side九条夏樹
 

「はぁ…疲れたぁぁ〜」
 

記者達の取材を終えて私は勤務先の交番へと警察官になった時からの相棒である自転車を走らせて……
現在は制服に着替えて狭い交番に置かれた黒いソファーに体を預ける…溜まった疲れを少しでも取りたかった…う〜ん…眠い――
 

「お疲れ…夏樹君」
「あ…重さん…お疲れ様で〜す」
 

ソファーの前に置かれた木の色のままのちゃぶ台にコーヒーを置いてくれたがっしりとした体格で警察官の制服を着た老人……
と言うのは失礼過ぎるので……この人は私の大先輩の富田重三(とみだ しげぞう)さん…
この道60年の大ベテランでもう70を超えているはずなのに今でも元気に自転車を走らせ、時折痴漢や空き巣を捕まえる凄い人で……
警察官としても人間としても…私が将来の目標にしている人。
 

「しかし…良かったよ……戻ってきてくれて…心配でこの3日間ろくに眠れなかった」
「すいません重さん、明日からはまた頑張りますのでよろしくお願いします!!」
「ああ…また、宜しく頼むよ夏樹君」
 

巡回に行って来ると言った重さんを行ってらっしゃいと見送り、重さんが淹れてくれたコーヒーをゆっくりと口に運ぶ……
甘味が無い黒い液体が喉を通り…瞼が重くなくなり……心が休まる……私の好物の一つだった――
コーヒーをもう一口運ぼうとした時…"私の机に置かれた一昔前の黒電話が交番内に鳴り響く"
 

「う〜ん…しょうがないか」
 

もう少しコーヒーを味わいたかったけど…緊急の用事かもしれない――
私はコーヒーを一気に飲み干してカップをお皿に置いて立ち上がりつつ歩を進め、黒電話の受話器を手に取った
 

「はい、こちらは神苑派出所…何か御用ですか?」
『………………………』
「もしもし? もしも〜し」
 

神苑派出所は略名で本当は某区神苑公園前派出所なのだが少し長い為、
町内の人や御近所の方には神苑派出所と呼ばれる事が多い……現に私や重さんもこう呼んでいるのだ――
コホン、沈黙を続ける相手に対して私は何度か呼びかけるが……
やはり反応が無い…私はこの電話を近頃流行のいたずら電話と判断し受話器を置こうとする――
 

『闇に…闇を与えられた人間よ……』
「!? 貴方は…誰?」
 

受話器を置こうと左耳から離そうとした時……若くも……何かの差を感じる男の声が…私の動作を止める
 

『貴方の世界に…危機が迫っています』
「世界の…危機ですって!?」
『其れは…力を奪われたディケイドでは防ぐ事が出来ぬ物』
「……ッ!?」
 

あまりにも突然かつ重大な問題に私は困惑する……例え電話越しの男の話が嘘でも…
そして情報が足りなくても……私自身が経験している…クウガと言う力を…
究極の闇に等しい者と言う力に無理矢理成らせられた時の恐怖を…!!
 

「崩壊は…何時なの?」
『一週間後……強大なる力で引き起こされるであろう皆既日食…其れが…開戦の合図です――』
「もしもし!! もしもし!!」
 

あの海東と言う青年の話ではディケイドの名と力を持つ者は二人居るらしい…一人は私を助けてくれた霞光弥さん……
もう一人は…この世界に居ると言う"門矢 士"……どちらが力を奪われたのかなんて今解るわけがない……
私は青年?に聞いた、崩壊の時が何時なのか?と――青年は即座に答えてくれたが…其の後は無言電話が続く……
私はこれ以上電話を繋げても無駄だと判断し受話器を置く――
 

「……………」
「やあ、夏樹さん」
「ひゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
「どうしたの? 警察官がそんなに驚いて?」
 

普通、ビックリすると思うんだけどなぁ……
私は突然肩に掛けられる重みに驚き自分でも驚く程の勢いで振り向くと、其処には服が少しボロボロの海東君が居た…
取材を受ける前に聞き驚いたのだが、この人見た目は20代前半に見えるのに実際は28歳…
全然見えないのに彼は私の事をさん付けで呼ぶ…理由は解らないけど本人が良いと言ったので私は彼を君付けで呼んでいる。
 

「う、ううん…何でもないわ」
「そう? まぁ、いいや…頼まれた物、持って来ましたからね」
「え? もう持って来てくれたの!?」
 

仕事が速い……私が頼み事をしたのは昨日の事なのに――海東君はあの戦いの後に言った…物で謝れるのなら何でもすると…
何でも私が連れ去られたのは海東君にも原因があったらしい…
私は気にしていなかったのだが"それでは僕の気がすまない!!"と言われたら断るにも断れないので、
話しに聞いた"トライチェイサー"と言うバイクをお願いしたのだ
 

