春への憧れ







クリスマスという日において、高町なのはという少女は非常に厄介である。

小学生といえば世間知らずのガキンチョというイメージなのだが、この小娘は意外と世の中というのを知っている。時空管理局なんぞという組織が悪いと個人的には思っている。

サンタクロースという存在の有無については本人は言及していないが、実在していないと認識している節がある。これもまた厄介極まりない。


つまりクリスマスをどのように祝ってやればいいのか、案外悩む女の子なのである。


「よし、商品券をプレゼントするか」

「ありがとうございます……と、半笑いするわよあの子」

「くそっ、リアルに思い浮かびやがる」


 勿論本人はいたって純真な子供である、それは今更疑いようもない。

ご近所ではなのちゃんと呼ばれて大人から好かれており、本人も背伸びしがちな女の子にすぎない。

比類なき魔導の才能を持っているようだが、ものの見事に腐らせている様子である。空を飛ぶのは好きなようだが、攻撃魔法なんぞ使いたくもないらしい。


そんな魔法少女を祝ってやるのはどうすればいいのだろうか。


「クリスマスパーティすればいいじゃない。友達で一緒に祝えば十分喜ぶわよ」

「それはもう計画済みだ。俺の知るガキンチョ共を一人残らず呼んでいる」

「すごいわね、今は何人いるのかあたしでも全員把握できない」

「そんなに多くねえよ!」


「一応言っておくけど成人男性で、子供の知り合いが十人超えたらロリコンよ」

「ものすごいハードルが低くないか!?」


 高町家はクリスマスのイブの夜に家族全員で祝うそうなので、クリスマス当日にパーティを開く手筈になっている。

なのはの母親が経営している喫茶店翠屋でパーティする予定なので、実にありがたくないことに俺も呼ばれている。あいつらは家族という構成を少しは思い出して欲しい。

俺の場合ナカジマ家とかテスタロッサ家とか、他の家族とも懇意にしているので、クリスマスのような年に一回の祝日はいつもスケジュールに苦労させられる。


我が子シュテル達と家族団らんすればいい話なのだが、あいつらも気を使ってくれるので厄介だ。


「サンタクロースを実在させるのはどうだ」

「また突拍子もない事を言いだしたわね……それで?」

「悪魔の証明なんぞ出来ないだろう。本当にいるのだとあいつを子供のように喜ばせるのが、この作戦だ」

「今あたしが聞いているのは、その作戦とやらなんだけど」

「俺が変装するのは流石に白々しい、さりとて変身魔法を使っても見破られる危険性がある。
だから2段階認証だ。まず変身魔法で老人に変身した上で、サンタクロースに扮するのだ。

これなら実に自然なサンタクロースが出来上がる」

「なるほど、服は本物で肉体のみ変身すれば一見すると分かりづらいわね」

「ふふふ、俺も成長しているのだよ」

「ただその作戦には一つ大きな問題があるわ」

「聞こうではないか、アリサ君」


「真夜中にサンタクロースの衣装を着た老人が部屋に乗り込んできたら気絶するわよ、あの子」

「しまった、あいつがガキンチョメンタルだった!?」


 高町なのはは平凡な女の子である。つまり、不審者は普通に怖がる。

サンタクロースはメルヘンであるからこそ愛されているのであって、実在すれば枕元にプレゼントを置く不法侵入者であった。

サンタクロースの実在を証明するには姿を見せる必要があるため、どうしたってあいつの目の前に姿を表さなければならない。


俺でも夜中にサンタクロースが現れたらビビる自信がある。


「そもそもトナカイはどうするのよ」

「妹さんに頼む」

「やめなさいよ、あの子あんたの頼みなら真剣にやっちゃうから」


 怒られた。月村すずかはアリサの親友なので、激おこだった。友達思いな奴め。

ちなみにアリサも少女なのだが、サンタクロースなんぞ信じておらず、クリスマスプレゼントを用意する側である。

夢もヘッタクレもないが、こいつは俺とクリスマス談義しているだけで笑っている、プライスレスな子供であった。


こいつもこいつで可愛げがない。


「ゲーム機は去年新型が発売されたばかりだから、まだ無理ね」

「テレビを贈るのはどうだ」

「今までの中で一番マシなアイデアだけど、家電のプレゼントは大人でも困惑するわよ」

「ゲームソフトを買ってクリスマス当日に盛り上がる作戦はいけるかも」

「対戦ゲームとかでなのはに負けまくって、あんた本人が盛り上がるから却下」

「ぐぬぬ、戦うのは嫌いなくせに格闘センスがあるのは何なんだ」


 あくまでゲームだと言われればそれまでなのだが、あいつは戦いの場の空気を読むのが非常にうまい。

空間把握能力にも優れており、センスがある。俺も剣士ではあるが、同キャラであいつと戦っても完膚なきまでに切られてしまう。

そのセンスを生かせばよさそうなものだが、高町なのはは他人と争うのが大の苦手である。


競争社会には向いていない性格かもしれないが、この海鳴で生きていくのであれば十分だろう。


「ということで、本人を呼んだわよ」

「今までのアイデアで一番良かったのはテレビを贈ることなんだが、どうだ」

「急に呼び出されて、ハイビジョンテレビのパンフレットを見せられるなのはの気持ちを考えてください!?」


 珍しく、嫌がられてしまった。ニコニコ顔も引っ込んでプンスカしている。

今どきの子供には珍しいと思うのだが、なのはは自分の部屋にテレビがないらしい。

ただ今ではパソコンが一家に一台の世の中なので、そちらでカバーできているのかもしれない。


クリスマス戦線を聞かされて、高町なのはは困った顔を見せる。


「なのはの事で色々考えてくれるその気持だけで十分嬉しいです!」

「ほら、こういう可愛げのない事を言うだろう。だから悩むんだ」

「分かるわ、その気持ち」

「本心を言ったのにー!?」


 ――クリスマスも近い、寒き冬の夜。

暖かい春はまだ遠いというのに高町なのはは朗らかに、にゃははと笑ってる。















<終>







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