To a you side 外伝5 運命の女神達と孤独の剣士 戦国の女神



※この物語はTo a you side本編を先に読まれると、よりお楽しみ頂けます。



「この勝負――俺の勝ちだ」


 空間モニターを通じて今、時空管理局全域に勝利宣言が響き渡った。

世界を股にかけた壮大な演説に、俺の中に怯みはない。

勝者たる者は常に堂々としなければいけない。

――彼らを、敗者と認めさせる・・・・・為に。


「この管理外世界へ自ら足を踏み入れた時点で、お前達は敗北している。
何故なら――」


 一呼吸置く。

考えさせる間を与えないのがベターだが、ベストではない。

余裕を見せる事で、彼らの自信を少しずつ削っていく。

幾多の世界を管理する巨大組織時空管理局を相手に、俺一人なぞ消しゴムのカス以下。

まずは相手に俺の存在を認識させる事から始めなければいけない。


「――陸海空の主力部隊をこの世界へ集結させる事。それが、俺の目的。
お前達はこの演習に自主的に参加したと思っているだろうが、違う。
大部隊を率いた八神はやて達同様、俺の戦略に乗せられた・・・・・だけだ」


 現在、俺の周囲に無数の空間モニターが浮かんでいる。

主力部隊に地上本部、本局や航空隊施設含めて各部署に中継されているのだ。

その中に当然はやて達も居て、皆一様に俺の発言に驚愕の表情を浮かべている。

当然だ、彼女達は俺の手助けを行うべく管理局内で参加数を絞ったのだ。

その動きが俺の思惑だと言われれば驚いて当然。

リンディ提督さえも興味深く、俺の言葉に耳を傾けている。

身内だけでもこの反応、大多数は疑惑と困惑に満ちていた。

良い傾向である。

少なくとも、全世界が俺に注目を向け始めたのは間違いない。

迂闊な発言は許されない、地球の世界各国首脳陣でもこれほどの規模の舞台での演説は稀だろう。

俺は汗一つ掻かず、あろう事か不敵に微笑んでさえいる。

俺の大掛かりな作戦が世界に手を触れている――全身に満ちる緊張感が、快感だった。

今こそ日本の伝統を、全世界へ知らしめてやる。


「――今から150年以上昔、ミッドチルダやベルカを含めた次元世界で質量兵器が乱用された。
質量兵器とは魔法を使用しない物理兵器、科学技術のみ大量破壊を生み出す力だ。
一度作ってしまえばスイッチ一つで使用可能、手軽に都市や世界・自然環境を無差別に破壊出来る。

新暦1年時空管理局が設立された時、その危険性から質量兵器の使用は全面的に禁止された」


 管理局員なら誰でも知っている常識である。

伝説の三提督が質量兵器の禁止が取り決められ、年号が新暦へと変わり、伝説の三提督が徹底的に兵器の運用を排除したのだ。

よく見れば威厳溢れる制服と紋章を着用した年寄りが三人、モニターに映っている。

……気のせいだと思っておこう。

だから、意味ありげに微笑むんじゃない。


「質量兵器禁止の代償として比較的クリーンで安全な純粋魔力が重宝され、魔法文化が発展した。
時空管理局の主力となり、今日では学業と並ぶ個人の資質に繋がる指標となっている。

質量兵器は廃れていき、魔法と科学が両立する新しい時代が始まった」


 クロノ達と出逢って学んだ知識と、最高評議会派遣の女性から聞いた事実を元に説明する。

周知の事実であれど、強く再認識させる事が今重要とされる。

先程の話に出た通り、異なる文化の共存が新しい歴史を生む力となる。

真実と――嘘を結びつけるのも、また同じ。


「確かに時空管理局の働きかけで魔法が表舞台に登場し、質量兵器は歴史の影に消えた。
けれど――質量兵器がかつて世界を守っていたのも事実。
ロストロギア同様、危険極まりなくとも世界を覆す力を持っている。

その力を今――この世に復活させようと企む連中が存在する」


 話を聞き入っていた者達から生まれる動揺。

世界の常識の一瞬の間隙を見逃さない。

平静を取り戻す前に、一気に畳み掛ける。


「質量兵器が過去世界に与えた影響は大きい。
どれほど甚大な労力を費やしても、その爪痕を消すには150年は余りに短い。
便利な物は利用する、それが人類社会の在り方。
お前達とて知らぬ訳でもあるまい。

