注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。


   よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。















































 ――春、街を覆っていた雪が消え去り桜がつぼみをつける頃、俺は一人で学校に向かって道を歩いていた。



 「桜が咲くのはまだもう少し先か・・・。」



 俺は歩きながらそんなことを呟いた。



 『それにしても俺が三ヶ月前、まだ雪に覆われていたこの町に来てから今までの間に本当に色々な事があったな。』

 

 俺は歩きながらこの街で起こったことを思い出していた。 

 






SCAPEGOAT

第一話



































 ――俺はこの街でいくつかの出会いを経て、様々な経験をした。














































 ――この街で出会った人達と一緒にすごした時間は、俺にとって本当にかけがえのないものだった 















































 ――俺は、皆とずっと一緒に入れたらどんなに幸せだろうかと思った。


















































 ――俺は皆といつまでも一緒にいられることを、心から願った。




















































 ――しかし、その願いはかなえられることはなかった。























































 ――この街で出会った俺にとってかけがえのない人達は、皆俺を残して死んでしまった。
























































 ――1人、また1人俺にとって大切な者が死んでいく度に、俺の心を言いようのないものが蝕んでいった。

























































 ――それが絶望と言う名の闇だということを知ったのは、俺にとってかけがえのない者達が皆死んでしまった後だった。
























































 ――俺にとってかけがえのない者が皆死んでしまった後、俺は慟哭した。
























































 ――7年前、俺の初恋の少女と一緒の時を過ごした、俺とその少女の二人だけの学校で。

























































 ――7年前、俺がこの街を去る直前に経験した、赤い雪の悪夢の起こった場所で。


 






















































 ――俺はひたすら自分を責め続けた。

























































 ――大切な者達を、一人として救うことが出来なかった自分を攻め続けた。
























































 ――そして夜が明ける頃、俺の前に一人の少女が現れた。
























































 ――その少女は、この世のものとは思えないほどの美しさと神々しさを兼ね備えていた。
























































 ――俺は本能的に、目の前の少女が自分とは全く異質のものだと理解した。






















































 
 俺と少女は暫くの間見詰め合っていたが、






 「・・・何か、用か?」






 俺の言葉に、少女はこう言った。






 「あなたは、奇跡を望みますか?」






 少女は更に言葉を続けた。






 「あなたが望むのなら、私は奇跡を起こしましょう。」






 少女の言葉に俺は言った。






 「・・・奇跡って言うのは、自然の理から外れたものだ。だから、普通は絶対に起こりえない。それを起こすとなると、


  それ相応の代償が必要となる、違うか?」






 俺の言葉に少女は暫くの間沈黙していたが、






 「確かにあなたの言うとおりです。奇跡を起こすにはそれ相応の代償が必要です。」






 「・・・俺は、奇跡を起こすためにどれ程の代償を払えばいい?」






 少女は少しの間沈黙した後、俺に奇跡の代償が何であるかを俺に話してくれた。






 「あなたは、代償をはらってでも奇跡を望みますか?」






 少女の言葉に俺は静かに頷き、






 「それで皆が、俺にとって大切の者達が戻ってくるのなら払ってやるさ、奇跡の代償を!」














 









































 ――そして奇跡は起こった。

























































 ――俺にとって大切な者達は、皆戻ってきた。



















































 ――皆自らの心を取り戻して。 
























































 ――そればかりか、ずっと昔にいなくなったはずの者達まで戻ってきた。























 


































 ――苺と猫が大好きな従姉妹の少女を見守る優しき母親の最愛の夫が。
























































 ――純真な子供の心を持った無口な先輩の父親が。
























































 ――優しき心を持ち、それゆえ苦しみ続け笑顔という名の仮面をかぶっていた少女の弟が。
























































 ――人との関わりを避けることで自分の心を守ろうとした少女の大切な親友が。


























































 ――俺の初恋の少女が大好きだった彼女の両親が。



















 




































