この小説は、ヴァンドレッド2ndステージ、最終話からのお話です。













何を望む?

そして、誰が?

誰の為に?

何を願う?

…平和?

それとも…













VANDREAD 3rd stage 2話「はじまり」


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ヒビキ「ここは……何処だ?」

俺が目を覚ますと、見知らぬ場所だった。
左右に首を振ってみる、
俺は節々が痛む体を起こそうと思い腕を動かそうとした。
しかし、痛くて動かすことが出来ない、
寝かせられているベッドは硬く、そして冷たい。
不意に、カーテンが開く、

「おお、起きたか?」

大柄で白衣さえ着ていない男が俺に近寄る。

ヒビキ「ここは何処だ?」

「まだ自己紹介もしてないんだ、普通それからだろう?」

男が少し笑う。

ヒビキ「…ふっ、解かった…俺の名は…黒狼。」

黒狼、俺が普段使っているコードネーム、
コードネームと言うより二つ名か…

「俺の名前はシンジョウ・テツオ」

テツオと名乗った男がまたも笑う。

テツオ「いや〜驚いたよ、なんてたって道端で倒れてんだからな、
    それから…今日で半年か、でもお前の場合眠ってたから関係無いか?」

関係大有りだ、こんなことじゃ上の奴らがなんて言うか…

ヒビキ「とにかく、治療に関しては感謝する、半年じゃ、ずいぶんサボってたな。」

テツオ「あ、そうだ、あと半年したらイカズチのお披露目だ、そんときゃお前も見てろよ。」

テツオが自慢そうに言う、

ヒビキ「何をだ?」

テツオがガクっとうなだれる。

テツオ「俺だよ、お・れ!!」

ヒビキ「なんでだ?」

テツオがまたうなだれる。

テツオ「俺は大佐だから有名なの!」

なんだと?

ヒビキ「たしか、今の大佐はタカスギ・レイジだ…お前嘘ついてるだろ?」

俺がそう言った途端、テツオの顔が真っ赤になる。

テツオ「嘘吐きとは無礼な!
    もういい、これを見ろ!!」

テツオが差し出したのは一枚の紙。
それは辞令のようなものだった。
俺が一番驚いたのは日にちだ。
この証明書は昨年廃止され、新しいものに変わっているはずだ。
しかし、これは変わっていない。

ヒビキ「なぁ…今日は何年何月何日だ?」

テツオ「ああ、それはな…」

数秒後、俺は叫び声を上げそうになるほど衝撃的な事実を目の当たりにした。











俺は過去に来ていたのだ!!











それから数分後、

テツオ「そうだ、お前頭良いか?」

唐突な質問に、俺のパニック状態の頭はショートした。

ヒビキ「…あ、…多分。」

あいまいな返事を返す。

テツオ「じゃあよ、これ治ったらで良いからやってくんねぇか?」

ドン!

そう言ってテーブルの上に何やら物を置いて、テツオは去っていった。











それから数時間、

俺は痛みの走る腕を懸命に動かし、テーブルの上の物を取った。
俺が痛みを堪えて取った代物、
それは、











なんの変哲も無いジュラルミンケースだった。
それはパスワード式で、8個の数字を合わせる事で開く仕組みのようだ。
俺は適当に。

8361 0099

と入れた、

パカ

簡単に開いた。
…嘘だろ?
なんて思いつつ、ケースの中を見た。

ヒビキ「…これは!?」

「早かったじゃねぇか」

突然の声に俺は振りかえる、
すると、目に鋭い眼光を宿らせたテツオの姿があった。

テツオ「おかげでこっちの手間も省けたぜ…」

ゆっくりとこっちに近寄る。

ケースの中に入っていたもの…
それは対空ミサイルなどの、火器管制システムのデータリスト…

ヒビキ「こんなものをどうするつもりだ?」

テツオ「決まってんじゃねぇか、今まで散々こき使われたんだ、
    こいつで頭でっかちどもに痛い目見せるのさ。」

テツオが狂気じみた笑みを浮かべる。

もちろん、火器管制が手中に収まってしまえば、反政府グループが一気に行動を起こすだろう、
そんなことになれば男、いや女もおしまいだ。

ヒビキ「そんなことはさせん!」

俺はベッドから立ち上がる、
痛みが全身を走るがそんなことに構ってもいられない。
…所詮こいつも俺を利用しただけか…!