どれほど形を変えても、管理局は合法的に兵器を使用しているのだからな」


 言い馴れない演説口調はややこそばゆいが、今は耐える。

ここが正念場だ。

少しでも緊張や逡巡を見せれば、彼らの疑惑は再燃する。


「質量兵器は子供でも手軽に使用出来る利便性を持つ。
環境や能力差問わず、多少の訓練で有効的な破壊を実行出来る。
その力に目を付けた連中が居る。
奴等は管理外世界――時空管理局の目の届かない場所で、兵器開発を行っているのさ。

やがて、世界を屈服させる為に」

『馬鹿な事を!』


   動揺の波紋が広がりつつあった状況に、男の太い声が投じられる。

無数のモニターから出現した巨大スクリーンに、髭面の重々しい貫禄を持つ人間が浮かび上がる。

男の声に一斉に静まり返る、お偉いさんだろう。

男は俺を鋭い眼差しで見つめ、罵倒する。


『貴様の下らん戯言に付き合う管理局ではないわ!
この馬鹿げた茶番を今すぐ止めさせろ!』


 一般人ならずとも、震え上がりそうな一喝である。

声だけの罵声とはまるで違う胆力――

実力でのし上がった男の渋さと厚みを感じさせた。

何処の誰かが知らないが、ただの馬の骨ではない。

――好都合である。

下っ端百人より、幹部一人篭絡させる方が遥かに効果的だ。


「おいおい、演習を組んだのはそっちだろうに」

『騒動を引き起こしたのは貴様だ!
証拠もなく寝ぼけた事をこれ以上ほざくなら、騒乱罪で貴様を――』

「証拠ならあるさ。俺の足元に」

『なん、だと……?』


 怯まずに済んだのは――本当の恐怖や苦渋を何度も味わったからだろう。

真の強者は、覇気で人を殺せる。

時空管理局上層部を前に、俺は軽快なリズムでコツコツ地面を鳴らす。


「俺がどうしてこの管理外世界に部隊を集結させたのだと思う?
演習地として選ばれなければ、未開の世界なんて放置されていた筈だ。

その辺がお前達管理局の限界であり――決定的な弱点だ」


 それを証拠に、俺の世界では平然と質量兵器が使用されている。

祖国では銃刀類の所持は禁止されているが、諸外国では合法。

国家間の戦争になれば、大量虐殺兵器が平然と使用される。

世界情勢は少しずつ沈静化しているが、人間が生きている限り争いは絶えない。

時空管理局はその事実を何一つ知らなかった、手出しすらしない。

――管理の「外」だから。


「自然が芽生えない荒野はカムフラージュであり、偽装。
人っ子一人居ない世界だからこそ、誰の目にも留まらない。
堂々と兵器開発や実験が行える。

地面の下を掘り起こせば、歴史の遺物が見られるだろうぜ」

「あ、ありえん! 貴様の勝手な妄想だ!
犯罪者の虚言に惑わされるとでも思っているのか!」

「おや〜、随分焦っているじゃないか。
あんたもそれなりの立場の人間なら、鷹揚にかまえろよ。

……それとも何か心当たりでも?」

『貴様ぁ! 私を侮辱するつもりか!』


 このおっさんの指摘通り、全部俺の勝手な妄想だ。

髭の親父の怒りは単純に俺個人への怒りでしかない。

俺一人に管理局全部署が引っ掻き回されたのだ、上層部が怒り狂うのは至極もっともだった。

――だが、一連のやり取りを見る連中はそうは思わない。

内情はどうあれ、表面上は俺が真実を突きつけて動揺しているようにしか見えない。

些細な嘘ならともかく、今話した内容は事実ならば・・・・・凶悪な次元犯罪だ。

ミッドチルダの平穏を脅かし、魔法文明を根幹から揺るがす可能性も出てくる。

加えて、この大規模演習の主役である俺様――

その発言は絶対に、無視出来ない。

――本当は、このおっさんの大正解なんだけどね。

この世界が質量兵器製造場なんて、俺の大嘘である。

はやて達が選んだ演習地に、俺個人の意思なんぞ微塵もない。

そもそも演習自体、この世界へ来てようやく知った事実なのだ。

当然兵器利用する組織なんぞ存在せず、地下に研究所なんぞある訳がない。

本当に調査されれば、一発で嘘がばれる。

けれど見つからなければ見つからないで、俺は全然困らない。


「何故、民間人の俺があんた達より早くこの事実を突き止めたと思う?
そもそも、これほど短期間でどうして俺の噂が簡単に広まり、俺と管理局を衝突・・させる動きになったんだろうな。
時空管理局は法の守護者、世界を管理する大組織だぞ。
一個人相手に部隊が動くなんてありえない」


 ――俺個人も分からない疑問を、平然と相手にぶつける。

敢えて刺激的な表現を用いて、この舞台を炎上させていった。

アリサなら「次元犯罪者より性質が悪いからでしょう」とか、平然と言いやがるだろうけど。

俺はにやりと笑って――


――彼らを吹き飛ばす爆弾に火をつけた。


「答えは簡単。時空管理局に、内通者・・・がいるからだ」

『裏切り者だと!?』

「そうさ。組織を内部から腐食させるユダ。
法を乱し、貴重な情報を外部へ漏らし、部隊を混乱させる裏切り者が上層部に居る。

空か、海か、陸か――それとも、その全てに」

『いい加減にしろ、貴様!!』

『呑気に俺を攻めていていいのか、アンタ。
自分の周りの人間に――信用する部下に、敵が居るかもしれないんだぜ?

