第九話「懐かしき夢」










いつからか難しくなった。

右も左も物々しいから、流れては消えていく。

惑わされ、呑まれて揉まれて、何も聞こえずどこへ向かうのか。

心持たぬまま、すぐ目の前にある筈なのに。












これは夢。

過去の夢。

秋人がまだ八歳の頃の夢。

夏樹が亡くなり、ヴィンセントに引き取られてからちょうど一年目の春のこと。

ある廃墟にて。



「あぐっ!」

「どうした、この程度で音を上げるのかい?」



地面に這いつくばる秋人。

だが、秋人は立ち上がる。

意地だった。

負けたくない。

負けたら、そこで終ってしまうから。

ただそれだけの想いで立ち上がる。



「そら」

「がうっ!」



蹴られ、宙を舞う。

一度バウンドし地面に叩きつけられる。

ため息を一つ吐き、ヴィンセントが言う。



「まだ理解できないのかい? 今の君では私には敵わない。大人と子供、そしてそれ以上の力量が違うんだ」



秋人は立ち上がる。

愚直なまでに。



「駄目、なんです……」



小さく呟く。



「負けたら……お母さんが消えちゃうから……。僕の中から消えちゃうから……!」



一直線に駆ける。

ヴィンセントは秋人を悲しそうな瞳で見つめ、腹に拳を叩きこむ。

暗転する視界。

膝を着き、秋人はその場に倒れた。

ついこんなことを考える。

僕では勝てないのかな?

僕は弱いのかな?

あんなにいっぱい特訓したのに……弱い。

だから、お母さんが死んだんだ。

僕が車に気付かなかったから。

僕のせいで。

僕の……。



「……まだ立ち上がるか」



腕に力を入れ、支えにする。

膝に活を入れ、動かす。



「くぅ……ああぁ!!」



四肢を奮い立たせ立ち上がる。

目は血走り、息が荒い。

駆ける。

右拳で殴る。

回避された。

次は右と左のコンビネーション、だが受け流される。

ヴィンセントが何か言っている。

だが、聞こえない。

聞こえるのは自分の息遣いと、心臓の鼓動のみ。

気持ちが悪い。

吐き気がする。

不快だ。

何故、僕は戦っている?

お母さんの為?

嘘だ。

ただ負けたくないからだ。

負けたらそこで終わりだから。

だから戦う。

勝つ為に。



「ふぅ、やれやれ……」



ヴィンセントの右蹴り。

左に回避する。



――――!?」



左手で服の襟を掴まれる。

宙に浮き身動きがとれない。

振り払おうと必死で体を振る。

ヴィンセントはため息を吐き、秋人を放り投げた。



「あがっ!」



壁にぶつかり、ズルズルと落ちる。

ヴィンセントが近づく。



「今日はここまでにしよう。体を十分に休めるように」

「……は、い……」



そう言うと秋人の意識は途絶えた。




















次の日。

今日も昨日と同じように廃墟にて戦闘訓練。



「今日は今の君では私に勝てないということを教えてあげよう」



そう言うなりヴィンセントは右拳を振り上げる。

ガードの態勢を取る。

だが拳は来ない。

来たのは、膝蹴り。

吹き飛ばされる。

痛い。

とてつもなく痛い。

しかし、弱音は吐かない。

負けたくないから。



「僕は……負けない。……もう、誰にも!」



恐れていた。

負けてしまったら、全てを失うと分かったから。

だから、負けられない。

例え自分にも。

旋剄を使い、疾走。

景色が歪み、自分の存在しか感じられなくなる。

ヴィンセントはどこだ?

