sideスケッチブックに絵を描いている青年?
 



「ねぇ…お兄ちゃ〜ん 絵…まだできないのぉ?」
「……まだ?」
「ごめんね…後5分待って、今最後の仕上げだから」
「「はーい(はい)…」」
  

俺の名は霞光弥(かすみ こうや) 
年齢はもうすぐ還暦で、職業は…定職とは言えないが毎日、暇を見つけては公園で絵を描いて収入を得ている…
で、午後の部最初のお客さんは保育園児の女の子二人…
一人は活発そうなショートカットの子で俺のお得意さんの桂早苗(かつら さなえ)ちゃんは絵の完成を今か、今か、と待ち続けている……
もう一人はクールな雰囲気がする子で肩まで伸びた髪の毛が印象的…
と、まぁ、この子達の絵を長年の相棒であるスクーター"マシンディケイダーMk-U"のシートに腰掛けながら描いているのだが…
少しゆっくり描いていたのが不味かったのか可愛い二人のお客さんの機嫌が悪くなり始めている…
と、言っても後は帽子の色を塗るだけだ…………
 

「よし、できた…」
「……本当?」
「本当さ…はい、これ」
「………………」
 

完成した絵をスケッチブックから手早く破り、クールそうな子に渡すとその子はマジマジと絵を見つめ、
横から活発そうな子も絵を見る………………………………………………………………そろそろ反応が欲しいが…どうだ?
 

「わぁ〜…」
「……綺麗」
「あ、ありがとう…」
 

――気に入って…くれたんだよな?
 

「ねぇ? 真子! お兄ちゃんの絵は綺麗でしょう?」
「うん…これなら…お金を堕す事を惜しまない」
「あ、ありがとう…」
 

真子ちゃん…4つか五つ…だよな? 俺はあまりにも大人びたこの子に少し引きつつ、商売の鉄則である御代を請求する
 

「はい…250円…」
「おっと、二枚多いぜ?」
「? 子供一枚…250円の筈?」
 

俺は白く小さな掌に置かれた3枚の小銭を見て、ディケイダーに立てかけたダンボールの看板にもう少し手を加えるべきかなと思う…
何たって"大人一枚500円 子供一枚250円"としか書いていない為、真子ちゃんの疑問はもっともだ…
 

「はは、俺はね初めてのお客さんには一枚100円と決めてるんだよ…」
「そう…解った」
「まいどあり、今度からもよろしくね」
 

俺が御代を受け取ると早苗ちゃんが真子ちゃんの手をにぎり…
 

「じゃあ、お兄ちゃん!! 私達そろそろ帰るね!」
「ああ、早苗ちゃん、お客さんを連れてきてくれてありがとうね」
「うん!! じゃあ〜また来るね〜」
「……また…来る…」
 

手を振りながら帰っていった二人に手を振り返し、俺は右手首にした腕時計を見ると…現在5時50分…
 

「そろそろ仕舞いだな…」
 

俺はディケイダーのシートを開け、スケッチブックと愛用のボールペン…と、言えるかは解らんが、
取り合えずしまってダンボールの看板を折りたたんでシートを閉め、日が沈みつつある空を見上げる…
65億の人類と数も解らん様々な命を見守り、命の雨や太陽の温もりをくれる、果てしなき大空……
あの人の事と…生意気だが可愛い所もある弟子の事を思い出す…
 

「元気にしてかっなぁ…」
 

あの人とは年が一つ離れていたが友達の様な感覚で話せて……
面白い仲間達や頼りになる人と共に幾度と無くある組織と戦い続けた…
あの空が大好きな人なら……うん、今も元気にハングライダーで大空を待っているだろう……
 

「士は………フフッ、あいつは心配要らんな……」
 

俺の事を覚えていないであろう、生意気な弟子…あれの実力は知っているし…
この世界は…完全に平和…とは言えんが、あいつの望みどおり平和の中で生き、写真を取っている…………
 

「士…今お前は…幸せか?」
 

思わず呟いてしまう……此処はあいつの世界じゃない……俺が犯した罪のせいで…心身共に疲れ果てたアイツを……
誰にも言わず俺がこの世界に連れてきて"置き捨てたの"だ…この世界での戸籍と僅かばかりの金、愛用のバイクを残して……………
………………"ぐぅ〜"
 

「たく……しまらねぇな…」
 

腹の虫が鳴る…そう言えば、8時間程飯を食っていない…
 

「そろそろ帰るか…」
 

俺は居候している場所へと帰る為、ディケイダーに乗りスタンドを上げエンジンを起動させ、アクセルを回そうとすると……
もはや"聞き飽きた音"が聞こえる……フゥ……
 

「ハッ!!」
 

ディケイダーのボディから俺を狙い放たれた糸を側転でマシンから離れ、
現在来ている黒のトレンチコートの左ポケットから黒と銀と金のバックルを取り出し腹に装着、
左脇に装着されているカードホルダー兼武器のライドブッカーからカードを取り出し…バックルのサイドハンドルを開く。
 

「チ…!?」
 

今度は腕時計のガラスから放たれた糸を首を反らして避け、俺は腕時計を外し空高く放り投げ……もう慣れすぎた動作を取る!!
 

