注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。


   よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。


























 
 



















 祐一が消えた時、京香達は一つの部屋に集まって雑談をしていたのだが、祐一が消えた瞬間皆いっせいに



 はじかれたように顔を上げて祐一がいた山の方角に顔を向け、






 「今、何かとても嫌な感じがしました・・・。」






 「私もよ・・・。」






 「私も感じました。一体何なんでしょうか・・・。」






 京香、薫、久瀬の言葉に皆は暫く黙り込んでいたが、






 「まさか・・・、相沢さんの身に何か・・・。」
 





 京香がそう言った瞬間皆は顔色を変えて、






 「うぐぅ、もし相沢君に何かあったら・・・」






 「相沢君に何かあったら・・・、私笑えなくなっちゃうよ・・・。」






 「あうー、祐一がいなくなるなんてやだよー。」






 「相沢さんの身に何かあるだなんて・・・、そんな酷な事はないでしょう・・・。」






 「お兄ちゃんがいなくなるなんて絶対いや・・・。」






 「相沢さんに何かあったら私はとても悲しいです・・・。」






 「ぐしゅぐしゅ・・・、祐一がいなくなるなんて嫌・・・。」






 「えうー、相沢さんがいなくなるなんて絶対嫌です・・・。」






 「相沢君がいなくなるだなんて絶対認めないわよ・・・。」






 「あなた達落ち着いて。まだ相沢君の身に何かあったり、ましてやいなくなるだなんて決まったわけじゃないんだから。」






 真琴の言葉に皆は幾分落ち着きを取り戻したが、その顔にはまだ不安がありありと残っていた。






 「とりあえず今相沢さんがどこにいるのかわかればいいのですが・・・。」






 「私の力でこの辺り一体を探してみますね。」






 一弥の言葉に京香がそう言うと、京香は立ち上がって翼を具現化させ、その力を発動した。





 
 力を発動させた京香は、白く輝くオーラに包まれていてとても幻想的で






 「美しい・・・。」






 と久瀬が思わず呟いたほどだった。






 皆は暫く京香をじっと見ていたが、京香が難しい顔をしだすと、






 「どうしたの、篠宮さん?何かあったの?」






 皆を代表するように薫が聞くと






 「いえ、なんでもありません。とりあえずもう少し続けてみます。」






 そう言って今までよりいっそう強く力を発動させた。






 京香は次第に呼吸が荒くなってきて、目に見えて力を消耗していき力の発動を止めると同時にその場に



 倒れこんでしまった。 





 
 倒れこんだ京香を慌てて薫が抱きとめ、






 「ちょっ・・・、篠宮さん大丈夫?」






 薫の問いかけに京香は青白い顔をして、 






 「私は大丈夫です・・・、けど・・・。」






 「どうしたの?一体何があったの?」






 真琴の問いかけに京香は、






 「相沢さんは・・・、今この世界のどこにもいません・・・。」





 
 京香のその言葉に皆は完全に固まってしまった。  
 
 




 皆の中でいち早く我に帰ったのは、意外にも北川だった。






 「相沢が今この世界にいないって事は、相沢は今どこか他の世界にいるって事なのか?」





 
 「多分そうだと思います・・・。ですが・・・、どの世界にいるかわからないんです・・・。」






 京香のその言葉に我に帰りかけていた他の者達は、再び呆然となってしまった。






 「今の私達で相沢さんを見つけ出す事は不可能です・・・。今の私達に出来るのは相沢さんの無事を祈る事だけです・・・。」






 京香の悔しそうな力ない呟きは、今の皆の心境を代弁しているかのようなものだった。






 この後、秋子が皆を呼びに来るまで皆はふさぎこんだままだった。


































SCAPEGOAT

第十五話

 





 「うう・・・、ここは・・・?」






 俺が目を覚ますと、そこはあたり一面闇で覆われていた。






 さらによく見ると、俺の周りを小さな結界が覆っていた。






 俺が結界にそっと手を触れると、結界はシャボン玉がはじけるように消滅した。






 結界が消滅した瞬間、俺を凄まじい何かが襲った。






 「ぐうぅ・・・、何だこれは・・・!?」





 俺は最初襲ってきた何かに戸惑っていたが、すぐに落ち着きを取り戻すと何か声が聞こえてくる事に気がついた。






 「これは・・・、人の声か・・・?」











 いたい・・・、苦しい・・・、何故俺がこんな目に・・・、たすけて・・・、あいつが憎い・・・、殺してやる・・・





 
 




