注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。


   よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。


























 
 





























 商店街であゆと名雪と秋子さんと会い、公園でしおりと香里と北川に会ってから一週間が過ぎた。






 他の者との関係は相変わらずだが、俺自身にはちょっとした変化があった。






 何かと言うと、俺を蝕む苦痛が少しずつその度合いを増してきていることだ。






 さらに、一週間前のあの時以来発作的に俺を襲う激痛は、何の前触れも無しに俺に襲い掛かってくるようになった。







 京香にはまだ何も言っていないが、近いうちに相談すべきなんだろうな・・・。







 俺の身に何が起こっているのかを詳しく知っているのは、あいつだけなんだから・・・。





 
 
 俺は自分の身に何が起こっているのかちょっと不安になったが、それ以上に頭を悩ませていることがあった。







 それは何かと言うと・・・、今日の昼飯を何にするかだったりする。







 何?そんなことどうでもいいんじゃないのか?







 そんなこと無いぞ。俺にとってこれは重要な問題なんだから。







 ちょっと贅沢して外食にするか、それとも面倒くさいけど帰って自分で作るか。俺にとっては重要な問題なんだっ!







 って、俺はさっきから誰と話してるんだ・・・?まあ天(作者)の声と言うことにでもしておくか。







 にしても、このSSは本当ならもっと暗い雰囲気になるはずだったようなきがするが・・・。まあいいか。






 それにしてもどうするかな・・・、今日の昼飯。
 


























































SCAPEGOAT

第四話

 





























 ――三十分後、俺は商店街を歩いていた。







 結局、俺は今日の昼飯を外食で済ませることにしたので商店街に出てきたというわけだ。







 さてと、何にするかな・・・。







 しかし、外食にすると決めたのはいいものの、俺にはあまりお金がなかったりする。





 

 今の俺をバイトで雇ってくれる所なんてどこも無いから、仕送りだけで生活しなきゃならないんだよな。







 その仕送りも決して多いとはいえないので、できる限り節約しなければならないのだ。







 何?だったら自炊しろ?別にたまにはいいだろうが。







 とにかく現実的な問題として、外食するにしてもできるだけお金を節約する必要があるというわけだ。







 そうなると食べられるものは自然と限られてくるわけで、結局俺は牛丼を食べることにした。







 あれなら安いし美味いし早いといいことずくめだからな、まあしょっちゅう食べてると飽きるが・・・。







 そういうわけで、俺は牛丼屋に入った。






 
 牛丼屋は昼食時にもかかわらず一番端の席が運良く空いていたので俺はそこに座ったのだが・・・、よく見ると隣はなんと久瀬だった。







 更に久瀬の隣には一弥が、その隣には佐祐理さんが、その隣には舞が座っていた。






 
 四人はまだ俺には気がついていないらしく、仲良く談笑していた。






 
 それにしても久瀬と佐祐理さん達が仲がいいとはな・・・、知ってはいたが実際に見てみると・・・、本当に意外だよな。







 俺が本来いるべき世界では考えられない光景だからな・・・。






 
 自分の分の牛丼が出来るまでの間俺は四人の会話に耳を傾けていたのだが、牛丼が運ばれてきて食べようという時に久瀬がこっちに気づいた。







 そしてあとはお決まりの反応である。







 これについては今更言うまでも無いだろうな。







 にしても舞や佐祐理さんにまで嫌われるっていうのは、頭ではわかっていてもやっぱりショックが大きいな・・・。







 とりあえずさっさと食って出るとするか・・・。いつまでも舞達に嫌な思いをさせるのは嫌だからな・・・。






 俺は牛丼をさっさと食って勘定を済ませ店を出た。



 


 この日の牛丼はいつもよりまずかった気がした・・・。まあ気分の問題だな。






 

















































 俺は昼飯を食った後商店街をふらついていたのだが、その時ある疑問が浮かんだ。






 その疑問とは、何故俺は忌み嫌われているのだろうというものだった。






 よく考えてみると、俺の外見のことを差し引いても、他の連中の俺に対する反応は異常だったからだ。



 