テツオ「そんな体で何ができる!」

ボゴ!

俺の腹にボディブローがめり込む。

ヒビキ「かはぁ…!」

口から少量血が出る。

テツオ「さっさとそれを渡しやがれ!!」

ボゴォ!

2発目のフックが俺の顔を揺らす。
しかし、俺はケースを離さない、

ふら付く足を懸命に立たせ、反撃のチャンスをうかがう。

ヒビキ「…くっ……があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

俺の咆哮が部屋に轟き、相手が怯んだその時だった。
俺は腰を落とし、
右手に力を込めた…

相手もそれに気づき、右手を振りかぶる、

まだ、まだだ!

相手の手が飛んでくる、
俺の目はそれをスローモーションで捉え、
手が俺の顔を目掛けて飛んできたときだった。

今だ!!

俺は更に腰を落とし、伸びきった腕を確認する!

ヒビキ「くらえぇぇぇぇ!!!!!」

ズガァ!

俺の腕はテツオの顎に直撃した。
泡を吹いて倒れるテツオ。
俺も痛みで立つことは出来ず。
それから数十分後に来る警備隊によって発見されるまで、
俺とテツオの体は地に伏していた。











なぜか俺が大佐の穴を埋めるよう言い渡され、
大佐になったのは2週間先のことだ。











そして、











あれから数ヶ月たった、ある日
俺は一つの決断をした。











決断、それは、今開発計画が進んでいる蛮型の開発スタッフに入ることだった。











俺はありったけの知識を総動員して、蛮型の開発に関わっていった。











しかし、俺も過去アタッカーとして名を馳せた「黒狼」だ。
俺専用の蛮型を、女に対する兵器、と言う名目で秘密裏に開発した。
当然、量産機とは比べ物にすらならない性能を作り出すことが出来た。
蛮型の最大の弱点、加速力、遠距離攻撃の貧弱さ、
もともと、陸戦型に開発された蛮型を、万能機として開発するのには骨が折れた。
ブースターを両肩、足、太股、腰、背中に増設し、結果としてドレッドの3倍、
蛮型の約五倍の加速力、スピードを実現できた。
そして、武装面、
遠距離攻撃用に、両腰にブースターと兼用のレールガンを開発し、
高機動戦闘に役立つショルダーブレード、
ナイフを改造し、大剣とした。
…ここまで造っておいてなんだが、技術は漏洩させていない、
何故なら、まともに使えるものがいるかさえ怪しいが、
これが量産されれば、パワーバランスがいっきにタラークに傾き、
メジェールが消えてしまう恐れがあるからだ。
そんなに心配するのも、
この機体には背中に二つのキャノン、
エネルギーブレットを超高速で射出する、
高速射砲、通称ブレストキャノンと、
貫通力重視のエネルギー実体弾を射出する、
対艦砲、通称、ブーステッドキャノンを造ったからだ。
これら二つのキャノン砲を双方のエネルギーを最高に持っていくことにより、
ペークシスキャノンを上回る「フレアバスター」が撃てるのだ。
理論的には光の早さと同等、そして、ロックオンすることにより軌道すら変えられる、
悪魔の兵器、
それから、機体色は過去呼ばれていた二つ名「黒狼」から、
黒にした。
アイセンサーも双眼となり、昔の俺の相棒を彷彿とさせた。
名前を「赤牙」という。











「しかし、黒狼さんも凄いもの作りましたね〜」

俺が振りかえると、眼鏡をかけた中年の男性がいた。
こいつはタカジマ・リュウヤ、
俺の最も信頼するスタッフの一人だ。

リュウヤ「でも、これ動かせるんですか?」

…普通の奴ならGに負けて一瞬で気絶するだろう、
しかし、俺は日頃から訓練も積んでいる、

リュウヤ「そうだ、頼まれていた物が出来たんで取りに来ていただけませんか?」

リュウヤが丸い眼鏡をクイっと上げる。
頼まれていたもの、それはGを緩和させるパイロットスーツだ。
普通のGから3Gくらい軽減できるらしい。

黒狼「解かった。」

俺はコックピットのセンサー調整を切り上げ、
タカジマについていった。











「あ、黒狼さん!」

そう言って背の高くてやせ気味の男が俺に近寄る、
こいつはオカザキ・タカシ、
おもにパイロットスーツや、シートの担当で、
スイッチ、レバー等の配置もこいつがやっている。

