「これが―――」




  白夜の書と、それを統べる主の全力での戦闘スタイル。

  古代ベルカによって生み出されたデバイスと術者の融合による戦闘技法。

  術者にも危険を及ぼすそれは、見返りとして倍ずる力を与えるという―――




 「なるほど・・・確かにこれは凄まじいですね」




  彼から感じるもの全てが先程までとは全く違っている。

  その闘気、気迫、魔力、意志、活力、その全てがとても大きくなっている。




  これが、古代ベルカの遺産―――今も残る、ロストロギアと呼ばれる物の力。

  扱うだけでも相当辛いだろうというのに、あの気迫―――




 「私たちも、負けてはいられませんね」

 「そうだね。ここは年長者としてちょっとは良いとこ見せないと」




  私の傍らに自然と立つ二人。

  私が最も信頼する、最高の仲間―――

  この二人がいれば、恐れるものなど何も無い。




  だから、やるべき事は一つだけ―――




 「ええ・・・これも元はと言えば私の不注意が招いた事態です。その責任は、きっちりと取りましょう!」










  〜A’s to StrikerS〜
         Act.15「我が儘」










 「私たちが道を拓く」




  リイン達が一歩前へ進み出る。

  アインはトレイターの様な不敵な笑みを、ツヴァイは緊張に固まった表情を浮かべて―――




 「やれるな、ツヴァイ」

 「はいです、アイン姉さま!」




  ツヴァイの体が光に包まれ、アインの中へ溶け込んでいく。

  瞬間、アインからは眩い光が放たれ―――




 「―――さて、全開で力を振るうのは久しいな」




  夜天の書、その最強の具現が姿を現した―――




 「ツヴァイ、どうだ?」

 『システムへの接続完了。制御ヘ移行―――リンカーコア正常稼働。
  各コンバットシステム異常無し、全機能オールグリーン―――いけるです!』

 「よし。ならば行こうか―――我らの初陣だ!」

 『了解です!』




  アインの足元に魔法陣が描かれ、頭上には無数の槍が出現する。




  ―――リインフォース・ツヴァイ。

  このユニゾンデバイスの主な役割はリインフォース・アインのシステムの管理、及び制御である。

  白夜の書のシステムを基盤とし無理やり書きかえられたロストロギア、闇の書―――

  その機能は本来あるべき夜天の書と近しい物になったにしろ、それは似て非なる物だ。

  その上、根を同じとしながら相反する性質を持つ二つのシステムを無理に同居させた時に起こる異常―――

  それはとてもではないが予測できるモノではない。

  良くてシステムの全機能停止。悪ければ再び惨劇を繰り返す事になりかねない。

  その例として挙げられるのが魔力出力の極端な低下だ。

  魔力を行使する際、アインはリンカーコアから生み出される魔力を上手く取り出せなかった。

  白夜の書と夜天の書の基本プログラムの違いから来る齟齬だろうと本人は語っている。

  そして、それを解決するために生み出されたのがツヴァイだ。

  今のアインには日常生活にはもちろん、戦闘時などは酷く不安定な状態になる危険性がある。

  その時に起こりえるかもしれないシステムの不具合―――それに対処するためにツヴァイにはシステムの管理及び制御機能がある。

  システムの不具合に対処するためのリカバリープログラム―――あるいはウイルスに対するワクチンとも取れる。




  とにかく、今のアインはツヴァイが共にいることにより全力での魔力行使が可能となった。

  つまり―――




 「無理に一撃の下に倒す必要は無い―――要は足さえ止められれば、道は拓ける」




  俺となのはを圧倒し、トレイターと互角に渡り合ったあの最強の守護騎士が、今ここに完全復活を遂げたのだ。




 「グランディニス・フルゴーリス」




  弾、と宙に存在する無数の槍が黒竜目掛けて放たれる。

  降り注ぐソレは黒竜の体を撃ち貫き、その悉くを地に縫いつけていく。

  波状に放たれてゆく槍の弾雨は、俺の目の前にはやてを狙った奴とヴィータが交戦している地点までの道を確かに創り出した。




 「さあ、行け!」

 「ああ、一瞬あれば―――十分だッ!!」




  あいつの姿は視認した。場所の状況も把握した。

  これなら―――!




