「がっ―――!」

 「皇君!!」

 「―――」

 

  くそ、土手っ腹に良いのを貰った・・・・・

  がむしゃらに突き出した拳もむなしく宙を舞い、代わりに俺にはハンマーの尖ってない部分が腹にめり込んでいる。

 

 「終わりだよ―――」

 

  ヴィータは俺の横を通り過ぎて、高町に向かって歩いていこうとする。

  俺はさせまいと、あいつを止めようとしたが―――

 

 (―――!?)

 

  不意に、体に激痛が奔る。

 

  足から力が、抜ける。

  膝の、踏ん張りが効かない。

  痛みで、まともに立てない―――

  くそ―――

 

  俺は―――このまま黙って見ているしかできないのか・・・・・

  そう、思った矢先―――

 

 『そのようなことはないだろう?』

 

  頭に、声が、響いた―――

 

 

魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜

第一章「胎動」

 

 

 「くう・・・」

 「―――」

 

  ゆっくりと、私の方に歩いてくるあの子――ヴィータちゃん――。

  何とか立ち上がって愛杖レイジングハートを構える。

けど、私もレイジングハートもあの子にボロボロにされてまともに戦えるような状態じゃない。

 

  なんで、こんなことを―――

 

  関係のない、皇君まで巻き込んで―――

 

 「何で、こんなこと。皇君まで巻き込んで―――」

 「―――許してくれ、なんて言わねえ。私には、どうしても成し遂げたい目的がある」

 

  あの子の目―――迷いが、無い。

  その確固たる意志の籠もった目を見て、悟った。

 

  ―――この子、同じだ。

  あの時のフェイトちゃんと同じで、必死、なんだ―――

 

 「その為に―――」

 

  ハンマーが構えられる。

 

  ヴィータちゃんの攻撃、私の障壁を破った・・・・・

  防ぎ、きれるのかな。

  もし、防げなかったら―――

 

  私の胸に、不安が募る。

  もし、ヴィータちゃんの攻撃を防ぎきれなかったら、レイジングハートは―――

 

  そんな私の不安なんてお構いなしに、ヴィータちゃんは構えを取る。

 

 「お前の魔力を―――」

 「させ、るかよ―――」

 

  不意に、ヴィータちゃんの後ろから響いた声。

  この場にいる人物はもう一人しかいなくて。

  見ると、そこには―――

 

◇ ◇ ◇

 

 『そのようなことはないだろう?』

 

  頭に響く声。

  それは聞いたことのない声で―――

 

 『お前には、アレに対する力があるだろう?』

 

  けど、どこかで聞いたような声で―――

 

 『お前には、アレを打倒するだけの力があるだろう―――』

 

  俺に―――?

  なんで俺に。そもそもさっきやられたばっかりだぞ。

 

 『さあ、立て。そしてアレを打倒しろ。その為に我は存在している』

 

  声が遠のいていく―――

  そして、

 

 (!? 体が―――熱、い・・・・・)

 

  まるで、風邪にでもかかったようだ。

  鼓動が頭に直接響く。

  熱がどんどん体を侵していく。

  そして、理解する。

 

 (ああ、これが―――)

 

  これが―――アイツの言う力、か。

  そうだ。力がある。

  ヤツを倒すだけの力が。

 

 

  打倒せよ―――

 

 

  これで、戦える―――!

 

 

  打倒せよ―――

 

 

 「お前の魔力を―――」

 「させ、るかよ―――」

 

  立ち上がる。

  以前体は熱に侵されているが、問題ない。

  むしろ、この感覚が心地よいとも感じる。

 

  頭に響く鼓動の音が、ウルサイ―――

  熱に伴い、力が湧き出す―――

 

 「お前―――!!」

 「これ、魔力―――!?」

 

  何か言っている。

  が、解らない。

  ただ、熱に侵される。

 

  解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らないワカラナイ

  ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ

 

  ワカラナイまま、俺は―――

 

 

  打倒せよ―――!!