「変身」
 

――KAMEN RIDE……――
 

カードをバックルに放り投げると再びディケイダーから糸が複数の糸が放たれたのを俺は跳躍しバックルのサイドハンドルを閉めた
 

――DECADE!!――
 

跳躍した俺の周囲に9人の仮面の戦士を模した灰色のオーロラが広がり、
そして集まると俺を破壊者と呼ばれた仮面の戦士へと変えると頭上に上がっていた9枚の黒いエネルギーカードが頭部に挿入された時、
灰色だった鎧に色が加わり、黒と金と銀の仮面、赤き両目、黒と銀のショルダーガード…
ともかく俺は黒を基本とした戦士へと変身すると落ちてきた腕時計の鏡から"全てが反転した世界"ミラーワールドへと突入する
 

「シャアアアアアッ!」
「ッ!?」
 

ミラーワールドへと入り後は着地するだけだったんだが……全長6mを超えた馬鹿デカイ蜘蛛に体当たりを喰らい吹っ飛ばされる
 

「フッ…トオリャアアアア!!」
 

体をきりもみ回転させて激突しそうだった木を両脚で蹴り、反転、向かって来る馬鹿でかい蜘蛛、
いやミラーモンスター"ディスパイダー"に跳び蹴りを放つ……が
 

「シャッ!!」
「チ…!!」
 

ディスパイダーは8本の銀の足をフルに使い急ブレーキを掛けて、一本の足で俺の反転キックを弾く……弾き飛ばされた
俺はきりもみ回転で勢いを弱め、着地、左脇のライドブッカーを取り外し、
ガンモードに変形させ左の人差し指でディスパイダーに発砲するが、
細かく体を動かすディスパイダーの足をまったく止める事ができない…
俺は接近戦を仕掛ける為にカードを取り出しバックルに放る
 

――ATTACK RIDE…SLASH!!――
 

ライドブッカーをガンモードから長い刀身を持ったソードモードに変形させ、俺は向かって来るディスパイダーに駆ける!!
 

「シャアアアアアッ!!」
「ハッ! ダアアアアッ!!」
 

距離が肉薄した瞬間、ディスパイダーは6本の足でその巨体を支えながら前足の2本で俺を突こうとする、
俺はブッカーソードで弾き、避け続ける……
 

「シャ、シャアアアアアッ!!」
「ハァッ!!」
 

このままでは持久戦になると判断したのか2本の足を地に突きたてその巨体を体当たりに利用する、
俺は体当たりに合わせ胴体に軽く蹴りを放ち、もう一本の足でもう一回蹴って空中を一回転し着地…………
振り向き様に剣を振るう!!
 

「ぐ…!?」
 

ディスパイダーは蜘蛛のモンスター…腹部の口から鋼鉄の様な糸を吐く…
俺は6本と予想したが実際には8本…斬り損ねた2本の糸が胴体に当たる……生身で鉄球を喰らったかの様に痛い……
 

「シャアアア、キシャアアアアアアア!!」
「フゥ…」
 

――ATTACK RIDE…BURST!!――
 

糸を体内に戻したディスパイダー…今度は複数の赤いトゲを放ってくる、
即座にガンモードに変形させ、高速かつ連続で放たれる黒のエネルギー弾がトゲの大半を撃ち落とし…
真横を通り過ぎるトゲはほうって置く………
 

「シャアアアアア!!」
「いいぜぇ…とことん付き合ってやる!!」
 

興奮状態にでもなったのかディスパイダーのスピードが上がっている…俺はカードを取り出すと同時に跳躍し必殺のカードを放り込んだ
 

――FINAL ATTACK RIDE……――
「シャアアア…シャアアアアア!!」
「少し喰らっとけ!! ハァ!!」
 

――DE、DE、DE、DECADE!!――
 

10mはある木の枝に着地して俺はハンドルを閉めると同時に跳躍…空中前転で目標を定め、
ディスパイダーとの間に一定の間隔を空けて現れた、黄色い10枚のエネルギーカードの一枚目を潜り、右足を突き出して、落下する
 

「トオリャアアアアアアアアッ!!」
「シャアアアア!!」
 

興奮状態のせいかディスパイダーは真っ直ぐに向かって来る……
カードを潜る度に右足にエネルギーが集束しバーコード状の2本のリングを纏っていた…………今…10枚目を潜り終えた!!
 