 「いくぞ!!」

 『ああ!』

 『All right』




  俺の叫びに相棒たちが応えてくれる。

  そして俺は転移魔法を起動し―――




 「だぁらああああああああ!!」




  あいつの背から奇襲を掛ける!




 「なっ―――!?」

 「ヒァッ!!」




  だが、その奇襲ももはや狂気染みた速度で打ち返される。

  そのまま俺へと向かって繰り出される奴の一撃。

  体を逸らし、回避する。




 「陣耶、お前―――!」

 「こいつとは俺がやる! お前はとっととはやて達の救援に行け!」




  返す形で槍が払われる。

  真正面から打ち返そうとするものの、力が入らない。

  打ち返す事が出来ずに、拮抗する。




 「けどお前は―――!」

 「うるせえ! 俺はこいつに腹に風穴開けられた借りを返すんだよ!!」

 「な・・・ならてめえこそあたしとそいつの勝負を邪魔すんじゃねえよ!?」

 「もとは俺とこいつの勝負だったろうが! 横槍入れたのはそっちだろうが!!」

 「ヒャァッ!!」

 「っ、なろ!!」




  力勝負に押し負けて弾き飛ばされる。

  もはや俺しか視界に入ってないのか、後ろにいるヴィータには目もくれずに攻撃を仕掛けてくる。




 「っ・・・とっとと行け! あいつを護るのがお前の本来の仕事だろうが!!」

 「く、の・・・ぜってえ負けんじゃねえぞ!!」

 「当り前だろう、がッ!! 誰に言ってんだよ!?」

 「白夜の王の皇陣耶にだよ!!」

 「はっ、いいぜ。やってやるよ、鉄槌の騎士のヴィータさんよ!!」




  その一言を受けて、ヴィータは自身の戦場へと舞い戻る。

  さあ、俺もきばらねえとな―――!!




 「ヒャッハァ!!」

 「づぅっ!」




  くそ、繰り出される突きがどんどん鋭くなってきた―――!

  徐々に捌ききれなくなり、体にいくつもの筋が奔っていく。




 「死ね、死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネァハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 「があっ!?」




  は、早っ!?

  くそ、こいつどんどんタカが外れてきてやがる―――!

  感情が体の限界を無視して動かしているとでも言うのかよ・・・!




 「こ、の・・・いい加減に!!」




  奴の突きに合わせて剣を振るう。

  だがそれも、反則じみた反応速度で回避―――いや、消えた!?




 「くそ、速すぎだろ―――!?」




  フェイトのソニックや恭也さんたちの神速じゃあるまいし、なんなんだこの超人的スピードは!?

  くっそ、力もだんだんはいらなくなって来てる・・・

  長引くと、マズイ―――




 『陣耶、後ろだ!!』

 「っ!!」




  トレイターのとっさの声に反応して後ろから迫る気配を迎撃する。

  かろうじて繰り出された槍を払うものの、奴はそこから無理な体勢で更に槍を繰り出してくる。

  槍を弾いて体勢を崩した俺はまともに動けない。

  必殺を狙った一撃は、俺の喉元を貫かんと―――




 「ッ、冗談!!」




  そう易々とやられてたまるか・・・!

  避ける暇が無いなら、作ればいい話だろ!!

  目の前に障壁を―――展開!!

  ぶつかり合った障壁と槍が軋みを上げ―――俺の障壁はもう一瞬後にでも砕けようとしている。

  俺の障壁が脆いのは元から承知だ。けどな・・・一瞬くらいなら相手の動きが鈍る。

  そんでもって、その一瞬で―――




 「十分、なんだよッ!!」

 「ッ!?」




  その一瞬を以って奴の背後へと転移する。

  奴は槍を振り抜いて背後を晒している。この隙に―――!




 「―――ッ!」




  突如、奴の槍の柄尻が光る。

  何か、マズイ―――!?




