この小説は、ヴァンドレッド2ndステージ、最終話からのお話です。













失って初めて気づく本当の感情、
その尊さが美しく、
また、

…残酷でもある。













VANDREAD 3rd stage 4話 偽りの歴史


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「あ〜もう!こいつ等邪魔!!」

イカズチに奇襲をかけた海賊団の一人が愚痴を漏らす。
それもそのはず、今、
イカズチは奇襲され、駆け出しの士官候補生が蛮型に乗っているのである、
故に動きが予想しづらく、
挙句の果てにドレッドに纏わり着いてくるのだ。

「ヴァンガードに構うな…各自自分の任務を優先しろ!」

リーダーらしき人物がチームに檄を飛ばす、

「「「「「「「「ラジャー!」」」」」」」」

しかし、

ドガァァァァァァァン!

イカズチ新艦区より爆炎が上がる。

「なんだ!?」

モニターの中の爆炎を拡大する。
そこから出てきたのは黒く、そして、所々に赤を帯びている蛮型。

「隊長機か!?」

そのリーダーのチームが反転し、イカズチに侵入しようとした時…

「きゃぁぁ!!」

「右翼やられました!」

「エンジン停止〜!?」

「ブースターが切られちゃったよぉ…デリお願いできますか〜?」

黒の機体は攻撃をわざとドレッドのコックピットから外し、
戦闘不能にしはじめた。

「くっ…化け物か!?」

本来、戦いは相手を殺す方が楽なのだ、
しかし、守りながら戦ったり、
あえて撃破しないようにするとその難易度は倍増する、

「各チーム、あのヴァンガードは無視、戦艦に侵入せよ!!」

「「「「「「「ラジャー!」」」」」」」

各々のドレッドがイカズチに侵入する。
もちろんリーダーも。

黒狼「くっ…バランサーの調子が悪い!?」

黒狼の機体、赤牙はそれ以上はその獰猛過ぎる牙を振るわなかった、
そして、赤牙もイカズチに侵入して行った。






「総員!白兵戦用意!!!」

イカズチ内部に放送が響き渡る、
既に大広間に人は無く、割れたグラスや、テーブルクロスが散乱していた。

乗組員には銃器が所持され、
侵入した海賊達と戦っていた。
だが、戦闘経験も、武器も海賊の方が遥か上を行く、
結局、タラーク側は銃弾が底を尽き、
メジェールに捕らえられた、
白兵戦を予想していなかったが為に起きた不幸である。


そして、艦全体に衝撃が走った後、
イカズチは分離した…



黒狼「あった…ペークシス…!」

機関室に位置する場所に黒狼は足を踏み入れていた、
そこには淡青の光を放つ球体…ペークシスプラズマがあった。
しかし、そのペークシスも使っていなかったのか老朽化し、
至る所に欠損個所があった、

黒狼「…だが、これからどうなる?」

ガガガガガガガ!!!!!

刹那、機関室全体に削るような衝撃が走った!
そして、隔壁が球形にそして、オレンジ色を帯びる…

ダダァァァァァァァン!!!!!

黒狼はオレンジ色を見た後、そこから焦げたボディをのぞかせ、
機体で穴をあけたドレッドを見れたが、
自分も爆発に巻き込まれ、爆風で飛ばされてしまい気を失った…





ダシュン!

男の顔の横の壁がレーザーガンの光弾で焼け焦げる。

「くっ…生きて囚人の辱めを受けようとは…!」

心底悔しそうな顔をする男、
だが、ホールドアップし、武器を捨て去ったその姿を見たら説得力が無い。
そこはプラットホームで、既に女に占拠されていた。
女たちは宇宙服を脱ぎ捨て、麗しく白い肌をのぞかせていた。
しかし、いくら魅惑的なその光景でも、男達にとっては恐怖の対象である。

