「民間人への魔法攻撃―――軽犯罪では済まない罪だ」

 

  突然現れた女の子がこれまた突然なんか凄いことを言っている。

  犯罪て・・・・ じゃあ何? 俺結構な犯罪者に襲われてたわけ?

  洒落に何ねえぞ。

 

 「何だテメエ。管理局の魔導師か?」

 

  管理局? 何だそのいかにも警察っぽい名前は。

  目の前の子がそれだと?

  て言うか魔導師って・・・・・

 

 「時空管理局嘱託魔導師―――フェイト・テスタロッサ」

 

  ヴィータの時も思ったけど―――こいつら外国人?

  名前がどう考えても日本人のそれじゃあないし―――

  それにしては日本語上手いよね?

 

 「抵抗しなければ、弁護の機会が君にはある。同意するなら、武装を解除して」

 

  一歩踏み出し説得を試みる女の子―――フェイト、と言ったか。

  けどたぶん―――

 

 「だぁーれがするかよ!!」

 

  ほらやっぱり。

  ヴィータは最初見たときのように飛んでいった。

 

 「大丈夫?」

 「大丈夫に見えたら―――眼科行ってこい」

 「もうしばらく我慢してね。すぐに腕の良い治癒術者が来るから」

 

  言うが早いか、フェイトもヴィータを追って飛んでいく。

 

  ホント。俺置いてけぼり食らいすぎじゃない?

 

 

魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜

                        第二章「狂う歯車」

 

 

 「皇君!!」

 「ああ・・・高町か」

 

  以前動かない体に鞭打って、階段から出て来た首だけ高町に向けて返事をする。

  って、何やら一人増えてますが?

 

 「ユーノ君。私はもう良いから皇君を―――」

 「分かってる」

 

  増えた一人――ユーノと言うらしい――は、俺に駆け寄ると手から緑の光を出して俺にかざす。

 

 「大丈夫? かなりの怪我みたいだけど―――何があったの?」

 「何がって―――」

 

  何が、あったんだ―――?

 

 「皇君、覚えてないの?」

 「ああ。悪いが高町、何があったか教えてくれないか」

 「良いけど―――」

 

  高町が言うにはまず俺からいきなり膨大な魔力が溢れだした。

  そのままヴィータを蹴り飛ばしたりハンマーを防いだり、果てには一気に屋外まで蹴り飛ばしたらしい。

  さっきからあるあの穴はその時のか。

 

  確かに―――言われてみれば少しばかり、朦朧としているが覚えている。

 

  記憶が正しければ俺はヴィータのあのバカでかいハンマーに潰されたことになる。

  良く生きてたな―――自分でもビックリだ。

 

 「さっきの子―――フェイトって子は?」

 「私の友達。とっても良い人だよ。そっちはユーノ君。こっちも私の大切な友達」

 「よろしく」

 

  うーん。

  聞いてても思うのが“高町って、実はとんでもないんだな”というのは間違ってるような気がしないでもない。

 

 「さて、調子はどうだい? かなり楽になったと思うんだけど」

 「おお。ホントだ」

 

  以前体中激痛が奔るがそれも許容範囲内だ。

  これなら、体を動かすことぐらいなら出来る。

 

 「ありがとう。助かったよ」

 「別に良いよ。そう言えば君の名前は? 僕はユーノ・スクライア」

 「皇陣耶だ。宜しく頼む」

 「こちらこそ、よろしく」

 

  さて―――現実逃避はこのくらいにして。

 

  空を、見上げる。

  今更気付いたが、空の色がおかしい。

  その中で、先程フェイトと名乗った子がヴィータと戦っていた。

  俺にやられた傷もある所為かフェイトが押している。

 

 「今更なんだが―――これは現実なんだな? 高町、ユーノ」

 「うん。私も最初は混乱したけど―――」

 「あんまり、驚かないんだね」

 

  いや、ぶっちゃけ色んな事が一度にありすぎて驚く暇もないというか。

  等と雑談していたらとうとうヴィータが捕まった。

  って、よく見たらまた一人増えてるし!?