 「なるほどな・・・。この闇は負の感情の集合体というわけか・・・。」





 
 その闇からは、ありとあらゆる怒りや憎しみや悲しみといった負の感情がこめられた声が、心に直接伝わってきた。






 そしてその中には、かつての自分の心の叫びも混じっていた。





 
 前の俺ならこの闇に飲まれていただろうな・・・。






 俺はなんとなくそんな事を考えたりした。






 その時、負の感情以外の声がかすかにだが俺の心に伝わってきた。






 「これは・・・、俺を呼んでいるのか・・・?」






 俺は少し考え込んだが、






 「今は他に行く当てもないからな。行ってみるか。」






 俺はそう呟くと、声のする方に向かって進み始めた。





























































 「はあ、はあ、はあ・・・。」





 
 声のする方に近づけば近づくほど、闇はその力を増していった。





 
 それとともに俺は徐々に体力を消耗していった。





 
 まだ辿り着かないのか?そろそろきつくなってきたぞ。






 俺はそんな事を考えながら闇の中を進んでいった。






 さらに暫くすると、唐突に俺を襲っていた闇が消え去った。






 正確には闇そのものが消えたわけではなく、闇が俺を襲ってこなくなったのだが。






 闇が消え去った瞬間俺を呼んでいた声も消えた。





 
 俺が声のしていた方を向くと、そこには黒いドレスを着た美しい少女が佇んでいた。






 その姿は美しかったがどこか影があった。






 闇にとらわれた少女・・・、か・・・?






 「お待ちしていました、相沢祐一さん。」






 「あんたが俺をこの世界に連れてきたのか?」






 「はい、私はいままで多くの力ある者をこの世界に呼び込みました。しかし、殆どの者はここに辿り着くまでに力尽きて、



  闇に飲み込まれてしまいました。ここまで辿り着いた者も、誰一人として私の望みをかなえるには至りませんでした。」






 少女は俺を見ながら淡々と言葉を紡いでいった。






 「それで、俺に何をして欲しいんだ?」






 「私があなたに望むこと、それは父と私をこの闇から解き放ってもらう事です。」






 「そうか、わかった。あんたの望み、俺がかなえてやるよ。」





 
 「ずいぶんと安請け合いしますね。私の望みをかなえる事がどれほど困難な事か、わかっているのですか?」






 「少なくとも簡単な事じゃないだろうな。だが、どの道あんたの望みをかなえない事には俺は元の世界に変えることは出来ないだろうし、



  俺には帰るべき場所があるからな。だからさっさとあんたの望みをかなえて元の世界に帰らせてもらうぜ。それで、どうすればあんたの



  望みをかなえる事が出来るんだ?」





 「方法自体は単純です。この闇の核となっている父を倒せばいいだけですから。」






 「なるほど、方法自体は単純だな。だが、それを実行するのはきわめて困難という事か。」





 俺の言葉に少女は頷き、





 
 「この世界を作っている闇全てが父の力となっています。つまり、父と戦うということはこの闇と闘うということと



  同じ事だと思ってください。」





 「ようするにあんたの親父さんはこの闇の世界の化身になっているということか。」






 「まあそういうことですね。」





 少女がそこまで言ったところで、凄まじいプレッシャーが俺を襲った。





 
 「どうやら親父さんが来たみたいだな。」





 
 「私はこれで失礼させていただきます。御武運をお祈りしています。」





 
 少女はそう言うと俺と唇を重ねあわせ、闇の中に消えていった。






 「京香のキスが光の祝福なら、あいつのキスは闇の祝福といったところかな。」






 俺はそんなことを呟くと、気を引き締めプレッシャーのする方へ向き直り、





 
 「おおおおっ」





 龍気を極限まで高めて雄叫びを上げた。






 祐一が雄叫びを上げると、祐一の体に変化が訪れ始めた。





 
 祐一の髪は金色に染まりざわめきながら腰の辺りまで伸び、右目は金色に輝き龍のそれになり、右の頭部からは龍の角が生えてきて、



 左腕は金色に輝く龍のそれへと変貌を遂げていた。






 さらに、祐一の口元からはまるで吸血鬼のような二本の牙が生えていた。






 天龍神がラグナスとの闘いの後俺に与えてくれた力、今こそ使わせてもらう! 





 
 祐一が心の中でそう叫んだ直後、闇の中から薄汚れた服を纏った一人の男が現れた。






 「あんたがあの子の親父さんか?」






 その男は俺の問いかけに答えることなく雄叫びを発した。






 グゥオオオオオオオオオオオオ






 
 地の底まで響くような雄叫びとともに、その男の体は漆黒の魔獣へと変貌を遂げていった。







 「闇の化身たる漆黒の魔獣か・・・。まあラグナスを相手にするよりかはましかな・・・?」






 俺はそんなことを呟きつつ臨戦態勢をとった。






 魔獣は身長が三メートルほどで、二本足で立っており頭からは大きな2本の角が生えていた。






 「グゥルルル・・・」






 「さてと、さっさと片付けて元の世界に帰らせてもらうぜ!」






  俺のその言葉と同時に、闘いは始まった。




 
 




 

 


第十六話へ続く


あとがき



 どうもこんにちは。SCAPEGOATの十五話はいかがだったでしょうか?


 とりあえず話が佳境に入り、ちょっとだけ調子が出てきたような気がします。


 たぶん、あと2,3話で終わるとおもいますが、よかったら最後までお付き合いいただけたらと思います。


 さて、出来れば感想などを送ってくれたりすると嬉しいです。感想が来るとやる気がでるし。


 私のメールアドレスはharuhiko@venus.sannet.ne.jpです。


 なお、いたずら、誹謗、中傷のメールは止めてください。お願いします。


 感想が来たら返事はよほどの事が無い限り書きます。


 とりあえず今回はこれで。


 それではまた。






あとがき 終わり