「ほらそこ動くな!」

「妙な真似をしたら撃つ!」

海賊の一人が銃を構え、男を牽引する、
海賊達の目的はタラーク船に積み込んである物資の強奪、
だから、正直言って人間は要らないのだ。

「いったぁ〜いなもぉ…乙女の柔肌なんだからもうちょっと優しくしてよ!」

戦闘で負傷したらしき人物が白衣姿の少女に訴える。
その様子を見つめる一人の男がいた。

「無理よ〜少しは我慢しなさい!」

身長が小さく、カエルのバッグを下げているその風貌から見て、
ずいぶんなおてんば娘のようだ。

「あ〜ぁ、大物だって言うから期待したのに…ガラクタばっかりじゃん。」

金髪の女性がけだるそうに髪をかきあげる。
破壊された蛮型に寄りかかっている所を見るとだいぶ疲れている様だ。

メイア「ディータは?」

先程のリーダー格の女性が金髪の女性に向かって言う、
宇宙服の上からは想像できないほど二人とも整った顔立ちをしている。

ジュラ「ああ、Eボムぶっ放して突っ込んでったわ、だからいやだったのよ、
    新人連れてくるのは…」

メイア「文句があるのならもっと早めに言うべきだったな…」

メイアが衝撃で出来た空洞を見上げる。

メイア「ディータを探しに行く、ジュラも手伝って。」

ジュラ「はいはい…」

渋々ながらも付き合うジュラだった。




黒狼がペークシスプラズマを取り巻くブロック上で気絶している。

黒狼「くっ…」

黒狼の意識が覚醒していく、
だが、それに沿って自分の上にある物体がのっかっていることも確認する。

黒狼「…ん?」

黒狼の手の甲が触れたのは何やら柔らかいもの、
弾力があって暖かい。

しかし、黒狼が顔を上げる。
そこには、先程のドレッドから投げ出されたと思われる、
宇宙服を身に纏った女の姿だった。

黒狼「…(本当ならここに昔の俺がいたはずだ…)」

黒狼がのっそりと抜け出し、
女に背を向けたその時だった。

「あ!!ちょっと待って!」

背後から聞こえる高い、そして、
…聞きなれた声…

黒狼が振りかえると、眼前に宇宙服の女が迫っていた。
そして、おもむろに宇宙服のヘルメットを外す。

「…んっしょ!…うわぁ…本物だ…本物の宇宙人さんだぁ!!」

ヘルメットの下から出てきた愛らしい瞳を黒狼に向け、
好奇心のまま赤い髪の少女、ディータは興奮気味だった。

ディータ「…ぇへへ…ほれ……ほれ…」

ディータが黒狼に対し右手でハンドサインを送る。
それにつられて黒狼も真似してハンドサインを返す。

ディータ「やったぁ〜!ファーストコンタクト!」

両手を合わせ頬を朱に染め嬉嬉とした様子でご満悦のディータ。

黒狼「…さようなら(逃げるのが筋書きか…)」

黒狼はそこから飛び降り、一目散に逃げ出した、
無論スピードは控えめで…

ディータ「ああ!?ちょっと待って〜!ぅんしょ!」

ディータが急いで宇宙服を脱ぎ出す、
意外と体に馴染んでいた様で脱ぐのに時間がかかった。
そして、脱ぎ終わった後、後ろのペークシスの光がいっそう増したことに気づいていたのは、
…黒狼だけだった。