「シャアアアアアアアアアッ!!」
「ッ!? ぐ…ぬぅん!!」
 

野郎……俺の蹴りは……片足1本で弾けるほど………甘くはねぇぞ!!
 

「シャアアアア!? シャア……」
「ぐ…チィ…ッ!?」
 

俺の必殺キックはディスパイダーの振り上げた前足の一本を蹴り折ったが……
蹴り折った瞬間、ディスパイダーの体当たりをまともに喰らい吹っ飛ばされる……
 

「フゥ……ちと強いな…てめぇ……!?」
「シャアアアアア……」
 

吹っ飛ばされた俺は地を転がり回り、体勢を立て直すと…少々驚いた……
 

「大した再生能力だな…もう足が生えやがったか?」
「シャアアアア!!」
「やれやれ……もう少し落ち着こうぜ?」
 

ディスパイダーを蹴り折った足を瞬時に再生した瞬間、こちらになりふり構わず突っ込んでくる、こいつで……止まるか?
 

――ATTACK RIDE…BUSTER!!――
「ハッ!!」
 

ガンモードの銃口から黒くブラストの弾丸よりも高い出力を持った光弾を動き回るディスパイダーの腹部、足の幾つかに当てる……
バスターが当たった熱によって熔けているが…あの動きを止めるには到らず、接近を許してしまう……
 

「シャ、シャアアアア!!」
「ぐっ!!」
 

せめてもの抵抗で放つミドルキックは一本の前足に受け止められ…一本の足に蹴り飛ばされた……
 

「……ッ!!」
 

蹴り飛ばされた俺は木に激突し地面に落下……受身は取れ、対して痛くも無い……だが――
 

「シャアアアアア!!」
「厄介だな!! ちくしょう!!」
 

バスターによって融解した場所は既に再生している……
ディスパイダーが足を振り上げたのを見て、俺はバスターを放ちながら側転して避ける…
ディスパイダーの足は俺が激突した木を薙ぎ倒す……
 

「ハッ!!」
 

ディスパイダーが振り向く前に後方に跳躍しながらバスターを放ち、ライドブッカーからカードを取り出しサイドハンドルを開ける
 

「シャアアアアア、シャアアアアアアアアアアッ!!」
「再生する前に焼き尽くすしかないか?」
 

――KAMEN RIDE……――
 

このディスパイダーの再生能力は正直この姿では倒しきれない……
俺は火の力を使う、黒き龍の騎士…リュウガのカードをバックルに放り…
閉めたと同時にライドブッカー・ソードモードで迫ってきた8本の糸を切り払う!!
 

――RYUGA!!――
 

黒き強化皮膚、すね部分を覆う銀の装甲、軽量かつ強固な黒いチェスト、両腕の手甲、両肩の装甲、
左腕には黒き龍の頭部を模したカードリーダー式のガントレット…
黒い強固な仮面にとある自由すぎる音楽家には鉄仮面と称されたマスク、
そして…額に輝く黒き龍の紋章……リュウガに再変身した俺は放たれてきた赤いトゲを細かくライドブッカーで捌き…
最後の一本を二本指で掴みとり放り捨てる
 

「シャアアアアアッ!!」
「来るか…ならこれだ!!」
 

――ATTACK RIDE…SWORD VENT!!――
 

「ハッ!」
 

黒き龍の尻尾を模した剣が黒炎と共に空中から飛来、俺は片手でライドブッカーを持ち、もう片方を空へと掲げると黒炎を纏った
剣の柄が左手に握られ、剣を振るうと、黒炎が晴れる……
 

「シャアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ハッ、ハァ! ハァアアアアアアア!!」
 

ディスパイダーが足を止め2本の足が繰り出す中、俺は片方の足を切り払い、片方の足を斬り捨てる!!
 

「シャア!?」
「ウオオオオオオオオオッ!!」
 

こいつが足を一瞬にして元の状態に生えさせた時間は約3秒……俺は一瞬動きが止まったのを見逃さず、剣を振るい…振り上げ……
刀身を重ねて、突き上げる!!
 