気配を探る。

空気を掴むように、辺りに漂う自分に向けられている微かな気配を探る。

……そこか。

ヴィンセントの背後に回る。

空中に飛び上がり、首筋に手刀。

だが、首を軽く動かすことによりかわされる。

ならばと、右脚で回し蹴り。

足を掴まれる。

なら、左脚で蹴るまでだ。



「考えが甘いよ」



掴まれていた足で一本背負い。

考えが甘いのはどっちだ。

今なら頭部が隙だらけじゃないか。

旋剄を左脚に集中させる。

高速の蹴りを放つ。



「甘いと、言った筈なんだけどね……」



蹴りが届く前に、地面に叩きつけられた。

肺の中にある空気が押し出される。

景色がぶれる。



「今日はここまでにしよう」



悔しい。

僕では勝てない。

今の僕では……。

項垂れる秋人。

そんな秋人に、ヴィンセントは話しかけた。



「秋人君、帰ったら一緒にお風呂に入ろう」



お風呂?

なにをいきなり言うんだ?

断ろうと言葉を紡ごうとしたが、それは出来なかった。

ヴィンセントは秋人を片手で担ぎあげ、もう片方の手で口を塞いでいたからだ。

もがもがと叫ぶが、ヴィンセントは笑うだけ。

そうこうしている内に二人が住んでいるアパートへ着いてしまった。

部屋に入るなり強制的に服を脱がされる。

そしてユニットバスに放り込まれてしまった。

おそらく此処を出る前にお湯を張っていたのだろう。

お湯は少し温かった。



「さぁ、一緒に入ろう」



そう言うヴィンセントを見ると、腰にタオルも何も巻かないで秋人の前に立っていた。

つい自分のものと見比べてしまう。

結果は歴然だが……。



「何を見ているんだい? ……さては私の息子に惚れたね。だが残念だ。私の息子は貴婦人にしか振り向かないのさ」



そんなことはどうでもいい。



「さてと、私も入ろうかな」



そう言うと、ヴィンセントはシャワーで軽く体を流し、湯船に浸かった。

気持ちよさそうに息を吐き、ヴィンセントは鼻歌などを歌いだした。

ため息が出る。

何故この人はこんなにもマイペースなのだろうと。



「ん? どうしたんだい?」

「何でもありません……」

「いやぁ、一緒に入ると楽しいねぇ。日本ではこういうことをこう言うんだろう? えーと……裸のお見合いと」

「……付き合いです」



「そんな細かいことはどうでもいいのさ」と笑うヴィンセント。

ヴィンセントを見る。

もし冬二が生きていたら、同じくらいの歳だろうか?

顔も知らない父を思い出し、俯いてしまう。

寂しい。

日本の友達とは連絡が取れず、こっちでは言葉が分からないので友達が作れない。

ヴィンセントが傍に居るが、そこは大人と子ども、話が噛み合わない。

秋人はいつも寂しい思いをしていた。

ヴィンセントが居ない時は家で独り本を読み、ヴィンセントが居る時は戦闘訓練の日々。

安らぎが欲しかった。

たった一日でもいいから、友達と遊びたい。

これは贅沢なことなのだろうか?

望んではいけないのだろうか?

気分が沈んでしまう。

それが顔に出たのか、ヴィンセントがすまなそうに話し掛けてきた。



「いつもすまないね、ろくにかまってあげられなくて」



ヴィンセントは頭を下げ「すまない」と何度も言う。

そんなに謝られても心苦しいだけだ。

僕のせいなんだから。

あなたが悲しいのは。

あなたが不自由なのは。

僕の……。




















今日も今日とて戦闘訓練。

だが、今日はいつもと少し違った。

今日はデバイスを用いての訓練だ。

互いにデバイスを起動させバリアジャケットを装着する。

準備は出来た。

あとは始まりのゴングが鳴るのを待つのみ。



「最初に言っておくけど、私は君より確実に強い。よく考えて攻撃してきなさい」



言われなくても分かっている。

早く始めろと言いたい。

息が荒くなる。

動悸が激しい。

視界に映るのはヴィンセントのみとなる。

早くしないと、身体中の血が沸騰しそうだ。




「では、始めようか」



その刹那、秋人は旋剄を使い駆ける。

一直線に駆け、鳩尾を狙う。

ロイガーが叫んでいるが、秋人には聞こえない。



(捉えた! 
――――!?)