 ――皆奇跡によって幸せを取り戻した。

























































 ――俺が、相沢祐一が一人で奇跡の代償を背負うことによって。
























































 だが、俺はそれでも構わなかった。






 むしろ、ほっとすらした。






 なぜなら、奇跡の代償を背負うのは俺一人だけで、他のものは誰一人として代償を背負う必要はないのだから。






 俺一人が苦しめば、皆が幸せな生活を送ることが出来るのだから。






 何はともあれ、今俺は学校に向かって歩いていた。






 学校に近づくにつれ登校する生徒の数が増えてきたのだが、皆俺の方をちらちらと見てはなにやらひそひそと話していた。






 最初はさすがに何事かと不思議に思ったけど、今ではもう慣れてしまったので俺は特に気にすることもなく歩き続けた。






 時々、ひそひそと話している連中の方をチラッと見ると、そいつらはいつも皆びくっとして縮こまって黙ってしまうんだよな、なぜか。






 それだけならまだいいんだけど、ただ俺がチラッと見ただけで泣き出してしまうのはいくらなんでも酷いと思うぞ。






 大声をあげて泣くような奴はさすがにいなかったけど。

  




 まあ、自分があまり人に親しみを持たれるような容姿じゃないのは認めるけどな。






 なんせやくざにしか見えない連中にも道を譲られたことがあるし。






 自分でいうのもなんだが目つきは悪いし、それに顔に傷跡があるからこれだけでも俺の事知らない奴は逃げてくんだよなー。






 前の学校では、特にプールの時なんか知り合い以外誰も俺に近づこうとしなかったし。




 

 そういえば、あの時は先生も俺の事できるだけ見ないようにしてたな、どうでもいいことだけど。





 
 まあ、全身に傷跡があって目つきが悪ければ、近づこうとしないのもわからんでもないが。






 俺がそんなことを考えながら校門に近くまで来たところで、前方から俺のよく知っている少女達が集団で登校してきていた。






 まあ男も三人ほど混じってるけど。






 そういえば、向こうから登校してくる奴らっていつもあいつらの方を見てるんだよな。何でだろ?






 なんか顔が赤い奴が多いし。中にはなんかイっちゃってる顔してる奴もいるし。






 あいつら、自分達が見られてること気づいてんのかな?






 まあそれはともかく、向こうから来てる連中はまだ誰も俺に気がついてないみたいだな。






 ちなみに、向こうから来てる連中が俺のことに気がついたのは、俺がもうすぐ校門にさしかかろうかという時だった。






 向こうから来てる連中って、皆俺を見るとなぜか立ち止まるんだよな。






 そんでもって皆なんかお化けでも見たような顔で俺の事見るし。






 更には俺のよく知っている奴らも、半数ぐらいは同じような顔で俺のこと見てるし。






 ちなみに残りの半数は、威嚇するような顔で俺のことを見てたりする。






 別に俺は何もするつもりはないんだがな。






 まあしょうがないか。これも奇跡の代償の一部なんだからな。我慢しないと。






 俺は誰にもわからないように小さなため息を一つ吐くと、何事もなかったかのように校門を通って校舎へと歩いていった。






 ここまでのやりとりでわかるように、この世界では相沢祐一は皆に忘れられていて、なおかつ忌み嫌われていた。


























第二話へ続く


あとがき


 どうもこんにちは。zardというものです。


 SCAPEGOATの第一話はいかがだったでしょうか?


 私はまだまだ素人なのであまりうまくSSを書くことはできませんが、まあそれは勘弁してください。


 ああ、どうしたら他の方々のように上手にSS書けるんだろ。


 まあそれはともかくとして、ここで少しこの話の補足をしておきます。


 まず、この話の舞台は祐一が戻ってきてから三ヶ月ほどたったあの街です。


 栞は二年生になっていて、真琴は二年生として、あゆは三年生として学校に編入してきたことになっています。


 佐祐理さんと舞は、名雪たちと同い年ということになっています。


 それと佐祐理さんの弟の一弥と美汐の親友の少女は二年生で、久瀬は三年生ということになっています。


 次の話で少し詳しく話しますが、祐一も含めて名雪たちの記憶も一部改ざんされています。


 とりあえず今回のあとがきはこんな所で。

 
 それではまた次回お会いしましょう。


 出来るだけ近いうちに・・・。










あとがき 終わり