「メイア、まだか?」

海賊船とイカズチの結合部にいるメイアに通信機の向こうの人間が問う。

メイア「ディータをロストしました、見つけ次第ランデブーします。」

メイアが移動用チューブに片手を乗せながら答える、

ジュラ「まったく、こう広いと何処から探していいのか…」

ジュラも手すりに両手を乗せる。




ディータ「まってぇ〜宇宙人さぁ〜ん!」

黒狼「はぁ…」



下のほうで両者の追いかけっこを見た二人、

ジュラ「見た?あいつ…男追いかけてた…」

ジュラが呆然とした様子で答える。
そのまま二人は無言で階段を駆け下りていった。



ディータ「あぁ〜ん!!待ってよ〜!!」

まだ追いかけっこ続行中の二人、
しかし、息が切れかかっているディータに対し、
地球での低酸素に慣れてしまった黒狼はむしろ汗すら掻いていない。

なぜ黒狼が地球にいたか、
理由は簡単、戦争が終わるまで政府は黒狼達を英雄にし、
士気などの鼓舞を図った。
だが、戦争が終わり、用済みとなった黒狼達はマスコミの袋叩きにされる羽目になった。
そうしたことを打開すべく、黒狼はその報道を全て自分のほうに向けることで、
戦友達のストレスを無くそうとしたのだ、
黒狼がとった手段、それは地球の調査だった。
もちろん、大気は汚れていた、
だが、黒狼はそこで一年間を過ごした、 無論マスコミは遠巻きに見ていることしか出来なかった。
しかし…一見平和そうに見えた宇宙にも、災いはしぶとく息を潜めていた、
その災いは兆度黒狼が地球に降り立った一年目に降りかかった。
災いは……獰猛な牙をむく機会を待っていたのだった…



ディータが黒狼に追いつけなくなり、
息が切れる。

ディータ「…はぁ…はぁ…待って〜…」

いつもなら飛び越えてしまうような障害物も今のディータにとっては、
大きな壁だった。
そこで立ち止まり、必死に手を伸ばす。

黒狼「!?」

黒狼は何かデジャヴに似たようなものを感じた。
何か一つの…とても大きいものに手を伸ばす、
そう、かつてヒビキと呼ばれていた頃、
いつも願ってやまない強さを欲する時の感情、動作だった…

黒狼が知らず知らずのうちに手を伸ばす、

バシュン!

ディータ「え!?」

そんな二人の間に水を差すかのようにメイアがレーザーガンを撃つ、
光弾は黒狼を掠め、壁に穴をあけた。

黒狼「ちっ…」

黒狼が舌打ちしバックステップでそこから飛びのく。
黒狼が見えなくなったのと同時に、

メイア「ディータ!何をしている!今は作戦中だぞ!」

と声を飛ばす。
ディータは呆然とした様子で黒狼が消えた影を見つめる。

ディータ「まだ名前も聞いてなかったのに…」

ディータは立ちあがりメイアの方を向き直った。

メイア「さぁ、早く脱出するぞ!」

「「ラジャー」」

力無い言葉を返し、ディータは自分のドレッドにのりこんだ。









黒狼「…っつ…」

黒狼の頬に一筋の朱が垂れる、
メイアに撃たれた頬から血が出ているのである、
兆度「T」字のようだ。

黒狼「赤牙…起動…」

ヴゥン…

赤牙のアイセンサーに赤い光が灯る、
この時黒狼は先程の場所に向かい始めていた、
捻じ曲がった歴史で今までの現実が通用するかわからなかったからだ。

ミサイルが迫ってくる、それだけは確かなのに…

幸い、イカズチの地理は完璧に覚えていたので1分もかからずにたどり着くことが出来た、
しかし、たどり着いた途端、通信に紛れこんでくる声…

ディータ「引っかかってでれませぇ〜ん!」

ディータのドレッドが壁にめり込み、出られないようだ。
涙声になっているところを見るとかなり焦っている、

「「早く!」」

ドレッドで脱出を試みたのだろう残りの二人はディータを待っている。




黒狼「待っていろ…今助ける!!」




黒狼自身、独り言のつもりだったのだが、
回線を開いていたため、全員にSound Onlyで聞こえてしまった。
しかし、そんなことは気にせず、
赤牙は自分の倍以上ある大きさの青いドレッドに近づく。
メイアもジュラも、ディータと赤牙の距離が近いためか攻撃できない、

ディータ「その声は…あの時の宇宙人さん!?」

ディータが歓喜の声をあげる。

黒狼「ブースターを最大に噴かせ、俺が引く!」

そう言ってドレッドの背後に回る、

ディータ「駄目だよ!宇宙人さん、逃げなきゃ!!」

ディータも焦る、
夢にまで見て憧れた宇宙人が自分を助けるために命を賭けているのだ。

黒狼「……早く…!」

しかし、その言葉は、無残にも爆音でかき消された。
そして、その爆音も、青白い光に包まれた。
その場にいた4人もペークシスに取り込まれていった。

女性は悲鳴を上げるが、
黒狼だけはなぜか懐かしそうな笑みを静かに浮かべていた。





















<続く>

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あとがき


試験&模擬などのおかげでずいぶん遅くなりました、
すいません(ぺこり)
がんばりますので応援よろしくお願いします。










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