 「ヒャハッ!」

 「うぉ!?」




  俺が危険を感じた瞬間、奴の槍の柄尻から一気に魔力刃が伸びてきた。

  危ねえ・・・一瞬遅れてたら串刺しだった・・・

  そして、その間に奴も体勢を立て直す。




 「っの、クソッたれが!!」

 「ヒャァアアハハハハハハハハハハァ!!」




  再び繰り出される雨霰の様な突き。

  それを捌ききる事すら出来ず、徐々に追い詰められていく―――

  このままじゃ・・・!




 「く、そ・・・!」




  ふざけんなよ・・・

  こんな所で、終わってたまるか・・・

  今度こそ、見つけられたんだ。

  俺が俺で在れる意味を、場所を、世界を。

  それを護るって、俺は・・・

  だから、だからなあ―――!!




  負けられない、と吠える。

  しかし、無情にも繰り出される突きは、もはや捌ききれないレベルに達していて―――

  その一撃が、胸に迫る。




 「・・・ッ!」




  意識が硬直する。

  体が、一秒後の死を予感する。

  五感全てが研ぎ澄まされ、何もかも、目に見えるモノ、見えないモノ全てが鮮明に、よりクリアに―――

  突き出された槍の速度が、風圧が、奴の殺気が、気迫が、どうしようもなく死を連想させる。

  どう考えても間に合わない距離。

  障壁も、転移も、剣も、腕も、何もかもが間に合わない。

  理性は冷静に、ああ死んだな、と呟く。

  目を瞑れば少しは楽だろうかと思って―――




 (違うだろうが―――!!)




  けど・・・それを本能は拒否、いや拒絶する。

  逃げに走って諦めた理性を叱咤し、体中に活力を送りつける。

  死が何だと、間に合わない事がどうしたと、その程度で諦めるなと、本能が叫ぶ。

  生きたいという想いが、俺の中の本能を掻き立てる。

  ああそうだよ、俺は護る・・・そのために生きてやる。

  俺が俺で在るために、俺が俺らしく在れる世界を護るために―――そう、ただ己自身の為に。

  ああ、何を弱音なんて吐いている皇陣耶。

  お前は何だ? お前が、あいつにトレイターと名付けたその本懐を忘れたか?

  そうだ、俺たちはトレイター。クソッたれな運命って奴に逆らうために生きてきたただそれだけの反逆者だ!

  だから諦めない。その諦めに、弱い考えに反逆する!!

  何より俺は―――諦める方向に行きたくねえんだ!!

  だから―――!!




 「こんな所で、死んでたまるかぁああああああああ!!」

 「死ねぇええええええええええええええええ!!」




  槍の切先が迫る。

  それを避けようと無理に体を動かす。

  体が軋み、骨が、血が、臓器が、体の全部が悲鳴を上げる。

  だけど、たとえ体が壊れても、俺は―――!!




  その瞬間―――




 (・・・葉?)




  一枚の、葉が見えた。

  槍の進行上にあるそれは、迫る槍の矛先を流れるように避けて―――




 『っの、何をボサッとしているたわけッ!!』




  俺を貫こうとした矛先は、トレイターの障壁によって完全に防がれた。

  が、俺の意識は別の所に気を取られていた。




  今のは・・・




 「っ・・・!」




  ひとまず奴との距離を取る。

  無理な動きを死闘とした代償として、体が軋んだ。




 (・・・持って、あと1分とちょっと)




  それ以上は、俺が耐えられても体が音を上げる。

  俺に残された手は・・・一撃必殺。

  一撃で奴を倒す事、それが確実に出来る技は・・・一つだけ。

  後は、それをどうやって奴に叩き込むかだけの問題・・・




 『陣耶、分かっているとは思うが―――』

 「ああ。もう、限界寸前だな・・・だから」




  躊躇はしない。そんな暇も無い。

  俺は俺の命をチップに、奴を打倒する賭けに出る。




 「無茶する。腹括ってくれ」

 『お前という奴は・・・仕方が無い、付き合おうか』

 「センキュ」




  クラウソラスを構え、正面に佇む奴を見つめる。

  とにかく、一瞬だけでもあいつの動きを完全に止めないと話にならない。

  そのためにはまず、あの刺突の嵐の中を掻い潜らなければいけないのだが―――




 「まあ・・・なるようになれ、だ」




  傷を診てもらっていたトレイターにも五感の増長や身体能力の補佐に回ってもらう。

  集中しろ。負けは死だ、先は無い・・・

  お前はこんな所で終わっていいのか? それで満足できるのか?

