さて、厄介事は終わったわけだが・・・まだまだ問題は山積みなんだナーこれが。


  今日の山場は関係者方々への今までの説明。
  なんでもなのははこれ以前にも起こった事件にも関わってたらしく、約半年はひた隠しだとか・・・


  ま、とりあえずはアリサとすずかへの事情説明から。
  それが終わってからですかねー








  〜A’s to StrikerS〜
         Act.1「友達ってなんだろう」








 「うん、やっぱすげえ豪邸・・・俺ら平民との差を感じるよ」
 「うちらかて普通の人とはちゃうやろ」



  うん、そこツッコんだらおしまいだろ。


  ただいま月村邸前に俺たち―――俺、なのは、フェイト、タヌキはいた。
  俺は初めて訪れる豪邸にちょっと恐々としている。



 「ちょ、私一人だけ扱い酷ない!?」
 「だまらっしゃいタヌキ」



  人で散々遊びやがって・・・あの後誤解を解くのにどれだけ苦労したと思ってやがる。
  とにかく、今はそんな事より訪問だ訪問。


  ピンポーン、とフェイトが呼び鈴を鳴らす。



 『いらっしゃいませ。どちらさまでしょうか』



  キリリとした声が応答してきた。
  ぱぱっと要件を説明する。



 「皇陣耶です。すずかを訪ねて来ました」
 「高町なのはです」
 「フェイト・テスタロッサです」
 「八神はやてです」



  さー、豪邸となれば執事さんとかが出迎えてくれるのがデフォだが・・・
  はたして?



 『どうぞ、お通りください』
 「お」



  ガチャリと勝手に門が開いた。
  期待が裏切られて少々がっかりである。
  けど、最近の科学は進んでるなー



 「そうだねー。最近また新しいチップセットが出たし」
 「相変わらずそーいうのに強いなメカ娘」
 「メカ娘って何ー!?」



  ははは、まあ細かい事を気にしちゃいけない。
  はやての車椅子を押して門を抜ける。



 『ブー、ブー、ブー! 声紋が一致しません! 声紋が一致しません! 侵入者です!!』
 「はいぃぃ!?」



  侵入者って何だコラ!?
  っていきなり門がハイスピードで閉まった!?



 「ちょ、これ閉じ込められたん!?」
 「み、みんな前!!」



  フェイトが何かに気づいた様に前を指す。
  そこに目を向けると・・・


  うん、なんで二足歩行な影が複数見えるんだろう。
  しかも“ガション、ガション”という擬音付き。
  いやー手が込んでるなー、ハハハ。これってどこかの映画撮影かドッキリ?
  頼むからそーであって・・・



 「あ、あれってまさか・・・」
 「うん? どーしたなのは」



  何さ、急に青い顔して顔ヒクつかせて。
  言いたいことあるならちゃっちゃと頼む。ぶっちゃけ不安だから・・・



 「この家の・・・自動防衛システム?」
 「何でそんな物騒なモン付いてんだよこの家!?」



  くそ、やっぱ金持ちの金銭感覚は違うってのかこのブルジョワめ!
  こんな事に回す金あるなら俺に恵んで!!



 「いやいやいや、ツッコムとこそこかい。つーかねだってどーすんねん」
 「と、とりあえずどうするの・・・?」



  こうしている間にもどんどん群影は近づいてくる。
  こういう場合は内部の人間が気付いてくれるのが一番良いんだが・・・



 「まあ、家が見えないしなあ・・・」
 「だね・・・」



  目の前は森。
  すずかの家なんぞどこにあるのやらサッパリだ。
  助けを求めようにも周りに人の気配は無い。引き返すにしても出口は閉じられてる・・・



 「なのは、これどんなのかは知ってるか?」
 「とりあえずトラップがあちらこちらにある筈だよ・・・あと、あれはロボットの大群だったと・・・」
 「・・・・・・・・うっわあ」



  ここだけ明らかに科学レベル高くね?
  今のロボットとか歩いたり軽く走ったりが限界の筈だよね?
  けど普通に群衆を成して淀み無く統率された動きをするアレは・・・


  とりあえずだ。こういう時の対処法は一つ。



 「さて、みんな準備はいいな?」
 「うん」
 「いつでも」
 「足手まといならんよう頑張るわ」



  よし、やる気はオーケーだな。
  戦意は十分、体力も問題なし、昨日の治療で傷も完全回復、とまではいかないが―――いける。


  俺たちはそれぞれ手足に力を籠め、目に闘志を燃やし、その不屈の心のまま―――





 『撤退ーーー!!!』





  ・・・右向け右して脱兎の如く全力を以って逃げ出した。








                    ◇ ◇ ◇








  日差しが心地良いベランダで紅茶を飲む―――うん、相変わらず良い腕してるわね。


 「みんなが来るのって、そろそろだよね」
 「そう書いてあったわね」


  昨日、あの後になのはから話があると言われた。


  “明日、アリサちゃんとすずかちゃんにお話ししたい事があるんだ。とても大切な話だから、聞いてくれるかな”