「ええ、序にこの世界にトライチェイサーの事を"認識"させましたから…普通に巡回でも使えますよ」
「?……ありがとう、海東君」
「いえいえ…じゃあ説明書は置いて行くのでよく読んで置いて下さい。僕は旅を続けますんで――」
 

海東君はトライチェイサーの説明書を机に置くとそう言って灰色のオーロラを潜り……別の世界に言ったらしい……
気になる事を言っていたけど…ツッコムには情報が足りない――
私は逸る気持ちを抑えつつ説明書をポケットに入れて交番の真横にある簡易駐車場に行こうとした時…
"左太ももに付けられたホルダーに収められている無線機がなった"
 

「はい、こちら神苑19号」
『神苑町各員に告ぐ…此処最近の連続行方不明事件の犯人の居場所が解った――』
「ッ!?」
 

連続行方不明事件……約一月前から発生した事件で1日に何人もの人達が消えて行く…
警察はこの事件に手をやいている…
何故なら犯人の痕跡がまったく無いせいで本庁さんの捜査一課まで乗り出した程の事件なのに……
幾らなんでも急すぎる気がする…私が考えに没頭している間に通信が一番重要な場所にまで話されていた。
 

『犯人の場所は……先週全店改装される事が決定したショッピング街……アリーナ、皆の健等を祈る――』
「……………」
 

無線機のスイッチを切りホルダーへと戻し、私は再びソファーに体を預ける……とにかく…落ち着いて――説明書を見よう、うん
 

 
 
 

side住田松次郎
 

「うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!!」
「フフフフフフフフッ」
 

現在午後14時21分……客は一人も来ない…光弥の野郎は御近所へと商売しに行き…
俺と沙耶ちゃんは暇になった為に―――――――"ポーカー"をやっている……これならば…勝てる!!
 

「今度こそ…俺の勝ちだぞ沙耶ちゃん!! ダイヤのストレートフラッシュ!!」
「えぇと…おじさん……ごめんなさい」
「は? な――なぁ!?」
 

何で謝るんだ? こう言おうと思っていた……開いた口が塞がらない…
沙耶ちゃんが見せる手札は…スペードの……"ロイヤルストレートフラッシュ"…ポーカーの最強クラスの役だ。 
 

「ま……また…負けた――」
「おじさん…ご、ごめんなさい」
「いや…謝る必要は無いぜ……俺が…弱すぎるんだ――」
「あぅぅぅぅ」
 

今の勝負で34回目…俺の戦績は…34戦34敗…言わなくても解るよな? そうだよ全敗だ!! 
海東君と光弥の奴が連れて来た沙耶ちゃん…記憶喪失らしいが…それは自分の事だけで生活出来るだけの記憶は持っているらしい…
そして――ポーカーが異常に強い……
 

「沙耶ちゃん…?」
「は、はい…何でしょう?」
「買出し…行くか? しばらく…客も来ねぇだろうし――」
「はい!! じゃあ着替えてきます」
 

沙耶ちゃんの部屋は昔女房と娘が使っていた部屋を使ってもらっている……
沙耶ちゃんを住まわせる時に発生した一番の問題は…そう、下着及び服だ…
服ならまだ俺や光弥も選べるんだが…さすがに下着を選ぶ訳には行かない……
男、住田松次郎53歳…決して変態では無いぜ?
――兎も角、沙耶ちゃんには女房と娘が持って行き忘れたパジャマを使ってもらっているが……
普段着が娘の通っていた高校の制服しか無かったので今度三人で幾つかの普段着を買いに行く事になった。
 

「まぁ…男二人で居るよりも華があるよな」
 

俺は苦笑いしながらこう言う……半年前女房と娘に出て行かれ…自棄になった俺の危機を救ってくれたのが光弥……いや仮面ライダーだ。それから何故かアイツは俺の所に居候させてほしいと言って来て…俺は…承諾した、
それからは…楽しい日々が続いた…
孤独になり更に客が遠のいた店にも少しは客が入って来る様になって其の中から少しだけだが常連も出来た、テレビも買えた、
アイツとゲームで暇つぶしも出来る様になった、
町内会のジイサン、バアサンと少ない金を掛けて週に2〜4回のギャンブルをするほどの交流が出来た、海東君と言う料理の師匠も出来た、
娘と女房からのエアメールも来る様になった。
そして……孫の様に可愛い娘を光弥が連れて来た――
 

