至る所に様々な色をした魔力光が飛び交う。

端から見れば花火に例えられたり、場合によっては虹に例えられたりもするかもしれない。

だがそう例えられないのは、その魔力光が攻撃に使用されているものだからだった。

その攻撃は衝突し周囲を巻き込み爆発するものもあれば、打ち消され意味を成さないものもあった。


   そこでは、大勢の魔導師が戦っていた。剣を持つ者、杖を持つ者、魔導書を持つ者・・・

彼らが戦っている相手もまた、魔導師である。だが、魔導師だけというわけではない。

その中には異形のもの達も混ざっていた。牙が生えているもの、腕が四本あるもの、体長が5mはありそうなもの。

とても人間にはほど遠く、その姿形は様々なものだった。

 彼らは地上、空、次元の海と三つの部隊に分かれ戦っていた。

地上部隊が空を見上げれば、そこにはまた違う戦いが繰り広げられていた。

違う戦いとは言っても、根本的なものは同じだ。

剣を振りかざし、敵を斬る。砲撃により多くの敵を撃ち抜き、圧倒する。

地上と空とは違う戦いを繰り広げていたのは次元の海の部隊――“宙”の部隊だった。

宙の部隊は戦艦を用い、それの砲撃で敵と対峙していた。

魔導師数十人分の魔力はあろうかというほどの、大質量砲撃が艦の主砲部分から発射される。

それは多くの異形のもの達を呑み込み、消し去っていた。

 その戦場に“一人”の人物がいた。本来なら次元の海で生身の人間が活動できるわけないのだが、“彼ら”はいた。


「だいぶ戦況は良くなったか?」

『“戦況は”ね。みんなの疲労とか精神状態では負けてるよ。』

「そりゃそうだ。あっちの戦力の殆どは心を持たないただのモンスター・・・士気では負けるに決まってる。」


 会話からすると、異形のもの達とは敵対している部隊の者だろう。

会話と言ってもここには一人しかいない。だがしっかりと声は二つ聞こえていた。

念話ならば周りには聞こえないはず、味方と念話以外の方法で連絡を取っていたのかもしれないが、そんな感じはしなかった。

男が手を上げる。それが合図だったのだろう、数隻の艦から砲撃が放たれる。

今のを見る限りどうやら、この男が部隊の指揮・統括者なのだろう。

 男の周りに幾つかのモニターが出現する。そこには地上部隊と空戦部隊の様子が映し出されていた。

数秒間、睨むようにモニターを見つめる。その間も戦況は徐々にだが、変わってきていた。


「どの部隊も優勢ではあるが・・・被害は増えるばかりだな。」

『仕方ないでしょ、それは時間の問題だもん。なんなら私たちが出る?』

「お前はともかく、俺が行っても足手まといになるだけだ。」

『そんなこと言ってるとまた士気が下がるよ?』


 確かに部隊の頂点に立つ者が情けないことを言っているようでは士気は下がっていく一方だ。

上に立つ者とは皆の手本となり、それ相応の態度と言動を持って行動しなければならない。

そうしなければ下の者たちが混乱し乱れてしまう。まとまりが無くなった部隊など、烏合の衆となんら変わりはない。

それは戦い以外でも言えることだが、“戦争”ではそれが顕著になる。

上下関係が無く、一人一人が単独での戦闘を行えば、たった一人のミスで全体の命取りになってしまうこともあるからだ。

ならば、上下関係があればそれは起こらないのかと聞かれれば、そうではない。ただ確率的に前者の方が安全なだけだ。

指揮する者が何も考えず場の雰囲気、流れだけで物事を判断するだけの者ならばそういうことも起こってしまうだろうが・・・

 指揮する者、戦略とは、版の上でやる遊びと同じだ。代表的な物はチェスや将棋などだろう。

数手先まで考えなければ、すぐに負けてしまう。先読みすることは同時に自分の負ける瞬間というものが分かることでもある。

当然のことかもしれないが、勝つことだけに集中していると自分の負ける瞬間というのが見えなくなる者もいる。


“殺していいのは殺される覚悟のあるやつだけだ”そんな台詞がある。

これも勿論、戦いに当てはまる。この言葉自体がそうかもしれないが戦略に置き換えることができるということだ。

つまり、勝ってもいいのは負ける覚悟のあるやつだけ・・・ということ。

指揮する者が自分の部隊が追い込まれ敗北するのは目に見えているのに、それでも認めずに戦おうとする。

諦めないことと、無知を勘違いするのは愚かなことだ。天地の差ほどの違いがあるというのに・・・


「宙は敵の数が減ってきたな・・・よし、早いとこ終わらせよう。」


 男の声が地、空、宙の三つの部隊に響き渡る。


「全軍に通達!俺たちの勝利は目前だ!“光”の下に奮起せよ!」


 その言葉により、士気が上がる。具体的に言うと勢いが上がる。要は気の持ちようなのだろうが、それもまた戦略の一つだ。

部隊の各地で雄叫びとも言える声が上がり、異形のもの達を倒していく。

この勢いでは、あと小一時間程度で異形のものと少数魔導師の部隊は壊滅するだろう。

 宙で指揮を執っていた男が、周りにいる十二隻の戦艦に対し指示を送る。

内容は宙を制圧後、警戒態勢を維持しつつ各自休息を取っておくように、というごく普通のものだった。

三つの部隊で最も被害が少ないのは、この宙の部隊だった。総指揮がいるのだから当たり前というのもあるが、理由は他にもある。

その理由がこの十二隻の戦艦。これもまた当たり前、と考えられてしまうだろうがしっかりとした意味がある。

この艦には船尾の部分にそれぞれの艦の名が刻み込まれているのだが、その下にこう刻まれていた。





















“A L H A Z A R D”



























最後の願い〜Origin Light〜



















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