  それで、その話の場所に選ばれたのがすずかの家だ。
  ここには優秀なメイドさんもいるし、出されるお菓子もおいしいし・・・うん、うってつけの場所だわ。



 「アリサちゃん、それ少し間違ってない?」
 「いーのいーの、雰囲気ってのも大事でしょ?」



  やっと話してくれる気になったんだからそれなりのお持て成しはね。
  あとはたっぷりじっくり話を聞き出したいっていう気持ちもあるけど・・・



 「やっぱりお話って・・・昨日の事かな?」
 「たぶんね」



  というか、それ以外に心当たりが無いんだけど。あんだけ酷い目にあったわけだし・・・
  けどまあ、話してくれるからにはどんな内容でもきっちりと受け止めるつもりだ。


  それにしても・・・



 「なんか、騒がしくない・・・?」
 「そういえば・・・さっきから何か銃声や爆撃音とか聞こえるなーと思ってはいたけど」
 「・・・・・・出てきた言葉の一部をすっごく問い詰めたいけど、今はスルーしとくわ」



  けど実際何が起こってるだろう。
  まさか、また昨日みたいな・・・


  すずかの顔を見てみる・・・顔が、青い。それに震えて・・・
  ちょ、本当に!?



 「大丈夫すずか!? まさかまた昨日みたいな・・・!」
 「・・・・・・・た」



  た? たじゃ分からないって。
  ほら、マズイんならさっさとあいつらの所に・・・



 「・・・忘れてた」
 「は?」
 「陣耶くんとはやてちゃんの声紋登録・・・」



  ・・・えーと? ここって確かセキュリティが異常だったよーな・・・
  声紋を登録して無いって事はそれが作動しているわけで・・・あの防衛システムが!?



 「ちょ、それ大変じゃないの!?」
 「あ、あわわわわどーしよ! もしなのはちゃん達だったら―――!?」
 「は、早く止めに行くわよ!!」
 「うん!!」



  あーもー何だってこんな事になるのよー!?








                    ◇ ◇ ◇








 「それはこっちのセリフだちくしょーーー!!」
 「い、いきなりどないしたん」



  むう、何か変な電波を受信してしまった模様。
  とにかく無性にイラッときたんだよね。



 「はあ、はあ、はあ」
 「なのは、大丈夫?」
 「う、うん。たぶん・・・」



  あー、元々運動神経は切れてたからななのはのやつ。
  それであそこまでの戦闘力見せるとか世の中何か間違ってる。


  ん? 飛んで逃げろ?
  んなことしたら今度はワイヤーやらレーザーやらが集中して飛んでくるから嫌だ。
  一度試して酷い目にあった・・・なのはのおかげで助かったがな。



 『対象発見! 対象発見!』
 「げっ!?」



  目の前に例のロボット軍団!!
  しかも何か物騒な筒を構えていらっしゃる!?



 「ちょ、まさかアレって・・・!!」
 「しゃ、シャレにならんぞ!!」
 「にゃー!?」



  急いで横道に逃げようとしても茂み。これでははやての車椅子は通れない。
  後ろに逃げる・・・狙い撃ちされるのがオチだ。上は論外、下なんて不可能。
  ・・・逃げ道無しと?



 『発射!!』
 「ええい!!」



  もーバレルとか秘匿隠蔽とかご近所の目撃情報とか気にしてられるか!!
  つーかそんなんしてたら身が持たん! 死ぬわ!!



 「クラウソラス!!」
 『Set up』



  クラウソラス起動、バリアジャケット展開。
  そんでもって障壁展開!!


  そしてすぐさま放たれた砲弾が障壁に命中、爆発する。
  ・・・実弾? さっきまで硬質ゴム弾だったのが・・・実弾?


  ・・・・・・・・・・



 「・・・」
 「じ、陣耶くん・・・?」
 「なあ、みんな・・・我慢の限界って物があるんだよ」



  うん、人はずっと我慢なんてしてられないよね。
  俺だってその部類だ。やられたからにはやり返す。



 「俺いい加減頭に来たんだ・・・このやるせない怒りは、どこにぶつけたらいいと思う・・・?」
 『あ、あちらにどーぞ・・・』



  ふふふふふふふふふふふふふふ、こいつらの許可も取った事だし遠慮する必要無し。
  実弾とかふざけた物使ったんだ・・・それなりの覚悟はしているだろう。
  いや、ロボットだからそんなの無いか? まあこの際どうでもいい。


  今ここで、追いかけまわされた腹立たしさと昨日の弄られた怒りを―――



 「貴様らでその鬱憤を晴らしてやるから覚悟しろーー!!」
 「わわ、なんだか凄い気迫!?」
 「・・・つか、まだ根に持っとんたんな」



  うっさい! この剣に怒りと鬱憤と鬱憤と八つ当たりの気持ちを籠めて―――!!



 「すっごい私怨やな」
 「ふ、負のオーラが見える・・・」
 「ディバイン―――!!」



  纏めてたたっ斬って―――!!



 『はーいそこまでー』
 「この声・・・忍さん!!」



  ぬ、今度は何じゃい!?



