巡礼の年







 正月には、数え年(かぞえどし)という年齢表現の一つがある。

出生時を数え1歳として、元日を迎える度に年齢を加算して行く数え方だ。

数え年の年齢表現の存在は東アジア諸国では古くから存在しており、一般には数え年が使われてきた。


人生観の重層を示唆するともいわれている。


「新年あけましておめでとうございます、おにーちゃん」

「おう」

「うわっ、こたつの中で寝込んでる!?」


 ニコニコ顔で新年から挨拶をかましてくる、高町家の末っ子。

年末年始は帰省という習慣が、日本には存在している。

俺には生憎と故郷といえる場所はなく、世話になっていた孤児院は実家だとあまり言いたくはない。


そこで今年の年末年始は、高町家でお世話になっている――この家もある意味、実家とあまり言いたくはないんだが。


「寝正月ですか、おにーちゃん」

「年始から山籠りに出かけているお前の兄姉は狂ってる」

「……雪降ってますもんね、今」


 これもまた珍しいが、海鳴の正月は雪模様だった。

俺も剣士なので心身を引き締めなければならないが、それはそれとして雪山なんぞ籠もりたくはない。

雪山の恐ろしさは、日本を流浪していた俺は身にしみて理解している。


この世で体験できる地獄の一つだと思う。


「女達は揃って初詣か、律儀な奴らだな」

「去年のお守りとか持っていきましたね。
そういえばおにーちゃんってお守りとか持つんですか」

「神頼みとかしたことはないけど、持っていたことはあるぞ」

「おお、なんかちょっと意外ですね……」


 どういう意味だ、こいつ。まあ言いたいことは分かるけどね。

世間的に知られている占いとかああいうのも、実は完全に信じないというほどでもない。

例えば自分の星座とか、十二支とかで良い結果とか出ていれば、やはり信じたくはなるからな。


要するに自分に還元してくれるのであれば、なんでもいいのだ。


「お守りの値打ちによるだろう。金をかければいいってもんじゃない。
山とか海で珍しい石を拾って、お守りとかにしてもいいんだからな」

「なるほど、願掛けに近いものですねー」


「金運は信じるぞ、基本的に」

「……すごく納得しました」

「だろうな」


 こいつ、俺が今年お年玉をあげたら驚いてひっくり返りやがったからな。

俺が他人にお年玉なんて絶対あげない人間だと思っていたんだろう。

そもそも子供であろうとも、恵んでやるほどの金がなかったからな。今日生きるだけで精一杯だった。


今はアリサが稼いでくれるので、その利益を渡しているだけである。そういう意味ではあんまり俺は変わっていない。


「お前はどこにも出かけないのか」

「おにーちゃんはどうするんですか」

「俺はお前に聞いているんだけど」


「だから、なのははおにーちゃんに聞いています」


 ――まるで自分が俺についていくのが当然であるかのように、高町なのはは俺を見つめてくる。

もしかしてこいつ、初詣とかに行かなかったのも、今日俺にくっついでいく為なのか。

最近では大人になっても親離れしない奴が急増しているそうだが、こいつは逆に自立し過ぎだと思う。


家族離れしているというより、俺との行動への比率が高すぎる。


「お前は宿題でもしてろよ」

「おにーちゃんが正月にくるというので、去年の内に終わらせました」

「無駄に行動力あるな、こいつ」

「えへへ」


 もしも俺と出会わなかったら、こいつはどうなっていたんだろう。

のほほんとしているが芯は強いので、案外自立して魔法少女として世界でも救っていたんだろうか。


そんな片鱗を欠片も見せずに、なのははこたつに入って正月からのほほんと笑っていた。















<終>







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