今お前達の隣に居る奴が、案外敵に通じている可能性もある。
ぼやぼやしていると、寝首を掻かれるぜ」


 騒乱はいよいよ大きくなり、荒れ模様を見せる。

部隊長や上層部は必死で収めようとするが、彼ら自身疑心を拭えていない。

――時空管理局は一枚岩ではない。

天才剣士打倒で一丸となっているが、元来より彼らの縄張り意識は激しい。

地上本部と本局は特に仲が悪いらしく、半ば冷戦状態になっているらしい。

俺は美人秘書さんから管理局の内部事情や集結した部隊の種類を知り、この作戦を立てた。


――内輪揉めさせればいい。


自分の持つ戦力を投入し、正面から戦う事だけが戦争ではない。

敵の心理を巧みに操作して、敵の力を利用する――

敵と敵をぶつかり合わせ、俺が戦わなくても部隊を勝手に瓦解する。

彼らの強い縄張り意識や、相反する理念の衝突は好都合だった。

世界規模のホラ話で緊張感を高め、上層部との対立や演習地の危険性を説いて、彼らの足元を脅かす。

そして、仕上げの「味方の中の敵」――裏切り者。

全てが嘘八百、何一つ確証はない。

だが、俺は確信を持っている。

時空管理局全員が、潔白な人間ではないと――

組織が大きければ大きいほど、内部の隅々まで目を届かせるのは不可能。

世界を管理するほどの強大な権力を手にして、欲望に歪まない人間が居ないとはとても思えない。

俺の国の警察だって不祥事や犯罪を犯して、信用を失ったりもしているのだ。

正義の組織に所属する人間が、全員正義の味方だなんて言えるものか。

むしろその「正義」の為に、道を誤る人間も居るのだ。


道場の爺さんやプレシア・テスタロッサ、敵となった沢山の人達――


彼らは過ちに気付きながらも、何かを求めて戦いに出ていた。

断言してもいい――調べれば必ず見つかる。

この世界に裏組織が居なくても問題ない。

見つからなければないで、その裏切り者が情報を掴んで逃がした事にすればいい。

言い包める自信はある。

この状況下だから出来た戦略だった。

陸海空の精鋭部隊や上層部、最高評議会――注目度が上がれば上がるほど、効果を発揮する。

嘘だと思いつつも、彼らは芽生えた疑心から局員の身辺を洗う。

組織の法を犯す人間が後に見つかればしめたものだ。

火種は完全に爆発して、責任問題等で全面戦争になる。

俺を相手にする余力なんて微塵も残らない。


正に先程の宣言通り――時空管理局が集結した時点で、俺の勝利は確定した。


第一、彼らは裏切り者の存在すら知らなかったのだ。

民間人の俺に先に犯罪を看破されれば、面目丸つぶれ。

彼らが法の守護者を名乗る限り、俺に敗北はない。

戦国時代に生まれた理が、巨大組織を揺るがせたのだ。

俺がこの場を仕切り、後々の処理はリンディ達に任せれば大丈夫だろう。

勝った――


――と思うのは、大いに早かった。


「っ! な、何だ、地震か!?」


 荒れ果てた世界を揺るがす激震が、突如俺達の足場を襲う。

立っていられない程の激しい揺れは全域に広がり、秩序を乱した。

地割れこそ起きないが、万が一建物があれば崩壊は免れなかっただろう。

世界を揺るがす地震の中で、規律良く立て直す彼らは流石精鋭と言うべきか――

俺も必死で踏ん張りながら、周囲を確認して――ソレを見た。


「……マ、マジかよ……」


 管理外世界を揺るがす揺れの正体。

二つに開いた地下・・シェルターから次々と生み出される質量兵器・・・・に、目を剥いた。

両腕に鋭利な鎌を搭載した自立歩行型で、多脚生物のような動きを見せるロボット。

その数は圧倒的で、精鋭部隊を物ともしない大群が雪崩の如く押し寄せてくる。


『ちょっと、リョウスケ! 貴方、本当に知ってたの!?』


 時空管理局を代表して、美人ママさんが映像越しに俺に詰め寄る。

……本当に、いた、のね……あ、あはは……

当人は呆然とする中、周囲は身勝手に盛り上がっていく。


『嘘やろ!? じゃ、じゃあわたしら、ほんまにリョウスケの思惑通りに動かされてたんか!』

『素晴らしいです、良介さん! もう、何もかもお見通しなんですね。
……素敵……、私はもう貴方の奴隷ですね』