 『ごめんねー、こっちの手違いで危険な目に会わせちゃって。今セキュリティ停止させるから』
 「ホントですか!?」
 「助かったー」



  え? 停止させる?
  あ、ロボットがそそくさと立ち去った・・・



  ・・・え? 結局は俺の鬱憤晴らせずじまい?



 「まあまあ、そう落ち込まんとき自分」
 「・・・原因作ったの誰だと思ってやがんだこのやろー」
 「それはそれ、これはこれや」



  ああ、このやるせない怒りはどこに向ければ・・・








                    ◇ ◇ ◇








 「えーと、その・・・いきなりゴメンね?」
 「・・・・・・・」
 「ま、まあ貴重な体験ができたし・・・」
 「他ではこんな事体験できない、よね・・・」
 「せやなー。まさかロボットが出てくるとは」



  うう、気まずいよう・・・


  すずかとアリサが私たちに気がついてセキュリティを止めてくれたのは良いんだけど・・・
  我慢の限界を超えちゃったらしいジンヤはさっきからムスッとした顔で黙りっぱなし。
  ど、どうしよう・・・



 「まあまあ、あんたもこの紅茶飲んで落ち着きなさいよ。すずかもちゃんと謝ってるんだし」
 「あのなあ・・・いくらなんでも実弾撃つか普通。これで誰か死んだらどーすんだよ。つかこれでホントに死人出てないんだ?」
 「う、うん。一応は・・・それにあのセキュリティも突破された事はあるんだよ?」
 「どこの超人だよ!? 超人と俺らを比べんな! 天と地の差があるわ!!」



  ・・・凄いね、地球って。
  あんなセキュリティが相手でも死人が一人も出ないんだ・・・
  というか突破したって・・・ちょっと会ってみたいかも。



 「はー、もういいや・・・なんか疲れた」
 「ごめんね、本当に」
 「あー、いいって。もー気にすんな」



  あれだけムスッとしてた割にはまたあっさりと・・・
  さてと、じゃあ早速目の前にある紅茶を―――



 『いただきまーす』



  まず紅茶を一口頂いて・・・うん、おいしい。
  このケーキも・・・あ、チーズケーキだ。


  そのまま自然に会話が弾んで意気揚々と私たちは―――



 「って違うだろ!!」
 「わひゃあ!?」



  いきなり陣耶がダンッ、と机を叩いた。


  び、ビックリした・・・
  どうしたのいきなり?



 「どーしたもこーしたも当初の目的すっかり忘れてんじゃねーの俺たち」
 「あ・・・・・・」



  すっかり忘れてた・・・
  今日は二人に事情を説明するために来たんだっけ。



 「にゃははは、私もついつい忘れてたよ」
 「おまーらは・・・」
 「いやー、グッドタイミングや陣耶くん。実にナイスなツッコミやったで」
 「気づいてたんなら言えよお前」
 「だって面白ないやん」



  は、はやて・・・
  それを聞いてジンヤがガックリと肩を落として・・・ああ、本当に疲れたみたいに机に張り付いた。



 「不貞腐れてないで起きるの」
 「だって俺疲れた・・・」
 「にゃはは・・・」



  うん、まあ気持ちは分からなくも無いけど・・・話が進まないから起きよう?


  で、ジンヤが起きたから改めて二人に事情を説明する。



 「・・・あのね、今日二人にお話ししたいのは・・・昨日の事と、今までの事」
 「私たちが、なのはと私、ジンヤとはやてがどんな風にして互いを知って、何があったのか―――」








                    ◇ ◇ ◇








  事の始まりは半年前に遡るらしい。


  ユーノが偶然発掘したというロストロギア、願いが叶うと言われる宝石、ジュエルシード。
  それを乗せた船が何者かによって攻撃され、乗せてあったジュエルシードは全てこの土地に飛び散った―――


  ユーノ一人ではロストロギアを封印する事が出来ず、念話を使って助けを求めたらしい。
  それを聞き届けたのが―――なのは。
  ユーノからレイジングハートを託されたなのはは見事にその力を行使し、ジュエルシードを封印していったらしい。


  だが、そう全てが上手く行った訳では無かった。
  すずかの家で偶然にも見つけたジュエルシード。それを封印しようとしたところに現れた突然の介入者。
  それが―――フェイト。
  当時敵同士だったという二人はジュエルシードを巡って幾度と無く争ったらしい。
  なのはは必死に語りかけて、フェイトは必死にジュエルシードを集めて。


  その最中、更に介入してきたのが時空管理局。
  それがクロノやエイミィさん、リンディさんたちだとか。
  身を引くように言われたなのははフェイトの事、ジュエルシードの事を放っておけずに自ら協力を申し出た。
  それからはジュエルシードをどちらが先に確保するかの競争―――


  そんな日々が続く中、アリサが傷ついたアルフを見つけた。
  アルフからフェイトを助けてほしいと願われたなのははそれを承諾。
  そして海の上での、フェイトとの決戦―――結果はなのはの勝利。