そう思った瞬間、左腕が動かないことに気付く。

左腕が固定されていることにより、身体は一歩も動けない。

どう力を入れても、左腕は蝋のように固まり動かない。

ヴィンセントを見る。

いや、正確にはアトラク=ナクアをだ。



(やっぱり……)



秋人の視界に飛び込んできたのは、刀身がないアトラク=ナクア。

迂闊だった。

ヴィンセントにはこれがあるのだ。

懐に入られようが離れていようが関係のないデバイスフォルム『ヴーアミタドレスフォルム』が。

鉄壁の守りにして最大の攻め手。

歯を食い縛る。

こんな所で負けていいのか? と自らに問う。

答えは否だ。



(そうだ、僕は負けちゃ駄目なんだ。お母さんが……お母さんが天国で安心する為にも!!)



自らを偽り、戦う。

自分を正当化する為だろう。

母を引き合いに出し、本当の自分を隠す。

秋人の本当の姿、それは獣だ。

血に飢え戦いを渇望し、自らを満足させることしか考えないただの獣。

それが、真実の姿。

秋人の現状。

それを分かっているから、ヴィンセントは負けを認めさせたいのだ。

負けを認めることで、獣から人間へ戻してあげたい。

負けは終わりじゃないことを教えたい。

それ以外にも、本当は教えたいことが沢山ある。

戦い以外にも、生き方があることを教えたい。

色んな遊びを教えたい。

様々な国のことを教えたい。

冬二と夏樹の馴れ初めなども話してやりたい。



(いや、それは秋人がもう少し成長してからだ。問題は……当の本人が本当の自分を受け入れられるか、だけどね)



秋人はロイガーをの爪で鋼糸を断ち切る為に、右腕を振り上げた。

火花が一瞬散り、弓の弦が鳴るような音を出し鋼糸は断ち切れる。

左腕を見ると、血が少し滲んでいた。

心臓が更に高鳴る。

「殺せ」と、誰かの声が聞こえた。

誰を殺せばいいのかと問うと、「自分が殺したい奴を殺せ」と誰かは言う。

そんな者は居ないと言う。

「ならば、俺が決める」と、誰かは言った。



「秋人君……? どうしたんだい、急に黙って……
――――!?」



ヴィンセントは我が目を疑った。

秋人を見ている筈なのに、秋人が映らない。




(アレは、秋人君じゃない……?)



アレは誰だ?

私の目の前に居るアレは何だ?

いや、アレは見たことがある。

そう、アレは
――――



「冬二……」



ヴィンセントの仕事仲間であり、友人であった冬二。

その冬二に今の秋人はそっくりだった。

いや、瓜二つと言ってもいい。

一体、何故……と、ヴィンセントが考えた一瞬の隙に秋人は動いた。

身体が前に倒れる。

少しづつ前に傾く身体。

地面までもう少しと言う所で、秋人はその場から消えた。

いや、居るのだ。

ヴィンセントの目の前に。



「はがっ!?」



鳩尾に何かを喰らった。

それが何なのかを確認できないまま、左脚に激痛が走る。

視線を移すと、左脚は見事に折れているのが確認できた。

ヴィンセントは膝を着く、筈だった。

顎に衝撃が走り、身体がのけ反り、仰向けに倒れしまったのだ。

訳が分からず混乱する。

何故、急激に変わった?

攻撃方法は変わっていない。

攻撃のタイミングが変わったのだ。

相手の隙を窺い的確に攻撃をしかける。

今の秋人ではまだ出来ない芸当の筈だ。

それが何故……?



――――秋人君、止まれ!」



ヴィンセントの呼びかけは秋人には届かなかった。

秋人は止めを刺そうとロイガーを構える。

爪を直線にし、手刀とする。

ヴィンセントは秋人の顔を見た。

見てしまった。



「秋人……君?」



それは秋人ではなかった。

口は歪に歪み、口角がつり上がっている。

瞳は爛々と輝き、まるで秋人ではない。

だが、ヴィンセントは知っている。

この表情をしていた男を。



(冬二……この子の心を壊す気か……?)