『――今回ばかりは、本当に……我々の完敗だ、ミヤモト』

『恐れ入っ――いえ、恐れ入りました、宮本様!』

『守護騎士達を倒したその実力は確かのようだ。
こうなる事を計算して私達を此処へ導いたのですね、貴方は!』

『素晴らしい慧眼に恐縮するばかりです。
こうなった以上、我々も協力するしかありませんな』

『全くだ。この際、海だの陸だの関係ない。
時空管理局総勢で、あの暴走した兵器を倒せねばなるまい!』

『私達航空隊も積極的に支援します。上の支持を仰ぎますか』

『何を馬鹿な事を言っておられるのです。我々を率いる人間は一人しか居ないでしょう』

『もっともだ。俺達の上に立つ人間、それは――!』


『宮本良介、貴方しかいません!』


 上層部が俺の周囲で何か言おうとするが、現場の人間が全て撥ね付ける。

突然の脅威に怯えず、慌てず、受け入れて――自分達の世界を守るべく、皆が武器を取る。

全員一丸となって共通の敵を倒す、その束の間の英雄譚の中で。

平和への想いは戦士達の魂を燃やし、祈りは力となって脈動する。

時空管理局は秩序を重んずる組織であり、上の命令は絶対。

上層部の支持を無視して、自分勝手に盛り上がるなど許されない。

だけど、そんなの関係ない。

俺達は――此処へ演習に来た・・・・のだから。

敵は目の前。

戦闘開始だ。皆、この時を待っているのだ。

さあ往かん、俺達の戦場へ!


「お前達の熱き魂、しかと受け止めた!
いくぞ――全軍突撃ぃぃぃぃぃ!!!」



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!』





















































































<最終戦 侍大将宮本良介連合軍――ガジェットドローンIV型一万機


ポイント:大規模演習地

負傷:頬にキスマーク(ガーゼ)・全身に埃・両手の平負傷(麻痺)・全身負傷痴漢中汚水
心の古傷・両腕損壊(緩和しました)、凍傷、貧血

装備:カップ酒スルメ柿の種はやてグラーフアイゼンクラールヴィント
アイスクリーム女の子文字・・・・・で書かれた番号とアドレスメモチビリイン(ミヤ)
   ミヤの歯型メロン御土産酢昆布・黒のショーツ、レイジングハート(待機モード)
 


(※エイミィ・リミエッタより、以下の支給品を授かりました)



・携帯電話(ミッドチルダ製)
・耐刃防護服
・エイミィさん手製対戦者名簿・・・・・





謎の世界:




リンディ:(大慌てで上層部との話し合いを行う)

はやて:(命令に従って、合流したザフィーラに乗って出撃)

シャマル:(命令に従って、愛のフル出撃)

シグナム:(命令に従って、意気揚々と出撃)

謎の黒衣の少女:(転送完了。命令に従って、タンコブ頭で出撃)

謎の捜査官:(転送完了。まずは隊長に報告、取調室の予約を行う)

謎の秘書:(転送完了。御迷惑をおかけしますと、ペコペコ)

謎の同僚:(転送完了。いえいえと、にこやかに手を振る)

ヴィータ:(転送完了。バインドされて気絶)

エイミィ:(楽しげに、鉄槌の騎士の顔を落書き中)





月村:(転送完了。コソコソ何処へ逃げる人の前に立つ)

ミヤ:(無事に合流。忍の肩に乗っている)

謎のナンバー2:(メロンを食べながら、睨む)

ノエル:(グラーフアイゼン・メイドフォルム)

謎のナンバー5:(スローイングナイフ・スティンガー)




謎の組織:




謎のナンバー1:(計画及びアジトを知られていた事実に驚愕。温存戦力投入に歯軋り)

謎の研究者:(計画が五年以上遅れる事になり、苦笑い)










オイル:さざなみ寮

剣:高町家





被害状況:自然公園水没・翠屋営業停止・ミッドチルダ演習地(半壊)・ゴミ収集場(崩壊)
グラーフアイゼン(時空の彼方)・マンション前(半壊)・月村邸(絵画・家具・窓ガラス)、ノエルのメイド服、少女の涙>








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