  だが、そこでフェイトの母―――プレシア・テスタロッサがジュエルシードを強奪。
  次元震を引き起こしアルハザードという異世界へ至ろうとした。
  周囲の世界に甚大な被害をもたらす次元震を見過ごす訳にはいかない管理局はこれに介入。
  フェイトの協力もあって次元震は食い止められ、事件も解決した・・・


  そうやってなのはとフェイトは友情を結び、再会の約束をして別れたそうだ。



 「・・・なんつーか、色々あったんだなお前ら」
 「そんな大変な事になってたなんてね・・・ちょっと信じられないわ」



  あー、その気持ちはよく分かる。
  俺だって最初は半信半疑だったし。
  けど、あれを見てしまったら信じるしかないんだよな。



 「そうだね・・・実際に、あんなのがいたわけだし」
 「ごめんね。私たちがちゃんと食い止めていたらアリサちゃんもすずかちゃんもあんな危険な目には・・・」
 「こーら」



  ビシッとなのはにデコピンかますアリサさん。
  うむ、実にいい音だ。



 「それについてはもういいから・・・で、今度は陣耶とはやてね」
 「ああ」



  ジュエルシード事件と言われたなのはとフェイトの出会いから半年後―――
  各世界では魔導師の襲撃事件が相次いで発生していたらしい。
  そして毎日を変わらずに過ごしていたなのはへ突如襲撃をかけた鉄槌の騎士、ヴィータ。
  その現場に遭遇した俺。駆け付けたフェイト、ユーノ、アルフ。
  そして俺に現れた異常―――
  その場は何とか逃れたものの、みんな傷ついて完膚なきまでに叩きのめされた。


  だから、俺は決めた。
  俺の中のナニカを知るために。やられた借りを返すために。俺が俺であるために。
  戦う事を選んで、そのための力を手にした。


  そして迎えた再戦の時。
  実力はほぼ互角。手の空いている連中でチェックメイトを掛けた時に現れた仮面の男。
  それは尽く混乱をもたらし、事態は更なる深みへと堕ちて行った―――


  そして、クリスマス・イヴ。
  はやてに秘密で見舞いへ行った俺たちが遭遇したのは、敵対していた守護騎士たち。
  夜の決戦、仮面の男の暗躍、はやての悲しみ、闇の書の覚醒と白夜の書の覚醒―――
  俺とはやては書を制御し、それぞれ悲しみを生み出していたプログラムを切り離した。


  全力全開を持っての最終決戦。悲しみを終わらせるための戦い。
  俺たちは決して諦めず、足掻き、もがき、手を伸ばし、そして勝利を掴み取った―――



 「ふー、頭が一杯一杯だわ・・・」
 「やっぱり一度に説明を受けるものじゃないかあ・・・」



  お二人は頭がパンク気味の模様。
  おー、湯気が見える。



 「・・・あんたらってさあ」
 「ん?」
 「寂しくないの? 両親がいなくて・・・」



  ・・・ストレートに聞いてくるところは、流石アリサだな。
  そっちの方が下手に気を使われるよりかはよっぽど良い。


  寂しい、か・・・前にも、同じ事を聞かれたっけな。



 「そうだな、寂しかった」
 「そやね・・・ずっと独りぼっちで、家族がおらんていうのは、ホンマに・・・」



  でもさ・・・友達が出来たんだ。
  今まで周りとあまり関わりを持たなかった俺が、成り行きで友達になって―――
  それで、いままでの毎日が嘘のように変わった。



 「けど、友達がいたから・・・お前たちと知り合ってからは、本当に毎日が楽しかった」
 「うちも。みんなが夜天の書から出て来てくれてからはホントに毎日が楽しゅうて・・・」



  だから、今の俺がいる。
  いつまでも過去ばかりを見てうじうじしていた俺が初めて他人の手を取れて―――
  握った手は、とても温かかった。



 「そっか・・・ごめんね、変な事聞いて」
 「いいさ別に」
 「気にしんといて」
 「・・・・・・」



  ん? なんかすずかの様子が変だ?
  顔に緊張が見て取れるってゆーか・・・これは、恐怖か?



 「どうした・・・?」
 「あのね・・・私も、話しておきたい事があるの」



  震えて、怯えて、戸惑うように口を開いて・・・



 「私、ね・・・普通の人とは、ちょっと違うんだ」
 「ちょっと? いやいや俺らも普通とはちょっと違うが・・・」
 「ううん、そんなんじゃないんだ・・・」



  ・・・まいった、空気が重い。
  はやてもこんな時くらいは流石に弁えているのか表情は真剣そのものだ。



 「私ね・・・人の血を、吸うんだ」
 「・・・・・・・はい?」



  血? 血ってあの血?
  血を吸うって・・・・・・はいいいいいいいい!?