「おじさん!! 行きましょうか?」
「おし、行こうか沙耶」
「?…は、はい!!」
 

楽しい――どうせ10年も立てば俺は完全なジジイ…いずれまともに体が動かない日がきっと来る、だから……
この日々が…続いて欲しいなぁ…ずっと…ずっと――――――――――
 

 
 
 
 

side霞光弥
 

「こ、此れが…私ですか!?」
「えぇ…俺が見た限りでの貴方を描かせてもらいました……如何ですか?」
 

あの蟹"ボルキャンサー"を退けた翌日…俺は今までの公園から少し遠出した公園で絵を描いている…
ディケイダーに腰掛け、初めてのお客の絵を描いて手渡した――
 

「この絵は…一生の宝にします……ありがとうございます!!」
「それはよかった…御代は…250円です」
「はい!! ありがとうございました!!」
 

絵を片手に嬉しそうに駆けて行く中年のサラリーマンに軽く手を振り……
受け取った御代をいつも使っているダンボールに放り込む――と言っても初めての客ばかりなので現在は5000円…
普段の半分にも満たない…
いつもなら今頃1万円を超えているんだが…まぁ、良しとしよう――
 

「良くは…無いのだよ、アナザー…!!」
「フッ…珍し――つうか久しぶりだな、鳴滝?」
 

周りの人間は最初からこの男が居たと思っているだろう…
灰色のオーロラと共に現れた小麦色のベレー帽とロングコートが特に印象に残るこの男…鳴滝は俺に憎悪に近い感情を視線に込めて…
一定の距離を取りながら話を紡ぐ。
 

「アナザー…何故…まだこの世界にいるのだ!!」
「何故…と、言われてもな…俺の勝手だろう?」
「貴様は解っていないのか!! 種が巻かれた今…ディケイドが世界を破壊するよりも早く――」
 

俺はその言葉を二本指で指し留める……
 

「解ってるさ…しかしな鳴滝――種が発芽するまでの期間、そして…埋め込まれた生命を狂わせるまでの期間を忘れたか?」
「発芽するのは二ヶ月!! 狂わせるまでに1年かかる…しかし!! もう一つはどうする気だ!!」
「周辺世界を徐々に蝕み…崩壊させる…俺が知るかよ」
「ッ!! 貴様…!!」
 

俺の言葉に対し鳴滝が顔も拳も震わして怒りを表している……そろそろか――
 

「おい鳴滝…今日は帰れ」
「何だと…!!」
「囲まれてるぞ?」
「!? く…!?」
 

周りを見渡してから鳴滝は別世界へと逃げた…やれやれ…相変わらず目の前の事しか見えない奴だぜ…なぁ?
 

「"BADAN"のコマンドロイド共?」
「「「「「……………!!」」」」」
「フン…会話能力が無いのか? まぁいい…変身!!」 ――KAMEN RIDE…DECADE!!――
 

変身したと同時に5体のコマンドロイドは約50cm程のナイフを取り出し連携を取りながら俺に向かってくる……トオオッ!!
 

「「ギギ…!!」」
「追って来たな…少しは食らって貰うぜ!!」 ――ATTACK RIDE…BUSTER!!――
 

俺がディケイダーから跳躍するとナイフを持ったコマンドロイドが追撃の為に同じく跳び上がる…
俺はバスターのカードを放りライドブッカーをガンモードに変形…照準を合わせ――トリガーを引く!!
 

「(良さん…すいません!!) ハァッ!!」
「「ギギ…!?」」
 

四つの黒い光弾は二体コマンドロイドの複眼を貫き…その機能を消失させる――む!?
 

「マイクロチェーン…!!」
「チィ…!!」
「「「衝撃集中爆弾…!!」」」
「ぐぅぅぅぅぅぅっ!?」
 

地上に居たコマンドロイドが両手の甲のシャッター内からとんでもない強度を待つ2本の鎖が俺の足首に巻かれ体勢を崩される……
俺は崩れた体勢の中で複眼を破壊した一体にトリガーを引き続けるが
3体のコマンドロイドが投げた両膝の小型爆弾が俺の左膝、右肩、左二の腕に引っ付き爆発…
一体は倒したものの少々のダメージを負って爆煙の中を落下していく
 

「「「「十字…手裏剣!!」」」」
――ATTACK RIDE…SLASH!!――
「ハアアッ!!」
 

コマンドロイド達は両肘に付いた小型のパーツから四方の刃を出した十字手裏剣を俺に投げつけ次の攻撃の為に距離を取っている
――複眼を潰した一体を除いて!! スラッシュのカードを放り、ライドブッカーをソードモードに変形…
迫り来る手裏剣を切り払い……即座にカードを放る!!
 