 

 

 「おああああああああああああああああああああ!!!」

 

  敵を倒すために、身を躍らせた。

 

 「くっ、速い!?」

 

  がむしゃらに突き出した拳は光ナノカに防がれる。

 

  関係ない―――

 

 「ああああああああああああああああああああ!!!」

 

  ピシッ、と音が響く。

 

 「何!?」

 「があああああああああああああああああああああ!!!」

 

  音を立ててナニカが砕ける。

  砕けたことがそんなにも意外だったのか、アイツは一瞬呆けたような表情をして―――

 

 「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 「があっ!!」

 

  そこに、左足で、思いっきり蹴りを入れた。

  アイツが壁に吹っ飛ばされて瓦礫が宙を舞う。

  普通の人間ならこれで終わりである。

  だが、

 

 「ラケーテン、ハンマーーーー!!」

 

  瓦礫の中からアイツが飛び出してくる。

  繰り出される攻撃には先程のような手心はない。

  バリアジャケットもない俺では当たると重傷の一撃。

 

  しかし、俺はそれを何でもないように右手で受け止める。

 

 「な・・に・・・・・?」

 「あああああああああああああああああああああああ!!!」

 「ぐがっ!!」

 

  今度は思いっきり蹴り上げる。

  蹴り上げられたアイツはそのまま天井を突き破って屋外まで吹っ飛ばされる。

 

  それを追って、一跳びで俺も屋外に出る。

 

  熱い―――

 

  そこには、ボロボロな成りをしたアイツが立っていた。

 

  熱い、熱い―――

 

 「何、モンだ・・・・テメエ」

 

  熱い熱い熱い熱い―――!!

 

 「がああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 「ちい!! やるぞ、アイゼン!!」

 《Jawohl. Gigantform

 「シュワルベフリーゲン!!」

 

  ナニカが、タクサン飛んでくる。

  ゼンブ、叩き落とす。

 

  ? アイツが―――イナイ。

  どこに―――

 

 「轟天爆砕!!」

 

  ウエから、声がする。

  顔をアゲれば、巨大化したデバイスがフリオロサレルところ、だった。

 

  手に、魔力をシュウチュウさせる。

 

 「ギガントシュラーーーーーーーーク!!!」

 「ああああああああああああああああ!!!」

 

  振りオロサレた一撃は、オモイ。

  押しつぶ、される――――――

 

 「終わりだあああああああああああああああああ!!!」

 「がああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

そして、爆発が巻き起こった。

 

◇ ◇ ◇

 

 「くっ・・・・・」

 

  早く、行かなきゃ・・・・・

 

  あの後―――皇君がヴィータちゃんを追っていった後、なにかとてもむなさわぎがして、私は上を目指している。

  飛べば早いんだけど、今はレイジングハートに負担を掛けるわけにはいかない。

 

  ―――あの時の皇君は、明らかにおかしかった。

 

  突然あふれ出した膨大な魔力。

  あのヴィータちゃんを圧倒したあの力。

  そして、あの時の皇君はとても危うい感じがして―――怖かった。

 

  あのままじゃあ、何か取り返しのつかないことになりそうな気がする。

  だから、早く行かないと―――

 

  そんな時、このビル全体を大きく揺らす衝撃が奔った。

 

 「なっ―――!!」

 

  まともに立つことが出来ない。

  数秒後、やっとの事で揺れが収まった。

 

  この揺れ、明らかに尋常じゃない―――

  まさか、皇君が―――!?

 

  嫌な想像が頭をよぎる。

  いけない、早く―――

 

  ビキッと、どこかで亀裂が入った。

  その瞬間―――私の頭上に、瓦礫が降ってきた。

  慌てて障壁を展開しようとするけど、間に合わない。

 

  終わる―――終わるの?

  こんな事で―――私は終わっちゃうの?

  嫌だ―――

  そんなの嫌だ―――!!

 

  ユーノ君、クロノ君―――フェイトちゃん!!

 

  落ちてくる岩盤に思わず目を閉じる。

  けど、いつまで経っても衝撃は来なくて―――

  おそるおそる目を開けると、目の前にいたのは―――

 

 「大丈夫? なのは」

 「ユーノ君!?」

 

  どうして、ユーノ君が?