 「ちょっと待てお前まさか吸血鬼とかそんなんだったの!?」
 「正確には、吸血鬼じゃ無くて夜の一族って言うんだ・・・」



  ま、まじかよ・・・
  まさかこの日本でリアルにそんな存在と遭遇するとは・・・つかいたんだな。
  いや、魔法とかあるしいいのか・・・? や、これは別の世界か。


  とにかく落ち着こうか俺・・・



 「・・・何で急にそれを?」
 「みんなが今まで隠してきた事を私たちに話してくれたでしょ? だから、私も話したいって思ったんだ。
  それで、みんなから遠ざけられても・・・」
 「・・・お前はなあ」



  そんなこと無いっつーのは知ってるだろうに。
  こいつらは本当に優しいからな・・・


  その優しさに、俺も救われたんだし。



 「今更そんなんで見る目変えるとでも思ってんのかよお前は。
  俺も、なのはも、フェイトも、はやても、アリサも、みんなお前の友達なんだ」
 「ううん。だけど、ね・・・怖いんだ、どうしても」



  まあ、気持は分からなくも無いが・・・
  俺も過去を話す時はかなり不安だし、似たようなもんなのか?



 「全くどいつもこいつも水臭い・・・私たち友達だっての。もうちょっと頼ってほしいわね」
 「秘密にしていた私が言うのもなんだけど・・・うん、もっと信じてほしいな」
 「うちかて秘密にしてたけど、すずかちゃんのこと信頼してたんやで」
 「・・・うん!」



  あーもう、こいつらはホントに・・・なんてーか・・・
  俺にはとても真似出来んわな。



 「うん・・・私も、すずかの気持ちはよく分かるよ」
 「フェイト?」
 「・・・私も、みんなに話しておきたい事がある」








                    ◇ ◇ ◇








  ・・・うん、やっぱり黙ったままなんて出来ない。



 「・・・私も、みんなに話しておきたい事がある」
 「フェイトちゃん―――」



  大丈夫だよ。
  これは、私が自分で決めた事だから。
  結果がどうあっても私は後悔しないし―――それに、みんなはこんな事で変わらないって信じてる。



 「私はね・・・アリシアのクローンなんだ」
 「っ」



  みんなの息を呑む気配が分かる。


  怖い・・・怖い、けど。
  みんなには知ってほしい。
  私は、みんなに隠したままこれからを過ごすことは―――自分を偽ってこれからを過ごすことはしたくない。



 「アリシアって・・・さっきの話に出てきた・・・」
 「うん。私の母さんの・・・本当の娘。私は死んだアリシアを蘇らせようとして生み出されたクローンなんだ」



  言った。言ってしまった。


  膝の上の手が震える。
  体が強張る。
  だんだんと不安になってきて嫌な汗が出てくる。


  無言―――そして、無音―――
  なにも反応が無いのが怖くて、震えて、それで―――



 「・・・・・・お前らは揃いも揃って」
 「っ」



  ジンヤ・・・
  ちょっと声が怖いけど・・・



 「すーっ・・・」



  ? いきなり大きく息を吸い込んで・・・



 「自虐入るのもいい加減にしろーーーー!!!」
 『“(‘#&”=$’;‘&!’*)@“!!??』



  ちょ、大きい!! 声大きいから!?
  こんな近くでそんな大声出さないでー!!


  あう、頭が・・・



 「はー、はー、はー」
 「いやー盛大に叫んだな」



  は、はやて・・・一人だけ耳栓なんて、ズルイよ・・・・・・



 「にゃあ〜、頭がクラクラする〜」
 「も、もうちょっとボリュームを考えなさいよ・・・」
 「―――キュウ」



  あ、すずかがノックダウン寸前。
  ちょっと背中をさすってあげる。



 「あうー、ありがとう・・・」



  ・・・うん、凄いね声って。
  なにか今日は感心してばっかりだ。



 「はー・・・お前らな、生まれがどーだ血を吸うがどーだそれがどうした」
 「えと、だって」
 「血を吸うんだよ? 怖くないの?」



  私は、他の人とは違うし・・・



 「すずかにゃさっき言ったろうが。いいか、お前らが何だろうとお前らはお前らだ。
  それ全部ひっくるめて俺たちの友達、フェイト・テスタロッサと月村すずかだ。それ以上でもそれ以下でもねえ」
 「・・・私が、友達でいいの?」



  たぶんいろいろと大変だよ?
  ほら、私って事件の重要参考人なんだし・・・



 「なに終わった話引っ張ってんだ」
 「あたっ」



  あう、また頭を叩かれた・・・



 「私も・・・みんなに、迷惑をかけるかもしれないよ」



  すずか・・・



 「それがどーした。今さら厄介事が一つや二つ増えた所で変わんねーだろ」
 「私はサッパリだけどねー」
 「みんな・・・」



  みんな、本当に優しい・・・


  ああ、これがずっと欲しかったんだ。
  何気ない、こんな時間が―――



 「不安なら誓ってやる。俺はいつなんどきでもお前たちの友達だってな」
 「ジンヤ・・・」
 「そうそう」
 「私も、ね。フェイトちゃん」



  みんな・・・ありがとう。
  なにか、肩の荷が下りた気がするよ。



 「あーもーここらで湿っぽいのは終わりだ。とっととクリスマスパーティーと行きますかね」
 「こら、主催者じゃないくせに仕切ってんじゃないの」
 「こういうのは勢いが大事だろう」



  ん、もういつもの時間だ。
  いいな、こんな時間―――ずっと続けばいいのに。



 「あ、みんな。ちょっとお願いがあるんだけど」
 「んあ?」



  すずか?