今まさに手刀をヴィンセントの心臓に狙いを定めた刹那。



『いい加減にしろ、馬鹿主!!』

――――!?」



ロイガーの拳が秋人の顔面にぶち当たり身体が吹き飛ぶ。

宙をゆっくりと舞い、硬いコンクリートの地面に落ちた。

ヴィンセントは体を起こし、秋人を見やった。

恐らく地面に接触した時に割れたのだろう。

秋人の頭部から血が溢れ、辺りには血の水たまりが出来ていた。



「秋人君……?」



秋人は答えない。



「秋人君!」



動かない左脚を引きずり秋人の元へ近づく。

近づいたらすぐに怪我の具合を確認する。

よかった、酷い怪我ではないようだ。

出血は酷いが、命に別状はないだろう。

ホッとしたヴィンセントにロイガーが話しかけてきた。



『すまねぇ旦那、少し手荒いことをしちまった』

「いや、これでよかったのさ。あのままだと私を殺していた。そうすれば殺しの味を覚えてしまっただろう。
 そうなってからでは遅いんだ。こういう時は手段を選んではいけないよ」

『だとしてもすまねぇ。俺様がもっと早く止めていれば、旦那は……』



「気にしないことさ」と言い、ヴィンセントは軽く微笑む。

その態度にロイガーは苦笑した。

敵わないと悟ったらしい。

そんな時
――――



「うっ……」

「秋人君!」

『馬鹿主!』



二人の声により意識が戻ったのか、秋人は身じろぎした。

瞑っていた瞳を開ける。

多少霞むが見えないことはない。

段々と意識がハッキリとしてきた。

だが、頭の中に靄が掛かったように、少し前のことが全く思い出せない。

一生懸命思い出そうとするが、思い出そうとする度に頭に激痛が走り諦めることにする。

そんな秋人にヴィンセントが心配そうな顔で話しかける。



「秋人君、どこか痛むところはあるかい?」

「頭が、痛いです……」

「それはそうさ。パックリ割れているんだから」

「割れている……? なんで!? ……痛ぅ」

「こらこら、大声を出すんじゃないよ。動かないほうがいい。今、救急車を呼んでくるから」



その場から離れようとしたヴィンセントに向かい、秋人は声を掛けた。

振り返るヴィンセント。

秋人は身体を起こしていた。

ヴィンセントの顔から目を背け、秋人は呟いた。



「ごめん、なさい……」

「ん? 何で謝るんだい?」



ヴィンセントの左脚に視線を向ける。

普通の状態ではない脚を。

その視線に気付いたヴィンセントは苦笑した。



「これは昨日からこうだったよ? 気付かなかったのかい?」

「そんな筈……!」

「こんなことに気付けない様じゃまだまだだねぇ、ハッハハハハ!」



腰に手を当て高笑いをするヴィンセント。

本当に何も感じていないように振舞うその姿に、秋人は安心を覚えた。

だが、罪悪感は拭えない。

覚えてはいないが、アレをやったのは自分なのだから。

自然と涙が零れる。

涙は頬を伝い地面に吸い込まれた。



「……秋人君は気にすることはないよ。私の不注意なのだからね」

「でも……」



ヴィンセントは苦笑した。

しゃがみ込み、秋人と視線を合わせる。

そして静かにささやいた。



「秋人君、いいことを教えよう」

「いい、こと……?」

「そう、とても大事なことさ」



秋人の瞳を見つめ、静かに、だが力強くささやく。



「負けて勝つんだ、秋人君」

「……どういう、意味ですか?」

「自分には負けるな、という意味さ」



秋人はキョトンとした表情をし、ヴィンセントを見つめる。

ヴィンセントは続ける。



「他人に負けるのは一向に構わない。だが、自分にだけは絶対に負けてはならないんだ」



そこで言葉を区切り、深呼吸を一つする。



「だが、覚えておきなさい。絶対に負けてはならない一戦もあるということを」



矛盾しているが、何故か心に響いた。

心の中で言葉を反芻し、心に刻み込む。

絶対に忘れない為に何度も、何度も。



「はい、絶対に忘れません」
           
マイスウィート・ボーイ
「うむ、それでこそ私の愛し い 弟子だ」



ヴィンセントは秋人を抱きしめた。

胸へと顔を埋める形となる。

ふよん、と柔らかい胸の感触。

まるで大福かマシュマロのようだ。

とても心地よい。

まるで母に優しく抱かれているような温かさに捕らわれる。

……何故だ?