  次から次へと色々出てくるよねー、ホント。

  もうちっとやそっとじゃ驚いてやらん。

 

 「とにかく、後でたっぷりと聞かして貰うからな」

 「あううう」

 

  さて、あの様子じゃもう終わったな。

  満身創痍の上に拘束までされたあげく二対一。

  援軍でも来ない限りは―――

 

  とか思った途端、フェイトと隣にいた女性が吹っ飛ばされた。

  フェイトに至ってはビルに激突したぞ。

  フェイトを吹っ飛ばした桃色の髪の奴とあれは―――獣人?

  そう言えばフェイトと一緒にいた女性もそうだったような・・・

 

 「おい。大丈夫なのか、アレ」

 「フェイトちゃん、アルフさん・・・」

 「まずい―――助けなきゃ!!妙なる響き、光となれ。癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ」

 

  ユーノが何やら印を組むと、俺と高町を囲むように陣が現れ、その上から何かが張られた。

 

 「回復と、防御の結界魔法。なのはと陣耶はここからでないで」

 「うん」

 「分かった」

 

俺達に念を押すとユーノはフェイト達の救援に向かった。

  俺達は、ここで眺めていることしかできない。

  歯がゆさだけが、募っていく。

 

 「くそっ」

 

  俺は、何も出来ない自分に毒づいた。

 

◇ ◇ ◇

 

 「大丈夫?」

 「ありがとう、ユーノ」

 

  体を起こす。

  バルディッシュは・・・

 

 「バルディッシュが・・・・」

 

  すぐ傍にあった。

  途中から斬られて所々ボロボロだけど・・・

 

 「大丈夫。本体は無事」

 『Recovery

 

  私の声に応えるようにバルディッシュが修復を始める。

  それは、瞬く間に終了した。

  元に戻ったバルディッシュを握りしめる。

 

 「ユーノ。ここから全員同時に外へ転送―――できる?」

 「アルフと合流すれば―――恐らく」

 「じゃあ私が前に出るから、ユーノはお願い」

 「分かった」

 《アルフも、それで良い?》

 《ちょっときついけど―――何とかやってみるよ!》

 

  アルフも苦戦しているみたいだ。

  頑張らないと。

 

  あの人―――とても強い。

  バルディッシュをあっさり叩き斬ったあの斬撃―――あれには特に気をつけないと。

 

  あっ、そうだ―――

 

 「ユーノ。なのはと―――あの子は?」

 「大丈夫。二人とも無事だよ」

 「良かった―――」

 

  私の大切な友達と、恐らく巻き込まれたであろう黒い髪と黒い瞳の少年。

  そう言えばあの紅い子もボロボロだったけど、なのはがやったんだったらあんなやられ方はしないし―――

  まさか、あの子が―――?

  いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。

  今優先することはこの場からの脱出―――!!

 

 「頑張ろう」

 「うん」

 

  ビルを飛び出す。

  その際、さっきのビルを見ると緑の光の中に人影が二つあった。

  心配そうな顔をして見上げているなのはと、何か悔しそうな顔をして見上げている男の子。

 

  大丈夫。絶対、助けてみせる―――!!

 

  見えないだろうけど、私はなのはに微笑みかけて、戦場へ飛んだ。

 

◇ ◇ ◇

 

 「なるべく急いで帰りますから」

 『あっ、急がんでええから。気をつけてな』

 「はい。それじゃあ―――」

 

  通信を切って、空を見上げる。

  そこでは、私の仲間である守護騎士達が戦いを繰り広げていた。

 

 「そう。なるべく急いで、確実に済ませます」

 

  全ては、はやてちゃんのために―――!!

 

 「クラールヴィント。導いてね」

 『Ja. Pendelform

 

  指輪からクリスタルが分離して、ちょうどペンデュラムくらいの大きさになる。

  そして指輪から魔力が伸びて、クリスタルと指輪をつなぐ。

 

 「旅の鏡―――」

 

◇ ◇ ◇

 

  空中で繰り広げられる常識を逸脱した激闘。

  だが、フェイト達の奮闘もむなしく、その戦況は不利としか言いようがない。

  フェイトが光る何かを打ち出すが、それは全て何の効果も与えられぬままにはじかれる。

  ついで、炎を纏った剣戟がフェイトを襲い、吹き飛ばした。

 