 「えっとね、私たち夜の一族には契約があるの」
 「ほんほん、契約とな?」



  契約っていろいろあるけど・・・
  なにか制限とかあるのかな?



 「そうそう。こういう展開は血の契約とか魂の契約とかそんなんで―――」
 「うん、陣耶くんも結構影響されとるな」



  えと、まあ実際使い魔の契約はそんな物なんだけどね・・・
  けど実際どういったものなのかな?



 「口約束みたいなものだよ。私たちの秘密を知った人には今後ずっと友達でいてもらうか恋人になってもらうんだ。
  それが出来ない場合は全部忘れてもらう事になるんだけど・・・」
 「ああ、そんなことならお安い御用だな」
 「うん」



  そうだね。
  恋人っていうのは流石に無理があるけど・・・この先もずっと友達って言うなら喜んで。



 「うん。私たち、ずっと友達だよ」
 「今までもずっとそうだったでしょ?」
 「そうそう、すずかちゃんみたいな子と友達になれてうち嬉しいわ」
 「うん―――ありがとう、みんな!」



  すずかは私たちの大切な友達だもん。
  こんなことでいいならいくらでも。



 「やー、それにしても陣耶くんも隅に置けんなあ」
 「―――今度は何だタヌキ」



  あのさ、やめてあげようよ。
  ちょっとはやてがかわいそうだよ・・・いや、結構イメージに合ってるんだけどね。



 「うちという者がいながら・・・まさかすずかちゃんとフェイトちゃんまで口説くなんてー!!」



  え?
  ・・・・・・・・・・・・・ええ?
  じ、ジンヤがすずかを口説い―――ええ!?
  た、確かにさっきの契約の内容に恋人はあったけど!!



 「じ、ジンヤ!? 二股はよくないよ!?」
 「口説いてねえし二股も掛けてない!! 契約も友達だ!! 一体どこどう取ったらそうなる!!」
 「え、ええ!? そうなの陣耶くん!?」
 「・・・・・・純粋無垢なのは良いけど、もうちょっと考えて聞いてほしいな俺・・・」



  え、だってそうじゃないの?
  昨日だってはやてと・・・



 「やってないって言ってんでしょーが!!」
 「えー、美味しく頂いたのに♪」
 「黙ってろタヌキ!!」



  ・・・うん、やっぱりそうなんじゃないのかな?
  それっぽく見えるし・・・



 「大体、こいつらの気持ちってモンが―――!!」
 「え? 私は好きだよ? ジンヤの事」



  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? 私おかしなこと言った?
  なのはとジンヤとアリサとすずかの動きが止まって・・・はやては何故かサムズアップ。


  え? あれ? わ、私なにかした?
  友達なら好きって当たり前でしょ? 違うの?


  だ、誰か反応してー!?



 「ふぇ、フェイトちゃん・・・」
 「それ・・・本気で言ってんの?」
 「え、普通でしょ・・・?」



  え? どうしてなのはとすずかはあたふたしてるの?
  アリサとジンヤは露骨に溜息・・・はやてはそれを見てかんらかんらと笑ってて・・・




  ホントに私なにかした・・・・・・?








                    ◇ ◇ ◇








  ―――夜、俺とフェイト、リンディさんを加えた高町家への事情説明は無事に終わった。
  流石にぼかした部分は少しあるが・・・そこは追及してこなかった。
  ま、なのはのやってる事だから間違いは無いと思っているんだろう、兄の場合・・・


  で、食事が終わった後に俺は恭也さんに道場に呼び出された。


  要件は―――まあ、予想は出来るか。



 「陣耶くん―――」
 「・・・なんですか」
 「君は―――何のためにその剣を振るった」



  何のために、か―――
  最初は自分を見つけるため。
  今は・・・



 「俺のために護る、ですかね」
 「自身のために護る、か」



  そう、俺のために護る―――


  俺は、所詮自分のためにしか戦えない人間だ。
  だから、この日常を、あの笑顔を、壊さないために剣を振るった―――
  俺は、この何気ない時間が欲しくて、それを護りたくて戦った。



 「俺が俺であるために、この日常を失くさないために―――」
 「そうか」



  暫くの間沈黙が降りる。
  そして、暗闇の中で唐突に恭也さんは口を開いた。



 「君やフェイトちゃん、なのはは―――これからも、さっき話していた様な事に巻き込まれるのか?」
 「さあ・・・確証は持てませんが、あいつらはその道を選ぶと思います」