オカザキ「出来ましたよ!」

そう言って自慢げに新品のスーツを俺に見せる。
色は黒で、腰のあたりに密封ポケットがついている。

リュウヤ「これで赤牙と黒狼さんが合わされば女なんて一瞬で壊滅ですね!」

二人が意気込む、

黒狼「はっはっは、頼もしいばかりだ。」

俺はパイロットスーツを受け取った後、
また赤牙のセンサー調整をしに行った。











ピ、ピ、ピ、ピ、ピ

狭いコックピットに電子音が響く。
あと1日、後1日で海賊が来る、
あっちも必死になるだろうから俺も殺す気で行く、
もちろん殺さないがな…
さて、と、

黒狼「一服するか…」

俺はハッチを開け、外に出た。

振りかえると、そこには漆黒のボディが淡い光を受けて鈍く光っている。











そして、夜は明けた。











黒狼「…シールドユニット異常無し…エネルギーライン正常…」

また今日も俺は点検を行っている。

オカザキ「またやってるんですか?」

不意にコックピットにオカザキが顔を出す。

黒狼「あぁ、すまない、別にお前たちを信用してないわけじゃないんだが、
    なんか気になってな…」

俺がそう言うと、オカザキが人懐っこく笑う。

オカザキ「黒狼さんのそう言う所、俺好きっす。」

オカザキが時計を見る、

オカザキ「あ、そろそろ始まりますよ。」

始まる…何が始まるかというと、イカズチの出航パーティである。
無論、俺は行く訳は無かった、

黒狼「解かった、先に行っててくれ、マニュピレーターとアクチュエーターをもう一回点検してから行く」

そう言うと、オカザキは苦笑し、コックピットから離れた。
そして、俺は赤牙にエネルギーを注入する、
…全ての電力を落とさないように慎重に。
エネルギーをためている間に、俺はパイロットスーツを着て、愛用の、
視線追従式メインカメラアイ(自分の首の動き、目の動きを機体がする装置)
をつけた、
…これは目だけ覆うような形で、ヘルメットとは別物である。

後2時間、
機体エネルギー充填率76.23%、
ブレストキャノンエネルギー充填率50.80%
ブーステッドキャノンエネルギー充填率63.15%
シールドユニットエネルギー充填率80.58%

…このように別々にエネルギーが充填されているのは、
機体のエネルギーを使わずに武器を使用するためで、
機体のエネルギーダウンを遅らせる効果がある。
これとは別にエネルギーパックという細長い円柱状の、
そして、非常時(エネルギー切れ)にエネルギーが補充される仕組みを導入している、
これにより、活動時間も格段に増え、スタンドアローン、単機特攻、敵撃滅、生還、
の確率もかなり高くなった、
特筆すべき点はシールドで、シールドはビームを発し、ビームシールドとするだけでなく、
リフレクタービットが搭載され、ヴァンドレッド・ジュラのような戦術展開が可能になった。

ヴァンドレッド・ディータ以上の火力、
ヴァンドレッド・ジュラ以上の防御力、
ヴァンドレッド・メイア以上のスピード、

スーパーヴァンドレッドまでは行かないものの、
高性能にはかわりが無い、
これが、黒狼…すなわちヒビキの今まで生きてきた結晶である。



黒狼「後一時間…か。」


黒狼がそう呟くと、
黒狼はシートに座った。











しかし、日頃の疲労もたまっていたのか、
黒狼は睡魔に捕らわれて行った。











この時、この睡魔が、幸か不幸か
黒狼を助けることになろうとは、
この時点で黒狼はまだ知らない…





















<続く>

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あとがき

ヴァンドレッドの設定、ストーリーと掛け離れる場合が多くなりますが、
オリジナル要素もガンガン居れていきます、
期待しててください!










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