 「フェイトちゃん!!」

 

  たまらず高町が声を上げるが、どうやらフェイトは無事のようだ。

  またあの剣士に向かっていく。

  ユーノは上手くヴィータの攻撃を防いでいるが、攻撃手段がないのかそれだけだ。

  アルフ――高町から聞いた――は狼に変身して戦っている。

  対していた男も狼になって戦っている。

 

  状況は悪くなる一方。

  一番マズイ状況なのはフェイトだ。

  あの剣士の実力が違いすぎる。フェイトの攻撃が全く届いていない。

  万が一フェイトがやられるようなことがあれば、拮抗していた戦力が崩れて―――終わりだ。

  俺達はとうに戦闘不能。とても戦力として数えられた物じゃない。

 

  どうする―――

 

 「助けなきゃ―――」

 「高町―――?」

 「私がみんなを、助けなきゃ―――」

 

  そう言って高町は体を引きずって歩こうとする。

  けど―――無茶だ!

 

 「高町。何をするつもりだ」

 「みんなを―――助ける」

 

  その声に迷いはない。確固たる決意と揺るぎない意志が伺える。

  だが―――

 

 「何が出来る」

 「え―――」

 「何が出来るんだ今のお前に。体は満身創痍。お前の武器と思わしき杖は大破。こんな状態じゃ何をやっても足手まといになるだけだ」

 「それでも―――!」

 「お前が飛び出して、それであいつらの攻撃を受けてみろ。今度こそお前は大けがをするかもしれない。そんな事になって友達に心配を掛けるつもり
 か?」

 「う―――」

 

  俺は、俺達がただの足手まといだと分かっている。

 

  けど、悪く言えば諦めている。

 

  そんな状況でも諦めない高町は大した物だろう。

  それでも、何の手もないままじゃあそれは無謀だ。

  だから―――

 

 「だから、まず手を考えるんだ。隙を作るなり、あいつらを倒すなり、ここから出るなり。とにかく手を考えてから行動しよう」

 「皇―――君・・・」

 『それならば、私に考えが』

 

  と、高町の持っている杖から音声が響く。

  こいつ、喋れたのか・・・・・

 

 『Shooting Mode,acceleration

 

  音声と共に、桜色の光の翼が展開される。

 

 「レイジング、ハート・・・」

 『撃ってください。スターライトブレイカーを』

 

  何でだ? 俺はあの杖の喋るところが正確に分かる。

  英語なんて出来ないのにな?

 

 「そんな・・・無理だよ。そんな状態じゃ」

 『撃てます』

 「あんな負担の掛かる魔法、レイジングハートが壊れちゃうよ!」

 『私は、マスターを信じています』

 

  高町の拒否の声にかかるのは信頼の言葉。

 

 『だから、貴方も私を信じてください』

 「―――けど」

 

  高町の目には涙が溜まっている。

  内容から察するに、負担がばかでかい代わりにこの状況を打破できる物だと見た。

  ただ、あれじゃあ自ら壊してくださいって言っている様なもんだ。

  俺は―――

 

 「高町―――撃て」

 

  残酷な選択を、選ぶ。

  けど、それは―――

 

 「それを撃てば確かに、そいつは壊れるかもしれない。ならお前が信じてやらなくてどうする?」

 「―――!!」

 「よくは知らないが、ずっと一緒にいたんだろう? なら、信じてやれ」

 

  信じるが故の、決断。

  俺はその心意気を、思いを信じたい。

 

 「俺は信じる。お前は、どうするんだ・・・・・」

 

  そうして、何秒か経った後、高町は涙をぬぐって意を決したように顔を上げた。

  その目に、確かな決意と信頼を灯して。

 

 「レイジングハートが私を信じるなら、私も信じるよ。だから―――」

 

  壊れないで―――

 

  それは、高町の精一杯の願いだろう。

  高町は杖を構え、準備に入る。

  その眼前に、巨大な陣が展開された。

 

 「レイジングハート、カウントを!」

 『All righit

 

  高町の目の前に光が収束していく。

  徐々に輝きを増し、それは力を溜めてゆく。

 

  それは―――まるで星の光。

  輝ける、大いなる星のように。

 

 『Count \,[,ZY,X,W』

 

  奴等が気づくが、遅い。

  すでにみんなが援護にまわっている。

  これなら―――!