  何かあれば放って置けないのがあいつらだ。
  自分の身の危険なんざ顧みずに事件の真っ只中へ突っ込んで行くこと請け合いだな。



 「・・・なら、頼みがある」
 「何ですか?」



  改めて向き合う。
  視線を真っ向から受け止めて、対峙する。



 「俺はいつでもなのはの傍にいてやれるわけではない―――今回だって、手助けすることは出来なかった」
 「―――」



  そうだ。恭也さんは元々魔法とは何の関係も無い。
  俺やなのはだってそうだった。


  あったのは―――おそらく、偶然という必然の出会いだけ。



 「だから頼みたい。もしもなのはの身に何かあったのなら―――君が、なのはを護ってやってくれ」
 「・・・恭也さん」



  あの恭也さんが、頭を下げた―――


  それほどまでに強く想い、大切な、家族・・・
  ただ、失くしたくないと・・・そんな、誰もが願う当たり前の事―――


  自身の手で家族を守れないことがどれほど悔しい事か・・・俺は、知っている。
  目の前で父さんと母さんが―――俺を庇って―――


  だから、俺にその願いは断れない。
  だけど同時に、果たす自信も無い―――



 「分かりました。けど、今の俺は・・・人を護るにはあまりに無力です・・・」
 「・・・」



  そう、あれから俺はなんにも変わっちゃいない。
  一歩踏み出せただけで、やっとスタートラインに立っただけだ。
  こんな状態じゃあとてもじゃないが他の奴を護れるとは言い切れない。


  だから―――



 「これからも、俺に稽古をつけてください。恭也さんとの約束を果たすために、俺が俺として生きていける様に」
 「―――ああ、分かった」



  手が差し出される。
  俺は、少し恐縮しながらも―――その手をしっかりと握り返した。








                    ◇ ◇ ◇








  あの後は高町家とハラオウン家+αで俺とユーノを加えて豪華に晩飯を彩った。
  桃子さんと士郎さん、恭也さんが本領発揮、リンディさんやエイミィさんも触発されて―――


  いやあ、料理って奥が深い事を思い知らされたよ・・・


  で、大人な方々は現在リビングで世間話に花を咲かせている。
  まだ俺には難しいですな。いくら一人暮らしで社会情勢に気を配ってるとはいえ―――


  なので俺は縁側で雪を眺めている。
  うーん、ホワイトクリスマスって何年ぶりだろうか・・・


  吐く息が白い―――



 「ジンヤ、何してるの?」
 「フェイトか。いや、ちょっくら雪を眺めていた」



  空からそっと降り積もる雪―――
  綺麗で、同時にとても儚くて・・・だから、今日という夜が幻想的に思える。



 「隣、いいかな」
 「ん」



  隣にフェイトが腰掛ける。
  うん、流石に縁側じゃちっと寒いか。
  着ていたジャケットを被せてやる。



 「ほれ、これ着ろ」
 「あ、ありがとう。ジンヤは?」
 「俺は平気。伊達に節約暮らししてないんでね」



  これくらいの寒さならもう慣れた。
  それに、周りに親しい人があまりいなかった頃に比べれば、な。



 「うん、そう言ってもらえると嬉しいな。私も、ジンヤのためになれているんだ」
 「あーそりゃーもう。お前らのおかげで・・・いろいろ助かったよ、ホント」



  やっとスタートラインに立つ事も出来たしな。



 「ああ・・・感謝してる。ありがとう」
 「どういたしまして―――それ、なのはにも言ってあげたら? きっと凄く喜ぶと思うよ」
 「そうだな―――また今度にでも言っておくか・・・ん?」



  ふと、フェイトの両手首に結んである青いリボンに気がついた。
  そういや昨日からこれ付けてたっけ・・・たしか、俺が目を覚ました時には付けてたよな。


  そう思うと知的好奇心が沸々と湧いてくるものでる。
  俺は早速フェイトに聞いてみた。



 「フェイト、その手首のリボンは?」
 「ああ、これ?」



  フェイトはリボンにそっと手を添えた。
  それをまるで大切な宝物のように、慈しみに満ちた眼差しでそれを見つめて―――



 「とても―――とても、大切な物なんだ。掛け替えのない、私の―――」
 「・・・ふーん」



  とても大切な物であることはよく分かった。
  そんじゃ―――誰かからの贈り物とか?



 「うん。とても大切な人からの贈り物なんだ。クリスマスプレゼントだって、渡してくれて・・・」
 「・・・って、お前そういう奴いたんかい」



  こっちに来る前にはずっと軟禁的な扱いと聞いていたし・・・
  アースラにいる人か―――? いやいやありえん年齢的に。
  だとすると学校か・・・まだ一ヶ月も経ってないよね? 相手見つけるの速いな・・・



 「え、えと・・・何の事?」
 「いや、恥ずかしがらなくていいんだ。そういう相手が見つかったのなら言ってくれれば祝福した物を―――」
 「あ、ええ?」



  ふむ、なのはたちにも教えてやろうか? あ、いやこれは無粋か・・・
  まあいずれ露見すればタヌキとアリサと一緒になってからかい倒してやろう。フッフッフッ。



 「とりあえずおめでとうフェイト。俺はお前を祝福しよう」
 「えーと・・・本当に分からないんだけど」
 「いや、お前そのプレゼント彼氏とかからだろ?」
 「え・・・・・・?」