――ATTACK RIDE…ILLUSION!!――
「「「「「「今回は…本気で行くぜ!!」」」」」」
「……!?」
 

カードも無いことだしな!! 俺と分身達は行動が遅れた一体を即座に葬り二人一組で残る三体に向かって行く
 

――ATTACK RIDE…BURST!!――
「「ハァッ!!」」
「ぐぐぅ…!?」
 

分身の一組はライドブッカーをガンモードに変形させダブルブラストを放ちコマンドロイドの動きを止め、ダメージを与える……
 

――ATTACK RIDE…INVISIBLE!!――
「…!?」
「「ハアアアアッ!!」」
「グアアアァァァァ!?」
 

分身のもう一組は弱点のベルトを後方からライドブッカーの切っ先で背後からバックルを突き…そのままエネルギー源である
小型核融合エンジンを破壊し…爆発させる――俺達は…必殺のカードを放る!!
 

――FINAL ATTACK RIDE…DE、DE、DE、DECADE!!――
「ハァッ!!」
「ハッ!!」
「…!?」
 

10枚2セットで現れたエネルギーカードは俺達の跳躍に合わせ確実にコマンドロイドに狙いを合わせる…俺達は…カードを潜る!!
 

「「トリャアアアアアアアッ!!」」
 

ダブルディメンションキックはコマンドロイドに声を上げさせる間を与えずに爆発させた……
着地した俺は臨戦態勢を崩さずに手を叩く…
こんな時に一本締めは可笑しいが…用の無くなった分身達を消す為には仕方が無い――戦い終わり変身を解こうとしたが―――
―――"新しいお客さん"が拍手しながら近づいて来た"
 

「何の用だ…? お前さん?」
 

黒いスーツを着て黒いサングラスに銀の高級時計…髪は…今時の言葉でロンゲ…? 
だったな…うむ、20代くらいの長身の男が拍手をしながら近づいてくる…表面上は何も無いが…その裏には…"明確過ぎる殺意"を感じた
 

「いやぁ! 素晴らしい…流石は異世界にも名を轟かせる霞光弥!! あの5体をいとも簡単に倒すとは!!」
「異世界に名を轟かせた覚えもないし、あの5体はデチューンされている…あれならお前さんでも簡単に倒させるだろうさ――」
「ご冗談を…私めは何の力も持たぬ只の――」
「人間とは言わせんぜ? "仮面ライダー…シザース!!"」
「ッ!? おやおや…お気付きでしたか…」
 

左ポケットからカードデッキを出してしらじらしく言うシザースの変身者…俺が解った理由は二つ…コイツが俺に向ける殺意と…
コイツの500m周囲の金属に存在する蟹"ボルキャンサー"の存在の為だ……
 

「では…私の目的もお分かりでしょうし…此処は…私の僕を置いていきましょう」
「……逃げるのか?」
「フフフッ…戦う時が今では無い…そう言う事ですよ…では…これで失礼いたしましょう」
 

捨てゼリフの様な言葉を残し…シザースの変身者はオーロラと共に消え、ボルキャンサーの気配も消え―"背部に軽い痛みが走った"
 

「ッ!?」
 

痛みが走り…衝撃を逃がす為に軽く空に跳び着地…俺にダメージを与えた存在に…驚愕する
 

「ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
「何の…冗談だ…此れは?」
「ウアァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
 

チィ…ッ!! 戦うしか…ねぇな!!   ライドブッカー・ソードモードを振るい…駆けて来た"ジョーカー"に立ち向かう
 

「タアアアリャアアッ!!」
「ウゥ!! ワァウ!!」
「ぐ…!?」
 

中段の突きから攻めたが…甘かった…簡単に避けられ右腕に付けられている巨大なカッターの回転斬りを食らい…
体勢が沈み……追撃の右ストレートを――俺は"完全"に避けられない…
右の視界が拳で染まり…体が空に飛んでいるのが解る…ならば…!!
 

「ウオオリャアア!!」
「ウウ…!?」
「ダアッ!! ハアッ!!」
 

バック転の要領で剣を振り上げ…着地と共に振り下ろす!! そして…追撃の突きは…ジョーカーとの距離を作った――
 

「ジョーカー…お前は…守る為に生きるジョーカーか?」
「ウアアァァァァァァアアァァァッ!!」
「答えろよ…答えろぉぉぉぉ!!」
 

突っ込んでくるジョーカーの攻めに対処しつつ逆転の機会を狙う…コイツが守る者ならば…俺は…持久戦に持ち込みたい…だが!!
 