「シャ……アア……」
「いい勘だ…だが…甘いぜ!!」
「シャ!?」
 

勘がいいのかディスパイダーは蜘蛛の頭部が真っ二つにされる事を避ける為に後方へと跳び、着地……
しかしドラグセイバーとライドブッカーによって斬り続けたせいか、またはディケイドを上回るリュウガのスペックのおかげか…
ディスパイダーの複数の足が折れる……俺はその間に両手の剣を槍を投げるかの様にディスパイダーに投げつけ、
左右の足の先端を突き崩した……その間、事前に取り出していた2枚のカードの内1枚をバックルに放り込み、ハンドルを閉めた!!
 

――ATTACK RIDE…STRIKE VENT!!――
 

俺が右腕を空へ掲げると黒炎が右拳に纏われ…黒炎が晴れると、中から黒き龍の頭部を模した武器が現れ…
俺は動けぬディスパイダーに武器を翳すと拳を畳み…
 

「ハアァァァァァァァァッ……!!」
 

力を溜める動作を取ると龍の口に黒炎が集束され……力強く…早く突き出す!!
 

「シャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?!!?」
「…………………」
 

超高温の黒き炎がディスパイダーの体を焼き尽くす……その体は焼き尽くされながらも再生を続けているが……
追いついていない………金と銀の蜘蛛は……大型の炭となって息絶えた…………
 

「フゥ…終わった、終わった…」
 

俺は腕時計の場所まで歩きながらこれからの事を考える……俺が士を捨てたこの世界に来て約半年…
その間に倒して来た化け物どもを倒し続け……もはやその数は500に突入した……
おそらくだが現在ディケイダーに封印しているあの道具"ケータッチ"を狙っていると思う…
ケータッチは仮面ライダーディケイドが特定の仮面ライダーの力を九つ手に入れてこそ始めて使える道具で此れを使いこなす者は
世界など簡単に破壊できる……かつて使った者が言うのだから間違いない……さてと――
 

「ハッ!!」
 

考え事をしていたら何時の間にか腕時計が落ちている場所に辿り着いた……
俺は時計を放り投げると同時に跳躍し腕時計の鏡からミラーワールドを脱出し…地面に着地、サイドハンドルを開いて変身を解く
と同時に落ちてきた腕時計をキャッチし左手首に巻いて時間を見ると5時56分……
俺はディケイダーに乗りアクセルを回して俺が居候している定職屋"松"へと進路を取って約30分……
 

「おう! 光弥、今日はやけに早いな?」
「あ、おやっさん…」
 

松へと帰って来た俺はエンジンを切り定食屋の横に立てられたプレハブ小屋の様なガレージのシャッターを開ける……
で、定食屋の前で会ったこの人は"住田松次郎"(すみだ まつじろう)…この定食屋の店主で、俺はおやっさんと呼んでいる……
ディケイダーをガレージに入れてスタンドを下ろすとおやっさんがガレージに入って来た
 

「で、どうだったんだ?売り上げ…」
「売り上げは…9800ジャストですね」
「うへぇ…1万いってねぇのかよ…」
 

無精ひげを生やし、頬のしわや年を取った顔のせいか売り上げの事を言われると申し訳なってくる……
まぁ、居候の立場だから大した事は言えないんだが……さすがに……な?
 

「フゥ…じゃあ、おやっさん…麻雀行くの止めてくれます?」
「な、何言ってやがる!? お、俺は別に――」
「じゃ、懐に入った3万…出してくれます?」
「………………」
 

おやっさんはしてやられたと言う感じで懐から3万円を俺に差出し、頭をポリポリとかいている……
 

「なっちゃんに怒られますよ?」
「べらんべぇ……くそう……光弥!! 仕込みやっとけよぉ!!」
「はーい…」
 

さすがに不味かったか……おやっさんはしょんぼりと松に入っていく……こりゃヤケ酒だな……
 

「まぁ…初めて会った時よりはマシか……」
 

何せ初めて会った時は生気が無く……ここまで近所の親父連中と遊びに行くなど到底無かったが……
 

「やりくりが大変だよ…たく」
 

覚えているだけでも借金は100万を超えている…まともに営業すれば大丈夫なんだがなぁ……
 

「……仕込みをやるか」
 

溜息を吐きながらガレージのシャッターを閉め俺はガレージから松へと繋がる扉を開けて、厨房に入る……
松はカウンター席が10にテーブルが4つにイスが20と小さな店だ…俺は水道で手を洗いながら仕事の多さにまたしても溜息を吐く……
怪人の大量出現の原因調査に松の営業におやっさんの世話……絵………しばらく休業にすっかな?
 

 
 

<プロローグ終了、第1話に続く>





作者さんへの感想、指摘等ありましたら投稿小説感想板
に下さると嬉しいです。