  否、断じて否。

  俺は生きる。生きて前に進む。

  たとえそれがどんなに惨めでも、醜くても、情けなくても、たとえ業を背負おうとも―――

  泥にまみれてでも、俺は前に進み続ける―――!




 「―――ォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 「ヒャーッハハハハハハハハハハ!! 死ね死ね死ね死ね死ね!!」




  繰り出される刺突。


  ―――目を逸らすな。


  それは風を切って迫ってくる。


  ―――奴の槍を見据えろ。


  確実に必殺を狙い、俺の胸を貫かんと―――


  ―――イメージしろ。俺は一枚の葉だ。

  逆らわず、身を任せ、流れるように・・・


  矛先があと数センチの所にまで迫る。




  それを―――




  俺はふわり、と―――




  槍に押し出されたような形で、横へと避けた。




 「ヒャ、ハァ!!」




  また槍が繰り出される。

  また体を横へとずらし、避ける。

  突かれ、避けて、突かれ、避けて、突かれ、避けて、突かれ、避ける。

  文字通り、それは槍の流れに流される葉のように―――




 「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネ!!」

 「・・・・・!」




  槍が繰り出され、また避ける。




  ―――いける。

  一歩、踏み出す。




 「何でだ、何でなんでなんで何で死なないッ!?」




  槍を避け、同時にまた一歩。

  徐々に距離が詰まる。




 「闇の書なぞを庇う奴が、何故死なないぃいいいいいいいいッ!?」




  俺の射程まであと三歩、二、一・・・




  今の奴は俺を殺せない事にいきり立って焦っている。

  なら、今がチャンス―――!




 (入った―――!)




  今まで動かさなかった腕に力を入れ、奴目掛けて振るう―――!




 「ヒャァ!!」

 「逃が、すか!!」




  大きく間合いを詰めて、また一閃。

  それも避けられるものの、確実に奴のペースは崩れてきている。

  このまま―――!!




 「喰ら、え!!」

 「シャアッ!!」




  全力で振るわれた剣と槍が交錯する。

  俺は上からの打ち落とし。対する奴は下からの薙ぎ払い。

  当然、分は―――俺にある!!




 「ぬぐ、がぁあああああああああ!!」

 「ぐ、がかか・・・!!」




  だがまだ、押し切れない。

  ここに来て、傷が効いてきた。

  体からは急激に力が抜け落ちようとしている。

  腕が震え、脚が震え、目の前は霞んでくる。




  だけど、それでも―――!!




 「ッ、ハァ!!」

 「っ!」




  途端、奴が膝を曲げたかと思うと今まで拮抗していたバランスが崩れ俺の体勢が崩れた。

  力は完全に下へ向いており、即座に俺を弾いた奴は胸を目掛け必殺の一突きを―――




 「―――な」




  放てなかった。

  奴の槍は俺の胸先三寸で光の網に捕らわれ、見事に固定されていた。

  そして、それは奴も同じ事―――




 「ぐ、放せ! 放せ放せ放せ放せ放せぇえええ!!」

 「無駄、だよ・・・そいつは、そう簡単には解けない」




  レストロリトロック。

  バインドの一種で、空間上に罠として設置する事が出来る。

  そう、ちょうど今の様に奴の槍が突き出される個所にでも設置してやれば―――




  クラウソラスを、逆手に構える。




 「これが、俺の全力の一撃だ・・・」

 「ぐ、く・・・!!」

 「どっちが先に倒れるのか、勝負だ―――!!」




  カートリッジがロードされ、俺の残りの魔力を全て刀身に叩き込む。

  刀身の中で行き場を失った魔力は溢れ出し、高い金属音と白銀の輝きを以ってこの場を照らす―――!