  ・・・・・・本気でキョトンとした顔になりやがった。


  これは分かってないか・・・もしくは本当に違うか、か・・・



 「うわ、俺ハズイ・・・」
 「え? え? 今度はなに?」



  いや、ちょっとばかし早とちりをですね・・・
  あー、妙に損した気分だ。俺の気遣い返せ。



 「そんなこと言われても・・・」
 「お、そういや忘れていた。クリスマスプレゼントで思い出した」



  昨日のことですっかり頭から抜け落ちていたぜ・・・
  懐をごそごそと掻き回して・・・お、あったあった。


  それを取り出してフェイトに手渡す。



 「これは・・・バルデッシュ?」
 「おう。俺の金じゃこんなもんしか無理だが・・・」



  100均で買い集めた素材で作った自作キーホルダー。
  プラスチックでバルデッシュの待機状態など作ってみた。
  プラ板とかを切って折ってくっつけて・・・彩色まで済ましてやったぜ。


  ちなみになのはにはプラスチックで作った星型に赤いガラス球をはめ込んだやつを用意した。
  これまたきちっと彩色済みである。後で渡さねば。


  本当ならあとちょっとだけ手間暇かけて作れるんだが・・・自体が事態にそうもいかなかったからなあ。
  ちょっとだけ手抜きなのである。
  その気になればニス塗りとかも出来たんだがなあ・・・



 「来年はちゃんとしたのを用意するから、今年は勘弁な」
 「・・・・・・ううん、とっても嬉しいよ。とっても―――」



  うん、気に入ってもらえた様でなにより。
  ・・・って、何やら思案顔。



 「今思ったら・・・はやてやすずかがいるのにそっちにはいいの?」
 「そのネタいい加減引っ張るのやめんか!!」



  くそ、あの場も結局あやふやになったからな・・・
  早く対処しないと先が危うい。



 「え? だって契約の時も・・・」
 「いやだから俺はあのタヌキとすずかとは友達なわけ。オーケー?」
 「う、うん・・・」



  よし、誤解は解けたか・・・?



 「べ、別に遠慮すること無いんだよ? 私はむしろ祝福するし・・・」
 「だあああああ、分かってねええええええ!?」



  むしろ逆効果かよ!!
  ええい、対抗手段は!?



 『いっその事フェイトさんに迫ればどうですか?』
 「黙らっしゃい!! つかなんでそうなる!?」



  こいつすら敵かよ!?
  ど、どうする・・・? はっ、逆転の発想!!
  こ、これだ。これならば誤解も無いだろうし大丈夫なはず―――



 「あのなフェイト・・・」
 「なに?」
 「俺は確かにはやてやすずかの事は好きだぞ」
 「うん」



  こら、そこで微笑ましい顔にならない。
  俺は別にあいつらにそっちの気は無いっての。



 「けどな、俺はなのはやアリサ、お前の事も好きなんだぞ?」
 「・・・・・・・え?」



  うん、これならみんな平等、同じって意味でオーケーだろ。
  我ながらナイスな解決策。



 『・・・致命的に間違ってますよ』
 「なぬ?」



  何が間違ってると・・・



 「え、えと、ジンヤ?」
 「うん?」
 「えと、その、それって・・・」
 「ああ、みんな好きだぞ。友達だし」



  何がおかしいと・・・



 『・・・マスター、あなた人の事言えませんよ』
 「だからなんだと」



  うぬう、最近こいつとの会話が豊かになって来たのは良いんだがどうにも俺の敵に周るなあ。



 「・・・あのねジンヤ」
 「ん?」
 「ちょっと本気にしかけたから・・・今度から気を付けてね?」
 「は? いや何が・・・」



  ってリビングに駆け込んでいきやがった・・・
  なんなんだろーね?



 『マスター・・・灯台下暗しって知ってます?』
 「知っとるわいそれくらい」



   うん、フェイトの態度はよく分からんかったけどな。








                    ◇ ◇ ◇








  うう、恥ずかしい・・・


  自分でもさっき言った言葉にびっくりしたよ・・・
  うん、ちょっとはかっこいいかなって思う時はあるけど・・・それでもやっぱり友達だし。


  プレゼントで貰ったキーホルダー・・・
  なんだろう、これを見ていると自然と頬が緩む。


  ―――うん、来年のクリスマスは私もプレゼントを用意しよう。
  今度はもっと手の込んだのを作るらしいから・・・それに見合うものを用意しないと。


  喜んでくれるといいな―――
  うん、頑張ろう。


  だって友達だから・・・やっぱり喜んでほしいよね?
  だから、ずっと、こんな時間を―――
  こんな関係が友達だと思うから。




  だから、これからもよろしく―――









  Next「暖かい日差しの中では昼寝をするに限る」









  後書き

  本編再開! やー、長い道のりだったww

  これからA'sのアフター、そしてStSへと至る道が描かれます。

  当然、空白なのでやりたい放題に・・・

  いろいろ暴走してしまいそうですが今後ともヨロシクです。








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