 京香に聞いてみるのが一番確実なんだけど、教えてくれるかどうかわからないからな。






 とりあえずあいつに聞いてみるか。あいつのいそうな場所といったら・・・、あそこかな。






 俺はとりあえず、頭に浮かんだ人物がいる可能性が一番高い場所へと行くことにした。

















































 ざっ、ざっ、ざっ






 あれから俺は商店街を抜けて、山道を歩いていた。




 
 
 俺は足場の悪い道を歩きながら、もうちょっとましな道もあるのかな、などということを考えたりした。






 俺が向かっているのはものみの丘。古くから妖狐が住まう場所と言われてきた所だ。






 山道を抜けると、そこには広大な草原が広がっていた。






 「そういえば・・・もう春になったんだよな。真琴が望んだ季節に・・・。あいつは・・・、春になればずっと俺と一緒にいられると思ってたんだよな・・・。」






 俺はそんなことを呟いた後、目的の人物を探すことにした。






 はたして、目的の人物はすぐに見つかった。






 「よう、天野。奇遇だな、こんな所で会うなんて。」







 「あなたは・・・。」






 俺の目的の人物、天野美汐は俺を見ると表情を硬くし、わずかに身構えて後ずさった。






 また、天野の近くで追いかけっこをしていた真琴と命も、俺に気づくと天野を庇うように俺の前に立ちふさがった。






 いつもならこの後俺が立ち去って終わりなのだが、今回はそういうわけにはいかない。






 「なあ、天野。ちょっと聞きたい事があるんだが。」






 「あんたなんかに答えることなんか無いわよっ!!」






 俺の質問に対して天野が何か言う前に、真琴が怒鳴った。 






 これは最近になってわかったことなのだが、俺は真琴には特に嫌われているらしかった。






 俺の本来いるべき世界でも真琴は俺のことを憎んでいたからなあ・・・、ってそれは関係ないか。






 とりあえず俺は真琴を無視して天野の返事を待った。






 ちなみに命はどうしているかというと、天野の前には立っているものの真琴の陰に隠れるようにして立っていた。






 命はどうも気が弱いらしかった。そういえば命は学校でもいつもおどおどしてて真琴や天野の陰に隠れるようにしているからな。今も本当は天野の陰に隠れていたいんだろうけど、