 

 『V,V,V,V・・・』

 

  しかし、やはり無理があるのか様子がおかしい。

 

 「レイジングハート、大丈夫?」

 『大丈夫です』

 

  それでも、何とか持ち直した。

  今はあいつらに任せるしかない。

  頼む―――!!

 

 『Count V』

 

  カウントが再開される。

  それと同時に高町は発射態勢に入る。

 

 『U』

 

  光が今にもはち切れんばかりに膨れあがる。

 

 『T』

 

  そして、唐突に―――それは起こった。

 

  振り上げられた腕が、止まる。

  足取りもおぼつかなくなり、今にも倒れそうになる。

  隣にいた俺には、何が起こったのかがはっきりと見えて―――

 

 「う、あぁ・・・」

 「高・・・町?」

 

  あいつの、ちょうど胸の辺りから―――

 

  腕が、生えていた。

 

  あまりにもの事態に、声が出せない。

 

 「うあっ!」

 

  いきなり腕が消えたかと思えば、また生えてきた。

  今度は、小さく光る何かをその手に捕らえて。

 

 「うあっ、あぁ・・・・」

 

  その光が、徐々に小さくなっていく。

  それにつれ、高町の苦しみも増していっている。

  事此処に至って、ようやく頭が動き出した。

 

  あいつは、今苦しんでいる。

 

  誰の所為で―――?

 

  決まっている。あの腕の人物だ。

 

  助けないと―――

 

  どうやって―――?

 

  あの腕の主を捜す? 無理だ。こんな広い町中からなんて。

 

  なんて―――無力。

 

  また俺は―――見ているしかできないのか!?

 

 『いや、出来る』

 

  ! この・・・声は――――――

 

 『お前はあれを知っているだろう?』

 

  そうだ―――知っている。

  あれは―――あの魔法は―――

 

 『何処に居るかなど、たやすく解るだろう?』

 

  そうだ、解る。

  あの守護騎士は―――

 

  意識を集中させる。

  そして、確かにその存在を感じ取る。

 

 「そこかあああああああああああああああ!!!」

 

  突っ込む。

  一気にビルを抜けて、そこにいる湖の騎士へと肉薄する。

 

 「なっ!!」

 「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

  ほとんど無防備な状態を容赦なく殴りつける。

  とっさにシールドで防がれるが―――

 

 「砕けろおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

  その叫びに呼応するかのようにシールドが粉々に砕け散る。

 

 「ええ!?」

 「ブッ飛べええええええええええええええええ!!!」

 

  がら空きになっていた脇腹を思いっきり蹴り飛ばす。

  旅の鏡も消滅した。

  とりあえずこれで高町は安心だ。

  後は―――

 

 「後は―――?」

 

  何を、しようとしていたんだ? 俺は。

  ついさっきまで確かに考えてたことが、思い出せない―――

  そればかりか、あの時―――緑の服を着ていた女性に攻撃を仕掛けていた時の考えも―――

 

 「おいおい。いくら何でもこれは―――」

 

  おかしすぎる。

 

  ―――とぎれる記憶、思い出せない思考、あのヴィータおも圧倒した力。

 

  俺に、何が起こっているんだ―――?

 

 「とにかく高町の所に―――っ!?」

 

  何、だ―――!?

  突然、目眩、が―――

 

 「くっ・・・・・」

 

  意識が、とぎれる―――

  次から次へと何なんだ―――くそっ。

 

  俺は、桜色の閃光が淀んだ空を打ち砕くのを見ながら―――意識を失った・・・・・



   後書き

   皇君強!!Σ(’□’)

   何やら書いている内にどんどん凄いことになっていく皇君。一体どうなる事やら。

   どうも、ただいま絶好調で執筆しているツルギです。

   とりあえずこれで第二話終了まで書き上げられました。

   これまで戦闘ばかりでしたが、次からは他のキャラとのふれあいを描いていきたいと思います。

   皇君が絡むことによってリリなのがどう変わっていくか、それを楽しんで貰えれば幸いです。

   それではまた次回に―――







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