何故ヴィンセントにこんなにも豊かな乳房がある?



(……ああ、そうか)



納得する。

これは夢なんだ。

だからおかしなことが起きているんだ。

この夢は懐かしい。

居心地がいい。

だが、いい加減現実へ戻ろう。

そう、俺が今生きている場所へ。




















「ん……」



秋人はベッドで目を覚ました。

ずいぶんよく眠っていたらしい、頭が重く感じる。

それにしてもまだ夜なのだろうか?

目の前が真っ暗だ。

いや、この感触は枕だろう。

どうやら枕に顔を埋めて眠っていたらしい。

それにしてもとても暑い。

まだ夏ではない筈なのに寝汗を沢山掻いてしまった。

シャワーを浴びる為に起きようと顔を枕から外す。



「……え?」



枕から顔を外した秋人は思考がストップした。

枕だと思っていたものが
――――シャマルだったからだ。

正確にはシャマルの胸だ。

しかもシャマルは抱きついているので動くことが出来ない。

この状況は分からないが、とりあえずは動く手を動かすことにする。

背中に回っているシャマルの手を外そうと、後ろに手を回す。

しかし、後ろにも柔らかいものがあった。



「何で? 何で此処にコイツらがいるんだよ……」



後ろで寝ていたのはシグナムだ。

余程熟睡しているのか胸を触れているのに起きる気配はない。

……とりあえず手を胸から外すことにする。



「何で俺のベッドに居るのかを考えるより、起こして聞いた方が早いか……」



そう呟き、二人を起こそうと身体に触れようとした時
――――



「起こすな。せっかくよく眠っているのだ。無粋なことはするな」

「じゃあお前に聞く。何でコイツらが此処に居るんだ、ザフィーラ?」



ザフィーラは頷き、ことの顛末を説明した。

ザフィーラ曰く、秋人は酒の呑み過ぎで潰れ、ベッドには恭也が運んだ。

その後、切りがいいと言うことでお開きとなり、はやてとヴィータは高町家で泊まることとなった。

シグナム達も誘われたが大勢で押し掛けることは迷惑だとシグナムが断り、相沢家に泊まることになった。

相沢家にはベッドは一つしかなく、シグナムは自分はソファに眠るからシャマルは高町家に行けと言ったが、シャマルはそれを断わり秋人のベッドで眠ると言った。

それを許すはずがないシグナムは抗議したが、シャマルは頑として譲らず仕方なしにシグナムは一つの条件を出した。

それはシグナムも一緒に眠るというものだ。

もし秋人がおかしなことをしても自分が居れば止められると判断したらしい。

そして結果がこれだ。

シャマルは秋人に抱きつき、シグナムは熟睡。

秋人はため息を吐いた。



「馬鹿か、コイツらは?」

「そう言うな、信頼している証だ」

「だからってなぁ」

「漢はグチグチ言わないものだ」

「…………」



それを言われては何も言えないではないか。

口を尖らせながら講義の視線を飛ばす。

それを受け流し、ザフィーラは言う。



「まだ完全に夜は明けていない。もう少し眠るのだな」



そう言うとザフィーラは床に座り瞳を閉じた。

これ以上何を言っても無駄だと判断した秋人は渋々元の位置に戻る。

すると、シャマルが更に抱きついてきた。

息が苦しいが、どこか懐かしさを感じられた。

そう、母に抱かれているような安心感を。

その感触に身をゆだね、秋人は再び眠りに付いた。




















 あとがき

職務質問されました、どうもシエンです。

今回の話は秋人の過去です。

秋人の昔のことを語ろうとしたのですが、戦闘一色になってしまいました。

ではまた次回。





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