 「ディバインセイバー・・・!」




  奴はもう動けない。

  後は、全力の一撃を叩き込むだけ―――!




 「クソ、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 「フル、スラストォ―――!!」




  極光と衝撃が、炸裂した―――










                    ◇ ◇ ◇










 「まさか―――アレを振り払ったか」




  呑みこまれずにアレから逃れるとは・・・大した精神力だ。

  探し物は中断したが、中々に面白い見世物も見れた・・・

  まあ、探し物が見つからないなどいつもの事だが。

  それに、収穫もあった。




 「噂には聞いていたが―――あの二人が、そうか」




  夜天の王と、白夜の王。

  古代ベルカ時代の遺産を所持する者たちの内の、二人―――




 「一応覚えておこうか。特に、白夜の王―――」




  名は聞き取れなかったが、まあこの位置からなら顔くらいなら見える。

  奴の顔を記憶に刻み、その場を立つ。




 「そろそろ幕引きか―――縁があれば、また楽しませてもらおうか」




  全てに安息がもたらされる、その刻まで―――










                    ◇ ◇ ◇










  眩い極光と共に大きな衝撃が広場全体を襲った。

  あの光は、十中百中陣耶の物―――




  たまらずに駆け出す。




 「陣耶―――!」




  陣耶と男のいた場所は舞い上がった粉塵に包まれて何も見えへん。

  だから、無事かどうかを確かめたくて、戦場の真っ只中を駆ける―――




  と、そこで異変が起こった。




 「ギ、アァ・・・」

 「・・・何だ?」




  急に、周りで暴れていた黒竜達が動きを止めた。

  その眼はどこか遠く、ここでは無いどこかを見るようで―――




  そのまま、まるで幻の様に霧散していった。




 「な・・・」

 「結局・・・何だったんだよ、こいつ等は」




  ヴィータの嘆きに応えられるモノはこの場には一人もおらへん。

  けど、今はそんな事より―――!




 「陣耶! 返事して、陣耶!!」




  粉塵の外から叫んで呼びかける。

  けど、答える声は無い―――




  背筋が寒くなる。




 「っ、陣耶―――!」




  失くしたくない、居なくならないでほしい、まだ―――

  ここに、居てほしい。

  あの時、闇の書事件の時―――うちは救って貰った。

  それはうちの家族であり、うち自身であり・・・

  まだ、その恩も返せてへんのに。

  いつもみたいに、みんなで楽しく過ごせる日常が、うちは何よりも幸せやったのに。

  その世界を彩っていた彼が、居なくなるなんて事は・・・絶対に、嫌。

  みんなみんな一緒に、これから―――!

  せやからお願い、返事を―――!!




 「ヒャハァ!!」

 「っ―――!?」




  叫び声に応えたのは、陣耶ではなく―――うちを狙っていた、男。

  もう目の前に男はいて、みんなはもう間に合わない距離にいて―――




 (うち、死ぬんかな・・・)




