ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・
鐘が鳴った。
低く、太い、荘厳な感じだった。
この鐘の音を境にまた新たな一日が始まる。
俺はこの鐘の音を聞き続けている。
何回目かは分からない。
百回目かもしれないし、一万回目かもしれない。
はたまた数千万回目かもしれない。
数十億回目、ということも考えられる。
だが、個人的にはどうでも良かった。
いくら時が過ぎようとも、俺は死なないのだから。
悠久な時の流れの中で永久な時を生きる。
“不老不死”を望む者は、世の中にごまんといるだろう。
これを望む者というのは、すなわち、欲の多いやつだ。
人生一度きりでは足りない、とか――
若さを保ち続けたい、とか――
もっとシンプルなものだと死にたくない、とか。
そんなことを言っても結局は、辛いだけだ。
俺はある人物に死んではならない、と言われた。
その結果、こうなった。
死なないというのは“不自由”だ。
いや、“死ねない”と言った方が正しいのかもしれない。
だが、こうも考えられる。
死ねないことが不自由ならば死ねることは自由なのだろうか、と。
さらに追求するとこうなる。
“死ぬ”ということは“生きる”こと。つまり、生まれることだ。
すべての生物はこの世に生を成した瞬間から死を義務づけられる。
その時点で死という概念に束縛され、自由は消える。
ならば、自由とは一体何なのだろうか。
生まれた瞬間に自由が消えるのならば、何故“自由”という言葉があるのだろうか。
どこからどこまでが自由であり、何から何までが自由なのだろう。
その答えは未だにでない。
いくら思考を巡らせても、答えは出なかった。
頭の中ではいつも新たな理論が生まれ、だがそれでも、それは破局する。
これもまた、世界の一つの“循環(サイクル)”なのだ。
――生があるからこそ死がある
――表があるからこそ裏がある
――光があるからこそ闇がある
――聖があるからこそ魔がある
――天があるからこそ地がある
この世にサイクルしないものなど存在しない。
存在しては・・・・いけないのだ・・・。
「ハァッ・・・・ハァッ・・・」
荒い息遣い。彼は走っていた。
男はバリアジャケットを身につけており、胸に抱きかかえるようにして小さな箱を持っていた。
とある次元世界、ジャングルのように木々が生い茂り、見たこともない植物が辺り一面に咲いている。
熱気が籠もり、地面はぬかるんでいる。
一般人ならば、まず来たいとは思わない場所だ。
だが、そんな場所だからこそ、こんなことが起こっている。
男の周りにも数名の人物が走っていた。というより逃げていた。
彼らは時空管理局の局員であり、この地で発見された、ある“ロストロギア”を回収するために組まれた精鋭部隊だった。
精鋭部隊と言うからには皆それなりの実力と魔力は兼ね備えている。
実際この男自身も、ランクAであり階級も二尉であった。
「ぐあぁぁっ!」
男の隣を走っていた局員が倒れた。
だがそんなことは誰も気にせず皆、自分の身を守るために走り続けていた。
「ぐあぁぁっ!」
また一人、味方が倒れる。
後方からも誰かが叫び、倒れていく音が聞こえた。
(くそっ・・・何なんだ・・・一体どうすれば・・・!)
すると突然、目の前に赤い鎧を身につけた男が現れた。
男の手には青く光るレーザーブレイドの類の物が握られていた。
その剣が一文字に薙ぎ払われ、局員の首を撥ねた。
撥ねられた首は地面を転がり、やがて止まった。
不思議なことに首、身体どちらの断面からも血は出ていなかった。
剣を持った男が首から上がなくなった局員の腕から小さな箱を取る。
「ふぅ・・・これでやっと9個目か。」
そう言って男は姿を消した。
―後書き―
初めまして、ガイアルと申します。
まず、読んでくださってありがとうございます。
まだ未熟なので文章がおかしかったり、矛盾が生じるところがあるかもしれません。
そのようなところがありましたら感想とかアドバイスいただけるとうれしいです。
それでは、これからよろしくお願いします。
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