「「「「「ウゥゥゥゥゥゥゥッ!!」」」」」
「チィ…ッ!!」
「ウアアアアアアアッ!!」
 

周りはわらわら出てくる黒いゴキブリ怪人"ダークローチ"に囲まれ…前方には強敵のジョーカー……踏ん張るしか…ねぇか!!
 

「うおおおおおおおおおおっ!!」
 

 
 
 
 
 
 
 

side九条夏樹
 

「思ってより…乗りやすいなぁ…この子」
 

あの後、結局私はヘルメットを被り…巡回がてらトライチェイサーのテスト運転をしていた…
アクセルを一気に回したら8秒程で200km/nを超える速度が出てしまったので今はアクセルを軽く回し町内を走っている
 

「おまわりさん、こんにちはー!」
「…こんにちは」
「こんにちは! 車には気をつけてねー!!」
 

町内を走っている最中に信号待ちを食らい停車…元気の良い保育園児と…クー…ル?な保育園児の挨拶を笑顔で返し…
アクセルを回して発進…アクセル及びハンドル操作にも慣れて来たせいかスムーズに発進を行える――
 

「あの通信…結局何だったのかなぁ?」
 

あの通信の事を重さんや神苑署署員や白バイ隊員に問い合わせてもそんな通信は無かったとの返答ばかり……
つまり…あの通信は私にのみ送られた通信……何で…私にだけ――? 通信…?
 

「はい! こちら神苑19号」
『夏樹君!! 民間人の通報で神苑スイートホテル建設予定地にゴキブリの様な怪人が破壊活動をしていると言う報告があった!!』
「何ですって!? 怪人!?」
 

トライチェイサーを路肩に止めて…私は驚くべき通信に思わず声を上げる…怪人……あの蜘蛛の様な化け物と同じ種族…なのかな?
 

『――樹君!! 夏樹君!! 聞いているのか!! 夏樹君!!』
「あ、は、はい!!」
『……本庁の命で我々神苑署員がこれ等に対処…本庁と自衛隊が到着するまでの時間を稼ぐ事になった……』
「了解!! 建設予定地に向かいます!!」
 

私はトライチェイサーのサイレンを鳴らし一般人の車をどかせアクセルを一気に回し…
エンジンの回転が10000を超えた辺りからギアを上げてスピードを上げて、建設予定地に向かう……
 

『夏樹君…無茶はするなよ…君は病み上がりなのだからな』
「大丈夫ですよ! 重さん…私だって警察官ですから!!」
『……夏樹君、現在神苑署員の中では君が一番現場に近い…現場に到着ししだい状況を各署員に伝えてくれ』
「了解!!」
 

私は気持ち良い風を浴びながら…気持ちを引き締めて更にスピードを上げる……
 

「(――変身…しなきゃいけないのかな……?)」
 

白い姿に変身した時…私は光弥さん、海東君に及びはしないまでも人間を超えた能力を得た……
でも…あの黒い姿には二度となりたくない…!! 怒り、悲しみ、憎悪、嫉妬、妬み、絶望…
この世全ての負の感情を一度に感じるあの姿には…二度と――なりたく…ない!!
 

「ウゥ…!!」
「!? こちら神苑19号!! 通報にあったゴキブリ怪人を発見! これより追跡します!!」
『ま、待て夏樹君!! 深追いするな!! 夏――』
「(重さん…すいません!!)」
 

建設予定地まであと2kmを切った所で私は建設予定地に向かっていると思われるゴキブリ怪人の黒い後姿を発見……
無線機のスイッチを切り、更にスピードを上げる…300km/nも出したてら…減給かな…
 

「ウゥ…クウガ? コロス…!!」
「!? やあああああああああ!!」
「ウゥ…オノレ…!!」
 

バカな事考えるんじゃなかった!! この思いを直に頭の奥に放り込み、跳びかかって来た怪人に300km/nの世界から
突き出すパンチを浴びせる……え!?
 

「変わった? 私…ううん、今は!!」
 

見覚えのある白い手甲に自分の皮膚の様な錯覚を感じる黒い皮膚…変わる前とは見える距離も聞こえて来る音も違う為に
私はまた変わったと判断しこの姿のまま建設予定地に向かう為に急カーブを曲がる為にブレーキと共に車体を傾け…曲がる!!
 

 
 

(第8話終了、第9話に続く)





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