 あれでも天野を守ろうと必死なんだろうな・・・。






 俺がそんなことを考えていると、天野が口を開いた。





 
 「聞きたいこととは、何ですか?」






 「美汐、こんな奴と話すこと無いよ。お前なんかどっかいっちゃえ!!」 






 やれやれ、真琴の奴気に入らない奴には本当にきついな・・・。






 俺は真琴のことは無視して、天野に聞きたいことを言った。






 「何で俺のことを忌み嫌うのか、出来たらそれを教えて欲しいんだ。」
 





 「何故、あなたのことを忌み嫌うか・・・、ですか・・・?」






 俺の質問が意外だったらしく、天野は少し驚いた顔でそう言った。






 「ああ。別に怒ったりはしないから正直に話して欲しい。」






 天野は俺の言葉に少し考え込んだが、答えは意外なところから飛び出してきた。






 「あんたが嫌いな理由なんて特に無いわよっ!!真琴があんたのことを嫌いなのはあんたから凄く嫌な感じがするからよっ!!」






 「嫌な感じ?そうなのか、天野、命?」





 俺の問いかけに二人は頷いた。






 「確かに、真琴の言うとおりです。理由と言われて思いつくのはそれくらいしかありません。」






 「そうか、わかった。すまなかったな、嫌な思いをさせて。それじゃあな。」






 俺は三人にそう言うと、ものみの丘をあとにした。






















 残された三人はと言うと






 「あうー、何だったのよあいつ。」






 「怖かったです・・・。けど・・・、あの人・・・、どこか悲しそうな表情をしてました。」






 「そうですね・・・。それに私のことをまるで知り合いみたいに呼んでいましたが・・・、どういうことなのでしょうか・・・?」






 三人は三者三様の思いを抱えながら、しばらくの間ものみの丘で休日の午後を過ごした。
























































 一方祐一は、ものみの丘を出てから真っ直ぐアパートに戻った。






 「あれ、明かりがついてる・・・。」






 アパートの祐一の部屋には誰もいない筈なのに明かりがついていた。






 祐一は部屋の入り口のドアの前まで来て中の気配を探った。






 そして、






 「よう、京香。なんか用か?」






 「こんばんは、相沢さん。おじゃましてます。」






 「部屋には一応鍵をかけといた筈なんだけどな。」






 「私にはそんなものは意味をなしませんよ。」






 「そうだったな。で、何でこんな所に来たんだ?」





 
 「普段ろくなものを食べてないでしょうから、ご飯を作りに来てあげたんですよ。」






 「そうなのか。ありがとうな、京香。」 





 
 「いえ、どういたしまして。」






 そして俺は京香と二人で夕食をとった。






 「それにしても、誰かと一緒に飯を食うのは久しぶりだな。」






 「そうでしょうね。今のあなたに関わろうとする人なんているとは思えませんからね。」






 「きついな。まあ確かにその通りだけど。」






 とここで、祐一は京香に聞こうとしていたことを思い出して、






 「ところで、いくつか聞きたい事があるんだが構わないか?」






 「私に答えられることなら。」






 「京香のスリーサイズを教えてくれ。」






 「上から85,57,84ですがそれが何か?」






 「・・・本当に言うとは思わなかったぞ。」





 
 「別に教えたところで減るものでもありませんから。」






 「・・・まあ冗談は置いといて、俺が聞きたいのは二つ、俺が何故他の皆から忌み嫌われるのかということと、何故最近になって俺の受ける苦痛の度合いが
 


  増してきたのかという事だ。」






 「受ける苦痛が増してきたとはどういうことですか?」






 「どういうことって・・・、そのまんまだぞ。」






 「生憎ですがそちらの件については私にはわかりかねます。何故相沢さんが他の皆から忌み嫌われるのかという質問にはお答えすることが出来ますが。」






 「それじゃあ答えられることだけを言ってくれればいいよ。」






 「わかりました。では、何故相沢さんが他の皆から忌み嫌われるのかといいますと、相沢さんの願いによって起こった奇跡で生き返った人達が本来背負うはずだった負の運命を



  相沢さんが代わりに背負っているからなんです。」






 「なんかいまいちよくわからないんだけど・・・。」






 「この世界は正と負の運命によって成り立っています。そのバランスを崩すことは、即この世界の崩壊につながるんです。」





 
 「なるほど、つまり俺はあいつらが生き返って正の運命を手に入れた分の穴埋めをさせられてるというわけか。」






 「そういうことです。相沢さんが受けている苦痛もこのことが原因なんです。」






 

















































 今日は、一つの疑問が解決し、そして一つの疑問が謎のまま残った、そんな日だった。






 そして新たな疑問も浮かんだ。






 今日の京香は平静をよそおっていたが、どこか俺に対して申し訳なさそうな顔をしていた。






 いや、今日だけじゃない。今までもそうだった。最初の頃は俺でもわからないくらいのかすかなものだったが、日を追うごとに
  


 表情にはっきりと変化が現れてきていた。
 
  



 
 他の奴らには隠せても俺には隠すことが出来ないくらいに。





 
 京香のあの表情はいったい何を意味するのだろうか?






 今の俺にはわからなかった・・・。

























































第五話へ続く


あとがき





 どうもこんにちは。SCAPEGOATの第四話はいかがだったでしょうか?


 なんか三話と話の出来があまり変わってないような気が・・・。


 まだまだ修行が足らんなあ・・・。


 それは置いておくとして、次回の展開は・・・まだあまり考えて無かったりします。


 とりあえず次回新しいオリキャラが出ると思います。


 それにしてもこのSSってKanonのヒロインがあまり出てこないなあ・・・。


 とりあえず今回はこれで。


 それではまた次回お会いしましょう。






あとがき 終わり