちの世界を作り上げた神様にあたるものよ。
それで君は私の世界で死んで、ただ死なせるには勿体なかったから私のために働いて貰おうかなと思って、ここに呼んだの」

 雄也は周囲を見渡すがそこには何もない。いやあまりにも情報量が多すぎて、彼の脳が知覚するのを拒否している。

「…………」

「無言って事は、了承と取って話を進めるけど、君にやって欲しいのは一つ。
あの糞餓鬼鯨神ルドラサウムをぶち殺して欲しいの」

 そんな声が、雄也に響いた。そしてその名は彼も知っていた。
何しろ彼はそのゲームのファンであり、同時にそいつを嫌っていた者でもあったからだ。

「おい、ちょっと待て自称神。何で俺がそんなことを!? 
と言うかその神様はもしかしたら、鬼畜英雄が幅をきかせている世界の……」

「そうその通り。君も知ってるでしょ、あのゲームやってたんだから」

「んな!? だがアレはただのゲームの話………」

「甘いわね。神様だって言ったでしょ。作
り出した人に介入してその世界で起きている内容を別の情報基盤に起こさせることくらいは簡単にできるの」

「だからといってふざけんな!? あんな世界で生きていけるか!
 第一神様相手に勝てるかよ。それどころか魔神にだって………」

「ふふふ。その点は大丈夫。神様としての位階は私の方が上だから、
当てられればダメージを与える武器は貴方に渡せるし………後はレベルの問題」

 そう言いながら、クスクスと笑う神に雄也はキレた。

「一言で言い切りやがるな! 人ごとだと思いやがって糞神。
レベル次第って要するに自分でレベルは上げろとそう言うことだろ!!」

「あははは。物わかりが良い子は好きだよ。
大丈夫だって、レベル神は私がやって上げるし助言も出来れば才能限界だって無視できるよ。…………
残念ながら技能レベルはいじれないけどね」

「拒否権は!?」

「あるけど。君は言っておくけど死んでるんだよ。
このまま拒否すれば再び私の中にごしょうたーい。つまりは輪廻の輪に帰るだけ」

「それはないのと同じだろ」

 がっくりと、疲れた様子を見せる雄也。既にその雰囲気は神様を相手にしているとは思えないほどに軽い。
まあ、最も神様自身の態度も酷く軽いのだが。

「さあ、行こうかな雄也。武器はここにある。名前は自分で名付けて良いよ」

 そう言って差し出されたのは、光の固まりだった。それは雄也の目の前で制止する。

「武器って………この光の固まりのことか? 全く武器らしくないんだが………」

「それはそうね。その光は純然たる力の固まりだから。
貴方が名付けた名前と想像している能力、そして貴方の武器に対する考え方であらゆる武器に変化する。
まあ神殺しとか、魔神殺しの概念は最初から持ってるんだけど」

 その言葉と同時に、武器の形を取り始める二つの光。そして目の前に現れたのは二つの銃だった。

 しかしそれは、銃と呼ぶにはあまりも異形。銃口の大きさは普通だが、その下の部分にはそれぞれ刃が伸び曲線を描いている。
まるで持ち手をかばう家のように伸びる鋼。下手をすれば剣にも足られかねない異形の武器。

 しかし雄也はその銃をためらうことなく握る。すると刃の部分が飛び出し銃口と平行になり、剣の形を取った。

「ふーん。双銃にして双剣か………中々おもしろい武器だね、それで名前は?」

「ん…………トゥーソードトゥーガンズかな。意味はそのまま、双銃にして双剣である武器」

 そう言って、銃を眺めている雄也。初めて取るはずの武器なのに異常に彼に馴染んでいる。

「さて、行こうかな雄也。ああ一応溜められる経験値の量は無限にしておいたから、こまめに私を呼ばなくても大丈夫。
頑張って、私を楽しませながらぶちのめしてきてね」

「結局それかよ神様は!?」

「ええ。だけど、アレにむかついてるのは本当よ。神様って言うのは傷ついたことがないから痛みがわからないの…………
だからあいつを止めて欲しいのは本当。やっぱりどんな世界であれ、君たち人は、私のアイデアを元に生み出された種族だからね」

 そう言って、神の気配は消える。そして刹那の時を経て雄也もまたその世界より消え去った。



後書き


 初めまして闇薙です。無謀にも初SSで長編かつ。オリキャラ物です。

 頑張って完結させますのでよろしくお願いします。






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