  それは・・・仕方のない事の様に思えた。

  みんなが犯した罪を一緒に背負って、生きて・・・

  うちに償える事なら、何でもしてきた。

  だから、これも償いなんや・・・

  元々、こんな幸せが許される立場でもなかったんや。

  他の人たちの幸せを犠牲にして―――そんなうちが、幸せになる権利なんて・・・

  せやから、受け入れるしかない、ここで・・・




  槍が、振り下ろされる。




  みんな、ごめん。

  うちは・・・




 「ぉぉおおおおおおおおおおお!!!」

 「ヒガッ!?」

 「―――ッ!?」




  突然、槍が横から弾かれた。

  槍を弾いた刃は、そのままうちを庇うように前に立つ。




 「陣耶!?」

 「死んだ魚みたいな目をしてんじゃねえよ! 阿保かお前は!?」




  翼を広げて、腹から血を流して、それでもうちを庇って・・・

  ・・・何で。




 「何で・・・」

 「何が・・・だよ・・・」

 「何で、そないボロボロになってまで、うちを助けようとするん・・・」




  うちは、今までが出来過ぎたみたいに、幸せやった・・・

  他の人たちの幸せを糧にして、幸せを味わっていて―――そのツケが、ここに来ただけで。

  なのに・・・




 「何でそこまで・・・うちには、ほんとは、幸せに生きる権利なんて・・・」

 「・・・関係無いね」

 「へ・・・」




  うちの背負ってる罪を、その重さを・・・よりにもよって関係無いの一言で斬って捨ておった・・・

  それは、あんまりにもあんまりとちゃうん・・・




 「関係無いって、あんた・・・」

 「関係ねえ。俺が今戦う理由には、お前の罪なんざどうでもいいんだよ」

 「な・・・」




  じゃあ、何で・・・




 「簡単だ。俺の為だよ」

 「陣耶の・・・?」

 「ああそうだ。俺は俺で在るために・・・俺が俺で在れる場所を、世界を護りたいんだ」

 「陣耶が、陣耶で・・・」




  それって・・・




 「だからな、俺の居場所を作ってるお前たちには消えてもらっちゃ困るんだ」

 「・・・なんや、それ」




  なんと言うか、すっごく最低な理由ちゃう、それ。

  当人の意思無視やし、どこまでも自分勝手な理由。

  けど・・・




 「・・・陣耶の居場所に、うちはいるん?」

 「何当たり前のこと言ってやがんだ。お前がいないと張り合いがねえっつの」

 「・・・そか」




  ・・・なあ、神様。

  もしもいるなら、ちょっとだけ、我が儘いいですか・・・?




 「じゃあ、護ってもらおかな」

 「―――任せとけ」




  うちは、罪を償います。

  ずっと、ずっと・・・それこそ、一生をかけて。

  けど・・・




 「死ィねえええええええええええええ!!」

 「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」










  もしも許されるなら、ちょっとだけ―――










                    ◇ ◇ ◇










  色々あったが、カリムさんを攫った奴らは逮捕。

  はやて達やカリムさん達も無事に帰還し、まあ事件は概ねめでたしめでたしだろう。

  まあ俺は重傷を負ってしまったので集中的に治癒が行われた。

  無理に傷を治したので暫くはシャマルが言っていたように通院する事になっている。

  あと、やっと魔法が使えるようになった。

  俺が腹を決めたからなのか、それとも別の要因があるのか、それは分からない。

  けど、確かな事は、まだ俺が俺で在り続ける事が出来るって事で・・・




 「陣耶の・・ド阿保ォ!!」

 「どわっち!?」




  今までの日常が、変わらずに続いてくれるという事。




 「あんたなあ、あんだけ無茶かましてよって・・・うちがどんだけ心配したと思っとる!!」

 「そりゃ悪かったけどよ! 結果的にお前は助かったんだからいいだろ!?」

 「それとこれとは、話が別やと言うとるッ!!」

 「おわっ!? 物を投げるな、物を!?」

 「うっさーーい!!」




  俺は、こんな日常が大好きだ。

  だから、この日常を護るために、俺は戦う。

  そう、俺が俺で在るために―――




  眩しい日差しの中、俺たちは他愛のない日常を生きていく―――











  Next「願い」











  後書き

  長かった・・・・・・・・・・・

  この13〜15話は実は元々一本の話に纏めるつもりだったんですが・・・予想がに長くなったなあw

  まさか三倍に増えるとは誰も思うめえw

  やっとこすっとこ陣耶の問題もなんとか解決。

  さてお次は何が起こるでしょうか・・・?


  あと、今回出てきたオリジナルな魔法の解説を。


  グランディニス・フルゴーリス

  空中に魔力で無数の巨大な槍を生成して撃ち出す魔法。

  軌道は直線的で避けやすいがその分物量がある。

  更に槍宜しく貫通能力もかなりの物である。

  難点があると言えば規模が大きいので乱戦にはあまり向かない事だろうか。


  ではまた次回―――






作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板
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