 

 「ごめん、遅くなって。フェイトの無罪が決まったからなのはに連絡しようとしたんだけど、連絡はつかないし調べたら結界が張ってあるし―――」

 「―――ありがとう」

 「それは良いんだけど、状況は? はっきり言ってよく分からないんだけど・・・・・」

 「えっと、それは―――」

 

  いきなり結界に閉じこめられたと思ったらヴィータちゃんに襲われて。

  それで私もレイジングハートもボロボロになったところを皇君に―――って!

 

 「そうだ! ユーノ君、早く上に!!」

 「え?」

 「早くしないと皇君が―――!!」

 「ああ、上なら大丈夫」

 「ふぇ?」

 「上には―――凄腕の魔導師が向かったからね」

 

◇ ◇ ◇

 

 「ぐ、が―――」

 

  俺は―――何を?

  目の前には、見るからにボロボロで肩で息をしているヴィータ。

  何が―――あった?

 

 「ハァ、ハァ、ハァ―――手間取らせ、やがって・・・・・」

 

  その声からも疲労が伺える。

  それでも、ヴィータはこっちに歩み寄ってくる。

 

  体は―――動かない。

  こっちは向こう以上にボロボロだ。

  痛みで、どうにかなりそうになる。

 

 「ぐぎっ、がぁ―――」

 「ホント、訳解んねえヤツだよ。アタシをここまで追い詰めるとは思わなかった」

 

  ―――まて。

  俺が―――ヴィータをあそこまで追い詰めた?

  何を―――

 

 「けど終わりだ。お前のその魔力、貰っていく―――!」

 

  魔力って、さっきも言っていたよな。

  俺にもそれがあるってのか?

 

  混乱は増すばかり。

  だが、ヴィータはその混乱を治めるだけの時間を与えてはくれない。

 

 「じゃあな―――。少し眠ってろ」

 

  ハンマーが振り上げられる。

  抵抗も出来ないままに思ったことは“さっきまでとは形が違うなあ”なんてどうでも良いことで。

  万事休すか―――

 

  衝撃に備えて、目を閉じる。

  けど、聞こえてきたのは肉を叩く打撃音ではなく、金属同士がぶつかった金属音。

 

  目を開ける。

  目の前には、いつの間にか黒いマントを纏った金髪の女の子が立っていた。



   後書き

   ツルギです。

   なんかいきなり主人公猛攻。というより暴走気味。(笑

   出来るだけ違和感ないように進めたつもりですが―――どうだったでしょうか?

   ちなみに皇君がバリアジャケットだのデバイスだの言っていたのはちょっとした複線です。誤字ではありませんのであしからず。

   今でこそ執筆速度は速いですがこれからもそうとは限りません。まあそれでも頑張るんですけどね。

   時間が余っている今の内に書きだめを―――!!

   では最後にレス返しとオリキャラの解説を。


   >とてもおもしろそうなので完結してください。お願いしますm(_ _)m


   応援本当にありがとうございます!!

   私、これが処女作だったりするのできちんと書き上げたいと思っています。

   他にも指摘、誤字などありましたら遠慮無く送って下さい。

   それでは、オリキャラにしてこの小説の主人公でもある皇君の解説を・・・



   名前:皇 陣耶(すめらぎ じんや)

   年齢:9歳

   職業:私立聖祥大附属小学校三年生

   趣味:料理・盆栽・読書・音楽鑑賞

   好きな物:ライトノベル・パソコン

   嫌いな物:理不尽な死・理不尽な罪

   経歴

   私立聖祥大附属小学校に通う三年生。

   自宅は駅近くのマンションでありそこからバスで通っている。帰りにランニングをしているのは本人の意向。

   四年前に両親が事故によって他界。それ以降は親戚に仕送りをして貰って生活している。その為家事全般は得意。

   成績は中の上とやや良い方。それに加えて運動神経は抜群なので密かに人気だったりする。(本人全く自覚無し)

   高町なのは、月村すずか、アリサ・バニングスのクラスメイト。だが特に交友があるわけでもない。

   小さい頃に何かあったのか妙に達観しており、本人曰く

   ”世の中っていうのは理不尽で出来ているんだなあ(遠い目)”

   とのこと。

   魔導師襲撃事件の容疑者である一人と戦闘をした際に放たれた異常な魔力については全く不明である。


   以上、管理局纏め(マテ



   それではまた次回―――






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